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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2018年7月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

 (7)弁理士への特許出願の依頼


  ☆ニューストピックス☆

 ■新規性喪失の例外適用についての留意事項
 ■商標登録出願の分割要件を強化(特許庁)
 ■スーパー早期審査の要件緩和へ(知財推進計画2018)
 ■標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き公表(特許庁)


  ☆イベント・セミナー情報


 改正特許法が6月9日に施行され、新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されました。
 この制度は特許出願前に公知となってしまった発明について、必要な手続きを取ることで、特許を受けることを可能とするものです。
 ただし、これはあくまで諸般の事情で出願前に公開してしまった場合の例外規定ですので、原則としては公開前に出願することが重要です。
 今号では、新規性喪失の例外適用について留意すべきことなどを取り上げます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(7)弁理士への特許出願の依頼

【質問】
 社内でまとめたアイディアについて特許事務所(弁理士)に特許出願を依頼に行きたいのですが、アイディアを説明するためにどのようなものを準備すればよいでしょうか?

【回答】
 特許事務所の弁理士が特許出願の依頼を受けるにあたり発明者、特許出願人となる方から説明していただきたい事項を紹介します。

<特許出願で特許庁へ提出する書面>
 特許出願では特許権の付与を求める発明を文章(必要であれば文章と図面と)で説明して特許庁へ提出します。
 この発明を説明する文章(「明細書」と「特許請求の範囲」)の記載内容について特許庁では「研究レポート」と比較しながら次のように紹介しています。

平成29年度知的財産権制度説明会(初心者向け)テキスト 
第2章 産業財産権の概要 第1節 特許制度の概要
https://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/pdf/h29_syosinsya/1_2_1.pdf

 弁理士は上記で記載内容の概略が説明されている「明細書」、「特許請求の範囲」、必用な場合の「図面」を準備します。このための手掛かりとなり、特許出願人の代理人となる弁理士が発明内容を正確に把握・理解することに役立つ事項として、最初にこのような事項をご説明をいただけるとありがたい、というところを以下に紹介します。

<どのような技術分野・技術に関するものか>
 開発された発明、アイディアがどのような技術分野のものであるか、例えば、金属加工技術、食品製造技術、等。発明内容を把握する上での第一歩になります。「明細書」で「技術分野」の欄に記載する事項になります。

<これまではどのようにしていたのか>
 開発された発明、アイディアの技術分野では従来はどのように行っていたのか。「明細書」で「背景技術」の欄に記載する事項になります。
 特許出願を行う際「背景技術の欄」に、特許出願人が知っている先行技術文献情報を記載する必要があります。開発された発明、アイディアに関連する従来の特許出願の内容が公表されている特許出願公開公報の番号を記載するのが一般的です。
 ご自分で特許庁のJ-Plat Patを利用して特許調査を行い、先行している特許出願公開公報の番号をご存知でしたら弁理士にお知らせください。
 なお、特許出願の準備を進めるにあたって、弁理士は、「背景技術の欄」に記載する先行している特許出願公開公報を検索する調査をある程度のレベルで行うのが一般的です。この際に発見できた先行している特許出願公開公報を弁理士から提供受けることで、開発した発明、アイディアにおける新規な部分をより明確に説明できるようになることもあります。

<どのようなことを解決・改善しようとするのか>
 これまでどのようなところに不具合を感じていたのか、どのようなところに困っていたのか。
 従来になかった新しいニーズに対応できる発明、アイディアを開発した場合には、どのような新たなニーズに対応しようとしているのか。
 「明細書」で「発明が解決しようとしている課題」の欄に記載する事項になります。

<解決・改善のために採用した工夫>
 どのような工夫を採用したことで上述した不具合、困っていた問題点を解決できたのか。あるいは、どのような工夫を採用したことで上述した新たなニーズに対応できるようになったのか。
 「明細書」で「課題を解決するための手段」の欄に記載する事項になります。また、特許請求する発明として「特許請求の範囲」に記載する事項になります。

<今回の工夫を採用したことでどのようになったか>
 上述した不具合、困っていた問題点を解決でき、上述した新たなニーズに対応できるようになったということです。これらのみにとどまらず、開発した発明、アイディアによって実現できるようになった利点は何か。
 「明細書」で「発明の効果」の欄に記載する事項になります。

<開発した発明、アイディアの具体例>
 開発した発明、アイディアを実際に行っている実例、例えば、機械・構造物の図面や写真・現物、実際に製品を製造したときのデータや試験・実験結果、従来のものと比較・検討した試験・実験結果データ、発明、アイディアが実際に行われるときの簡単なフローチャート、等。
 「明細書」で「発明を実施するための形態」、「実施例」の欄に記載する事項になります。

<面談の形式、等>
 特許事務所においでいただいて説明を受ける、あるいは、開発現場である工場などに弁理士が訪問させていただいて説明を受ける、等の形式があります。
 いずれにしても、開発された発明、アイディアを弁理士が正確に把握・理解する目的で、上述したような事項をご説明いただけると助かりますが、これらは、最初の段階から完全に準備していただく必要はありません。箇条書きのようなメモのようなものでご説明いただいてもよいです。
 また、図面などをご持参いただいて口頭で説明していただく、等、弁理士がヒアリングする中で質問し、ご説明をいただくことで発明の内容を把握する形式にすることもできます。

<次号のご案内>
 特許出願は発明者個人で行うこともできますし、発明者から特許を受ける権利を譲り受けた会社が行うこともできます。また、一社だけでなく、複数の会社が共同して特許出願を行うこともできますし、特許出願を行った後に特許出願人の名義を変更することもできます。来月は特許出願人になれる者についてのご質問への回答を紹介します。
以上


