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******************************************************************** ◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇ ******************************************************************** このメルマガは当事務所とお取引きいただいている皆様、または当事務所とご面識のある皆様にお届けしています。 知的財産に関する基礎知識や最新の法改正情報など、実務上お役に立つと思われる情報をピックアップして、送らせて頂きます。 メルマガ配信をご希望でない場合は、誠に恐縮ですが、下記アドレスまでお知らせください。 suzukipo@suzuki-po.net ━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━ 2017年1月1日号
新年明けましておめでとうございます。
本年も所員一同、益々高まる知的財産の重要性に対し、皆様にご満足いただける知財サービスを提供できるよう、更なる努力を重ねて参りますので、昨年に増してご愛顧くださいますよう、心よりお願い申し上げます。
昨年は格別のご高配を賜り心より御礼申し上げます。 ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┓ ┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃ ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■特許制度の概要■ (13)特殊な出願(2)=分割出願= 前回は、通常の特許出願の他に行われることがある特殊な特許出願の一つとして優先権主張出願(特許法第41条)を紹介しました。今回は、分割出願(特許法第44条)について紹介します。 A.「出願の単一性」(特許法第37条) 分割出願について説明する前に、一件の特許出願に含めることのできる発明の数・範囲について説明します。 特許請求の範囲には特許権の取得を求める複数の発明を記載することが許されています。 複数の発明が技術的になんらかの関係を有している場合に、一発明ごとに一件ずつ特許出願を行って審査を受けなければならないとするのは手続の面でも、費用の面でも特許出願人に負担です。 一方、制限を設けることなしにたくさんの発明を一の特許出願の中に含め、一の特許出願で審査を受けて特許権成立させることが可能であるとすると、審査を行う特許庁の負担が過大になり、所定の関係を有する発明ごとに一件の特許出願を行って審査を受けている特許出願人との間で公平性が損なわれます。 そこで、特許法では、特許請求の範囲で特許請求している複数の発明に所定の共通する関係が存在している、等の条件が満たされている場合に、複数の発明を一件の特許出願に含め、一件の特許出願で審査を受けることを認めています(特許法第37条=出願の単一性)。 B.特許出願の分割が認められる理由 「出願の単一性」違反の拒絶理由解消策 特許法第37条に規定されている「出願の単一性」の要件を満たさない特許出願の場合、特許庁での審査において拒絶理由(特許法第49条第4号)を受けます。 「出願の単一性」違反の拒絶理由を受けた場合、特許請求の範囲に記載されている発明(請求項)を削除する補正を行って拒絶理由解消できます。その際、同時に、削除した発明(請求項)について、上述した拒絶理由を受けた、もとの特許出願から分割する新たな特許出願を行うことができます。 「二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とする」分割出願(特許法第44条)は、このように、「出願の単一性」違反の拒絶理由を解消する対応の一つとして採用できます。 C.分割出願の効果=出願日の遡及 審査を受けている特許出願から分割した「新たな特許出願」は、もとの特許出願の時にしたものとみなすという効果=遡及効を受けることができます(特許法第44条第2項)。 例えば、平成26年(2014年)10月31日に行われた特許出願Xの明細書、図面の中にA、Bという2つの発明が含まれていて、これが特許請求の範囲に請求項1(発明A)、請求項2(発明B)として記載されていました。 平成28年(2016年)1月4日に審査請求したところ、平成28年(2016年)12月6日発送の拒絶理由通知書で、発明Aと、発明Bとは特許法第37条(出願の単一性)の要件を満たさない、という指摘を受けたとします。 この場合、拒絶理由を解消する対応策の一つが特許出願の分割(特許法第44条)になります。 拒絶理由通知書で指定された期間(=拒絶理由通知書発送日から60日)の平成28年(2016年)12月26日に特許出願Xからの分割出願である、新しい特許出願Yを行い、特許出願Yで発明Bを特許請求し、もとの特許出願である特許出願Xでは発明Aのみを特許請求するように補正することで、もとの特許出願である特許出願Xに対する上述した特許法第37条(出願の単一性)違反の拒絶理由を解消できます。 そして、「新たな特許出願」は、もとの特許出願の時にしたものとみなされる(特許法第44条第2項)ことから、特許出願Xからの分割出願である新しい特許出願Yで特許請求する発明Bについての審査で、新規性(特許法第29条第1項)、進歩性(特許法第29条第2項)、先後願(特許法第39条)などの特許要件については、特許出願Yは、もとの特許出願である特許出願Xの出願日=平成26年(2014年)10月31日を基準にして審査を受けることができます。 D.分割出願を行うことができる時期 分割出願は以下の時期・期間に行うことができます。 (1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内 分割もある意味では補正であって、補正と同様の効果を持ち得ることから、補正をすることができる時又は期間内に特許出願の分割が認められています。 (2)特許査定の謄本の送達があつた日から30日以内 実効的な権利取得の支援及び手続の無駄の解消の観点から認められています。ただし、 (ア)拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書等の補正があったものについて審査官が審査し(前置審査)、特許査定がされた場合、(イ)拒絶査定不服審判で審決により審査に差し戻されて、特許査定がされた場合は除外されています。 (3)拒絶査定の謄本の送達が最初にあつた日から三月以内 実効的な権利取得の支援及び手続の無駄の解消の観点から認められています。ただし、「最初」なので、拒絶査定のうち、拒絶査定不服審判で審決により審査に差し戻されて、再び拒絶査定がされた場合は除かれています。 E.