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******************************************************************** ◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇ ******************************************************************** このメルマガは当事務所とお取引きいただいている皆様、または当事務所とご面識のある皆様にお届けしています。 知的財産に関する基礎知識や最新の法改正情報など、実務上お役に立つと思われる情報をピックアップして、送らせて頂きます。 メルマガ配信をご希望でない場合は、誠に恐縮ですが、下記アドレスまでお知らせください。 suzukipo@suzuki-po.net ━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━ 2018年8月1日号
中小ベンチャー企業や小規模企業などを対象とした特許料等に関する費用の軽減措置が7月9日から始まっています。 この軽減措置の適用を受けることによって、「審査請求料」、「特許料(1〜10年分)」、国際出願に係る「調査手数料・送付手数料」、及び国際予備審査請求に係る「予備審査手数料」が1/3に軽減されます。 特許出願、審査請求等を検討する際には、併せて軽減措置の利用も検討してみましょう。 今号では、この特許料等の軽減措置の概要を紹介します。 ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┓ ┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃ ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■弁理士が教える特許実務Q&A■ (8) 特許出願人になれる者(1) 【質問】 特許出願を他の会社と一緒に行いたいのですが、可能ですか?一緒に出願することにした場合、注意しておくべきことはありますか?また、特許出願を行った後に特許出願人の名義を変更することは可能ですか? 【回答】 特許出願を他社と共同で行うことは可能ですし、特許出願後に特許出願人の名義を変更することも可能です。 <特許を受ける権利> 発明が完成すると、その完成した発明について特許権の付与を求めて特許庁に出願し審査を受けます。新規性、進歩性などの条件を満たしている発明であることが特許庁の審査で認められると1〜3年分の特許料を納付することで特許権が成立します。 このように発明の完成から特許権成立までは時間を要します。特許法では、発明が完成してから特許権が成立するまでの間における発明者などの利益状態を保護する目的で「特許を受ける権利」というものを認めています。 「特許受ける権利」は発明者が発明を完成させることで発生します。「特許受ける権利」は国家に対して特許権の付与を請求できる権利ですから公権であるとともに請求権であり、かつ、財産権の一種であると考えられています。 財産権の一種ですから、その全部、あるいは一部を譲渡、等によって移転することが可能です。 <特許出願人になれる者> 特許出願を行うためには法律上の権利義務の主体となる資格(=権利能力)が必要です。一般的にいう「人」(=自然人)と、法律上の「人」としての地位を認められた団体(=法人)は権利能力を備えており、特許出願人になることができます。 しかし、特許取得を希望する発明についての「特許を受ける権利」を有していなければ特許出願人になることができません。 特許出願人がその発明についての「特許を受ける権利」を有していない場合、特許出願の審査の段階では拒絶理由となって特許が認められません。また、特許権成立後であれば、特許無効の理由となって特許無効審判の請求によって特許権が取り消されます。これはいわゆる「冒認出願」と呼ばれるもので、他人の発明をスパイ行為などによって盗んで特許出願を行っても特許は認められません。 <「特許を受ける権利」を取得する形態> 発明者は発明完成によってその発明についての「特許を受ける権利」を取得します。そこで、発明者が特許出願人になって特許出願を行うことができます。 例えば、個人事業主である事業主個人が発明を完成させ、特許出願人となって個人で特許権取得し、会社に実施許諾するケースなどがあります。 特許出願人になる者が発明者から「特許を受ける権利」を取得する最も一般的な形態は会社の従業員などが行った発明の「特許を受ける権利」を会社が取得して会社が特許出願人となるものです。この「職務発明」のケースについては後述します。 特許出願後は「特許を受ける権利」を譲渡したことを証明する「譲渡証書」を譲渡人が捺印して作成し、この捺印済「譲渡証書」を譲受人が特許庁へ提出して特許出願人の名義を変更できます。なお、特許法では「特許を受ける権利」を譲り受ける者である譲受人を「承継人」と表現します。 「特許を受ける権利」は目に見えません。このため、発明者との間でトラブル等が発生するなどで発明者が「特許を受ける権利」を二重譲渡することが起こり得ます。この点も考慮して、特許出願前における「特許を受ける権利」の承継はその承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗できないことになっています(特許法第34条)。