メールマガジンを紹介します。

********************************************************************
◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
********************************************************************

このメルマガは当事務所とお取引きいただいている皆様、または当事務所とご面識のある皆様にお届けしています。

知的財産に関する基礎知識や最新の法改正情報など、実務上お役に立つと思われる情報をピックアップして、送らせて頂きます。

メルマガ配信をご希望でない場合は、誠に恐縮ですが、下記アドレスまでお知らせください。

suzukipo@suzuki-po.net

━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━

2018年4月1日号


 ◎本号のコンテンツ◎


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

 (4)特許と実用新案登録の違い


  ☆ニューストピックス☆

 ■特許料の減免申請手続を簡素化(4月1日施行)
 ■特許・実用新案の検索機能を刷新(J-PlatPat)
 ■日本工業規格(JIS)、サービス分野など対象拡大
 ■国際特許の出願件数、中国が日本抜き2位(WIPO)


  ☆イベント・セミナー情報


 「特許法施行規則等の一部を改正する省令」の4月1日施行に伴い、特許料(第1年分から第10年分)の減免申請に係る手続が改正されました。
 今まではその都度、減免申請書と証明書を提出していましたが、4月1日以降に特許料の減免申請を一度行うと、原則として、以降第10年までの減免申請の手続を省略することができるようになりました。
 今号では、特許料の減免申請手続の簡素化の概要と注意点について取り上げます。

┏━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■弁理士が教える特許実務Q&A■

(4)特許と実用新案登録の違い
【質問】
 当社の製品に対して実用新案権侵害だとする「警告書」を受け取りました。どのように対応すればよいでしょうか?

【回答】
 実用新案権も特許権と同様に独占排他権です。実用新案権者は権利侵害者に対して差止請求(実用新案法第27条)、損害賠償請求(民法第709条)できます。しかし、実用新案制度に特有の事情があります。
 この点を中心に説明します。

<特許と実用新案の共通点>
 特許で保護される対象を「発明」、実用新案で保護される対象を「考案」といいます。両者はいずれも「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるという点で共通しています。
 特許でも実用新案でも権利者には所定期間の独占排他権が与えられます。特許権者には出願日から20年を越えない期間、実用新案権者には出願日から10年を越えない期間の独占排他権です。この点でも両者は共通しています。
 このような共通点があるにもかかわらず2つの制度が併存しているのは「発明の水準をある程度高く維持しながら同時に創作意欲の減退を防ぐためには、特許制度とは別の簡便な制度を設けて比較的程度の低い発明を保護することが合理的と考えられる」からであるとされています(工業所有権法逐条解説)。
 「方法」、「製造方法」や、特定の外観・形態を有さない「物質」、「組成物」などは、特許では保護されますが、実用新案では保護されません。実用新案では、特許でも保護される「物品の形状、構造又は組み合わせに係るもの」しか保護されないことになっています。
 「比較的程度の低い発明を保護する」観点から、特許・登録のために越えることが要求される「進歩性」の程度が特許で保護される発明に要求されるより実用新案では低くてよいとされています。ただし、日本のように技術の進んだ国で「技術的思想の創作」についての進歩性の程度を判断するときに、発明(特許)と考案(実用新案)で差を設けるのはいかがなものかという見解があります。現状では、特許・登録のために越えることが要求される「進歩性」の程度は発明(特許)でも考案(実用新案)でもほとんど相違していない取扱いになっていると思われます。

<実用新案は無審査登録>
 実用新案が特許と大きく相違しているのは、特許庁への出願後、実用新案権の付与が請求されている考案が新規性、進歩性、等の登録要件を備えているか否か審査官が行う審査(=実体審査)を受けることなしに実用新案権が付与される点です。


平成29年度知的財産権制度説明会(初心者向け)テキスト
http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h29_syosinsya.htm

