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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2016年4月1日号


  本号のコンテンツ

  ☆知財講座☆
 ■発明者と特許出願人、特許権者■

  ☆ニューストピックス☆
 ■拒絶理由通知の応答期間を延長■
 ■TPP関連の特許法等の改正案■
 ■平成28年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金■

  ☆イベント・セミナー情報
 

 今年も4月になり、新年度を迎えました。桜も見頃となり、また、初々しい姿の新社会人を見かけると、初心を忘れず進んでいかなければと思います。

 4月1日から特許料等の料金が改定されました。具体的には、4月1日以降に特許庁に支払う印紙代(特許出願料、特許料、商標登録料「設定・更新も」)が値下げされました。
 特に、商標登録料の値下げが大きくなっています。商標は区分毎に料金がかかりますので、今回の値下げによるコスト削減効果は大きいといえるでしょう。

 また、4月1日から特許出願および商標登録出願に対する拒絶理由通知の応答期間の延長に関する運用が変更されます。
 これまでは、日本の出願人は、合理的な理由がない限り、延長請求することができませんでしたが、本改正により、合理的な理由なく、特許出願・商標登録出願に対する拒絶理由通知の応答期間の延長請求が可能となるほか、応答期間経過後であっても期間延長請求ができるようになります。
 実務上、影響のある運用の変更ですので、今号では、その概要について紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■特許制度の概要■

(4)発明者、特許出願人、特許権者

 特許制度の目的、特許法上の発明、特許権の効力について説明してきました。今回は、特許権の取得を目指して特許出願を行うことのできる者はそもそも誰なのかについて説明します。

●特許を受ける権利

 「自然法則を利用した技術的思想の創作」(特許法第2条第1項)である発明は、技術に関する新規な知的情報で、それを用いることによって財産的な価値を生み出すものですが、人間が頭の中で考え出したものですので、目に見えない、無体物です。

 特許法では、この目に見えない、無体物である発明が完成した時点から特許権が成立するまでの間、発明者、特許出願人の利益状態を保護する目的で、特許を受ける権利というものを規定しています(特許法第33条、第34条)。
 特許を受ける権利は発明が完成したことにより発生し、国家に対して特許権の付与を請求できる公権としての請求権であると共に、特許を受ける権利を有している者が使用・収益・処分することのできる私権としての財産権の一種であると考えられています。

 特許出願で特許請求している発明について特許を受ける権利を有していない者が行っている特許出願は冒認出願として拒絶され特許成立しません(特許法第49条第1項第7号)。冒認出願であることを特許庁が把握できなかったため特許成立してしまった後は、最初から成立させるべきでなかったとする特許無効理由(特許法第123条第1項第6号)になります。

◎発明者

 発明は人間の頭の中で創作されるものですから発明者になることができるのは自然人のみです。そして、自然人である発明者は、発明を完成させると同時に特許を受ける権利を原始的に取得します。
 発明と同じく、人間の頭の中で考え出される知的な創作である著作物を保護する著作権法では、所定の条件が満たされれば会社などの法人が著作者となる法人著作を認めています(著作権法第15条)。
 しかし、特許法では法人発明というものを認めておらず、会社、国などが発明者になることはありません。

◎特許出願人

 発明を完成させたことによりその発明についての特許を受ける権利を原始的に取得した発明者は、自分自身で特許出願人となって特許出願を行うことができ、特許庁で審査を受けて特許成立すれば特許権者になることができます。
 一方、特許を受ける権利は財産権の一種として考えられていますので、発明者が発明完成によって取得した特許を受ける権利の一部又は全部を、有償、無償を問わない譲渡、等によって、他人に取得させることが可能です。
 特許を受ける権利の全部を発明者から取得した他人(例えば、発明を完成させた発明者が勤務している会社)は、自分の名義で当該発明についての特許出願を行うことができます。

◎特許権者

 特許出願人は発明者から特許を受ける権利を取得して特許出願を行っているわけですが、特許を受ける権利は財産権ですので、特許出願後、自由に、使用・収益・処分することができます。そこで、特許出願した発明についての特許を受ける権利の一部を他人に取得させて特許庁へ出願人名義変更届を提出し、出願人の名義を共同にすることができます。
 また、特許を受ける権利の全部を取得した第三者が特許庁へ出願人名義変更届を提出して新たな特許出願人になることもできます。
 特許庁での審査の結果、特許成立したときの特許出願人が特許権者となり、特許を受ける権利はこの時点で消滅します。

●職務発明制度

 わが国において生み出される発明のほとんどは会社内における生産活動、研究・技術開発活動などの中で生み出されます。このような発明についての特許を受ける権利をどのように取り扱うかは、産業の発達を目的(特許法第1条)とする我が国の特許制度において重要です。

