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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2018年2月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

 (2)特許出願公開


  ☆ニューストピックス☆

 ■「指定商品・指定役務」のよくある間違いなど公開(特許庁)
 ■中小企業の軽減制度を大幅見直し(特許庁)
 ■地域団体商標のマーク作成(特許庁)
 ■マンガで知財の歴史を紹介(特許庁)


  ☆イベント・セミナー情報


 特許庁は、「指定商品・指定役務(サービス)」を記載する際によくある間違いや商品・役務名のQ&Aを公開しました。
 意図している商品・役務を間違って指定した場合などには、登録までに時間がかかったり、意図した商品等で商標権を取得することができない可能性があるため注意が必要です。 今号では、この「指定商品・指定役務」の概要を取り上げていますので、ぜひチェックしてみてください。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(2)特許出願公開

【 質問 】
 「特許出願を行うと特許出願した発明の内容が同業他社に知られてしまう」と聞いたことがあります。特許出願を行うとその内容はすぐに世の中の人に知られてしまうのでしょうか?

【 回答 】
<特許出願の内容は出願日から1年6カ月後に公開されます>
 今回のお問い合わせは特許出願公開に関するものです。
 特許庁は特許出願を受け付けると直ちに「受領書」を発行して特許出願番号と特許出願日を付与してくれます。
 特許出願番号はカレンダーイヤーごとに1番から付与されます。特許庁が2018年に受け付けた最初の特許出願には「特願2018−1」、100番目に受け付けた特許出願には「特願2018−100」という特許出願番号がそれぞれ付与されます。特許庁が受け付ける特許出願の数は毎年32万件程度になります。

 特許庁は特許出願を受け付けた後1年6月(=18カ月)経過するまではその内容を秘密にして保持します。誰による、いかなる内容の特許出願を受け付けたのか秘密にしてくれます。
 同一の発明については一日でも先の特許出願に特許が与えられます(先願主義(センガンシュギ)特許法第39条)。そこで、特許出願を行うと特許出願人は「先願の地位」を獲得できます。もしも、その後に、だれかが、同一内容の発明について特許出願してきても、その後からの特許出願を「同一の発明について後から行われた特許出願ですので特許は認められません」としてもらえる地位です。
 特許出願人は、「当社はこの製品に採用した新技術について特許出願し、特許庁から特許出願番号『特願2018−○○○』の付与を受けています。」と宣伝できます。このときに、同業他社が、特許庁のJ-Plat Patに特許出願番号「特願2018−○○○」を入力して検索しても出願日から1年6月経過するまではいかなる情報も取得できません。
 一方、出願日から1年6月経過すると、特許庁は、1年6月前に受け付けた特許出願の内容(特許請求されている発明を説明している文章、図面、特許出願人・発明者の情報(住所・名称・氏名))を公表します。
 この公表は、紙に印刷した特許出願公開公報として特許庁から発行され、また、インターネット上のJ-Plat Patに電子情報が掲載されることで行われます。電子情報でインターネット上に公表されますから、この後は、特許出願番号を用いてだけでなく、特許出願人の名称(例えば、同業他社の会社名など)や、発明を説明する技術用語などをキーワードに用いて特許出願の内容を検索できるようになります。
 このように、「特許出願を行うとその内容はすぐに世の中の人に知られてしまう」わけではありませんが、出願日から1年6月経過すると特許出願の内容は世界中の人に知られるようになります。これを「特許出願公開」(特許法第64条)といいます。

<なぜ出願日から1年6月で公開されてしまうのか?>
 「特許制度は、新しい技術を公開した者に対し、その代償として一定の期間、一定の条件の下に特許権という独占的な権利を付与し、他方、第三者に対してはこの公開された発明を利用する機会を与える(特許権の存続期間中においては権利者の許諾を得ることにより、また存続期間の経過後においては全く自由に)もの」です。「このように権利を付与された者と、その権利の制約を受ける第三者の利用との間に調和を求めつつ技術の進歩を図り、産業の発達に寄与していくもの」です(工業所有権法逐条解説 特許法第1条)。

平成29年度知的財産権制度説明会(初心者向け)テキスト
http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h29_syosinsya.htm

 その昔の日本では、特許出願の内容は特許庁で審査を受けて特許成立するものだけが公表されていました。この仕組みですと、どのような発明について特許出願が行われているのか特許出願人以外は知ることができません。
 このため、第三者の特許権成立が、突然、公示され、特許権侵害になるのを避けるため、自社が実施している技術内容を急きょ変更しなければならない事態になることが起こり得ます。いわゆる「サブマリン特許」です。これでは安定した企業活動を行うことが難しくなります。
 また、同業他社が既に特許出願を行っている発明であることを把握できたならば別の方向に研究を進めることが可能であったのに、把握できないため、同業他社が特許出願済の発明内容について研究開発を続けていたという事態が起こり得ます。これは、一企業にとっても、また、日本の産業界全体でみても、重複した研究を行い、重複した投資を行っている、ということになります。
 そこで、特許庁での審査を経て特許成立することになってからでなければ特許出願内容が公表されないことで生じる企業活動の不安定性や、重複研究、重複投資という弊害を除去する目的で、昭和45年(1970年)の特許法一部改正によって特許出願公開制度が採用されたのです。
 「特許出願日から1年6月」とした理由は、その当時、世界で特許出願公開制度を採用していた国(当時の西ドイツなど)における出願公開が出願日から1年6月後に行われていたからなどとされています。
 日本国特許庁では、特許出願日から1年6月経過した時点で、原則として、すべての特許出願について特許出願公開が行われることになっています。
 なお、特許出願日から1年6月経過するまでに審査請求や、早期審査の請求が行われることで審査が完了して特許権成立し、その内容を社会に公示する特許公報(=特許掲載公報)が発行されている場合や、出願公開前に特許出願が取下げ、放棄あるいは却下され又は拒絶査定が確定しているときなどでは、例外的に、特許出願公開が行われないことがあり得るとされています。
 米国、中国、韓国、欧州諸国、等、世界の主要な国々、地域の特許庁では、いずれも、原則として、特許出願日から1年6月経過した時点で1年6月前に受け付けていた特許出願内容を公表する特許出願公開制度を採用しています。
 「出願後ただちに」ではないとはいえ、「出願日から1年6月経過しただけで出願内容が世の中に知られてしまうのでは特許出願人に不利益なのではないか?」というご意見があるかもしれません。
 次回は、このようなご意見に関連しているご質問への回答を紹介します。
以上


