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中小企業の約7割が営業秘密の管理規定を整備していないことが、工業所有権情報・研修館(INPIT)のヒアリング調査で明らかになりました。同規定を設けてないと、技術や製造ノウハウが意図せず流出しても不正競争防止法などで保護されません。 秘密管理は企業の規模を問わず、重要な経営課題です。意図しない技術流失を防ぐためにも、まずは自社の営業秘密の整理整頓からはじめ、管理体制を見直してみてはいかがでしょうか。 ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┓ ┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃ ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■中小企業の知財戦略■ (8)特許出願などに対する助成制度 会社内で発掘・創作した発明について、特許出願で保護を目指す場合あるいは、特許出願を行わずに「営業秘密」で保護を目指す場合について2回にわたって説明しました。 特許出願を行わずに「営業秘密」で保護を図ろうとする場合には、そもそも保護を受け得る「営業秘密」足り得るのかというところから立証する必要があります。この点で、国(特許庁)が審査を行って付与される独占排他権たる特許権で保護を受ける方が安全で、効果的です。 しかし、出願料、審査請求料、等、特許出願から特許権取得までの費用のトータルは決して安いものではありません。 特許庁は、特許出願・特許取得が企業の収益確保の重要な手段になっていることに鑑み、すべての中小企業を対象にして、特許の審査や維持に要する料金を現状の半分程度にする法律改正を2019年度をめどに実施する考えを示しています。審査請求料(基本料:118,000円+請求項の数×4,000円)と、毎年の特許権を維持するための特許料の1〜9年目までをトータルすると現状では40万円程度を要するところを半分程度に抑え、また、このような軽減の適用を受けるための手続も簡素化するとされています(特許庁 第23回特許制度小委員会 平成29年11月27日)。 そこで、今回は、国や地方公共団体などが行っている特許出願などに対する費用助成のいくつかを紹介します。 なお、各団体などによって仕組みが相違しています。また、平成29年度の助成事業はすでに終了していて、次回は、平成30年度の助成事業になるところが多くあります。詳しくは、下記でご紹介するところで確認するようにしてください。 また、下記には紹介されていなくても、各企業が所在している地域の地方自治体などで特許出願などに対する独自の助成制度が設けられていることがあります。必要があれば各地方自治体の窓口にお問い合わせください。 ■外国出願に要する費用の半額補助■ (平成29年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)) 特許庁では、中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成しています。 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)と各都道府県等中小企業支援センター等が窓口となり、全国の中小企業が支援を受けることができます。地域団体商標の外国出願については商工会議所、商工会、NPO法人等も応募できます。また、意匠においては、「ハーグ協定に基づく意匠の国際出願」も支援対象です。 下記の特許庁HPに全国各地域の実施機関である、例えば、千葉県産業振興センター、千葉市産業振興財団、埼玉県産業振興公社、神奈川県産業振興センター、横浜市企業経営支援財団、川崎産業振興財団、あいち産業振興機構、京都産業21、京都高度技術研究所、大阪府産業振興機構、福岡県中小企業振興センター、等のリンクが貼られていますのでご参照ください。 https://www.jpo.go.jp/sesaku/shien_gaikokusyutugan.htm 上述した特許庁のHPではリンクが貼られていませんが東京都では、東京都中小企業振興公社 東京都知的財産総合センターが同様の外国出願に要する費用の半額補助を行っています。 http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/ 前記は各企業が所在している地域の公的機関を介した助成になりますが、(独)日本貿易振興機構(JETRO)も、日本全国の中小企業を対象として、同様の外国出願に要する費用の半額補助を行っています。 https://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas_appli.html ■日本国特許出願への助成、等■ (中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした審査請求料・特許料の軽減措置) 産業競争力強化法に基づく特許料等の軽減措置により、国内出願を行う場合には「審査請求料」と「特許料」、国際出願(日本語でされたものに限る)を行う場合には「調査手数料・送付手数料・予備審査手数料」の軽減措置が受けられます。 この軽減措置は平成26年4月から平成30年3月までに特許の審査請求又は国際出願を行う場合が対象になります。 なお、特許料の軽減に関しては、平成26年4月から平成30年3月までに特許の審査請求を行った案件が対象になります。 http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen.htm http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/sokushinkouhu.htm ■その他の費用助成■ 各地方自治体で独自に費用助成を行っているところがあります。例えば、東京23区内のいくつかの区や、神奈川県町田市、愛知県豊橋市で次のようなものがあります。 