 わが国では、会社において、従業員である研究者・技術者などが、その会社の業務に属する発明であって会社から自分に与えられている職務で発明を完成させた場合(これを「職務発明」といいます)であっても、当該発明についての特許を受ける権利を原始的に取得するのは原則通り発明者である従業員としています。そして、この原則の下で、職務発明制度(特許法第35条)により使用者と従業者との間の利害調整を図ることにしています。

 職務発明制度では、使用者が、職務発明についての特許を受ける権利を当該職務発明を完成させる従業者から取得することを、職務発明が完成する前から、勤務規則・雇用契約、等の契約により従業者との間で定めておくこと(予約承継)が許容されています(特許法第35条第2項の反対解釈)。
 勤務規則、等での予約承継によって従業者から使用者が特許を受ける権利を取得する場合、従業者保護の観点から、「相当の対価」の支払を受ける権利を従業者が有し、その対価が決定されて支払われるまでの全過程を総合的に評価して不合理と認められるものであってはならないとされています(特許法第35条第3項、第4項)。

 なお、予約承継を定めている勤務規則、等の契約などの有無にかかわらず、職務発明について従業者や当該従業者から特許を受ける権利を取得した者が特許を受けたときは、使用者には当該特許権についての法定の通常実施権が付与されることになっています(特許法第35条第1項)。職務発明についての特許を受ける権利は従業者が発明完成と同時に取得し、従業者は財産権としての当該特許を受ける権利を譲渡、等できることを考慮して、研究開発設備の提供や研究開発資金の負担等を行う使用者の利益を保護するものです。

●発明完成時の会社による特許を受ける権利の取得

 職務発明制度の見直しを含む「特許法等の一部を改正する法律」が本年4月1日から施行されます。

 この改正法により、使用者に職務発明についての特許を受ける権利を取得させることがあらかじめ使用者と従業者との間で契約されている場合、職務発明についての特許を受ける権利は、職務発明が完成した時点から、使用者が取得する取り扱いが、上述した従来の職務発明制度の取り扱いに追加されました(改正特許法第35条第3項)。
 ここでの契約の文例としては、「職務発明については、その発明が完成した時に、会社が特許を受ける権利を取得する。」等が特許庁から示されています。
 なお、このような契約、等が存在していない場合には、上述した従来の取り扱いのままになります。

 また、改正法により、「相当の対価」の文言が「相当の金銭その他の経済上の利益」に変更され、「相当の対価」が、金銭に限定されず、金銭以外の経済上の利益を与えることも含まれるようになりました。企業戦略に応じて柔軟なインセンティブ施策を講じることを可能にするとともに、発明者である従業者の利益を守る目的からとされています。

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■ニューストピックス■

●拒絶理由通知の応答期間を延長●

 特許庁は、平成27年特許法等改正の施行に伴い、4月1日より特許出願・商標登録出願における拒絶理由通知の応答期間の延長に関する運用を変更しました。

@特許出願

 現行では、拒絶理由通知の応答期間内(60日)に対応できない合理的な理由がある場合(比較実験に時間を要する等)に、応答期間の延長(1ケ月)が認められてきましたが、4月1日以後は、合理的理由を記載することなく、1回の請求により、2ケ月の応答期間の延長が認められます。
 また、拒絶理由通知の応答期間(60日)経過後であっても、2ケ月以内であれば合理的理由を記載することなく、1回の請求により、2ケ月の期間の延長が認められます。
 ただし、この期間延長請求を行う際には、期間内の延長請求よりも高額な手数料(51,000円)が必要となります。

A商標出願

 現行では、出願人が国内居住者である場合、応答期間(40日)の延長が認められていませんでしたが、4月1日以後は、合理的理由を記載することなく、1 回の請求で、1ケ月の応答期間の延長が認められます。
 また、拒絶理由通知の応答期間(40 日)経過後であっても、2ケ月以内であれば、合理的理由を記載することなく、1 回の請求により、2ケ月の期間の延長が認められます。
 ただし、この期間延長請求を行う際には、期間内の延長請求よりも高額な手数料(4,200円)が必要となります。

 詳細は特許庁ホームページにてご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/kyozetu_entyou_160401.htm

●TPP関連の特許法等の改正案を提出●

 政府は、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の承認案とこれに関連する特許法、商標法、著作権法など11の関連法改正案を国会に提出しました。
 特許法、商標法、著作権法の主な改正事項は次の通りです。

◎特許法

@発明の新規性喪失の例外期間の延長

 特許法では、特許出願前に既に公表されている発明は、新規性がないものとして権利が認められないのが原則ですが、公表から6ヶ月以内に出願したものについては、一定の条件のもとで例外として救済する措置を規定しています。
 TPP協定の要請を受け、今回の改正案では、この例外期間を現行の6ヶ月から1年に延長します。学会などで研究成果を発表する機会を確保しつつ、発表後の特許出願をしやすくするための措置です。

A特許権の存続期間の延長

 特許権の存続期間は、原則、特許出願の日から20年で満了するため、医薬品等の一部の例外を除いて、この期間が延長されることはありません。
 改正案では、特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後に特許権の設定登録がなされた場合には、特許権の存続期間の延長ができる制度を設けます。