 特許の場合、特許出願手続の他に行う「出願審査の請求」によって開始される「実体審査」を経てからでなければ特許権は設定登録されません。審査官が行う「実体審査」で新規性、進歩性、等の特許要件を満たしていると認められたものに対してのみ特許権が付与されます。
 一方、実用新案の場合には出願の際に出願料だけでなく1〜3年分の登録料も納付し「実体審査」を受けることなしに実用新案権が設定登録されます。
 その昔は、実用新案も、出願手続の他に「審査請求」があったものだけ審査を受け、新規性、進歩性、等の登録要件を備えていると認められるものにだけ実用新案権が付与されていました。しかし、出願から比較的早期に実施され、ライフサイクルも短い技術を適切に保護する観点で1994年から無審査登録制度になりました。
 実用新案では出願後2カ月程度で審査を受けることなしに登録され、出願後3カ月程度で実用新案登録公報が発行されて出願内容(=登録を受けた実用新案の内容)が社会に公表されます。特許出願では出願後18カ月経過してから特許出願公開公報が発行されて出願内容が社会に公表され、実体審査を受けて特許権が成立したものについてだけ特許公報が発行されて特許成立した発明の内容が社会に公表されます。
 実用新案は上述した目的で出願後早期に無審査で登録しています。しかし、現状の特許出願では審査請求後平均11カ月で審査結果を受け取れます。また、早期審査請求した場合には審査請求後3〜4カ月で審査結果を受け取り、速ければ出願後半年程度で特許成立することがあります。
 このように現状では出願後早期に権利付与を受けることは特許出願でも可能です。一方で、実用新案には権利行使にあたって後述する制約があります。
 このため、1993年以前は毎年9万件程度の実用新案登録出願がありましたが、現状では年間6000件程度で、毎年32万件程度になる特許出願と比較すれば実用新案の出願は少なくなっています。

<実用新案権の警告には「技術評価書」が必須>
 特許では第三者が特許権侵害を行っていると認められる場合、特許権者は警告書を送付して侵害行為の停止を求めることができます。実用新案では、第三者が実用新案権侵害を行っていると認められる場合であっても、実用新案権者は「実用新案技術評価書」(以下「技術評価書」)を提示した後でなければ侵害行為の停止を求める警告書送付、等の権利行使できません(実用新案法第29条の2)。実用新案権は無審査で登録されているからです。
 「技術評価書」は特許庁が請求を受けて作成します。所定の料金(42,000円+請求項の数×@1,000円)を特許庁へ納付して請求することで3〜4カ月で作成されます。実用新案登録を求める考案が登録に値する新規性、進歩性を備えているものであるかどうか、特許庁審査官による鑑定的な評価が下されます。「技術評価書」が提示されることで警告書を受け取った第三者は実用新案権の有効性を判断できます。
 「実用新案技術評価書を提示せずに行った警告は、有効なものとは認められず、その状態で侵害訴訟を提起しても、直ちに訴えが却下されるわけではないが、評価書が提示されない状態のままでは、権利者の差止請求、損害賠償請求等は認容されないものと解される」とされています(工業所有権法逐条解説)。

<実用新案権者が負う無過失賠償責任>
 特許では、特許出願公開公報に掲載されている発明を実施している第三者に対して補償金請求権を発生させるための警告書を送付した後、「実体審査」で出願が拒絶されて特許成立しないことが起こり得ます。この場合でも当該警告書を送付していた特許出願人が責任追及されることはありません。
 実用新案では、警告書送付、等の権利行使を行った実用新案権が無効であった場合に、実用新案権者は、無過失であることを立証できない限り、すなわち、実用新案権者が相当の注意をもって権利行使したことを立証できない限り、損害賠償責任を負わねばなりません(実用新案法第29条の3)。いわゆる無過失賠償責任です。この点、国(特許庁)が実体審査を行った上で権利付与している特許権と大きく相違します。
 なお、実用新案権者が「技術評価書」の評価(登録性を否定する旨の評価を除く。)に基づき権利を行使したとき、その他相当の注意をもって権利を行使したときは、損害賠償責任を免れることになっています。

