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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2019年3月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

 (15)特許無効審判


  ☆ニューストピックス☆

 ■新旧の元号の商標登録は原則不可 商標審査基準を改訂
 ■同一コンセプトの関連意匠の出願期間を10年に延長
 ■違法ダウンロードの対象を拡大
 ■特許料などがクレジットカードで納付可能


  ☆イベント・セミナー情報


 今年5月1日に元号を改める「改元」が行われるのを前に、特許庁は、新しい元号を含むすべての元号の商標登録を、一部の例外を除いて認めないよう、商標審査基準を改訂しました。
 昭和から平成への改元の際も、「平成」を含む商品や社名などの登録申請が相次ぎましたが、新元号の決定を前に、元号を含む商標登録をめぐる混乱を防ぐための措置と考えられます。
 今号では、改訂された商標審査基準について紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(15)特許無効審判

【質問】
 特許庁のJ-Plat Patでライバルメーカーの会社名を特許出願人の検索キーワードにして検索したところ現存している特許権を発見しました。この発明は、当業界では従来から知られていた技術で特許が成立しているのが間違いではないかと思います。当社ではこの技術を採用した製品を市場に出したいと考えています。この特許にどのように対応すればよいでしょうか?
【回答】
 新製品が特許権を侵害するおそれが無いものになるように設計変更することが難しく、特許権者に交渉して実施許諾を受けることも難しいのであれば特許無効審判請求を特許庁に提出することが考えられます。

<特許無効審判(特許法第123条)>

 特許無効審判は、そもそも、新規性が欠如している、進歩性が欠如している、等の理由で成立すべきでなかった特許に対して、特許は初めから成立すべきでなかったという特許庁の判断を求めて特許庁に提出できるものです。
 特許庁での審理の結果「特許は初めから成立すべきでなかったという」効果が発揮されるものとして特許異議申立(特許法第113条)があります。
 特許異議申立は、特許庁が行った特許付与について、特許庁自身が見直しを行う契機を広く社会に求めるものです。一方、特許無効審判は、特許権者から「特許権侵害である」として追及を受けるおそれのある者などと、特許権者との間、すなわち当事者間における具体的な紛争の解決を主たる目的にしています。このため、両制度の間には以下のような相違があります。

【特許異議申立制度と無効審判制度との比較】
  特許異議申立 特許無効審判
制度趣旨  特許の早期安定化を図る  特許の有効性に関する当事者間の紛争解決を図る
手続  特許庁と特許権者との間で進められる査定系手続
 原則として書面審理
 請求人と被請求人(特許権者)との間で進められる当事者系手続
 原則として、特許庁の審判廷に出廷して、口頭審理
特許異議申立人・無効審判請求人になれる者  何人も異議申立可能ただし、匿名での申立は不可  利害関係人のみが無効審判を請求できる(利害関係人:特許発明と同種の製品を製造する者、実際に特許権侵害で訴えられている者、類似の特許を有する者、等)。
申立て・請求の時期  特許掲載公報発行の日から6月以内に限って申立可能  設定登録後いつでも無効審判請求可能(権利の消滅後でも無効審判請求可能)
異議申立の理由、無効審判請求の理由  公益的理由(新規性・進歩性欠如、明細書の記載不備、等)  公益的理由(新規性・進歩性欠如、明細書の記載不備、等)、
 権利帰属に関する理由(冒認出願、共同出願違反)、
 特許後の後発的理由(外国人の権利享有規定に対する後発的な違反、後発的な条約違反)
特許庁での審理の結論  特許維持決定あるいは、
 特許取消決定
 棄却審決(無効審判請求を棄却する)あるいは、
 無効審決(無効審判請求を認める)
不服申立  特許維持決定に対しては不服申立不可(異議申立人は同一の証拠、同一の理由で特許無効審判請求が可能)、
 特許取消決定に対して特許権者は知財高裁に決定取消訴訟の提起可能(被告は特許庁長官)
 棄却審決に対しては無効審判請求人、無効審決に対しては特許権者がそれぞれ知財高裁に審決取消訴訟の提起可能(前者の場合は特許権者が被告、後者の場合は無効審判請求人が被告)
特許庁での審理の結論が確定したときの効果  特許維持決定:特許権は維持される
 特許取消決定:特許権は最初から成立しなかったものとして取り扱われる
 棄却審決:特許権は維持される。棄却審決確定を受けた無効審判請求人は同一の無効理由で再度の特許無効審判を請求できない(一事不再理効)
 無効審決:特許権は最初から成立しなかったものとして取り扱われる。後発的無効理由の場合は後発的無効理由に該当した時から消滅

