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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2018年9月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

 (9)特許出願人になれる者(2)


  ☆ニューストピックス☆

 ■特許の早期審査の概要と留意点
 ■意匠法改正に向けた検討事項(特許庁)
 ■元号に関する商標の取り扱い公表(特許庁)
 ■知財使用料の黒字が30%増加(財務省)


  ☆イベント・セミナー情報


 特許庁は特許出願の早期審査に関する申請件数を公表しました。
 早期審査の申請件数は年々増加しており、2017年は20,529件と初めて2万件を超えました。
 近年、商品のライフサイクルや製品開発から実施(製品化)までの期間が短縮化していることに伴い、特許、意匠、商標について早期権利化を図りたいというニーズも増えています。
 そこで今号では、特許出願の早期審査の概要と留意点について紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(9)特許出願人になれる者(2)

【質問】
 特許出願を他の会社と一緒に行いたいのですが、可能ですか?
 一緒に出願することにした場合、注意しておくべきことはありますか?
 また、特許出願を行った後に特許出願人の名義を変更することは可能ですか?

【回答】
 特許取得を目指す発明についての「特許を受ける権利」の全部を譲渡などによって移転する、あるいは「特許を受ける権利」の一部を譲渡などによって移転する等によって複数人で共同で特許出願を行ったり、特許出願後に特許出願人の名義を変更することが可能であることを前回説明しました。
 複数人が共同で特許出願を行う場合、いくつかの注意しておくべき事項があります。今回は、これを説明します。

<複数人の共同で特許出願を行うときの注意>
 特許権成立を希望する発明についての「特許を受ける権利」はその全部又は一部を他人に移転することができます。そこで複数人が共同して特許出願を行うことが可能です。例えば、従業員である発明者から「特許を受ける権利」の全部を譲り受けた勤務先の企業がその中の一部を提携先企業に譲り渡して共同で特許出願する、提携先企業と共同研究・共同開発を行って完成させた発明を共同で特許出願する、等です。
 共同で特許出願を行って特許庁での審査で特許権が成立して共同特許権者になった場合、特許権の各共有者は、共有者の間で特段の取り決めを行っていない限り、他の共有者の同意を得ることなく発明の全部を実施できることが原則になっています(特許法第73条第2項)。これは特許成立する前の発明についても同様です。
 自動車のような有体物を複数人で共同所有している場合、共同所有者の中の誰か一人が自動車を使用していれば他の共同所有者は自動車を使用できません。しかし、発明は、人間の頭の中で考え出した、形のない、無体物です。そこで、共有者の全員が発明の全部を実施できる(例えば、共有者のそれぞれが発明品を製造し、販売することができる)ことになっています。
 ただし、いくつか注意しておくべき点がありますので紹介します。

共有者全員で特許出願しなければならない
 「特許を受ける権利」を複数人で共有している場合、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願することができません(特許法第38条)。これに違反する場合には、特許を認めないとする拒絶の理由にされ、特許無効の理由にされます。

共同出願人全員で行う手続
 特許出願に対して不利益にならない行為については共同出願人の中の一人でも行うことができますが、特許法第16条に規定されている所定の行為については、共同出願人全員一緒でなければ手続できないことになっています。
 例えば、
 特許出願を放棄する、
 特許出願を取り下げる、
 既に行った特許出願に基づいて1年以内に実施例を追加する等の優先権主張出願を行う、
 特許庁での審査で「特許を認めることができない」とする「拒絶査定」を受けたのでこれに不服を申し立てる拒絶査定不服審判を請求する、等
 の行為は共同出願人全員一緒でなければ手続できないことになっています。
 一方、特許法第16条に規定されていない行為、例えば、特許出願審査請求ですとか、特許庁での審査で受けた「拒絶理由通知書」に対応する意見書・手続補正書の提出、等は、共同出願人の中の一部の者のみでも特許庁に対する手続を行うことが許されています。

