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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━

2016年9月1日号


   本号のコンテンツ

  ☆知財講座☆
 ■特許要件(前半)■

  ☆ニューストピックス☆
 ■特許異議申立て、1,000件を超える■
 ■世界技術革新力ランキング、日本16位■
 ■特許行政年次報告書2016年版を公表■

  ☆イベント・セミナー情報
 

 特許庁は、知的財産制度を取り巻く現状と方向性、国内外の動向と分析について、直近の統計情報等をもとに取りまとめた「特許行政年次報告書2016年版〜イノベーション・システムを支える知的財産〜」を公表しました。
 報告書には、特許・意匠・商標の分野別出願動向や国際的な知的財産制度の動向等が詳しく記載されており、知的財産を取り巻く状況を全体的に知ることができますので、気になる項目をチェックしてみてはいかがでしょうか。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■特許制度の概要■

(9)特許要件(前半)

 特許出願した発明について特許が認められるために要求される条件(これを「特許要件」といいます)を今回と来月の2回に分けて説明します。
 特許出願している発明についての「特許を受ける権利」を有していない者による出願は拒絶される、等、特許出願人の主体に関する要件もありますが、ここでは、知っておいた方が望ましいと思われる客体的、手続的要件の概要を紹介します。

A.特許法上の発明であること

 特許法では保護すべき対象としての発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法第2条第1項)と定義しています。
 永久機関のように自然法則に反するもの、人為的取り決めに過ぎないもの(人為的に取り決めたゲームのルールなど)、万有引力の法則のように自然法則そのものであって自然法則を利用していないもの、何物をも創作していない単なる発見、個人の熟練によって習得される「技能」や営業秘密として不正競争防止法で保護される「ノウハウ」などは、「特許法上の発明に該当しない」とされ、特許では保護されません。

B.産業上利用できる発明であること

 特許法は産業の発達を目的にしています(特許法第1条)。そこで、産業として利用できないものは特許では保護されません。
 人間を手術、治療、診断する方法は、人道上、広く開放すべきものであるとして特許では保護されません。ただし、医療用の機械器具、医薬などは産業上利用できる発明に該当して特許で保護されます。

C.新しい発明であること

 既に世の中に知られている技術内容に特許権という独占排他権が与えられることは「産業の発達」という特許法の目的に沿いません。
 特許法では「新しさ」のことを「新規性」といい、新しさを失った発明を新規性を喪失した発明、新規性が欠如している発明などと呼びます。
 秘密を守る義務を有していない人に知られてしまった発明、秘密を守る義務を有していない人が発明内容を知り得る状態で製造・販売などが行われた発明、書物に掲載されたり、インターネットなどで公表された発明が新規性を喪失した発明になります。

 新規性判断の基準時

 特許出願して審査を受けている発明が新規性を有するかどうか判断する時期的基準は「出願時」で、時・分も問題にされます。午前中に公表して新規性を失った発明を午後に出願しても、「特許出願の前に新規性を失った発明であるから新規性欠如で特許を認めることができない」とされます。
 なお、学会発表、ニュースリリース、製品販売などによって新規性を失った発明であってもその後6カ月以内に特許出願し、所定の「証明書」を提出する、等の手続を行うことで、学会発表などによって新規性喪失したことを例外扱いしてもらうことが可能です。ただし、この新規性喪失の例外は、後述する「先願主義」の例外ではなく、同じ内容の発明については一日でも先に特許出願されていたものが優先されます。学会発表などの前に特許出願を行っておくことが原則です。

 新規性判断の地域的基準

 日本国内のみならず外国で知られた発明も知られた時点で新規性を喪失します。外国でのみ発行されている外国語の書物に掲載された発明、日本では販売されておらず外国だけで販売された商品に具現化されている発明、このような発明も新規性を喪失していることになり、その後に、日本で特許出願しても新規性欠如で特許成立しません。

D.従来技術・知識から容易に発明できないこと

 特許出願で審査を受けている発明が新規性を有していると判断されると、次に、進歩性を有しているかどうか判断されます。
 日々の企業活動、生産活動、技術開発・研究活動の中で毎日のように昨日にはなかった新しい工夫が誕生しています。そのようなものに「新しいから」というだけで独占権たる特許権を付与したのでは特許権が乱立し、かえって産業発達に結びつきません。
 そこで、特許出願の時点で、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(特許法では「当業者」と呼びます)が、特許出願の時点で既に知られていた発明(すなわち、特許出願の時点で新規性を喪失している発明)に基づいて簡単・容易に考えつくことができたと認められる発明は「進歩性欠如」として特許が認められません。
 例えば、キャスター付きの椅子が知られていて、椅子を移動するのにキャスターが付いていると便利だと認識されているときに、「キャスターを付けた机」の発明を特許出願しても、新規性を喪失している発明(「机」と、椅子の移動を容易にするために椅子に付けられている「キャスター」)を寄せ集めたに過ぎないとして進歩性が否定されます。

 今回と次回で説明する特許要件の中のいずれか一つが具備されていない場合、特許は認められません。審査請求して特許庁審査官による審査を受ける特許出願の中の40%程度は「特許を認めることができない」と判断されて拒絶されます。特許庁審査官は今回と次回で説明する複数の特許要件の中のいずれの理由によってでも拒絶理由を通知できますが、審査で特許が認められないときの理由のほとんどは進歩性欠如です。
以上


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■ニューストピックス■

●特許異議申立て、1,000件を超える●

 特許庁は、特許異議の申立て件数が2015年4月の制度開始以来、累計で1,000件を越えたとして、国際特許分類(IPC)別の内訳件数とともに公表しました。
 特許異議の申立て制度の開始当初より、Cセクション(化学;冶金)の件数が最も多く、Aセクション(生活必需品)、Bセクション(処理操作;運輸)がそれに続く形となっています。
IPC別の内訳件数は以下の通り。