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■ニューストピックス■

●新規性喪失の例外適用についての留意事項
 不正競争防止法等の一部を改正する法律案が可決・成立し、平成30年5月30日に公布されました。そして、改正特許法においては30条(新規性喪失の例外規定)の規定が、平成30年6月9日に施行されました。
 本改正により、特許法、実用新案法、意匠法での新規性喪失の例外期間(グレースピリオド)が6か月から1年に延長されます。
 改正法は、平成29年12月9日以降に公表された発明に対して、平成30年6月9日以降に出願する場合に適用されます。
 したがって、平成30年6月9日以降に出願すれば、当該特許出願日から遡って1年の期間の公表発明にまで適用されるわけではないので留意する必要があります。
 新規性喪失の例外とは、出願人が発明の内容を出願前に公開してしまう行為(展示会やインターネットでの公開、刊行物への論文発表等)により公知になった場合に、公知になった日から6か月以内であれば、必要な手続きを取ることで、その行為によっては新規性、進歩性を否定されないという制度です。法改正により出願人の意に反して公知となった場合や、研究者が出願前に学会発表等を行った場合の救済措置が拡充されることになりました。
 この制度は特許出願前に公知となってしまった発明について、例外的に救済するものなので、その点は注意が必要です。
 また、新規性喪失の例外規定については、各国ごとに取り扱いが相違しています。例えば、日本では新規性喪失の例外が認められて特許取得できたが、中国では、日本での新規性喪失行為によって既に新規性を失った発明であるとして拒絶され、特許が認められません。
 このため、海外でも販売等を行う製品であって、海外での特許取得も検討しなければならないものについては、原則通り、世の中の人に知られてしまう前に日本で特許出願を行うという注意が必要です。


●商標登録出願の分割要件を強化(改正商標法)
 改正商標法が平成30年6月9日に施行され、商標登録出願の分割要件が強化されました。
 商標の分割出願とは、一つの出願の指定商品群を分けて複数の出願に分割できる制度です。分割した出願(子出願)の出願日は元の出願(親出願)と同じ日として扱われます。
 本改正により、もとの出願が手数料未納により却下されたときは、分割出願の出願日は、もとの出願の出願日には遡及しないこととなりました。
 これまでは、商標登録出願の分割を行う場合、新たな出願(子出願)の出願日が、もとの出願(親出願)の日に遡及するという効果が生じ、出願人は親出願の日から先願の地位を確保できましたが、分割出願をしようとする者が、親出願の出願手数料の納付義務を果たしていない場合にもこれを認めることは適切ではないと判断されました。
 最近、一部の出願人から他人の商標の先取りとなるような商標登録出願が大量に行われており、しかも、これらのほとんどが出願手数料の支払いのない手続上の瑕疵ある出願となっていることが問題となっていました。
 このため改正法では、親出願の出願手数料を納付したものに限り、分割出願について、出願日の遡及という効果を与えることとしました。これにより、分割出願があっても、後に出された出願を従来より早く登録することが可能となります。


●「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」を公表(特許庁)●
 特許庁は、標準必須特許を巡る紛争防止などを目的とする「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」を公表しました。
 手引きは、標準規格の実施に必要な特許である標準必須特許のライセンス交渉に関する透明性・予見可能性を高め、特許権者と実施者との間の交渉を円滑化し、紛争の未然防止及び早期解決を目的に作成されました。

 近年、モノとインターネットがつながる「IoT」の普及で、大企業だけでなく中小企業も標準必須特許の通信技術を利用するケースが増えています。IoTは、電機や自動車などさまざまな分野に広がっていて、製品やサービスに利用するには通信技術の活用が不可欠になっています。こうした中、企業が知らずに標準必須特許の通信技術を使って訴えられる懸念が高まっています。
 このため、特許庁は新たな手引きをまとめたもので、特許権を侵害していると指摘された場合に対応する手順や、特許を利用する場合に必要な料金の算定方法などが説明されています。
 手引きは特許庁HPで公開しています。
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/seps-tebiki.html

●スーパー早期審査の要件緩和へ(知財推進計画2018)
 政府の知的財産戦略本部は、「知的財産推進計画2018」を決定し、今後の知財戦略の方向性を示す「知的財産戦略ビジョン」をまとめました。
 「知財推進計画2018」では、 ベンチャー企業を対象に通常1年以上かかる審査を2〜3か月に短縮できる「スーパー早期審査制度」の適用要件を緩和することを決めました。技術革新が速いIT分野などで、技術力の高いベンチャー企業の特許の早期取得を後押しします。2018年度中にも実施する方針です。
 スーパー早期審査は、インターネット上で申請を受け付け、特許庁が優先的に審査する仕組み。スーパー早期審査を利用するには、「対象となる発明の特許を海外でも出願済み」「発明を事業で利用済み」といった要件を満たす必要がありますが、ベンチャー企業に限り、これらの要件を緩和するとしています。

 「知的財産戦略ビジョン」は、ブロックチェーン(分散型台帳)技術の発展など、最近の変化に対応するために5年ぶりに策定されました。
 ブロックチェーン技術などの活用によって、著作権の権利管理や利益配分の自動化・簡略化を進め、適正な対価が関係者に還元される仕組みを構築することなどが提言されています。

・「知的財産推進計画2018」「知的財産戦略ビジョン」
 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/

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  ■イベント・セミナー情報■

7月10日 東京都中小企業振興公社
中小企業の係争対策セミナー 〜産業財産権(特許編)
(東京都知的財産総合センター)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
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最終更新日 '18/11/14