◎商標法

@商標の不正使用についての損害賠償

 商標の不正使用による損害額を立証できなくても最低賠償額を受け取れるよう、「生じた損害を賠償する」という民法の原則を踏まえた上で、商標の不正使用の損害賠償規定を強化します。
 具体的には、商標の不正使用による損害の賠償を請求する場合において、「当該登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額」を損害額として請求できる規定を現行の規定に追加します。

◎著作権法

@著作権の存続期間の延長

 著作権の存続期間が、従来の「著作者の死後50年」から「著作者の死後70年」に、著作者が無名・変名の場合や団体名義場合、従来の「公表後50年」から「公表後70年」に延長されます。

A著作権侵害罪の一部非親告罪化

 著作権侵害は、著作権者からの告訴がなければ公訴の提起(検察官による起訴)をすることができませんが、今回の改正により、有償で販売されている著作物を原作のまま複製した、いわゆる海賊版等の譲渡を行った場合には、所定の要件を満たせば、告訴がなくとも公訴の提起ができるようになります。
 原作に改変を加えた場合(同人誌で行われている2次創作、パロディー等)は、従来通り、告訴がなければ公訴の提起はできません。

 なお、施行日が「TPPが日本国において効力を生ずる日」とされているため、法案が国会で可決、成立し、日本がTPPを批准しても、米国がTPPを批准するまでは、施行されないことになります。

●平成28年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(地域中小企業知的財産支援力強化事業)の公募を開始●

 経済産業省は、平成28年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(地域中小企業知的財産支援力強化事業)の公募を開始しました。
 本事業は中小企業等に対する知的財産支援の先導的な取組に要する経費を補助し、知的財産支援体制の構築や連携強化の促進等による地域における知的財産支援の強化を図るとともに、優れた取組事例を全国展開することにより、中小企業等による知的財産の保護・活用を促進することを目的としています。

・補助対象事業

 補助の対象となるのは、具体的には以下に掲げる事業の全部又は一部とし、申請区分A、B、C、Dにより提案するものとします。

1.個別・直接支援重視事業(申請区分A)
 地域の中小企業等の知的財産活用を促進するために、専門家派遣等の個別・直接的な支援を重視した先導的な事業

2.先導的仕組み構築重視事業(申請区分B)
 地域の中小企業等の知的財産活用を促進するために、地域における先導的な仕組みづくりを重視した事業

3.広域・連携型先導的仕組み構築重視事業(申請区分C)
 複数者の連携による中小企業等の知的財産活用を促進するための先導的な仕組みづくりを重視した事業であって、地域間の実施や連携によるもの。
※1 複数者の連携による取組であることを必須とします(コンソーシアム形式である必要はありません)。
※2 都道府県域を越えた実施又は連携を必須とします。

4.重点課題解決型事業(申請区分D)
 国で一律に解決が困難な課題について、地域における先導的な取組を通じ解決を目指すもの。
※ 28年度の課題としては「デザイン力強化支援事業」、「中小企業の初めての特許等の出願を促す事業」及び「知財を活用した標準化に関する事業」とします。

(注)1〜4のすべての事業において、申請者の主たる事務所の所在地が、当局の所管地域にあることを必須とします。

・補助率
個別・直接支援重視事業(申請区分A):
補助対象経費の1/2以内(地方公共団体の負担する額以内)

先導的仕組み構築重視事業(申請区分B):
補助対象経費の1/2以内(地方公共団体が補助事業に要する経費の1/4以上を負担する場合に限ります)

広域・連携型先導的仕組み構築重視事業(申請区分C):
定額(1千万円を上限とします)

重点課題解決型事業(申請区分D):
定額(1千万円を上限とします)

 公募要領など詳しくは経済産業省関東経済産業局
http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/tokkyo/data/28fy_chizaishien_kouboyouryo.pdf

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  ■イベント・セミナー情報■

4月18日 東京都港区 発明会館
http://www.jiii.or.jp/kenshu/h28/0418.pdf
知的財産権 初心者講座〜基本的な知的財産権の理解のために〜
(発明推進協会)

4月21日 東京都港区 発明会館
http://www.jiii.or.jp/kenshu/h28/0421.pdf
異業種に学ぶ「ファッション・ロー」を利用した「ブランド戦略」
〜商標法、不競法、意匠法、著作権法、民法(契約)の戦略的活用〜
(発明推進協会)

4月28日 東京都港区 発明会館
http://www.jiii.or.jp/kenshu/pdf/chizaist/chizaist-pre-0428.pdf
企業における知的財産の必要性とその活用
〜なぜ今、知的財産なのか。知財をビジネスにつなげる手法と戦略〜
(発明推進協会)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
新宿山崎ビル202
TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
E-mail:
URL: http://www.suzuki-po.net/

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最終更新日 '17/04/03