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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2016年7月1日号


  本号のコンテンツ

  ☆知財講座☆
 ■特許調査について■
 
  ☆ニューストピックス☆
 ■冒認商標無効・取消係争支援事業を新設■
 ■特許情報プラットフォームの改善計画■
 ■中小企業のためのオープン・イノベーション■
 ■知的財産権制度説明会(初心者向け)を開催■

  ☆イベント・セミナー情報
 

 近年、中小企業の海外進出に伴い、海外で現地企業から自社ブランドの商標や地域団体商標を「冒認出願」されるトラブルが増えています。
 「冒認商標」とは、中国など海外でブランド名を「悪意の第三者」が先取り出願した商標のことですが、冒認商標により、日本企業が自らのブランドを商標として使用できないなど、海外でビジネスを展開するうえで障害となるケースがあります。
 こうした状況を受け、特許庁は、本年度より中国で現地企業から自社ブランドの商標や、地域団体商標を冒認出願された中小企業等に対し、異議申立や無効・取消審判請求など、「冒認商標」を取り消すためにかかる費用を助成する「冒認商標無効・取消係争支援」を新設しました。今号では、その概要について紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■特許制度の概要■

(6)特許調査

 特許出願から特許成立までの流れを2回にわたって説明し、特許出願が行われて1年6月経過した時点で特許出願公開公報(特許法第64条)が、特許権が成立した後に特許公報(特許法第66条)が発行されることを説明しました。
 今回は、これらを利用して行う特許調査について説明します。

A 調査の目的に応じた調査対象公報の選択

A−1 特許出願公開公報を利用した調査

@自社が技術開発に取り組んでいる分野の近年の技術開発動向、同業他社の技術開発動向や特許戦略を把握したい場合などには特許出願公開公報を対象にして調査できます。

Aどんなものが出願(申請)されているか調べたい・自分が考えたものと同じものが既に出願されているか調べたい、出願済の発明・アイデアの概要を調べたい、ある分野の先行技術を知りたい・既存の技術を知りたい、ある会社または個人の出願内容を知りたい、等の場合には、特許出願公開公報を利用して調査を行うのが便利です。

B特許出願公開公報は、特許出願日から1年6カ月経過後に発行されますので、調査を行う日より1年6カ月前以前に特許庁に提出されている特許出願の内容しか調査できません。しかし、同じ発明については一日でも先に特許出願が行われたものに対してのみ特許権が付与されるという先願主義(特許法第39条)の下で特許出願が行われているので、特許出願公開公報を利用した調査によって新しい技術動向を把握できます。

C特許出願公開公報の調査で把握した新しい技術動向を、自社で進めている研究・技術開発の参考にできます。

D他社によって既に行われている特許出願には、将来、特許庁で審査が行われて特許成立する可能性があります。この点を考慮し、特許調査で発見した特許出願公開公報の内容を検討して、将来、自社の事業で他社の特許権を侵害する事態が発生しないように注意できます。

Eなお、特許出願公開公報に掲載されている発明に特許成立することを阻止する目的で、その発明の特許性(新規性、進歩性など)を否定し得る技術文献(書物、研究論文、特許出願公開公報など)を特許庁へ提出して特許庁の審査で利用してもらうようにできます。
(刊行物提出:http://www.jpo.go.jp/seido/s_tokkyo/tt1210-037_sanko2.htm)

A−2 特許公報を利用した調査

@特許公報には特許庁での審査の結果、特許成立した発明が掲載されます。そこで、自社で行っている事業が、他社が所有している特許権を侵害するおそれがないかどうか確認する場合には特許公報を利用した調査を行います。

A他社の権利内容を確認したい、権利の存続期間を調べたい、等の場合に特許公報を利用して調査を行うのが便利です。

B特に、他人が所有している特許権を侵害する行為を行って、当該特許権の所有者(特許権者)から損害賠償請求訴訟(民法第709条)の提起を受けた場合、特許権侵害行為に過失があったものと推定されることになっています(特許法第103条)。そこで、自社が事業で採用している技術が他社所有の特許権を侵害するものでないかどうか特許公報を用いた調査を行っておくことは重要です。
 自社が事業で採用している技術が他社所有の特許権を侵害する可能性がある場合、自社の技術内容を変更することで他社の特許権を侵害しないようにできるかどうか、等を検討することになります。

