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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2016年6月1日号


  本号のコンテンツ

  ☆知財講座☆
 ■特許出願から特許成立までの流れ(後半)■

  ☆ニューストピックス☆
 ■中小企業等特許先行技術調査事業の概要■
 ■「悪意ある商標」、特許庁が注意喚起■
 ■ウェアラブルコンピュータの出願が増加■
 (平成27年度特許出願技術動向調査)

  ☆イベント・セミナー情報

 自ら発明した内容について、既に特許が存在するかどうか、あるいは類似の技術が存在するかどうかを事前に調査しておくことは重要といえますが、個人あるいは中小企業の出願であって、まだ審査請求を行っていない出願については、国の助成で先行技術調査を、特許庁から委託を受けた専門業者に依頼することが可能です。

 この制度は、中小企業等特許先行技術調査支援事業として行われておりますが、今年度のJapio(日本特許情報機構)の中小企業等特許先行技術調査助成事業が開始されましたので、今号では、その概要について紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■特許制度の概要■

(5)特許出願から特許成立までの流れ(後半)

 前号では特許出願が行われて1年6月経過した後に出願内容が特許庁から公表される特許出願公開(特許法第64条)まで説明しました。本号では、特許庁での審査から特許成立まで説明します。

C.審査請求(特許法第48条の3)

 特許出願で特許取得が目指されている発明に特許を与えることができきるかどうか特許庁が検討、判断する審査は特許出願を行うだけでは開始されません。
 特許出願手続とは別個に行われる「出願審査の請求」により初めて審査が行われる状態になります。審査請求の際、審査請求料金(基本料金:118,000円+審査を受ける発明の数(=特許請求の範囲に記載されている請求項の数)×4,000円)を特許庁へ納付します。
 審査請求は特許出願と同時に行うこともできますが、特許出願の日から3年以内に行えばよいことになっています。
 同一内容の発明については一日でも先の特許出願に特許が与えられるという「先願主義」(特許法第39条)の下、特許出願人は、完成した発明について一日を争って特許出願します。
 しかし、毎日のように技術開発・研究を積み上げていますので、「素晴らしい発明だ」と考えて特許出願したにもかかわらず、後からもっと素晴らしい発明が完成して新たに特許出願を行ったので先の特許出願は不要になった、あるいは、特許出願後その発明の実施化を断念した、等々が起こり得ます。
 このような特許出願については、他社から同じ発明が後に特許出願されても後願である他社の特許出願に特許は認められないという「先願」の地位(特許法第39条)を確保できれば十分だとして「審査を受けなくてもよい」となることがあります。
 一方、特許庁としては毎年30万件を越える特許出願の全てを審査するより、審査を受ける必要があると出願人が考えるものについてのみ審査する方が効率的です。
 そこで、出願人が特許出願後の事情を踏まえて審査を受ける必要があるかどうか検討する期間として3年が認められ、出願後の3年の間のいずれかのときに「出願審査の請求」があった特許出願についてのみ審査が行われます。
 一方、特許出願の日から3年以内に「出願審査の請求」が行われなかったものは、特許出願が行われた事実と、その内容が1年6月経過後に出願公開公報で世界中に公表されたという事実を残して特許出願の日から3年経過した時点で消滅します。
 現状では特許出願されたものの中の35%程度は出願後3年以内に審査請求が行われず消滅しています。

D.拒絶理由通知(特許法第50条)

 審査の結果「特許を認めることができない」とする理由を特許庁の審査官が発見した場合、必ず、出願人にその旨を通知(拒絶理由通知)し、所定の期間内(通常は、発送日から60日以内)に意見を開陳する機会が与えられます。

E.意見書・補正書提出(特許法第50条、第17条の2)

 拒絶理由通知を受けた出願人は、指定された期間内に意見書を提出して審査官に再考を求めることができます。また、必要があれば、特許出願の際に提出していた発明を説明する文章、図面の記載内容に基づいて特許請求する発明を補正する手続補正書を提出できます。

F.拒絶査定(特許法第49条)

