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2019年4月1日号
本号のコンテンツ
☆知財講座☆
■弁理士が教える特許実務Q&A■
(16)特許取得に要する費用についての公的な助成
☆ニューストピックス☆
■特許異議申立により6割超が特許権縮減
■「ティーコーヒー」の類似性認めず(大阪地裁)
■携帯特許のライセンス契約で排除措置命令を取消し(公取委)
■「そだねー」の商標出願に拒絶理由通知(特許庁)
☆イベント・セミナー情報
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特許庁は、特許異議申立の最新の統計情報を公表しました。
特許異議申立による取消決定率は10%程度ですが、特許権者が訂正をして維持決定がされた案件と、請求項に係る特許の全部又は一部が取り消された案件とを加えると、60%以上で特許権が縮減されています。
特許異議申立制度は、特許権を適正な範囲に訂正することができる有用な制度です。競合他社の特許権の範囲を狭めたいと思われる場合に、異議申立制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
今号では、特許異議申立の統計情報を紹介します。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■
(16)特許取得に要する費用についての公的な助成
【質問】
本年4月から中小企業の特許出願で審査請求を行う際の費用が減額されるとの話を聞きました。特許出願を行うこと自体にかなりの費用が発生するのですが、特許出願に対して公的な助成は行われていないでしょうか?
【回答】
特許出願に対する公的な費用助成としては外国への特許出願の際に発生する費用への助成制度があります。この他にも、会社が所在している各都道府県、市区町村などで日本国内の特許出願、等に対する費用助成が行われることもあります。
◆外国出願に要する費用の半額補助◆
特許庁では、中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成しています。 独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)と各都道府県等中小企業支援センター等が窓口となり、全国の中小企業が支援を受けることができます。地域団体商標の外国出願については商工会議所、商工会、NPO法人等も応募できます。また、意匠においては、「ハーグ協定に基づく意匠の国際出願」も支援対象です。
下記の特許庁HPは平成30年度(2018年度)の中小企業知的財産活動支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業))を紹介しているものです。本年4月1日以降、前年度と同内容の2019年度の事業が紹介されることになると思われます。
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_gaikokusyutugan.html
この特許庁HPに全国各地域の実施機関である、例えば、千葉県産業振興センター、千葉市産業振興財団、埼玉県産業振興公社、神奈川県産業振興センター、横浜市企業経営支援財団、川崎産業振興財団、あいち産業振興機構、京都産業21、京都高度技術研究所、大阪府産業振興機構、福岡県中小企業振興センター、等のリンクが貼られていますのでご参照ください。
上述した特許庁のHPではリンクが貼られていませんが東京都では、東京都中小企業振興公社 東京都知的財産総合センターが同様の外国出願に要する費用の半額補助を行っています。
◆東京都による外国特許出願費用助成事業◆
東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社では、中小企業の海外展開進出支援の一環として、外国への特許・実用新案・意匠・商標の出願等に要する費用等に係る経費の一部を助成しています。この事業は、平成31年度予算が平成31年3月31日までに都議会において可決された場合に、平成31年4月1日から実施される予定です。
平成31年度(2019年度)外国特許出願費用助成事業を含む助成事業の説明会が次のように開催されることになっています。
第1回 4月9日(火)
【多摩】東京都中小企業振興公社多摩支社 2階大会議室
第2回 4月17日(水)
【秋葉原】東京都産業労働局秋葉原庁舎3階 第1会議室
受付は事前予約制になっています。下記の東京都のHPをご参照ください。
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/boshu_setsumeikai_2019_1.html
東京都による外国特許出願費用助成事業では、出願手数料、弁理士費用、翻訳料等の費用について、助成対象経費の2分の1以内、限度額300万円の助成が行われます。
東京都による費用助成では、通常、秋に第二回の受付が行われています。
◆JETROによる外国出願への助成◆
前記は各企業が所在している地域の公的機関を介した助成になりますが、(独)日本貿易振興機構(JETRO)も、日本全国の中小企業を対象として、同様の外国出願に要する費用の半額補助を行っています。下記のHPに紹介されているものは平成30年度(2018年度)のものですが、平成31年度(2019年度)予算成立後に2019年度の助成内容が紹介されるものと思われます。
https://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas_appli.html
なお、東京都の平成31年度(2019年度)外国特許出願用助成事業の第一回受付では「平成31年(2019年)4月1日以降に契約・支出したもので、平成33年(2021年)11月末日までに外国への直接出願または、各指定国への国内段階移行を行い、支払いまで完了すること」が助成条件の一つになっています。