会社外の発明者から「特許を受ける権利」を取得して特許出願を行う等の場合、二重譲渡が生じないように注意を払う、遅滞なく特許出願を行う、等の対応に注意を払うことが望ましいと考えられます。 <職務発明制度> 特許法では「特許を受ける権利」は発明者が発明を完成することで発生し、発明者が発明完成時点で「特許を受ける権利」を取得することにしています。 しかし、会社の従業員が完成した、会社の業務範囲に属し、なおかつ、発明を完成させた従業員の職務上の発明である「職務発明」に関しては、従業員への給与、設備、研究費の提供等、使用者による貢献がなされています。 そこで、特許法では、従業員と使用者との間の衡平に考慮して、使用者に「職務発明」についての無償の通常実施権(特許発明を実施できる権利)を付与するとともに(特許法第35条第1項)、あらかじめ使用者が従業員との間で「職務発明についての特許を受ける権利」を承継すること等を取り決めておくことを認めています(同条第2項反対解釈)。 なお、職務発明を行った従業員は、当該職務発明について使用者に「特許を受ける権利」を取得させたとき、あるいは、特許権を承継させたとき、使用者から「相当の利益」を受ける権利を有することになっています(同条第4項)。 会社内に職務発明規定を設け、使用者が「特許を受ける権利」を取得することを従業員との間であらかじめ取り決め、「従業員が職務発明を完成させた時からその特許を受ける権利は使用者に帰属する(いわゆる原始使用者等帰属)」ように取り決める、あるいは、そのような取決めがないときに、「その特許を受ける権利は従業員に帰属(いわゆる原始従業者等帰属)し、あらかじめ従業員との間で取り決めていたところによって使用者が特許を受ける権利を承継できる」ようにすることが可能です。 中小企業のための職務発明規程導入について〜発明の推奨と円滑な活用〜<平成27年度法改正を受けて> https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/newtokkyo_shiryou013/02.pdf 「従業員が職務発明を完成させた時からその特許を受ける権利は使用者に帰属する(いわゆる原始使用者等帰属)」と取り扱えるようになったのは平成27年度の特許法改正からです。中小企業でこのような取り扱いを行う場合の「職務発明規定」の例が特許庁から公表されています。 https://www.jpo.go.jp/seido/shokumu/pdf/shokumu/10.pdf <次号のご案内> 以上で説明しましたように、特許取得を目指す発明についての「特許を受ける権利」の全部を譲渡などによって移転する、あるいは「特許を受ける権利」の一部を譲渡などによって移転する等によって複数人で共同で特許出願を行ったり、特許出願後に特許出願人の名義を変更することが可能です。 ただし、共同出願の場合にはいくつかの注意しておくべき事項があります。次号ではこれについて紹介します。 以上
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ニューストピックス■ ●審査請求料、特許料等を1/3に軽減(特許庁) 中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした特許料等の軽減措置を規定した「産業競争力強化法等の一部を改正する法律」が7月9日に施行されました これにより、中小ベンチャー企業、小規模企業を対象に「審査請求料」、「特許料(1〜10年分)」、国際出願に係る「調査手数料・送付手数料」、及び国際予備審査請求に係る「予備審査手数料」が1/3に軽減されます。 https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen-fromh300401.htm 平成30年3月31日までは、産業技術力強化法や中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律等に基づいて、特許料等に対する軽減措置が適用されていましたが、4月1日に、この軽減措置が廃止されました。 そこで、7月9日から、これらの法律に代わり、「産業競争力強化法等の一部を改正する法律」に基づく軽減措置が施行されました。 ◆対象者◆ a.小規模の個人事業主(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下)) b.事業開始後10年未満の個人事業主 c.小規模企業(法人)(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下)) d.設立後10年未満で資本金3億円以下の法人 ※c及びdについては、支配法人のいる場合を除く。 ◆軽減措置の内容◆ 審査請求料 :1/3に軽減 特許料(第1年分から第10年分) : 1/3に軽減 調査手数料・送付手数料 : 1/3に軽減 予備審査手数料 : 1/3に軽減 特許料は、平成30年7月9日以降に出願審査の請求をする特許出願及び平成26年4月1日から平成30年3月31日までに出願審査の請求をした特許出願に係る特許料が軽減対象となります。 ただし、平成30年4月1日から同年7月8日までに出願審査の請求をした特許出願についても、同年7月9日以降に特許料を納付する際には、その特許料が軽減対象となります。 