他の共有者の同意が必要な場合
 自分が所有している「特許を受ける権利」の持分を他人に譲渡する場合、事前に他の共有者の同意を得なければなりません(特許法第33条)。例えば、A社とB社とで共同特許出願していたところ、A社が所有している特許出願に係る発明についての「特許を受ける権利」の一部をC社に譲渡して、A社、B社、C社の共同特許出願に変更する場合には、事前に、B社の同意を得る必要があります。
 また、共同特許出願について、他人に仮専用実施権の設定、仮通常実施権の許諾を行う場合にも、事前に他の共有者の同意を得なければなりません(特許法第33条)。例えば、A社とB社とで共同特許出願していたところ、A社がC社に対して仮通常実施権の許諾を行う場合、事前に、B社の同意を得る必要があります。
 発明は人間が頭の中で考え出したもので目に見えません。そこで「特許を受ける権利」を有する者それぞれが発明の内容を完全に実施できますが、発明の実施はその実施に投下する資本と、関与する技術者如何によって著しく違った結果を生み出すことがあります。
 このため、共同出願人の各人が自由に持分移転したり、実施許諾すると、他の共有者の持分の価値が著しく異なったものになることがあります。
 このようなことが生じるのを防ぐべく、持分の譲渡や、仮専用実施権の設定、仮通常実施権の許諾には、他の共有者の同意が必要であるとしているものです。

共同出願にあたっての共同出願人の間での契約
 上述しましたように、共同の特許出願の場合、注意しておくべき事項があり、また、一の共同出願人の行為が、他の共同出願人の不利益につながることもあります。そこで、共同出願にあたっては、共同出願人の間で契約を結んでおくことが望ましいです。ご不明な点は、専門家である弁理士にお問い合わせください。

<次号のご案内>
 来月は特許出願を行った発明が採用されている製品や、特許取得した特許発明が採用されている製品につける特許表示について紹介し、併せて虚偽表示について説明します。
以上


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■ニューストピックス■

●新規性喪失の例外適用についての留意事項
特許出願の早期審査、申請件数が2万件超える〜早期審査の概要と留意点
 特許庁は特許出願の早期審査に関する申請件数を公表しました。
 早期審査の申請件数は年々増加しており、2017年は20,529件と初めて2万件を超えました。
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/v3souki.htm

 早期審査・早期審理制度は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査・審理を通常に比べて早く行う制度です。
 早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下(2017年実績)となっており、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。
 また、早期審理を申請した場合には、申請後、審理可能となってから平均4か月以下(2017年実績)で審決を発送しています。

【早期審査の要件】
 早期審査はすべての特許出願に対して請求できるものではなく、以下のような要件があります。
 特許の場合、対象になる出願は、[1] 実施関連出願、[2] 外国関連出願、[3] 中小企業等の出願、[4] グリーン関連出願、[5] 震災復興支援関連出願、[6] アジア拠点化推進法関連出願と定められています。

【手続】
 早期審査を申請するには、早期審査をする事情等を説明するための書類「早期審査に関する事情説明書」を特許庁に提出する必要があります。事情説明書には、先行技術文献の開示及び対比説明を記載しますが、条件によってはこれらの記載を省略することができます。
 例えば、B中小企業の出願における「中小企業」は、中小企業基本法等に定められている中小企業のことで、製造業であれば従業員の数が300人以下あるいは、資本金の額が3億円以下のどちらかを満たせば中小企業に該当します。
 この場合、「出願人は製造業に属する事業を主たる事業として営むものであって従業員数は○○人、資本金は○億円であるから、『早期審査・早期審理ガイドライン』に定める中小企業である。」と記載するのみでよく、先行技術との対比説明は記載する必要がありません。

【留意点】
 早期に審査されると、もちろん早期に権利化されるメリットがありますが、同時に、審査の結果として拒絶された場合は、早期に拒絶査定が確定することになります。
 そうすると、出願発明を利用した製品に「特許出願中」を表示することができる期間も短くなってしまいます。
 また、早期に特許になるため、国内優先権等によって新たに生まれた改良発明を保護することが難しくなります。早期に特許公報が公開されてしまうため、公開後に出願した改良発明が、自分の特許公報によって新規性や進歩性が否定される可能性もあります。したがって、発明が改良されるような可能性がある場合には、早期審査を申請する前に慎重に検討する必要があります。
 また早期に公表される結果、ライバル関係にある他社に自社の技術開発動向を知らせることになるといった点も注意が必要です。

 早期審査・早期審理の対象となる要件や必要な手続など、詳細については、以下のガイドラインをご参照ください。
特許出願の早期審査・早期審理ガイドライン(PDF:827KB)
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/pdf/v3souki/guideline.pdf

●意匠法改正に向けた検討事項(特許庁)
 特許庁は、意匠制度の見直しに向けて検討を進めています。意匠法改正の方向として現在検討している事項は、以下のとおりです。

1.画像デザインの保護対象
 物品に記録されていない画像(例えば、クラウド上の画像)や、物品以外に表示される画像(壁や人体に投影される画像)、物品の機能と関係の無い画像(コンテンツ画像)についても保護すべきか。