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■ニューストピックス■

●「指定商品・指定役務」のよくある間違いなど公開(特許庁)●

 特許庁は、「指定商品・指定役務」を記載する際のよくある間違いや商品・役務名のQ&Aを公開しました。
@指定商品・指定役務を記載する際のよくある間違い(PDF)
A商品・役務名のQ&A(Excel)

 商標登録出願では、「商標(マーク)」と、その商標を使用する「商品・役務(サービス)」を指定する必要があります。ここで指定した商品が「指定商品」、指定した役務(サービス)が「指定役務」となります。
 商標の出願書類には、「指定商品・指定役務」とあわせて「区分」を記載する必要があります。「区分」は、商品・役務を一定の基準によってカテゴリー分けしたもので、第1類〜第45類まであります。
 指定商品・指定役務は、商標とともに権利範囲を定めるものなので、その内容及び範囲が明確でないと、拒絶理由の対象となります。
 このため、特許庁は円滑な権利取得のため、指定商品・指定役務を記載する際のよくある間違いを列記したほか、商品・役務名についてQ&A形式で掲載しました。

 記載が不適切であったり、商品・役務が不明確であった場合などは、商標権を取得することができない可能性がありますので、ご不明な点は弁理士などの専門家に相談されることをお勧めします。

●中小企業の軽減制度を大幅見直し(特許庁)●

 特許庁は、中小企業に対する審査請求料、特許料等の軽減制度の大幅な見直しを進めています。中小企業を一律に対象とするため、黒字企業を含めた中小企業全体が対象となります。また、その手続も簡素化します。
 手続の簡素化の先行的な取り組みとして、2018年4月からは、現在、特許料納付の都度求めている特許料の軽減申請書の提出を初回の特許料納付時のみとする運用改正を行う方針です。なお、減収見込み額を補填するため、一部の料金は引き上げられる予定です。

 特許庁によると、中小企業からの審査請求のうち、軽減申請を行った企業の割合は、およそ3分の1程度にとどまっています。利用が少ない原因としては、まず、対象企業(利用可能条件)が限定的という点が挙げられます。
 現行の軽減制度の対象となる中小企業は、@赤字法人(特許法)、A研究開発型中小企業(産業技術力強化法)、B中小・ベンチャー企業(産業競争力強化法) の大きく3類型であり、小規模企業・研究開発型中小企業以外の中小企業、設立後10年を経過した黒字企業は対象外となっています。
 また、現行の軽減制度においては、軽減申請に必要な手続が煩雑なため、申請を断念する中小企業が多いとの指摘があります。特に、研究開発型中小企業については、試験研究費比率が収入金額の3%超であることを証明する必要があり、その証明書類の作成が煩雑との声が多いようです。

●地域団体商標のマーク作成(特許庁)●

 特許庁は、地域の名産品に独占的な名称を使用できる「地域団体商標」のマークを作成しました。商標の権利を持っている団体は、名産品のパッケージやチラシ、のぼり旗、インターネットでの広告などに利用できます。地域名産品のPRや模倣品の流通防止に役立ててもらいます。
 地域団体商標とは、「地名+商品(サービス)名」からなる商標を、その地域との密接な関連性を有する商品(サービス)に使用して一定の地理的範囲で周知となっている場合には、農業協同組合や商工会などの団体が地域団体商標として登録することを認める制度です。
 平成29年12月末時点において、「長崎カステラ」「一宮モーニング」「小豆島オリーブオイル」など617件が登録されています。

●マンガで知財の歴史を紹介(特許庁)●

 特許庁は、特許、意匠、商標など、知的財産権にまつわる歴史的なエピソードを紹介するマンガ「知財の歴史」を公開しました。 マンガ「知財の歴史」(A5版・27ページ)(PDF)
 今では当たり前となった身近な商品の技術開発から特許取得までの工夫や苦労などのエピソードが紹介されています。
 初代特許庁長官の高橋是清、あるいは日本の十大発明家、たとえば、織機の豊田佐吉や、養殖真珠の御木本幸吉についてなど、さまざまな発明家や技術者が登場します。
 マンガで分かりやすく説明されていますので、興味のある方はご覧になってください。

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  ■イベント・セミナー情報■

2月22日 リロの会議室(飯田橋)
知的財産マッチング会
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2017/300222matching.html

2月26日 東京都知的財産総合センター
特許公報の読み方セミナー 〜技術内容を効果的に把握するためのポイント〜
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2017/300226tokkyokouho.html

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
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TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
E-mail:
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最終更新日 '18/07/20