その他の分割出願の活用方法 「出願の単一性」違反の拒絶理由を解消する目的で行う対応策の一つに特許出願の分割がありますが、「出願の単一性」の要件を満たしている特許出願であっても、特許出願の分割を活用できます。これには次のようなものがあります。 その他の分割出願の活用方法(1) 拒絶理由のない発明について早期に特許成立させ、特許性について争う発明について分割出願して慎重に審査を受ける。 前記の場合で、拒絶理由が、請求項1に係る発明Aについては「進歩性欠如」(特許法第29条第2項)で、請求項2に係る発明Bについては「現時点では拒絶の理由を発見できない」というものであったとします。 このようなときに、請求項1に係る発明Aについての「進歩性欠如」という拒絶理由には承服しがたいが、請求項2に係る発明Bについて特許取得できるならば一日でも早く特許権成立させたい、と考えることがあります。 この場合には、拒絶理由に対応する際に、特許請求する発明を発明Bだけにする補正を行って早急に「特許査定」を受けるようにし、発明Aについて分割出願を行って審査を受け、「進歩性欠如」という拒絶理由を再度受けて、今度は、慎重に反論を行って、時間をかけて、拒絶理由の解消・特許権取得を目指す対応を採ることが可能です。 その他の分割出願の活用方法(2) 特許出願の分割は、分割できる時期・期間に行うのであれば、何回でも行うことができます。例えば、明細書、図面に実施例1〜6を記載しておき、実施例1、2に係る発明について審査を受けている途中で実施例3、4に係る発明を分割して審査受け、更にその途中で、実施例5、6に係る発明を分割して審査受けることができます。この場合、どの分割出願においても、出願日は最も先の特許出願日に遡及するという効果を得ることができます。 特許出願時の明細書・図面に多数の実施例を記載しておいたところ、特許出願後に実施を開始した同業他社の行為を、特許請求はしていなかった実施例の発明に特許権成立させることで排除可能になることがあります。このような場合に分割出願を活用することができます。 特許出願の戦略的な活用方法といえます。 F.分割出願を行う場合の注意 一の特許出願で特許請求し、審査を受けることのできる発明の数・範囲に関する特許法第37条の規定の理解には専門性を要する部分があります。 また、上述したように、分割出願を行うことのできる時期・期間には制限があります。 更に、出願審査請求については、出願日の遡及効が得られることから分割出願を行った時点では既に出願日から3年を経過していることがあり、その場合には、分割出願日から30日以内に審査請求を行う必要があります(特許法第48条の3第2項)。 そこで、分割出願を行う場合には、制度を熟知している弁理士、等の専門家に相談することをお勧めします。 以上
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ニューストピックス■ ■商品・役務の別表が改正(1月1日以降の出願に適用)■ 商標の商品・役務の区分を規定する商標法施行規則の別表が改正されました。改正された別表は平成29年1月1日以降の商標登録出願に適用されます。 また、これに伴い、類似商品・役務審査基準が改訂されました。 商品・役務の別表の改正についてはこちらをご覧下さい。 https://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/shohyo_281212.htm 類似商品・役務審査基準の改訂についてはこちらをご覧下さい。 http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/ruiji_kijun11-2017.htm ■PCT出願の手数料が改訂■ 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手数料が2017年1月1日から改訂されました。 1月以降に国際出願関係手数料の納付をする場合は、各種手数料の額及び適用関係に注意してください。 詳しくは下記リンク先をご覧下さい。 http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/pct_tesuukaitei.htm ■「中小企業等特許情報分析活用支援事業」の公募 (先行技術調査支援の公募が締め切り間近) 特許庁は、中小企業等にとって技術的専門性が高く、費用負担が大きい先行技術文献等の特許情報分析支援について、「研究開発」、「出願」及び「審査請求」の各段階のニーズに応じた包括的な支援を行っています。 このうち、審査請求前の先行技術調査の費用を補助する「審査請求段階」については、平成28年度末で応募が締め切られます。権利化される見込みのない発明に係る無駄な審査請求を回避するため、公開特許文献等を対象とした特許情報分析を実施するもので、今年度から大学や公設試験研究所も利用可能になりました。 詳細・応募方法については、以下のHPをご覧下さい。 (特許庁HP)https://www.jpo.go.jp/sesaku/chusho/bunseki.htm (本事業の特設サイト)http://ip-bunseki.go.jp/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1月10・23・26日 中野サンプラザ http://www.jiii.or.jp/h28_jitsumusya/index.html 平成28年度知的財産権制度説明会 (特許庁) 1月27日 東京都知的財産総合センター https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2016/290127gijyutsuhogo.html 技術流出防止セミナー (東京都知的財産総合センター) 1月31日 東京国際フォーラム https://www.jipa.or.jp/form/16sympo.html JIPA知財シンポ「激動のビジネス革新!第4次産業革命と知財」 (日本知的財産協会) ******************************************************** 発行元 : 鈴木正次特許事務所 〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5 新宿山崎ビル202 TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340 E-mail: URL: http://www.suzuki-po.net/ ******************************************************** 本メールの無断転載はご遠慮下さい。 本メールマガジンの記載内容については正確を期しておりますが、弊所は、利用される方がこれらの情報を用いて行う一切の行為について責任を負うものではありません。 |