C他社に特許成立した発明について、その発明の特許性(新規性、進歩性など)を否定し得る技術文献(書物、研究論文、特許出願公開公報など)を見つけ出して特許異議申立を特許庁へ提出し、特許権を付与したことの適否について審理し、特許権付与に瑕疵があるときは、その是正を求める(特許権を取り消す)こともできます(特許異議申立制度)。
https://www.jpo.go.jp/toiawase/faq/pdf/sinpan_q/tokkyo_igi_moushitate.pdf

D特許公報発行後6カ月以内でなければ異議申立できませんが、利害関係人のみが請求でき、特許権者と請求人との間の当事者対立構造で審理が行われる特許無効審判請求とは異なって、何人も申立でき、異議申立書提出後の手続は、原則として、特許庁と特許権者との間だけで行われるので、新規性や進歩性などの特許性を欠いていると思われる特許権が成立したと認められる場合、審査のやり直しを求める上で有効です。

B 特許調査の方法 J-Plat Patの使い方

@特許庁が無料で公開している特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を利用した特許調査で「特許出願人の会社名称、発明者の氏名などをキーワードにして調べたい」、「ある技術用語などの語句(キーワード)を用いて調べたい」などの場合には、J-Plat Patの「特許・実用新案テキスト検索」を利用して調査できます。

AJ-Plat Patでトップページへ行きますと、この画面の上側に「特許・実用新案」、「意匠」、「商標」、「審判」、「経過情報」というボタンが表示されます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage#

Bここで「特許・実用新案」のボタンをクリックし、プルダウンメニューで「特許・実用新案テキスト検索」を選択します。初めての方であっても「特許・実用新案テキスト検索」の右隣に表示されている「ヘルプ」ボタンを押し、キーワードの入力例を参考に入力して検索できます。

C「特許・実用新案テキスト検索」で調査を行う場合、最初に、公報の「種別」を「公開特許公報」にするのか、「特許公報」にするのか、あるいは、これらの両者にするのか、等々、選択することになります。

D同業他社の会社名称を「検索項目」の「出願人/権利者」に入れて検索したところヒット件数が多くなりすぎたときには、例えば、「公開日」あるいは、「登録公報発行日」を特定して、範囲を絞って検索を行うことができます。例えば、公報の「種別」を「公開特許公報」とし、「検索項目」の一番目を「出願人/権利者」とし、「検索キーワード」欄に同業他社の会社名を入力し、「and」条件で続く「検索項目」の二番目を「公開日」とし、「検索キーワード」欄に「20150101:20151231」と入力して検索すれば、同業他社が特許出願人になっていて、2015年1月1日から同年12月31日までに特許庁から発行された特許出願公開公報を検索できます。

EJ-Plat Patの検索では、一般の検索データベースではあたりまえになっている「あいまい検索」は行えません。「検索キーワード」に入力したものと完全一致でなければ出力されないので、検索キーワード入力に注意が必要です。例えば、「検索項目」を「発明の名称」とし、検索キーワードに「モーター」と入力して検索すると、「駆動モータ」のように発明の名称に「モーター」という文言ではなく「モータ」という文言しか含まれていない特許出願はヒットしません。

F「特許・実用新案テキスト検索」での検索結果が表示される画面の右上に「経過情報」と「審査書類情報」のボタンが表示されます。
 このボタンを押して、特許出願公開公報の調査で把握した案件が今どのようになっているか・登録(権利化)されているのか、等の特許出願の経過や、特許庁の審査で発行された「拒絶理由通知書」の内容、これに対して特許出願人が提出した「意見書」、「補正書」の内容などを把握できます。

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■ニューストピックス■

●冒認商標無効・取消係争支援事業を新設●

 特許庁は、中小企業が海外で取得した特許・商標等が海外で侵害された場合、その保護に向け、侵害された企業に対する支援事業を行っています。これまで海外で見つけた模倣品の対策と海外で外国企業から警告を受けた場合の係争費用を支援してきましたが、28年度から新たに冒認商標を取り消すための費用も支援することにしました。

 近年、中国では日本企業や地方自治体のブランドが、知らぬ間に第三者により出願・登録されてしまい、その日本企業や地方自治体が中国に進出・ビジネス展開をしようとした際に、第三者の商標権(冒認商標)が障害となるトラブルが増えています。
 インターネットの普及により、誰でも外国ブランドの情報を簡単に入手できるようになったことで、将来、中国に進出しそうな日本企業のブランドを商標出願・登録しておき、先に登録してあることを理由に、商標を高値で買い取らせようとする事例もあります。
 冒認商標を取り消すためには、多大な時間とコストがかかるため、特許庁は今回、新たに冒認商標を取り消すためにかかる費用を助成する「冒認商標無効・取消係争支援」を新設しました。