 意見書・手続補正書を提出して再考を求めても「拒絶理由は解消できていない」と審査官が判断する場合、「特許を与えることはできない」とする審査官の最終判断としての拒絶査定が下されます。
 なお、審査で発見した拒絶理由の全てが一回目の拒絶理由で通知されることになっていて、拒絶理由通知−意見書・手続補正書提出は、通常、一回です。しかし、一回目の拒絶理由通知に対応したことで一回目に通知した拒絶理由は解消したが、新たに指摘すべき拒絶理由が存在すると審査官が考えた場合には二回目の拒絶理由が通知され、再度、対応する機会が与えられます。
 拒絶査定に不服の場合、所定の期間(3カ月以内)に、特許庁での第二審にあたる拒絶査定不服審判を請求し、審査段階のように一人の審査官ではなく、審査官より経験を積んでいる審判官3名による合議での慎重な審理を受けることができます。
 拒絶査定不服審判の審理で「拒絶理由は解消している」と判断されれば「特許を認める」という特許審決が下され、一方、「拒絶理由は解消していない」と判断されれば拒絶審決が下されます。
 拒絶審決に不服の場合には、知的財産高等裁判所に「審決取消訴訟」(特許法第178条)を提起できます。拒絶審決に対する不服申立の道が無くなった時点で拒絶審決が確定し特許出願は消滅します。

G.特許査定(特許法第51条)

 審査で拒絶理由を発見できなかった、あるいは、通知した拒絶理由は出願人が提出した意見書・手続補正書で解消したと認めることができ、新たな、別の拒絶理由を発見することができない場合、審査官は、「特許を認める」という最終判断である特許査定を下します。
 拒絶理由を解消する目的で特許権の効力を狭める補正が審査過程で行われているのが一般的ですが、現状では審査を受けた特許出願の中の60〜70%に特許成立しているようです。

H.特許料納付・特許権の設定登録(特許法第66条、第107条)

 特許査定あるいは特許審決を受けた出願人が30日以内に第1年分〜第3年分の特許料を納付して特許権が成立します。特許庁は1〜3年分の特許料納付を受けると特許権を設定登録し、特許番号を付与して特許証書を発行します。
 特許番号は、明治時代の日本で特許制度が採用されて最初に成立した特許が第1号で、その後、累積的に積み上げられている番号です。現状では590万台の特許番号が付与されています。

I.特許公報の発行(特許法第66条)

 特許権成立後1〜2カ月経過した頃、特許庁は、特許公報を発行します。特許権は独占排他権です。特許権成立後、特許権が成立した発明は特許権者のみが独占排他的に実施でき、権原なき第三者が特許発明を事業で実施すると特許権侵害で差止請求(特許法第100条)、損害賠償請求(民法第709条)の対象になります。
 独占排他権の内容を世の中に公示する目的で発行されるのが特許公報です。特許情報プラットフォーム(J-Plat Pat)でも公表されインターネットを介して世界中で閲覧可能です。

J.特許異議申立(特許法第113条)

 特許公報発行後6カ月以内に限り、何人も、審査のやり直しを求めて特許異議申立を提出できます。申立の理由は拒絶理由に列挙されているものと基本的に同一です。「特許が付与されるための条件を満たしていない」と考えられる特許について、公衆が、特許庁に対して再審査を求める手続になります。
 なお、特許異議申立とは別に、特許権成立後であれば、利害関係人は、「特許が付与されるための条件を満たしていない」と考えられる特許について、いつでも特許庁に特許無効審判を請求できます(特許法第123条)。

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■ニューストピックス■

●中小企業等特許先行技術調査助成事業の概要●

 一般財団法人日本特許情報機構(Japio)は、「中小企業等特許先行技術調査助成事業」を行っていますが、今年度の助成事業が5月より開始されましたので、その概要について紹介します。

 「特許先行技術調査」とは、特許を受けるための要件(特許要件)に照らして、特許出願が、特許されるものか拒絶されるものかを判断するための材料(先行技術文献)を発見することを目的とする調査です。
 特許出願に対する審査請求手続きを実施するかどうか、あるいは出願書類に対する手続補正を行うかどうかを検討する際、先行技術文献は有効な判断材料となります。
 この調査料金の大半を国が助成することで、利用者の負担が軽減されます。特許先行技術調査には、Japio提携特定登録調査機関が国内・海外調査および国内調査のみを行うバージョンとJapio選定調査機関が国内調査を行うバージョンがあります。