JETROの助成でも、助成を受ける対象の費用発生、支払いがどのような期間になされたものであるかが要求されます。
PCT国際出願を海外へ移行する場合、日本に一番最初に特許出願を行った日(優先日)から30カ月以内に海外の指定国に移行することになります。JETROの助成は毎年度に行われていますが、PCT国際出願を海外へ移行する期限がいつであるのか、JETROの助成対象になる費用の発生・支払完了期限がどの期間であるか、十分に検討した上で、どの年度に助成申請を行うべきか検討することが望ましいです。
◆日本国特許出願への助成、等◆
平成31年(2019年)4月1日以降、中小企業を対象として審査請求料と特許料(1年分〜10年分)が1/2に軽減されます。
https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/genmen/genmen20190401/index.html
https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/genmen/genmen20190401/document/index/02_01.pdf
2019年4月1日以降に審査請求するものについては、減免申請書を提出しなくとも、「出願審査請求書」の【手数料に関する特記事項】、又は「特許料納付書」の【特許料等に関する特記事項】に「減免を受ける旨」と「減免申請書の提出を省略する旨」の記載をすれば、減免を受けることが可能となります。証明書類は提出が不要になります。
また、平成31年(2019年)4月1日以降、中小企業を対象として、国際出願の送付手数料・調査手数料が1/2に軽減されます。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_keigen_shinsei.html
なお、従来から実施されていた、特定の条件を満たす中小企業について、証明書の提出を条件として審査請求料、特許料(1年分〜10年分)、国際出願の送付手数料・調査手数料を1/3に軽減する措置は引き続き実施されます。
https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/genmen/chusho_keigen.html
◆その他の費用助成◆
各地方自治体で独自に費用助成を行っているところがあります。例えば、東京23区内のいくつかの区や、神奈川県町田市、愛知県豊橋市で次のようなものがあります。
なお以下でURLを紹介しているHPでは平成30年度(2018年度)の事業しか紹介されていないものがあります。4月1日以降の新年度になれば同様の助成制度が開始されるのではないかと思われます。新年度早々に募集開始され、応募が殺到して直ちに募集打ち切りになることがありますので、今号で紹介させていただきます。詳しくは、企業が所在している県、市区町村へお問い合わせください。
また、以下で紹介していない県、市区町村でも独自の助成制度が設けられていることがあります。企業が所在している県、市区町村へお問い合わせください。
足立区 足立区役所 産業振興課ものづくり振興係
http://www.city.adachi.tokyo.jp/s-shinko/shigoto/chushokigyo/25chitekizaisan-josei.html
知的財産権認証取得助成金
荒川区 荒川区役所経営支援課経営支援係
http://www.city.arakawa.tokyo.jp/sangyo/shien/kakushuhojyokin/tizai.html
板橋区 中小企業サポートセンター/公益財団法人板橋区産業振興公社
https://itabashi-kohsha.com/archives/9332
江戸川区 江戸川区役所 生活振興部産業振興課計画係
http://www.city.edogawa.tokyo.jp/san_jigyosya/sangyo_jigyosya/jyosei/chitekizaisan.html
葛飾区 葛飾区役所 商工振興課 工業振興係
http://www.city.katsushika.lg.jp/tourism/1000066/1004930/1004944/1004959.html
北区 北区役所地域振興部産業振興課商工係
http://www.city.kita.tokyo.jp/sangyoshinko/sangyo/chushokigyo/monozukuri/josekin/tizai.html
江東区 江東区役所 地域振興部 経済課 産業振興係
http://www.city.koto.lg.jp/102020/sangyoshigoto/chusho/hojokin/25383.html
品川区 品川区役所 商業・ものづくり課 中小企業支援係
http://www.mics.city.shinagawa.tokyo.jp/jyosei/titeki.php
台東区 公益財団法人 台東区産業振興事業団
http://www.taito-sangyo.jp/02-assist/chiteki.html
港区 港区役所 産業振興課産業振興係
http://www.minato-ala.net/guide/hojyo/sangyouzaisan.html
神奈川県町田市 経済観光部 産業政策課
https://www.city.machida.tokyo.jp/shien/yushi/patentetc.html
愛知県 豊橋市 商工業振興課
http://www.city.toyohashi.lg.jp/5447.htm
日本弁理士会による特許出願等援助制度
http://www.jpaa.or.jp/activity/support/assistance/
新規事業の創出等、何らかの形で社会に貢献する可能性が高く、大きな効果が期待される発明等であって、まだ特許出願されていないものを対象として弁理士費用の全部または一部を日本弁理士会が負担する援助制度です。
<おことわり>
