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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2018年10月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

 (10)特許表示、偽装表示


  ☆ニューストピックス☆

 ■「特許行政年次報告書」2018年版の主な項目
 ■特許庁が商標権を取得
 ■五輪グッズの商標権侵害が増加(知財権侵害の輸入差止)
 ■フラダンスの振り付けに著作権認める(大阪地裁)


  ☆イベント・セミナー情報


 特許庁は、「特許行政年次報告書」2018年版をこのほど公表しました。年次報告書は、産業財産権に関して充実した統計データやその分析が掲載されています。特許・実用新案・意匠・商標に関する統計データを調べる際には、まずこの報告書を調べてみてはいかがでしょうか。
 そこで今号では、特許行政年次報告書の中から注目される主な項目を取り上げます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(10)特許表示、虚偽表示

【質問】
 特許出願を行ったので特許出願済の発明が採用されている製品に「特許出願中」と表示してよいですか?「虚偽表示はやってはいけない」と聞いたことがあるのですが、どんなことが「虚偽表示になるのでしょうか?

【回答】
 現実に特許出願中の発明が採用されている物に「特許出願中」と表示することは問題ありません。ところで、特許法には特許表示に関する規定がありますが、特許出願中の表示に関する規定はありません。特許表示に関する規定を紹介しながら「虚偽表示」について説明します。

特許表示
 特許法では次のように規定されています。
 「特許権者は、物の特許発明におけるその物、もしくは物を生産する方法の特許発明におけるその方法により生産した物(以下「特許に係る物」という。)又はその物の包装(容器を含む)に、その物又は方法の発明が特許に係る旨の表示(以下「特許表示」という。)を付するように努めなければならない。」(特許法第187条)。
 「特許に係る物に特許表示を付することは、その物が特許権の対象であることを明示し、権利侵害を未然に防ぐ効果を有する」(特許法逐条解説)と考えられています。
 「付さなければならない」ではなく「付するように努めなければならない」ですので、本条に違反しても罰則等の制限はありません。
 すなわち、特許に係る物に特許表示をしていなかったからといって、第三者による特許権侵害行為を特許権に基づいて排除する際、損害賠償請求が難しくなるというようなことは我が国ではありません。
 ただし、外国では異なる取り扱いがされることがあります。外国での取り扱いについては弁理士にご相談ください。
 特許表示の仕方については「物の特許発明の場合は『特許』の文字と特許番号、物を生産する方法の特許発明の場合は『方法特許』の文字と特許番号を表示すること」とされています(特許法施行規則第68条)。
 そこで、特許第○○○○号や、方法特許第○○○○号と表示するのが特許法で推奨されている特許表示になります。

虚偽表示
 「特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為」などは、虚偽表示にあたるとして禁止されています(特許法第188条)。
 特許法逐条解説では、ある物について特許がされていない場合、たとえば、ある鉛筆がなんら特許に係らない物である場合に、「その鉛筆に特許表示を付する行為」、「特許表示を付した鉛筆を譲渡する行為」、「鉛筆を製造させるため広告にその鉛筆が特許権の対象である旨を表示する行為」、「実際には製造方法が特許の対象ではないにもかかわらず広告にその鉛筆の製造法が特許権の対象である旨を表示する行為」が虚偽表示に該当する具体例として紹介されています。
 「〔虚偽表示の禁止〕の規定(特許法第188条)に違反した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する」とされています(特許法第198条 虚偽表示の罪)。
 したがって、特許出願日から20年が経過することで特許権が消滅した、あるいは、特許権を維持するための特許料(特許維持年金)の特許庁への納付を中止したことで特許権が消滅したならば、速やかに、「特許第○○○○号」等の特許表示を削除する必要があります。
 特許法が推奨している特許表示は「特許第○○○○号」ですから、よく目にする「PAT.○○○○」(「PAT.」は「Patent」(特許)の省略形であると思われます。)という表示は特許法が推奨している特許表示ではありません。
 「特許表示と紛らわしい表示を付する行為」は虚偽表示であるとされていますが、現存している特許権の対象になっている物に相違ないならば「PAT.○○○○」という表示を特許表示として使用していても「虚偽表示に該当する」との指摘を受けることは無いと思われます。