足立区 足立区役所 中小企業支援課創業支援係 http://www.city.adachi.tokyo.jp/chusho/shigoto/chushokigyo/25chitekizaisan-josei.html 中小企業基本法第2条に規定する中小企業に対し、知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)取得の認定を証する書面、等を提出する申請を受けて、出願料、登録料、審査請求料、弁理士等費用、等の助成対象経費の半額で上限30万円を助成。 荒川区 荒川区役所経営支援課経営支援係 http://www.city.arakawa.tokyo.jp/sangyo/shien/kakushuhojyokin/tizai.html 産業財産権取得経費を助成。 板橋区 公益財団法人板橋区産業振興公社/中小企業サポートセンター http://itabashi-kohsha.com/assist/intellectual-property 特許権、実用新案権、商標権、意匠権を取得するための経費の一部を助成。 江戸川区 江戸川区役所 生活振興部産業振興課計画係 http://www.city.edogawa.tokyo.jp/san_jigyosya/sangyo_jigyosya/jyosei/chitekizaisan.html 中小企業基本法第2条に規定する中小企業者に対し、特許権の出願、等の助成対象経費の2分の1以内で助成限度額20万円。 葛飾区 葛飾区役所 商工振興課 工業振興係 http://www.city.katsushika.lg.jp/tourism/1000066/1004930/1004944/1004959.html 区内中小企業が知的所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権に限る。)の取得に必要な出願等の一部経費を補助。 北区 北区役所地域振興部産業振興課商工係 http://www.city.kita.tokyo.jp/sangyoshinko/sangyo/chushokigyo/monozukuri/josekin/tizai.html 「知的財産」を新規に取得するために要する費用の一部を補助。 江東区 江東区役所 地域振興部 経済課 産業振興係 http://www.city.koto.lg.jp/102020/sangyoshigoto/chusho/hojokin/25383.html 区内の中小企業が、特許権、実用新案権、意匠権、商標権を取得する場合の費用の一部を補助。 品川区 品川区役所 商業・ものづくり課 中小企業支援係 http://www.mics.city.shinagawa.tokyo.jp/jyosei/titeki.php 国内における知的財産権取得に対し、取得に要する費用の一部を助成。 台東区 公益財団法人 台東区産業振興事業団 http://www.taito-sangyo.jp/02-assist/chiteki.html 台東区内の中小企業が、知的所有権を申請・取得しようとする場合に、その活動に要する経費の一部を助成。 港区 港区役所 産業振興課産業振興係 http://www.minato-ala.net/guide/hojyo/sangyouzaisan.html 区内中小企業が特許権・実用新案権・意匠権・商標権を取得する際に、その経費の一部を補助。 神奈川県町田市 経済観光部 産業観光課 https://www.city.machida.tokyo.jp/shien/yushi/patentetc.html 市内中小企業者が産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)を取得する際の経費の一部を補助。 愛知県 豊橋市 https://sightip.jp/pt_subsidy/%E3%80%90%E6%84%9B%E7%9F%A5%E7%9C%8C%E8%B1%8A%E6%A9%8B%E5%B8%82%E3%80%91%E7%9F%A5%E7%9A%84%E8%B2%A1%E7%94%A3%E6%A8%A9%E5%8F%96%E5%BE%97%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E8%B2%BB%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E9%87%91/ 市内中小企業者及び協同組合等が行う特許、実用新案権又は意匠権出願に対して補助。 ■日本弁理士会による特許出願等援助制度■ 新規事業の創出等、何らかの形で社会に貢献する可能性が高く、大きな効果が期待される発明等であって、まだ特許出願されていないものを対象として弁理士費用の全部または一部を日本弁理士会が負担する援助制度。 http://www.jpaa.or.jp/activity/support/assistance/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ニューストピックス■ ●中小の特許取得費用を半額に(特許庁)● 特許庁は全ての中小企業を対象に、特許審査や維持にかかる料金を半額にする方針を固めました。来年の通常国会に関連法案を提出し、2019年度をめどに実施を目指しています。 特許取得には「出願料」のほか、審査を求める「審査請求料」、特許権維持のための「特許料」などの費用がかかります。 現行制度では、通常の特許の場合、審査請求時に、基本料が11万8000円、保護を受けたい発明の数に応じて1項目当たり4000円の費用がかかります。特許取得後も特許権を維持するために年間数千〜数万円を支払う必要があります。 改正後は、審査請求時と、特許維持のための費用10年分をいずれも半額にします。現在、トータルで平均約40万円かかる費用が20万円程度に抑えられる見込みです。 