また、中小ベンチャー企業や小規模企業が特許協力条約に基づく国際出願を行う場合の「国際出願手数料」や国際予備審査請求を行う場合の「取扱手数料」について、納付金額の2/3に相当する額が「国際出願促進交付金」として交付されます。 ●特許審査に関する新たなベンチャー企業支援策(特許庁) 特許庁は、7月9日から特許審査に関する新たなベンチャー企業支援策を実施しています。 https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/patent-venture-shien.html 具体的には、@ベンチャー企業対応面接活用早期審査(面接活用審査)と、Aベンチャー企業対応スーパー早期審査(スーパー早期審査)で、いずれも「ベンチャー企業による出願」であって、「実施関連出願」が対象となります。実施関連出願とは、出願人自身又は出願人からその出願に係る発明について実施許諾を受けた者が、その発明を実施している特許出願です。 面接活用審査は、面接を通じて、面接官に直接技術的特徴を説明することできます。一次審査結果の通知の前に担当面接官と面接を行うことができるので、早期審査のスピードで質の高い特許権を取得することができます。 スーパー早期審査は、何よりも早く特許権を取得したいというニーズに応えるもので、平成29年度の実績をみると、平均約2.5か月で権利化が可能です。 面接活用早期審査とスーパー早期審査は、特許庁に対する費用は無料です(通常の審査請求料は必要)。 ●著作権の保護期間を70年に延長(TPP11) 米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」の関連法が可決・成立しました。協定本体の国会承認はすでに終わっており、「TPP11」の国内手続きが事実上完了しました。 「TPP11」関連法は、TPP12カ国時代に決めた関連10法の改正事項の施行日を米国抜きのTPP発効日に見直す内容です。知財分野では、著作権の保護期間を著作者の死後50年から70年に延長する、商標の不正使用についての損害賠償に関する規定の整備を行うことなどが盛り込まれています。 TPP11は、日本、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランドの11カ国が今年3月に署名しました。国内手続きはすでにメキシコが完了しており、日本は2カ国目。6カ国以上が手続きを終えれば60日後に発効し、その発効と同時に、TPP関連法の規定が日本国内にて適用されます。 ●カップヌードルの帯柄、位置商標に登録(日清食品HD) 日清食品ホールディングス(HD)は、日清食品の主力商品である「カップヌードル」の上下の帯柄の図形が、位置商標として登録されたと発表しました(登録番号:第6034112号)。 (特許情報プラットフォームより抜粋) いくつもの長方形を組み合わせた帯柄図形は、通称「キャタピラ」と呼ばれていて、1971年のカップヌードル発売以来47年間、そのデザインを変えていません。現在、カレーやシーフード味などすべての「カップヌードル」シリーズで同じデザインが使われています。 位置商標は、平成27年4月に「音商標」「動き商標」などと同時に出願できるようになった新しいタイプの商標の1つ。特定の場所に配置された図形や色で商品が識別できる場合に商標として保護されます。 ●ゲームソフトの特許、カプコンが勝訴(知財高裁) ゲームソフトのコーエーテクモゲームスが、同業大手のカプコンが所有している特許第3295771号特許権に対して特許無効審判を請求し、特許庁が請求を認めなかった審決の取消訴訟(平成29年(行ケ)第10174号)の判決が7月19日にあり、知財高裁はコーエーテクモ側の請求を棄却し、無効審判請求は成り立たないとした特許庁の審決が維持されました。 この審決取消訴訟は、カプコンが自社のテレビゲームソフトの特許権が侵害されているとしてコーエーテクモを訴えた特許権侵害訴訟事件と並行しているものです。 大阪地裁でのこの特許権侵害訴訟では、コーエーテクモのホラーゲーム「零」シリーズ作品についてカプコンの訴えが一部認められ、517万円の支払いがコーエーテクモに命じられました。この事件については、カプコンが賠償額を不服として控訴する一方、コーエーテクモも付帯控訴しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
8月28日 城南地域中小企業振興センター 中小企業経営者・技術者のための知的財産基礎講座 (東京都知的財産総合センター) ******************************************************** 発行元 : 鈴木正次特許事務所 〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5 新宿山崎ビル202 TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340 E-mail: URL: http://www.suzuki-po.net/ ******************************************************** 本メールの無断転載はご遠慮下さい。 本メールマガジンの記載内容については正確を期しておりますが、弊所は、利用される方がこれらの情報を用いて行う一切の行為について責任を負うものではありません。 |