特許出願中の表示
 特許出願中の表示に関して特許法には規定がありません。
 一方、商品が特許出願を行っている新規な技術を採用したものであることを積極的に宣伝したり、同業者が直ちに後追い商品を市場に出すことを牽制するという意味で、特許出願中の表示を行うことには意義があると思われます。
 特許法に規定が存在していないので特許法で推奨されている特許出願中の表示はありませんが、「特許出願中」という表示や、「PAT.P」という表示を目にすることがあります。「PAT.P」は「Patent Pending」の省略形であると考えられています。
 特許表示では虚偽表示が禁止されていて刑事罰の対象にまでなっていますので、特許出願中の表示を行う場合にも虚偽の表示にならないように注意を払うべきと思われます。
 日本の現状では、特許表示として「PAT.○○○○」という表示を用いることが許容されていますので、現実に特許出願を行っている物であれば「特許出願中」あるいは、「PAT.P」という表示を行うことが許容されると思われます。
 ただし、所定の期間内に審査請求を行わなかったことで特許出願が消滅したあるいは、特許庁の審査で「特許を認めることができない」とする「拒絶査定」を受け、確定して特許出願が消滅した場合などでは、速やかに特許出願中の表示を削除する必要があります。
 また、古い判決ですが「特許出願済」という表示は「特許に係ることの表示に紛らわしい表示」と判断されたことがあります(大審院昭5年10月12日)。そこで「特許出願済」という表示よりは「特許出願中」という表示の方が望ましいと思われます。

「国際特許」という表示
 ときどき「国際特許取得」、「国際特許」という表示を目にすることがあります。
 特許協力条約(PCT)に加盟している世界の複数の国に同時に特許出願を行ったという効果を発揮させることのできる「国際出願」というものは存在していますが「国際特許」というものは存在していません。
 日本国なら日本国特許庁、米国なら米国特許庁のように、世界各国の特許庁でそれぞれ別個独立に審査を受け、特許性が認められて各国ごとに成立した特許がその国の領域内において効力を発揮するのが原則で、日本国特許、米国特許という各国ごとの特許しか存在していません。
 「国際特許取得」、「国際特許」という表示は、おそらく、「国際出願」を行ったことを誤解し、間違って表示しているのではないかと思われます。

<次号のご案内>
 特許出願を行った後、あまり間をおかずに、特許出願した発明についての改良を見つけ出すことがあります。特許出願済の発明についての改良ですので、別途に新たな特許出願を行うのではなく、出願済の特許出願の中に組み入れて一件の特許出願で対応することができないか、次回はこのような問題についてのご質問に回答します。
以上


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■ニューストピックス■

●審査期間は平均14.1か月、FA期間は平均9.3か月
〜「特許行政年次報告書」2018年版

 特許庁は、「特許行政年次報告書」2018年版をこのほど公表しました。今回は、この中から注目される主な項目を取り上げます。

【出願件数】
 特許出願件数は、2008年以降漸減傾向で推移していましたが、2015年以降横ばいで推移し、2017年は318,479件で、2016年よりも微増(0.03%増)。
 国際出願(PCT国際出願)の件数は、年々増加しており、2017年は47,425件(前年比6.6%増)と過去最高となりました。
 意匠登録出願件数は、2009年以降多少の増減を繰り返しながらほぼ横ばいで推移しており、2017年は前年比3.5%増の31,961件。
 商標登録出願件数は年々増加しており、2017年は前年比18.0%増の190,939件と過去10年間では最高となりました。

【審査期間・FA期間】
 2017年度の特許の「権利化までの期間」(標準審査期間)は平均14.1か月。「一次審査通知までの期間」(平均FA期間:審査請求日から一次審査通知までの平均期間)は9.3か月。
 2017年度の商標の権利化までの期間は平均7.7か月。出願から一次審査通知までの平均FA期間は6.3か月。
 2017年度の意匠の権利化までの期間は平均6.7か月。出願から一次審査通知までの平均FA期間は5.9か月。

【特許審査実績】
 2017年の一次審査件数は239,236件。特許査定件数は183,919件、拒絶査定件数は60,613件、特許登録件数は199,577件。2017年の特許査定率は、74.6%(前年比1.2ポイント減)。

【特許出願・審査請求・特許登録等】
 特許出願件数は近年漸減傾向であるものの、審査請求件数はほぼ横ばいを維持しています。特許出願件数に対する特許登録件数の割合(特許登録率)は増加傾向にあることから、出願人が特許出願にあたり厳選を行うことが浸透し、企業等における知的財産戦略において量から質への転換が着実に進んでいることが窺えます。