国際的に日本の特許出願件数は伸び悩んでおり、日本、米国、中国、韓国、欧州の5大特許庁への出願件数をみると、2016年は中国が大幅に増加する一方、日本は減少しています。このため特許庁は主要国の中で最低水準とする方向で検討を進め、軽減を受けるための手続も簡素化する予定です。中小企業の知財活用を促す一方、収入減を抑えるため、大企業向けは値上げも検討しています。 ●新規性喪失の例外期間を12月に延長(特許庁)● 特許庁は、新規性喪失の例外期間(グレースピリオド)を現行の6月から12月に延長します。2018年に特許法を改正する方針です。 特許法では、特許出願前に既に公表されている発明は、特許が認められるための要件である出願時における新しさ、すなわち新規性がないものとして特許を受けることができないのが原則(特許法第29条第1項)。 しかし、その例外として、公表から6月以内に特許出願した場合には救済する措置(新規性喪失の例外)が規定されています(特許法第30条)。 改正により学会等で公表した発明について、その公表から12月以内に特許出願した場合、その出願の発明の新規性が、学会等で公表した発明によって否定されないという例外適用を受けることができます。 近年、オープン・イノベーションによる共同研究や産学連携が活発化しており、 本人以外の者による公開によって新規性を喪失するリスクも高まっていることなどから、例外期間を延長することにしました。 グレースピリオドの拡充については、TPP関連法案が施行されれば新規性喪失の例外が1年間へ改正される予定でしたが、特許法改正により先行実施することにしました。 ●TPP新協定 知財分野など20項目を凍結● 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加11カ国は、米国を除く新たな協定の発効で大筋合意しました。新たな協定の正式名称は、「CPTPP(包括的および先進的なTPP)」。 新協定の合意内容には、米国の離脱を受けて20項目の実施を先送りして「凍結」することや、6か国が国内手続きを終えると協定が発効することが明記されています。 米国が復帰するまで効力を棚上げする凍結対象は20項目で、医薬品の開発データの保護期間や著作権の保護期間など、「知的財産」に関する項目が多く含まれています。 また、海外に進出した企業がその国の急な制度の変更などによって損害を受けた場合、国を相手取り国際的な仲裁機関に訴訟を起こすことができる「ISDS条項」と呼ばれる制度の一部なども凍結の対象となりました。 11か国は、将来的に米国が復帰した際には、凍結を解除することで一致しています。 ●営業秘密管理規定、中小企業の67%が未整備(INPIT)● 工業所有権情報・研修館(INPIT)は12月末までを営業秘密管理体制整備の集中啓発期間に位置付け、全国8カ所でセミナーを開催し、営業秘密管理規定の重要性を訴えています。 https://faq.inpit.go.jp/tradesecret/seminar/ INPITが、営業秘密管理に関して、中小企業にヒアリング調査したところ、67%が管理規定を整備していないことが分かりました。 新たなアイデアやノウハウが生まれた際に、特許による権利化を行うか、営業秘密として秘匿化するかといった知財戦略が経営上、重要な課題となっていますが、管理規定を設けていないと、技術や製造ノウハウが意図せず流出しても不正競争防止法などで保護されません。 例えば、企業が保有する顧客情報や設計図等が他社に流出した場合、取引先が奪われたり、そっくりの模倣品が発生するかもしれません。 企業の情報漏えい対策や知財活用は、企業規模を問わず、ますます重要性を増しています。経営手法や製品・サービスの強みなど、自社の源泉となる独自技術やノウハウなどを一度整理し、営業秘密の管理規定について検討してみましょう。 ●ファセット分類記号を大幅廃止(特許庁)● 特許庁は、11月13日から224項目のファセット分類記号を廃止しました。化学、半導体、原子力、電子商取引など大幅な廃止で、ファセットとして残ったのは、IoT、超伝導、原子炉、繊維、リサイクルなどの分野で83件となりました。 ただし、11月12日以前に付与されたファセット分類記号を用いて、文献を検索することは可能です。 https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/facet_kaisei.htm ファセット分類記号は、IPC分類表の所定の範囲にわたり、IPCの分類展開とは異なる観点で展開された記号。3つの英文字で表記されています。ファセット分類記号を用いることで、複数のIPCにまたがり横断的な観点から文献検索ができます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
12月5日 イイノホール 平成29年度東京都中小企業知的財産シンポジウム http://www.chizaisympo-tokyo2017.jp/ (東京都知的財産総合センター) 12月11日 メルパルク東京 平成29年度知的財産権制度説明会(実務者向け) http://www.jit2017.go.jp/ (特許庁) ******************************************************** 発行元 : 鈴木正次特許事務所 〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5 新宿山崎ビル202 TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340 E-mail: URL: http://www.suzuki-po.net/ ******************************************************** 本メールの無断転載はご遠慮下さい。 本メールマガジンの記載内容については正確を期しておりますが、弊所は、利用される方がこれらの情報を用いて行う一切の行為について責任を負うものではありません。 |