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特許庁は、中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成する事業(中小企業等外国出願支援事業)を行っていますが、平成29年度の同事業の公募が開始されました。 外国で特許権などを取得するには、翻訳費用や現地代理人費用などが発生し、中小企業にとっては大きな負担となりますので、外国でのビジネスを展開する場合は、同制度の利用を検討してみましょう。 今号では、中小企業等外国出願支援事業の概要について紹介します。 ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┓ ┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃ ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■中小企業の知財戦略■ (2)特許取得が中小企業の経営に果たす役割 前号では、中小企業にとっての特許出願・特許取得の意義は、大企業におけるものより重要で、大きいことなどを紹介しました。本号では特許権の取得などが中小企業の経営に果たしている役割・意義を紹介します。 「中小企業における知的財産の保護・活用」に関する詳細な分析が行われているのは、少し古い資料になりますが、平成21年4月24日に中小企業庁から発行された「中小企業白書2009」です。今回はここでの分析を紹介します。 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h21/h21_1/h21_pdf_mokuji.html 1.ヒット商品の誕生と特許取得との関係 下記の「第2−3−20図」は、特許取得の有無と、過去10年以内に企画・開発に着手した案件の中で会社の収益に大きく貢献したヒット商品(新技術・新商品・新サービス)の有無を中小企業に問い合わせたものです。 特許取得があって現在も特許取得している企業では62.7%が、過去には特許取得していたが現在は特許取得がない企業でも53.6%がヒット商品ありと回答していました。 逆に、特許出願しているかどうかがわからない企業では、ヒット商品ありとの回答は33.4%でした。
第2−3−20図
「中小企業白書2009」中小企業庁発行平成21年4月24日
2.中小企業における特許取得の効果 下記の「第2−3−22図」は、上記で「ヒット商品が生まれた」と回答し、なおかつ、「ヒット商品に知的財産権を取得した」と回答した企業についてのみ調査したもので、企業の従業員規模別に回答結果が表されています。 これによりますと、規模が小さい企業ほど「信用力を得ることができ」、「新規顧客の開拓につながった」と回答した割合が高くなっています。
第2−3−22図
「中小企業白書2009」中小企業庁発行平成21年4月24日
下記の「第2−3−23図」は、上記で「ヒット商品が生まれた」と回答し、なおかつ、「ヒット商品に特許権を取得した」と回答した企業についてのみ調査したもので、特許権の取得とその後の業績向上との関係、特許を取得した時期を問い合わせたものです。 特許取得の時期にかかわらず、多くの企業が業績向上に「大いにつながった」、「ややつながった」と回答しており、特に、開発初期の段階である「開発に要した期間中」に特許取得した企業では、業績向上に「大いにつながった」と回答する割合が4割を越え、「ややつながった」と回答した企業も合わせると9割近い企業が業績向上につながったと回答しています。
第2−3−23図
「中小企業白書2009」中小企業庁発行平成21年4月24日
以上のように、「製造業その他:資本金3億円以下または従業員300人以下、サービス業:資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売業:資本金5,000万円以下または従業員50人以下」の中小企業(中小企業基本法による定義)において、特許権の取得は、ヒット商品の誕生、企業業績の向上、信用力の獲得、新規顧客の開拓など関係しています。 次回は、特許出願を行う発明の発掘、特許出願での保護と、出願を行わないノウハウでの保護について説明する予定です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ニューストピックス■ ●外国出願にかかる費用の半額を補助● 平成29年度中小企業等外国出願支援事業の概要 特許庁は、中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用(外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用等)の半額を助成する「中小企業等外国出願支援事業」を行っています。 同事業は、優れた特許、意匠、商標を有し、かつそれらを海外において戦略的に活用しようとする中小企業者に対し、外国特許出願等に要する経費の一部を助成することによって、中小企業の国際競争力の向上や経営基盤の強化を図ることを目的としています。 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)と各都道府県等中小企業支援センター等が窓口となり、全国の中小企業が支援を受けることができます。 地域団体商標の外国出願については商工会議所、商工会、NPO法人等も応募できます。また、意匠においては、「ハーグ協定に基づく意匠の国際出願」も支援対象です。 【補助率・上限額】 ◎補助率:1 /2 ◎上限額: 1企業に対する上限額:300万円 複数案件の場合 案件ごとの上限額:特許150万円 実用新案・意匠・商標60万円 冒認対策商標(第三者による抜け駆け出願の対策を目的とした商標出願):30万円 【補助対象経費】 外国特許庁への出願料、外国出願に要する代理人費用(現地・国内)、翻訳費用など ジェトロの応募受付期間は、7月3日から8月4日です。 詳細は特許庁HPをご参照ください。 http://www.jpo.go.jp/sesaku/shien_gaikokusyutugan.htm 公益財団法人東京都中小企業振興公社(東京都知的財産総合センター)による外国特許出願費用の助成は、公募期間が6月16日締め切り(第一回)及び、6月19日〜12月15日(第二回)です。 