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******************************************************************** ◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇ ******************************************************************** このメルマガは当事務所とお取引きいただいている皆様、または当事務所とご面識のある皆様にお届けしています。 知的財産に関する基礎知識や最新の法改正情報など、実務上お役に立つと思われる情報をピックアップして、送らせて頂きます。 メルマガ配信をご希望でない場合は、誠に恐縮ですが、下記アドレスまでお知らせください。 suzukipo@suzuki-po.net ━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━ 2017年2月1日号
近年、重要な秘密情報が第三者へ漏洩する技術流出が問題となっており、大企業に限らず中小企業においても大きな経営リスクとなっています。 このような背景を踏まえ、経済産業省は、秘密情報の漏えいを未然に防止するため、様々な対策例を紹介した「秘密情報の保護ハンドブックのてびき;情報管理も企業力」を策定し、公表しました。 今号では、その概要について取り上げていますので、チェックしてみてください。 ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┓ ┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃ ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■特許制度の概要■ (14)特殊な出願(3)=出願の変更= 特殊な特許出願として、優先権主張出願(特許法第41条)、分割出願(特許法第44条)をこれまで紹介しました。特殊な特許出願の最後に出願の変更について紹介します。 A.出願の変更 出願の変更とは、保護を求める客体の同一性を維持したまま、出願の形式を変更するものです。 実用新案登録出願や意匠登録出願から特許出願へ変更することや、実用新案登録に基づく特許出願を行うことができます(特許法第46条、第46条の2)。 また、特許出願あるいは意匠登録出願から実用新案登録出願へ変更すること(実用新案法第10条)、特許出願あるいは実用新案登録出願から意匠登録出願へ変更することができます(意匠法第13条)。 いずれの場合であっても、所定の条件を満たしていれば、新しい出願は、もとの出願の時にされていたものとみなされて取り扱われます。この取り扱いは前回説明した分割出願(特許法第44条)とじです。 ただし、いずれの場合であっても、もとの出願は取り下げたものとみなされる、あるいはもとになっている実用新案登録を放棄しなければならない、等になります。また、変更できる時期などに制限があります。出願の変更、等を行われる際には、事前に、弁理士、等の専門家に相談することをお勧めします。 B.実用新案登録出願から特許出願への変更 実用新案は、新規性、進歩性、等の実体的登録要件についての審査を受けることなく、特許庁への出願が行われた時に、原則として、登録する無審査登録制度になっています(実用新案法第14条第2項)。 無審査で登録になることから方式的要件、等の所定の条件を満たしている出願であれば、出願後2カ月程度で登録になり、実用新案権が成立します。 このように出願後早期に権利成立しますが、実用新案登録無効審判の請求を受けて新規性、進歩性、等の実体的登録要件についての判断が特許庁で行われ、登録が無効にされた場合であって、実用新案権に基づく権利行使で損害を与えていたときには、実用新案権者は、原則として、その損害を賠償しなければなりません(無過失賠償責任)(実用新案法第29条の3)。 特許出願・特許権にはこのような無過失賠償責任の規定はありません。また、早期審査を請求することで出願後の早い段階に特許権成立させることが可能です。 このため、現状では、特許出願が年間32万件程度特許庁に提出されるのに対して、実用新案登録出願は年間7000件程度しかありません。 しかし、無審査登録の実用新案権でよいと考えて実用新案登録出願した場合であっても、その後、特許庁の実体的審査を受けて権利成立させる特許での保護を希望することがあります。 実用新案法の保護対象である考案は「物品の形状、構造又は組み合わせに係るもの」に限定されていますが、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である点で特許法の保護対象である「発明」と共通しています。そこで、このような場合に、実用新案登録出願から特許出願への変更を利用できます。 ただし、特許出願の場合、出願日から3年以内が審査請求できる期限になりますので、実用新案登録出願の日から3年以内に限って特許出願に変更できるとされています。 無審査登録の実用新案では出願後2カ月程度で登録になりますので特許出願への変更を行うことができる期間は長くありません。登録後は次に説明する実用新案登録に基づく特許出願を利用できます。 