2.空間デザインの保護
 不動産や店舗の内装デザインについて保護すべきか。

3.関連意匠制度の拡充
 本意匠の公報発行日後についても、関連意匠の出願を認めるべきか。関連意匠のみに類似する関連意匠の登録を認めるべきか。

4.意匠権の存続期間の延長
 現行法の登録日から20年を25年に延長すべきか。存続期間の延長に併せて、意匠権の存続期間の起算日を、登録日から出願日に変更することについてどう考えるか。

5.複数意匠の一括出願について
 複数の意匠を一括して出願できるようにしてはどうか。

6.物品区分表の見直しについて
 物品区分表に掲げられた物品の区分と同程度の区分を記載しない出願でも、拒絶理由としないといった仕組みとすることについてどう考えるか。

●元号に関する商標の取り扱い公表(特許庁)
 現元号の「平成」が2019年4月30日をもって最後となり2019年5月1日から新元号へと変更される予定を受け、特許庁は、元号からなる商標又は元号を含む商標の審査上の取り扱いについて公表しました。
 現在の商標審査基準には、旧元号についての商標の審査上の取り扱いは明確ではありませんでした。 そこで、旧元号についての商標の審査上の取り扱いの明確化を図るため商標審査基準の改定を予定しています。元号からなる商標又は元号を含む商標に関する商標の審査上の取り扱いについては下記のようになる予定としています。

◆元号(現元号であるか否かを問わない)として認識されるにすぎない商標は、識別力がない(自分の商品・役務と他人の商品・役務を区別するものにはならない)ため、商標登録を受けることはできない。

◆現元号であるか否かにかかわらず、会社の創立時期、商品の製造時期、その他の日付・期間等を表示するものとして一般に使用されている場合は、元号として認識されるにすぎない。すなわち、現元号を表示する文字のみからなる商標「平成」は、単に現元号として認識されるにすぎないため、商標登録を受けることはできない。
 改元後、「平成」が旧元号となった場合も同様で、単に旧元号として認識されるにすぎないため、商標登録を受けることはできない。

◆元号は識別力がないと判断されるため、他の識別力のない文字等
(例:商品又は役務の普通名称)を組み合わせた商標(例:平成まんじゅう「指定商品:饅頭」)も、識別力はなく、商標登録を受けることはできない。

◆元号と認識されたとしても、例えば、ある特定の商品又は役務において使用された結果、需要者が特定の者の業務に係る商品又は役務であると認識できるに至っている場合には、識別力があるものとなるため、商標登録を受けることが可能(他の拒絶理由に該当しない場合に限る)。

―主なポイント―
■元号(現元号であるか否かを問わない)に他の識別力のない文字等を組み合わせたとしても、商標登録を受けることはできない
(例:平成まんじゅう「指定商品:饅頭」)×

■特定の商品・役務に使用された結果、識別力を有すると判断された場合に限り登録可能(他の拒絶理由に該当しない場合に限る)

●知財使用料の黒字が30%増加(財務省)
 財務省が発表した平成30年上半期の国際収支統計によると、1〜6月の知的財産権等使用料収支の黒字額は、前年同期比30.0%増の1兆5,034億円となり、上半期としては過去最高を記録しました。
 知的財産権等使用料は、特許権や著作権の使用料について、日本側が海外から受け取った金額から海外に支払った金額を差し引いたものです。知的財産権等使用料の増加の背景には、製造業の海外移転の加速があります。国内メーカーが海外に進出したり、他社を買収したりして子会社を設けると、子会社は親会社の特許などを使って商品をつくるため、親会社に使用料を支払う必要があります。特に自動車関連は、親会社と子会社間のやり取りが多いとされます。
 日本の知財収入の約70%は、この親会社・子会社間の取引が占めています。知財強国と評価されるようになるには、系列関係にない企業からの知財使用料収入がもう少し増える必要があるように思われます。
 国別でみた知財使用料収支では、米国は前年同期比19.9%増の2,644億円の黒字。中国は同15.5%増の1,534億円の黒字でした。

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  ■イベント・セミナー情報■

9月14日 東京都中小企業振興公社
外国出願戦略セミナー
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2018/300914shutsugan.html
(東京都知的財産総合センター)

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最終更新日 '18/11/14