 支援の内容は、冒認商標を取り消しにかかる異議申立、無効審判請求、取消審判請求、訴訟等に要する費用、およびこれらに要する弁護士、弁理士等の代理人費用について500万円を上限に、3分の2を補助するものです。
 この支援事業は、日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じて行われます。詳しくはジェトロHPをご参照ください。
https://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas_trademark.html

●特許情報プラットフォームの改善計画を発表●

 特許検索をしようとすると、特許文献を蓄積したデータベースを使用しなければなりませんが、このデータベースには、公的機関である独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営している特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)があります。
 特許情報プラットフォームは、誰でも無料で利用できる上、ほとんどの特許検索が可能であることから、特許出願や商標出願を前に利用されている方も多いと思います。
 工業所有権情報・研修館は、特許情報プラットフォームの機能追加・改善予定を発表しました。7月末には、グローバルドシエが使えるようになり、より便利になります。特許情報プラットフォームの機能追加・改善予定の概要については、工業所有権情報・研修館HPをご参照ください。
http://www.inpit.go.jp/j-platpat_info/othersinfo/h28fytbd.html

●中小・ベンチャー企業のためのオープン・イノベーション●
〜経済産業省がハンドブックを作成

 中小・ベンチャー企業が競争力を強化するためには、社内と外部のアイデアや技術を有機的に結合させて付加価値を創造する「オープン・イノベーション」が重要といえます。
 しかし、中小・ベンチャー企業においては、大手企業や大学、研究機関との共同開発や技術提案等の過程で、知財戦略が十分ではないために、技術・ノウハウが流出したり、不利な条件での契約を交わしてしまったりと、不測の損失を被っているケースも多く見られます。
 そして、自社の技術・ノウハウを活かして付加価値を創造していくには、オープン・イノベーションの取り組みを通じて、商談時や契約時における交渉が鍵となります。
 経済産業省近畿経済産業局では、オープン・イノベーションに取り組む上での中小・ベンチャー企業ならではのポイントをまとめた小冊子「中小・ベンチャー企業のためのオープン・イノベーション ハンドブック」を作成しました。
 ハンドブックは下記からダウンロードが可能ですので、興味のある方はご覧ください。
http://www.kansai.meti.go.jp/3-3shinki/openinnovation/handbook.pdf

●平成28年度 知的財産権制度説明会(初心者向け)を開催●

 特許庁は、特許などの知的財産権に関心のある方を対象に、7月から全国47都道府県で無料説明会を開催します。
 説明会では、知的財産制度の基礎知識や「知財を経営に活かしている中小企業」の成功事例などを紹介して、ビジネスにおける知財の重要性を説明します。あわせて中小企業の知財活動をサポートする様々な支援策も紹介します。参加費は無料(特許庁作成テキストも無料)です。
  • 講義内容:知的財産権制度の概要(産業財産権関連支援策の概要等を含む)、産業財産権(特許・実用新案・意匠・商標)制度の概要、産業財産権の活用、各種支援策の紹介等
  • 開催期間:平成28年7月上旬〜9月下旬(各会場の開催日は以下URLをご覧ください。)
  • 参加費:無料(事前登録制、定員に達し次第締め切ります。)
http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/ibento2/h28_beginner.htm

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  ■イベント・セミナー情報■

7月5日 東京都中央区 銀座会議室三丁目
http://www.chosakai.or.jp/seminar/2016seminar/20160705.htm
企業経営に資する知的財産

(経済産業調査会)

7月15日 東京都豊島区 池袋サンシャインシティ
https://krs.bz/mipro/m/config-id-chizai0715f?e_261=1
「一から学ぶ商標権と、J-PlatPatでの調べ方」
(対日貿易投資交流促進協会)

7月19日 東京都豊島区 ホテルメトロポリタン
http://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-71887.html
『下町ロケット』に学ぶ中小企業の経営戦略
(東京商工会議所)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
新宿山崎ビル202
TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
E-mail:
URL: http://www.suzuki-po.net/

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最終更新日 '17/04/07