http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/ 各都道府県の中小企業支援センター等ごとに募集期間などに相違があります。各都道府県の担当部門へお問い合わせください。 ●「知的財産推進計画2017」を決定● 政府の知的財産戦略本部は、知的財産を保護、活用するための年次計画「知的財産推進計画2017」を決定しました。知的財産をIoTで活用する施策に重点を置いています。6月にまとめる政府の成長戦略に反映させる方針です。 ビッグデータや人工知能(AI)などの技術を産業の競争力強化につなげるため、データを利用する際の契約ガイドラインの策定などを盛り込みました。 データ利用のガイドラインでは、企業間の力関係によって不当なデータ利用契約を結ばされ、大企業などに偏った利益分配にならないよう、公平な契約とすることを当事者に求めています。 企業が持つデータをより有効に活用するため、不正に取得されたデータが第三者に流出した場合などに、利用を差し止めることができるようにするなど、データ保護に向けた不正競争防止法の改正を進めることも明記しました。 また、農業分野では、AIを用いて未経験者でも熟練者のノウハウを学べる「スマート農業」のほか、農産品の品種登録や生産地の地理的表示(GI)も推進していくことを盛り込みました。 「知的財産推進計画2017」の詳細は、知的財産戦略本部HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ ●ビジネス関連発明の最近の動向● 特許庁は、最近のビジネス関連発明の出願・審査請求動向などをまとめた「ビジネス関連発明の最近の動向」を公表しました。 ビジネス関連発明とは、ビジネス方法がICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を利用して実現された発明です。近年、IoTやAI等の新たな技術が進展する中、ビジネス関連発明の活用に注目が集まっています。 ビジネス関連発明の出願件数は、インターネットの普及などに伴い、日本においては2000年に急増し、19,231件(前年比4.8倍)となりましたが、2000年をピークに出願件数は減少し続けてきました。 しかし、2011年からは出願件数が増加傾向に転じ、2015年は約7,111件(暫定値)となっています。これは、IoTやAIの進展による第4次産業革命において、再びビジネスモデル特許が注目され始めた可能性を示唆しています。 ●技術分野別出願動向 ビジネス関連発明の出願のうち、「ビジネス関連発明自体を主要な特徴とする出願」の出願件数は、いずれの技術分野も2000年をピークに減少傾向にありましたが、2011年以降はサービス業、電子商取引、支払い・決済分野において増加傾向に転じています。 ●特許査定率 ビジネス関連発明自体を主要な特徴とする出願の特許査定率は、2000年になされた出願では10%を切っていましたが、徐々に上昇し、2012年になされた出願では69%(全分野の平均は74%)まで上昇しています。 特許査定率の上昇に伴い、特許査定件数も上昇しています。特許庁は、この分野の審査が進むにつれ、コンピュータソフトウエア関連発明に関する審査基準、特にビジネス関連発明における審査基準が出願人に浸透し、出願人側で出願の厳選や適切な補正等の対応が進んできたことによるものとみています。 ビジネス関連発明の最近の動向の詳細は特許庁HP https://www.jpo.go.jp/seido/bijinesu/biz_pat.htm#anchor2-1 ●IoT関連技術の特許分類を細分化 特許庁は、IoT関連技術について、広域ファセット分類記号「ZIT」を12の用途別に細分化した特許分類を発表しました。 これに伴い、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)でこれらの特許分類を用いて検索することにより、IoT関連技術に関する特許情報を用途別に収集することが可能となりました。 広域ファセット分類記号とは、各分野にまたがり横断的な観点から文献収集(検索)を可能とするもので、超電導技術(ZAA)、環境保護技術(ZAB)、電子商取引(ZEC)などがあります。 特許情報プラットフォーム上部の「特許・実用新案」から、「3.特許・実用新案分類検索」を選択し、「検索式(必須)」欄に広域ファセット分類記号を記入し、検索を行うことで、各分類が付与されている用途別のIoT関連技術を抽出できようになりました。 詳細は特許庁HP https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/iot_bunrui_saibunka.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
6月7日 金融財務研究会本社 http://www.kinyu.co.jp/cgi/seminar/291067.html 職務発明規程の改訂による一括払い方式の導入と遡及適用の実務 (経営調査研究会) 6月26日 東京都中小企業振興公社 http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2017/290626teiansho.html 発明提案書のまとめ方セミナー (東京都知的財産総合センター) ******************************************************** 発行元 : 鈴木正次特許事務所 〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5 新宿山崎ビル202 TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340 E-mail: URL: http://www.suzuki-po.net/ ******************************************************** 本メールの無断転載はご遠慮下さい。 本メールマガジンの記載内容については正確を期しておりますが、弊所は、利用される方がこれらの情報を用いて行う一切の行為について責任を負うものではありません。 |