<実用新案権に基づく警告を受けた場合の対応>
 無審査で登録されているとはいえ、出願人が十分な先行技術調査を行ってから出願を行っている、等で、有効な実用新案権が存在していることもあります。
 特許権者から警告を受けた場合、警告を受けた自社の行為が特許権侵害に該当するかどうか慎重に検討する必要があります。実用新案権者からの警告の場合には、警告を受けた自社の行為が実用新案権侵害に該当するかどうか慎重に検討するだけでなく、技術評価書添付の有無、技術評価書の評価内容についても慎重に検討する必要が生じます。
 そこで、実用新案権者から警告を受けた場合あるいは、第三者が実用新案権侵害を行っているようだとお気付きになった場合、専門家である弁理士に早急に相談されることをお勧めします。
 次回は特許や実用新案の先行技術調査に関するご質問への回答を紹介します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ニューストピックス■

●特許料の減免申請手続を簡素化(平成30年4月1日施行)

 「特許法施行規則等の一部を改正する省令」の施行に伴い、特許料(第1年分から第10年分)の減免申請に係る手続が改正されました。
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/genmen_kaisei.htm

 今回の改正に伴い、手続が簡素化され、平成30年4月1日以降に、特許料減免申請書と証明書を特許庁に提出し、受け付けられた特許については、その後、特許料減免申請書と証明書を新たに提出しなくても、その1回の減免手続のみによって、原則として、第10年分までの特許料が自動的に減免されることになりました。
 ただし、第10年分までの特許料の減免が認められるのは、施行日以降に特許料の減免申請を一度行った案件に限ります。一度の減免申請手続により、全ての案件について一律に減免が認められるものではないため、案件毎に一度は減免が認められる必要があります。
 このため、既に減免が適用されている特許についても、4月1日以降に1度は減免申請をしなければならない点については注意が必要です。
 また、特許料の減免申請の手続は一度のみとなりますが、従前どおり特許料納付書の「特許料等に関する特記事項」の欄は、納付の都度、記載する必要があります。

●特許・実用新案の検索機能を刷新(J-PlatPat)

 特許庁は、特許・実用新案・意匠・商標の公報等を無料で検索・照会できるデータベース「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」に新機能を追加しました。
http://www.meti.go.jp/press/2017/03/20180309003/20180309003.html

 今回、J-PlatPatのデータベースを大幅に充実させるとともに、検索機能を特許審査システムと共通化することで、審査官が用いる検索機能が利用できるようになりました。これにより正確で効率的な先行技術調査が可能となりました。
 「特許分類とキーワードを掛け合わせた検索」「近傍検索」「外国特許公報(米国・欧州・国際出願)の英文テキスト検索」の3つの新機能を追加したほか、「国内の公開特許公報等のテキスト検索が可能な期間の拡大」「検索結果表示件数の上限拡大」といった機能改善が図られています。
 追加・改善された機能の主なものは以下のとおりです。

1.「特許・実用新案テキスト検索」サービス、「特許・実用新案分類検索」サービスおよび、「コンピュータソフトウェアデータベース(CSDB)検索」サービスの統合
 これまで、別々のサービスであった「特許・実用新案テキスト検索」サービス、「特許・実用新案分類検索」サービスおよび、「コンピュータソフトウェアデータベース(CSDB)検索」サービスが統合され、「特許・実用新案検索」となりました。それに伴い、キーワードと最新の分類を掛け合わせた検索や、非特許文献との同時検索が可能となりました。

2.近傍検索機能の追加
 キーワード間の文字数(英文の場合は単語数)の上限を指定して検索する近傍検索機能が追加されました。

3.外国公報(米国・欧州・国際出願)の英語テキスト検索機能追加
 これまでの「特許・実用新案テキスト検索」サービスでは、日本語でのみテキスト検索が可能でしたが、新たに英語でのテキスト検索が可能となりました。