 特許庁が公表しているデータによれば、特許無効審判の請求件数は、2015年が211件、2016年が140件、2017年が161件です。
 毎年18〜19万件程度の特許権が成立し、特許掲載公報発行後の6カ月間に限って提出が認められている特許異議申立の件数は年間1000件を超えています。特許無効審判は特許成立後何年経過してからでも請求可能なことを考えますと特許無効審判請求件数は決して多くありません。
 ただし、2017年に審決が下された特許無効審判では57%程度に無効審決が下されています。なお、無効審判の審理期間は平均11カ月程度です。
 いたずらに紛争を発生させるのは望ましくありませんから、他社の特許権を発見した場合、特許権侵害にならないように技術的に回避する道を探る、技術的に回避できないならば実施許諾を申し込む、等の対応を採るのが望ましいとされています。
 特許権者から特許権侵害訴訟の提起を受けた際に、その侵害訴訟における対抗策の一つとして裁判所において「無効の抗弁」(特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、原告である特許権者は、被告に対して権利行使することができない。特許法第104条の3)を行い、その一方で、特許庁において特許無効審判を請求するというのが一般的です。
 特許無効審判請求は、このように、特許権者との間における具体的な紛争の場面で活用されることが多いものですので慎重な対応が必要で専門家である弁理士によく相談されるようお勧めします。

<次号のご案内>
 次号では、特許出願の審査において、特許請求している発明の中の一部について拒絶理由を受け、残りの部分について「拒絶の理由を発見しない」という指摘を受けた場合に分割出願を行って対応する事例について紹介します。

以上


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■ニューストピックス■

●新旧の元号の商標登録は原則不可 商標審査基準を改訂

 特許庁は、商標審査基準を改訂し、新旧の元号は原則、商標登録できないことを明文化しました。
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/14th_kaitei_h31.htm

 商標審査基準は、特許庁が商標登録出願の審査をする際の基準として定めているものです。従来の審査基準では現元号以外の元号は商標登録ができると解釈される可能性がありましたが、今回、商標登録できない対象について、「元号として認識されるにすぎない場合」と明記し、過去の元号だけでなく、今年新しく決まる元号についても原則、登録を認めないことを明確にしました。

 実際の審査では、平成だけでなく昭和などの過去の元号でも商標登録を制限しています。例えば、「昭和まんじゅう」(指定商品: 饅頭)などは元号として認識されるため却下されています。
 ただ、「元号を含む商標は全て登録とならない」というものではありません。元号を含む商標であっても、世の中にすでに広く知られた社名などは例外的に認めています。例えば、大正製薬、明治ホールディングス、昭和産業などがあります。
 元号と認識されたとしても、長く使用された結果、利用者が特定の企業や商品だと認識できるように至った場合に限り、例外として登録を認める可能性があります。

 今年5月1日に行われる改元では、新しい元号が4月1日に発表される予定です。新元号が公表された場合、元号に関連した商標登録の申請が多く出される可能性があります。昭和から平成への改元の際には、元号を含む商品や社名などの登録申請が相次いだことを受け、特許庁では、審査基準を改訂することで、商標登録をめぐる混乱や、元号を利用した便乗商法を防ぐ狙いがあるようです。

●同一コンセプトの関連意匠の出願期間を10年に延長

 特許庁は、一貫したデザインコンセプトに基づくデザインを保護するため、意匠法を改正する方針です。今国会に意匠法改正案を提出する予定。
 改正案では、本意匠の公報発行日後における関連意匠の出願や、関連意匠にのみ類似する意匠の登録が可能となります。関連意匠の出願可能期間については、本意匠の出願から10年以内とし、柔軟な商品展開をできるようにします。
 近年、長期間にわたってモデルチェンジを継続的に行う企業が増えており、このような企業のデザインを保護するためには現行の出願可能期間では、こうしたデザインを十分に保護できないと判断しました。
 また、製品のデザインに少しずつ改良を加えていく開発手法も増加しているため、関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認めます。例えば、本意匠、その関連意匠A、Aにのみ類似する関連意匠B、Bにのみ類似する関連意匠C、というように、本意匠から連鎖して類似する意匠全てが登録可能となります。
 ただし、本意匠の出願から10年経過前であっても、本意匠が既に消滅している場合には、関連意匠の出願を認めないこととしました。