C.実用新案登録に基づく特許出願 実用新案権が設定登録された後に技術動向の変化や事業計画の変更に伴い審査を経た安定性の高い特許権を取得したい場合があります。また、実用新案権の権利存続期間は出願日から10年を越えませんが、権利についてより長期の存続期間を確保したい場合があります(特許権の権利存続期間は、原則として、出願日から20年を越えないです)。このようなときに利用できるものです。 なお、実用新案登録出願から特許出願への出願変更と同じく、特許出願で審査請求できる期限を考慮して、実用新案登録出願の日から3年を経過した後は実用新案登録に基づく特許出願を行うことができません。 実用新案は無審査登録制度になったことに伴い、新規性、進歩性、等の所定の登録要件に関する権利の有効性についての評価である「実用新案技術評価書」を特許庁の審査官に対して作成請求できるようになっています。 「実用新案技術評価書」が作成された後に特許出願が行われて審査を受けるようになると特許庁の審査負担が二重になることから、「実用新案技術評価書」の作成請求がされた場合などには実用新案登録に基づく特許出願を行えないことになっています。 また、実用新案登録無効審判が請求され、最初に指定された答弁書提出期間が経過した後は、その実用新案登録に基づく特許出願を行うことができません。同一の技術内容についての二重の審理を避けるためです。 D.意匠登録出願から特許出願への変更 意匠は視覚を通じて美感を起こさせる物品の外観を保護するものです。この点で「自然法則を利用した技術的思想の創作」を保護する特許とは相違しています。 しかし、意匠登録出願の際に提出している「意匠に係る物品」の外観を表す六面図(平面、底面、正面、背面、右側面、左側面から視認できる図)あるは六方向からの写真で表される物品の形状、模様、これらの結合などや、前記の図面などと一緒に提出した「意匠に係る物品の説明」等によって、「自然法則を利用した技術的思想の創作」を把握できるならば、それを特許で保護すべく特許出願へ変更することがあり得ます。 視覚的に外観を把握できるタイヤのトラッドパターンが、当該特有のトラッドパターンゆえに滑り止めとしての効果を発揮できる場合などに、意匠登録出願と特許出願との間での出願形式の変更があり得るとされています。 なお、特許出願で審査請求できる期限を考慮して、意匠登録出願の日から3年を経過した後は特許出願へ変更できません。ただし、最初の拒絶の査定の謄本の送達があった日から3カ月以内であれば出願変更が認められます。最初の拒絶査定の謄本送達の時点で出願日から3年を経過していた場合には、変更出願後30日以内に審査請求できることになっています。 E.特許出願から実用新案登録出願への変更 最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から3カ月以内または特許出願の日から9年6カ月以内であれば実用新案登録出願へ変更できます。 特許出願の日から9年6カ月以内に限られているのは、実用新案権の権利存続期間が出願日から10年を越えないとされていることと、変更出願手続後の登録までに要する期間を考慮したものです。 なお、「方法」発明、「製造方法」発明や、「○○材」、「○○剤」などに関する発明は「物品の形状、構造又は組み合わせ」に係るものではありませんので、実用新案登録出願へ出願変更することはできません。 F.特許出願から意匠登録出願への変更 最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から3カ月以内であれば意匠登録出願へ変更できます。 意匠登録出願にあたっては「意匠に係る物品」の外観を表す六面図あるは、六方向からの写真、等を提出する必要があります。 これらの情報が特許出願の時点から図面、等に記載されている例は多くないと思われます。そこで、特許出願から意匠登録出願への変更が行われることはあまり多くありません。 以上
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ニューストピックス■ ■「秘密情報の保護ハンドブックのてびき」を公表■ 経済産業省は、秘密情報の漏えいを未然に防ぎたいと考える企業が、実際に対策を行う際に参考にしてもらうため、具体的な事例に応じた対策例を紹介する「秘密情報の保護ハンドブックのてびき;情報管理も企業力」を策定し、公表しました。 企業が秘密情報を決定する際の考え方、具体的な漏えい防止対策、取引先などの秘密情報の侵害防止策、万が一情報の漏えいが起こってしまった時の対応方法などが紹介されています。 不正競争防止法など法律面だけでなく、企業内の実務面についても詳細に記載されていますので、営業秘密マネジメントにかかわる実務対応をこの機会に今一度見直し、実践しましょう。 ハンドブックのてびきは、経済産業省のHPからご覧頂けます。 営業秘密〜営業秘密を守り活用する〜 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html ■日中韓における先使用権制度の比較表を公表■ 特許庁は、日中韓3か国の先使用権制度の比較表を公表しました。 営業秘密として技術を秘匿した場合、実施を確保するためには先使用権の証拠確保が必要になりますので、海外でビジネス展開をされている企業においては、各国の制度概要や成立要件等を知っておく必要があります。 