【審判請求・異議申立の動向と審理動向】
[1] 2017年における特許の拒絶査定不服審判の請求件数は、18,591件。
 前置審査(拒絶査定不服審判の請求と同時に特許出願の明細書・図面等の補正がされた場合に、その審判の請求を審査官に審査させる制度)の結果を見ると、拒絶査定を取り消して特許査定される件数(前置登録件数)の全体に占める割合は、2010年以降、6割前後で推移しています。
 2017年における特許の異議申立件数は、1,251件。特許の無効審判の請求件数は161件。
[2] 2017年における特許の拒絶査定不服審判の平均審理期間は、12.6か月。特許異議申立の平均審理期間は、7.2か月。特許・実用新案の無効審判の平均審理期間は、10.6か月。
・「特許行政年次報告書」2018年版
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2018/honpen/0101.pdf

●特許庁が商標権を取得(地域団体商標のロゴ)
 特許庁は、このほど自らを出願者として商標権を取得しました。
 同庁が取得したのは、地域特産品のブランド化を推進する「地域団体商標制度」のロゴマーク(登録番号第6036291号)。商標登録を審査する審査機関が自らの出願をチェックし、権利を登録するのは極めて例外的な措置です。
 「制度を保証するにはステータスと信頼性が必要」として、今年の1月24日に特許庁長官名義で商標を出願し、4月20日に登録されました。同庁によると、審査は通常の手続きで実施され、異議申立もないとしています。
 地域団体商標は、地域の名称と商品(役務)の名称等からなる商標で、事業協同組合などの団体が使用し、一定の範囲で周知となった場合には地域団体商標として登録を認める制度。全国各地に根ざした特産品をブランドとして確立することを目的に2006年に創設されました。

特許庁が商標権を取得したロゴマーク<商標登録第6036291号>

●知財権侵害で輸入差止、五輪グッズの商標権侵害が増加(財務省)
 財務省は、平成30年上期(1〜6月)に知的財産権を侵害する物品の輸入を全国の税関で差し止めた点数が、前年同期比で約2.4倍の65万点を突破したと発表しました。このうち偽ブランド品など商標権の侵害が約3.5倍の約56万点で83.6%を占めています。
 2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、商標権などを侵害したピンバッジやTシャツといった関連商品が増えています。
 侵害物品件数では、13,833件と10.2%減少したものの引き続き高水準です。偽ブランド品などの商標権侵害物品が13,512件(構成比97.2%)で、引き続き全体の大半を占め、次いで偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が208件でした。
 地域別の輸入差止件数では、中国が全体の89.0%(12,308件)を占めています。品目別に見ると、医薬品の輸入差止点数が310,815点、家庭用雑貨の輸入差止点数が56,911点と大幅に増加しました。

●フラダンスの振り付けに著作権認める(大阪地裁)
 フラダンスの振り付けを創作した人に著作権を認めるべきかどうかが争われた裁判で、大阪地方裁判所は、「振り付け全体の中で、作者の個性が表れている部分が一定程度ある場合は著作権が認められる」という判断を示しました。
 裁判は、フラダンスの指導者が自ら創作した振り付けを許可なく使われ、著作権が侵害されているとして、フラダンス教室の運営団体に上演差し止めなどを求めたものです。
 判決では、「フラダンスの手の動きは歌詞を表現するもので、動作自体はありふれたものであっても作者の個性が表れる。振り付け全体の中で、こうした個性の部分が一定程度ある場合は著作物性を認めるのが相当」などとして、著作権侵害を認め、会員への指導や国内施設での上演禁止と、約43万円の支払いを命じました。
 判決によると、原告は1988年ごろから協会にフラダンスを指導。
 2014年の契約解除に伴い、自身が創作した振り付けを使わないよう申し入れましたが、協会は拒否して使用を続けていました。協会側は「振り付けは基本動作の組み合わせに過ぎず、著作物には当たらない」と主張していました。

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  ■イベント・セミナー情報■

10月12日 東京都中小企業振興公社
ネットビジネス知財セミナー〜中小企業にとってのネットビジネスと知財
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2018/301012netbusiness.html
(東京都知的財産総合センター)

11月21日 東京都新宿区 新宿三葉(ミツバ)ビル
「2018年第3回 高橋知財セミナー」
 裁判例における進歩性の考え方について
 特別講師:清水節弁護士(元知的財産高等裁判所所長)
http://ht-law.net/topics/20181121.html
(TH総合法律事務所 弁護士・弁理士 高橋淳)

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最終更新日 '18/12/15