4.国内の公開特許公報等のテキスト検索が可能な年範囲の拡大
 これまでの「特許・実用新案テキスト検索」サービスでは、テキスト検索の対象年範囲が公報の電子化以降となっておりましたが、新たに電子化以前の公報も、OCR等で作成されたテキストが検索対象となりました。

5.検索結果表示件数の上限拡大
 これまでのサービスでは、検索表示件数の上限が1000件でしたが、国内、外国、非特許文献各3000件まで拡大されました。

●日本工業規格(JIS)、サービス分野など対象拡大

 政府は工業標準化法の一部改正案を今国会に提出しました。工業製品の品質や安全性の基準として国が定める日本工業規格(JIS)の対象に新たにデータ、サービスも追加します。「日本工業規格(JIS)」を「日本産業規格(JIS)」とし、法律名を「産業標準化法」に変更します。政府は今国会での成立を目指しています。
 IoT(モノのインターネット)の普及、業種横断的な標準化などを念頭に、企業が戦略的に規格を活用できるようにし、国際競争力を高める狙いです。
 改正案では、JISの対象を鉱工業分野に留まらず、サービス分野などへ大幅に拡大し、案件に応じて各領域の主務大臣が公示する仕組みを示しました。原案作成終了から公示までの期間を、現在の約1年から最短3カ月程度に短縮できる方策も盛り込みました。国が認めた指定団体が原案を作成した場合に限り、審議団体の日本工業標準調査会(JISC)の審査を省略できる仕組みとしました。迅速化により、標準化を利用した企業の世界戦略や、新技術の社会導入などを円滑にしたい考えです。
 また、JIS認証マークを不正に表示した企業への罰金の上限を従来の100万円から1億円に引き上げることも盛り込みました。
 JISは対象拡大に伴い日本語名を「日本産業規格」と変更します。英語名(JIS:Japanese Industrial Standards)はそのまま継続して使用されます。日本工業標準調査会の名称も日本産業標準調査会(JISC)に改めます。

●国際特許の出願件数、中国が日本抜き2位(WIPO)

 世界知的所有権機関(WIPO)は、2017年の国際特許の出願件数を発表しました。
 国別では中国が前年比13.4%増の4万8,882件となり、日本の4万8,208件を抜いて2位に浮上しました。1位は米国の5万6,624件。日本も前年比6.6%と伸ばしましたが、僅差で3位となりました。
 世界全体では4.5%増の24万3500件で過去最多を記録しました。うち半分は東アジアからの出願です。
 中国の出願件数は03年から毎年10%以上の伸び率を記録、17年は前年比13%増となりました。WIPOは「3年以内に米を追い越して1位になる」と分析しており、知財分野は「米中2強時代」を迎えつつあるようです。
 企業別でも中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)など中国勢が1、2位を独占。1位のファーウェイは世界有数のスマートフォンメーカーで、次世代の高速無線技術(5G)分野の特許の約10%を保有するとされます。2位は中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)。日本は前年と同じく三菱電機の4位が最高で、ソニーが9位でした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  ■イベント・セミナー情報■

4月17日 東京都新宿区 新宿三葉(ミツバ)ビル
「高橋知財勉強会 『進歩性』の判断基準」
https://blog.goo.ne.jp/jun14dai/e/24b696372d4529f82a1132e7a31c41b4
(TH総合法律事務所 弁護士・弁理士 高橋淳)

4月24日 AP秋葉原
外国出願戦略セミナー 〜外国出願制度の理解と知財の戦略的活用
(東京都知的財産総合センター)

********************************************************

発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
新宿山崎ビル202
TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
E-mail:
URL: http://www.suzuki-po.net/

********************************************************

本メールの無断転載はご遠慮下さい。
本メールマガジンの記載内容については正確を期しておりますが、弊所は、利用される方がこれらの情報を用いて行う一切の行為について責任を負うものではありません。

〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/10/22