日中韓の比較表(英語と和文仮訳)では、分かりやすく制度、成立要件、効力に分けて比較していますので、ご参考になさってください。 日中韓の先使用制度の比較表 http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai3/nicchukan_senshiyou_hikaku. htm ■後発抗がん剤の特許侵害認めず(知財高裁)■ 〜延長特許の効力の範囲の基準示す〜 スイスの製薬会社「デビオファーム社」が、日本の後発医薬品メーカー「東和薬品」に抗がん剤の特許を侵害されたとして、後発品の製造販売の差し止めを求めた訴訟の控訴審判決で、知財高裁大合議部は、特許侵害を認めず、請求を棄却した1審・東京地裁判決を支持し、デビオ社の控訴を棄却する判決を言い渡しました。 医薬品は、製造販売の承認手続きに時間がかかるため、特許の保護期間(20年)を最大で5年間延長できますが、延長された期間における特許の効力が及ぶ範囲は承認を受けた物を、承認を受けた特定の用途について実施する場合のみに狭められるため、訴訟では延長期間中に保護される範囲が争点となりました。 デビオ社は、大腸がんなどに用いる点滴薬「オキサリプラチン」を1995年に国内で特許出願し、提携先のヤクルトが2005年に製造販売を開始。その後、東和薬品などが国の承認を受け、後発薬を製造・販売しましたが、デビオ社は延長された期間中、東和薬品が発売した製品が特許を侵害しているとして提訴しました。 医薬品の延長後の効力については、用法や用量など国の承認を受けた範囲に限られると規定されています。判決では、@周知の技術で有効成分以外の成分を付加した、A成分や分量、用法などにわずかな差異や形式的な差異しかない―などは、「実質的に同一なもの」に当たるとし、権利が及ぶ範囲を具体的に示したうえで、技術的特徴や作用効果の違いなどから判断すべきだとしました。 判決では、東和薬品の後発医薬品には先発品にはない安定剤を添加物として加えていることを重視し、「実質的に同じ物ではない」として、特許侵害には当たらないと結論づけました。 ■フィンテック分野の有力2社、クラウド会計で特許訴訟に■ クラウド会計ソフトを提供するfreee(フリー)は、自社の勘定科目の自動仕訳に関して保有する特許を侵害しているとして、同じくクラウド会計ソフトを提供するマネーフォワードに対し、特許権侵害を理由とした差止請求訴訟を東京地方裁判所に提起しました。 フリーのクラウド会計ソフトは、クレジットカードの利用明細書や銀行などの金融機関から情報を取り込み、それに記述されている文字列を使って自動仕分けするもので、勘定科目の自動仕訳に関する特許第5503795号が2014年3月に登録されました。 マネーフォワードの「MFクラウド会計」は、機械学習を活用した自動仕分機能を搭載しており、これがフリーの特許を侵害しているとして訴訟提起されました。マネーフォワードは、「特許侵害の事実は一切ない」とコメント。裁判手続きの中で、同社の見解の正当性を主張していくとしています。 クラウド会計ソフトは、金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」分野の中でも有力な市場。「フィンテック(Fintech)」とは、金融を意味する「ファイナンス(Finance)」と、技術を意味する「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語で、現在、世界で市場規模が拡大しています。急成長しているクラウド会計ソフト市場をリードしてきた有力2社による特許訴訟は業界で波紋を広げています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2月13・14日 東京ドームホテル http://www.ip-forum2017.com/ グローバル知財戦略フォーラム2017 (特許庁) 2月23日 TKP赤坂駅カンファレンスセンター https://www.jetro.go.jp/events/iia/a3051c1391e33c68.html 海外進出向け知財産セミナー (日本貿易振興会) 2月23日 ニッショーホール http://www.seminar-reg.jp/isyou/2017/index.html 意匠制度の改正に関する説明会 (特許庁) ******************************************************** 発行元 : 鈴木正次特許事務所 〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5 新宿山崎ビル202 TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340 E-mail: URL: http://www.suzuki-po.net/ ******************************************************** 本メールの無断転載はご遠慮下さい。 本メールマガジンの記載内容については正確を期しておりますが、弊所は、利用される方がこれらの情報を用いて行う一切の行為について責任を負うものではありません。 |