 「Japio中小企業等特許先行技術調査助成事業(国内・海外調査)」が1件につき15,000円(請求項20項まで)、Japioの選定調査会社による「Japio選定調査機関による調査」が1件につき10,000円(請求項10項まで)です。

 調査条件、費用、納期、申し込み方法については、「Japio中小企業等特許先行技術調査助成事業」の簡易パンフレット(PDF形式)をご参照ください。
http://www3.japio.or.jp/patentworld/images/_contents/pdf/japio_simple_pamphlet2016.pdf

●「悪意ある商標出願」、特許庁が注意喚起● 

 特許庁は、「最近、一部の出願人から他人の商標の先取りとなるような出願などの商標登録出願が大量に行われている」として、「悪意ある商標出願」の被害者に向けて商標登録を諦めないよう呼びかけるメッセージを発表しました。
 商標登録をめぐっては、第三者が名称を先取りして出願する例がたびたび問題になっていますが、特許庁によると、これらのほとんどが出願手数料の支払いのない手続上の瑕疵のある出願となっています。
 特許庁では、このような出願については、出願の日から一定の期間は要するものの、出願の却下処分を行っています。仮に出願手数料の支払いがあった場合でも、出願された商標が、出願人の業務に係る商品・役務について使用するものでない場合や、他人の著名な商標の先取りとなるような出願や第三者の公益的なマークの出願である等の場合には、商標登録されることはありません。

 また、「これらの出願についても、出願公開公報やJ-PlatPatにて公表されているが、当該情報はあくまでも商標登録出願がなされたという情報の提供であり、これらの出願に係る商標が商標登録されたことを示すものではない」として、「このような出願が他人からなされていたとしても、ご自身の商標登録を断念しないでください」と注意喚起しています。

●ウェアラブルコンピュータの出願、各国で増加●
(平成27年度特許出願技術動向調査)

 特許庁は、「特許出願技術動向調査」の結果を公表しました。本調査は、市場創出や国の政策として推進すべき技術分野を中心に、今後の進展が予想される技術テーマを年度ごとに選定して調査を実施。平成11年度の調査開始から同27年度までに224テーマの調査を実施しています。
 平成27年度のテーマの中から、ウェアラブルコンピュータ(身体に装着して利用する形態の機器)に関する調査結果を見てみると、調査対象期間(2004年〜2013年)における日米欧中韓台の主要6カ国・地域へのウェアラブルコンピュータの特許出願件数は11,727件に上りました。
 出願先は米国が最大で約43%を占め、大きく離れて日本が約19%となっていいます。
 また、出願人国籍別では、米国籍からの出願が最大で4,598件(約39%)、次いで日本国籍が3,320件(約28%)、韓国籍が1,297件(約11%)、欧州国籍が1,199件(約10%)となっています。
 ウェアラブルコンピュータの用途別では、医療介護用、ヘルスケア用、スポーツ用が多く、各国企業が主に健康関連市場での普及を目指している傾向が浮き彫りになりました。
 特許庁では「腕時計型のウェアラブルコンピュータは、今後市場が大きく伸びると予測されている分野であり、米国が先行しています。
 近年、各国が出願を増加させており、日本も出願を急増(2013年は前年比約3倍)させている状況」であることや、「腕時計型の小型軽量化技術は各国の出願が未だ少ない状況で、腕時計型で先行する米国さえも網羅的な特許網を構築できていない可能性がある」と分析しており、日本は引き続き腕時計型の小型軽量化の研究開発を強化すべきであるとしています。

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  ■イベント・セミナー情報■

6月17日 東京都中央区 銀座会議室三丁目
http://www.chosakai.or.jp/seminar/2016seminar/20160617.htm
事業戦略に資する特許の取り方・権利行使の考え方
(経済産業調査会)

6月21日 東京都千代田区 日本生命丸の内ガーデンタワー
http://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-71470.html
中堅・中小企業のための営業秘密の保護と職務発明規程
(東京商工会議所)

6月24日 東京都千代田区 TKPガーデンシティ永田町
http://www.inpit.go.jp/katsuyo/tradesecret/28fyseminar.html
平成28年度 営業秘密・知財戦略セミナー
(工業所有権情報・研修館)

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最終更新日 '17/04/03