Aセクション(生活必需品)202件
Bセクション(処理操作;運輸)171件
Cセクション(化学;冶金)295件
Dセクション(繊維;紙)32件
Eセクション(固定構造物)22件
Fセクション(機械工学;照明;加熱;武器;爆破)44件
Gセクション(物理学)102件
Hセクション(電気)133件

 また、ファーストアクション(審判官による審理結果の最初の通知)の割合も公表されました。
 維持決定(即維持)の割合は28.8%、取消理由通知の割合が71.2%。現時点では最終処分に至った事件数が少ないということで、最終処分(決定)の割合は公表されていませんが、28.8%が異議申立を認めず、ただちに特許を維持するという決定でした。
 ファーストアクションの割合(平成28年6月30日までの審理実績に基づくもの)
  • 維持決定(即維持)   28.8%
  • 取消理由通知      71.2%

<特許異議申立て制度>

 平成15年に旧異議申立て制度が廃止された後、他人の特許を消滅させる方法は特許無効審判のみでしたが、2015年4月に新たに特許異議申立て制度が復活しました。
 特許異議申立て制度により、誰でも、特許掲載公報の発行の日から6月以内に限り、新規事項追加の補正、新規性欠如、進歩性欠如等について異議の申し立てが可能となりました。匿名での申立てはできません。
 審理は書面審理。審判長は、特許の取消決定をしようとするときは、特許権者及び参加人に対し意見書を提出する機会を与えます。
 特許権者から特許請求の範囲等の訂正の請求があったときは、特許異議申立人に対し意見書を提出する機会を与えます。
 特許無効審判については、利害関係人のみが請求できます。

 特許異議申立て制度の詳細については、特許庁HPをご参照下さい。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/igi-tebiki.htm

 特許異議申立ては、特許掲載公報発行日から6カ月と期間は限られますが、基本的に特許庁と特許権者の間で手続きが進むため、手間やコストの面において無効審判よりも有利といえます。
 今後、競合他社の権利の中で、もしも新規性又は進歩性等の公益的事由を満たしていない特許を見つけられた場合には、この制度を活用し、迅速な手続きを取られることをお勧めします。

 特許異議申立て等、権利侵害に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

●世界技術革新力、日本16位●
〜グローバル・イノベーション・インデックス〜

 WIPO(世界知的所有権機関)は、技術革新を生み出す環境が整っている国・地域をランキング化した「グローバル・イノベーション・インデックス2016」を発表しました。
 それによると、スイスが6年連続で1位を獲得しました。2位:スウェーデン、3位:英国、4位:米国。日本は16位に入り、昨年から3ランク上げました。
 アジア圏をみると、トップがシンガポールの6位、続いて韓国の11位、香港の14位という順。中国は25位となり、初めてベスト25にランクインしました。
 日本は、各国のトップクラスの大学の水準や国際特許出願、科学技術論文数などに焦点を置いて詳しく評価した「イノベーションの品質評価」部門では1位を獲得しました。順位は日本に続き、2位:米国、3位:英国、4位:ドイツとなっています。
 グローバル・イノベーション・インデックスは、WIPOと米コーネル大学などが、研究開発投資のほか国際特許出願、科学技術論文などイノベーションに関係する82項目を対象とする128カ国別に点数化して比較、その結果の順位を毎年発表しています。

●PCT出願件数が過去最高●
〜特許行政年次報告書2016年版〜

 特許庁は、「特許行政年次報告書2016年版〜イノベーション・システムを支える知的財産〜」を公表しました。
 本報告書では、知的財産制度を取り巻く現状と方向性、国内外の動向と分析について、直近の統計情報等を基に取りまとめています。

特許
 2015年度の日本における特許出願件数は318,721件でした。日本国特許庁が受理官庁として受け付けたPCT 出願件数は43,097件と過去最高となり、2015年度の世界のPCT出願件数も過去最高の216,770件を記録しました。
 審査の状況では、2013 年度末に一次審査通知までの期間を10.4カ月とし、2004年度に掲げた10年目標(平成25年度末までに一次審査通知までの期間を11カ月以内とするという目標)を達成したことが報告されています。
 特許庁は、新たな10年目標として、平成 35 年度(2023年度)までに特許の「権利化までの期間」(標準審査期間)と「一次審査通知までの期間」をそれぞれ、平均 14ケ月以内、平均 10カ月以内とするという目標を設定しています。

商標
 商標登録出願は147,283件(前年比18.4%増)と大幅に増加しました。新しいタイプの商標(音、動き、ホログラム、色彩、位置の商標)も登録の対象となったことで全体的な商標登録への関心が高まったと考えられます。
 内訳を見ると、国際商標登録出願件数は前年比 26.1%増15,984件、それ以外の商標登録出願件数は同17.5%増の131,299 件でした。
 商標登録出願1件あたりの平均区分数も前年の1.91から2.39と増加しました。

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  ■イベント・セミナー情報■

9月5日 東京都千代田区 東京都中小企業振興公社
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2016/280905china.html
中国における知的財産戦略のポイント
(東京都知的財産総合センター)

9月9日 東京港区 発明会館
http://www.jiii.or.jp/kenshu/h28/0909.pdf
知的財産権 初心者講座 〜基本的な知的財産権の理解のために〜
(発明推進協会)

9月29日 東京都港区 発明会館
http://www.jpaa.or.jp/activity/seminar_support/event/seminarcustoms20160822.pdf
模倣品取締り制度の活用セミナー
(日本弁理士会)

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最終更新日 '17/04/07