新年度になることから本号では特許出願への助成制度を紹介しました。前号で予告しておりました特許出願の審査で特許請求している発明の中の一部について拒絶理由を受け、残りの部分について「拒絶の理由を発見しない」という指摘を受けた場合に分割出願を行って対応する事例につきましては次号で紹介させていただきます。
以上
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■ニューストピックス■
●特許異議申立により6割超で特許権が縮減
特許庁は、特許異議申立の最新の統計情報(申立日が平成27年4月〜平成29年9月末)を公表しました。
http://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/shubetu-tokkyo-igi/igi_moushitate_tokei.html
特許異議申立の件数は、平成27年4月に特許異議申立制度が開始されて以降、累計で3,903件となり、そのうち3,049件(約78.1%)が最終処分に至っています。平成30年12月末時点における審理結果は次のとおり。
◆登録された特許がそのままの形で維持されたもの(維持(訂正無))が879件(35.0%)
◆登録された特許が特許請求の範囲等の訂正を経て維持されたもの(維持(訂正有))が1269件(50.5%)
◆異議申立の対象請求項の全て又は一部が取り消されたもの(取消)が284件(11.3%)
◆異議申立の対象請求項が全て削除されたことにより異議申立が却下されたもの(却下(訂正有))が23件(0.9%)
赤で囲った62.7%の部分は、請求項に係る特許の全部又は一部が取り消されたもの、請求項が削除又は減縮される等の訂正が認められたものなど、特許権の権利範囲が変更されたものとなります。
(特許庁HPより引用)
現時点では異議申立によって取消決定が出される率は11.3%と低いようですが、特許権者が訂正をして維持決定がされた案件と、特許権者が申し立てにより請求項を削除した案件とを加えると、実質的な異議申立ての「成功率」は60%を超えていることがわかります。
特許異議申立は、特許掲載公報発行日から6カ月と期間は限られますが、基本的に特許庁と特許権者の間で手続きが進むため、手間やコストの面において無効審判よりも有利といえます。
今後、競合他社の特許権の範囲を狭めたいと思われる場合には、異議申立制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
●「ティーコーヒー」の類似性認めず(大阪地裁)
お茶とコーヒーを融合させた商品「ティーコーヒー」をめぐり、類似の商品で商標権を侵害されたとして、商品企画などを手掛ける「エーゲル」が「アサヒ飲料」に3300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は請求を棄却しました。
判決では、商標の文字部分である「Tea Coffee」は、商品の品質か原材料を示すにすぎないとした上で、「文字のみでエーゲルの商品を示すとまでの認識は得られていない」と指摘。2社の商標に共通するのは文字部分のみで、類似性は認められないと判断しました。
エーゲル社の商標 <商標登録第5963992号>(商標公報より引用)
アサヒ飲料の商標<商標登録第6071970号>(商標公報より引用)
●携帯特許のライセンス契約で排除措置命令を取消し(公取委)
公正取引委員会は、第3世代の通信規格「3G」の携帯電話に関する特許の使用許諾契約をめぐり、日本の携帯電話メーカーに不利な条件で契約を結ばせたとして、2009年に独占禁止法違反で排除措置命令を受けた米大手半導体メーカー「クアルコム」が不服を申し立てた審判で、「公正な競争を妨げる証拠はなかった」として命令を取り消す決定をしました。
クアルコムは2000年代、3Gの半導体市場をほぼ独占しており、日本国内のメーカーが3Gの携帯電話を開発するには、クアルコムの持つ特許技術が必要不可欠でした。このため、国内十数社のメーカーが2000年以降、クアルコムと特許技術の使用許諾契約を締結していました。
公取委は、クアルコムがメーカーとの契約に盛り込んだ、相手の特許を無償で使える「無償許諾」や、各社が互いに特許を侵害しても訴訟で争わない「非係争」の条項が独禁法の禁じる「拘束条件付き取引」にあたると認定しました。
クアルコムは、この命令に不服を申し立てていましたが、審決では、問題の契約条項について、「契約を結んだ各社はクアルコムの特許を使用でき、対価を有しない無償のものだとはいえない」などと判断。「研究開発意欲を阻害する恐れがあると推認できるほど不合理とは認められない」として命令を取り消しました。
●「そだねー」の商標出願に拒絶理由通知(特許庁)
平昌冬季五輪カーリング女子で銅メダルを獲得した「ロコ・ソラーレ」の選手たちが、試合中に使って流行語となった「そだねー」というフレーズをめぐって、商標登録を出願していた地元、北海道北見市の大学生協などに対して、特許庁は昨年11月に拒絶理由を通知しました。
オリンピックのあと、北海道北見市の北見工業大学生活協同組合や、帯広市の菓子メーカー「六花亭製菓」などがこのフレーズの商標登録を出願していました。
しかし、特許庁は、「そだねー」が既に流行語として商品や広告に広く使われている点を指摘し、両者に加え、同じ時期に出されていた個人や法人に対しても拒絶理由を通知しました。
拒絶理由通知は最終通知ではないので、制度上は追加の申請もできますが、北見工大は「特定企業の独占を防ぐのが目的だったので、結果を歓迎する」とコメント。六花亭も「今後、追加の申請はしない」としています。このため、このまま応答しなければ、拒絶査定となり、商標登録されないという結果になります。
4月19日 東京都中小企業振興公社
外国特許出願戦略セミナー
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2019/190419shutsugan.html
(東京都知的財産総合センター)
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