産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会
「意匠制度の見直しの方向性(案)」より

●違法ダウンロードの対象を拡大(文化庁)

 インターネット上の「海賊版サイト」対策をめぐり、文部科学省の文化審議会・著作権分科会は、著作権侵害に対する新たな措置を盛り込んだ報告書をまとめました。
 報告書では、海賊版と知りながら、インターネット上の著作物をダウンロードする違法行為について、その範囲を現行の音楽・映像だけでなく、漫画や雑誌、ゲームソフト、コンピュータープログラムを含む全ての著作物に拡大することを求めました。
 新しい海賊版対策では、静止画も含まれるため、メモ代わりにスマートフォンなどの端末で著作権を侵害した画面を撮影して保存する「スクリーンショット」も著作権侵害の対象になる可能性があります。
 ただ刑事罰の適用は、国民生活や表現の自由に慎重に配慮すべきだと指摘。作品をまるごとコピーする行為や継続的に何度も繰り返す行為など悪質なケースに限定するよう求めました。罰則は2年以下の懲役か200万円以下の罰金またはその両方で、被害者の告訴がないと起訴できない親告罪とするのが適当としました。
 このほかインターネット上の海賊版サイトに利用者を誘導する「リーチサイト」を規制する内容も盛り込まれました。
 報告書を受け、文化庁は今国会に著作権法改正案を提出する方針ですが、有識者からは「ネット上の著作物が違法か合法かはすぐに判別できない」「ネット利用を萎縮させる」として規制対象の限定化を求める声明が発表されています。

●4月1日から特許料などがクレジットカードで納付可能

 特許料などの手数料が今年4月1日よりクレジットカードで納付することができるようになります。
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/credit_shinsetsu.html

 従来、特許料などの手数料の納付方法として認められていたのは、特許印紙の貼付、予納された見込み額からの充当、納付書による現金納付、Pay-easyによる電子現金納付、金融機関の預金口座から振り替える口座振替の5つでしたが、特許庁は、利便性向上のため4月1日から指定立替納付制度(クレジットカード納付制度)を新設しました。
 なお、クレジットカード納付は、電子出願ソフトを用いたオンライン手続のみが対象ですので、ご注意ください。

●EPAが発効、日本とEUの地理的表示(GI)を相互で保護

 日本と欧州連合(EU)との間の経済連携協定(EPA)が2月1日に発効されたことに伴い、日本国内において改正された「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(地理的表示法:GI法)が施行されました。
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/outline/index.html

 これにより日本、EUでそれぞれ指定された地理的表示(農産品・酒類)が相互で保護されることになります。国内生産者は模倣品による権利侵害を防ぐことができるほか、EUで食品名が浸透することで農林水産物や加工食品の輸出拡大も期待できます。

 産地と結びついた食品や酒類のブランド名称は、地理的表示(GI)と呼ばれ、知的財産と認められています。国内では2015年にGI法が施行され、長野県の「市田柿」や福井県の「越前がに」など69品目の食品が登録されています。
 農産品では、EUで保護される日本側GIは48産品、日本で保護されるEU側GIは71産品(2018年9月時点)。酒類では、EUで保護される日本側GIは8産品、日本で保護されるEU側GIは139産品(2018年9月時点)。
 また、地理的表示の保護前から使用されていた同一・類似名称(先使用)については、日欧の協議で既存の名称も権利侵害となりうることで合意し、最大7年間の経過期間後は、抵触する名称の地理的表示の使用は原則禁止となりました。
 また、食品そのものの名称表示だけでなく、外食店でのメニューや広告、インターネット上での不当な名称使用も禁止されます。


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  ■イベント・セミナー情報■

3月5日 板橋区立文化会館
平成30年度 第2回知的財産マッチング会
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2018/310305matching.html
(東京都知的財産総合センター)

3月19日 東京都中小企業振興公社
著作権ビジネスにおける契約実務
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2017/300313chosaku.html
(東京都知的財産総合センター)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
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最終更新日 '20/01/03