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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2019年8月1日号
本号のコンテンツ
☆知財講座☆
■弁理士が教える特許実務Q&A■
(20)過去の自社の特許出願が拒絶理由に引用される?
☆ニューストピックス☆
■主要国の特許査定率、審査期間、FA期間
■AI関連特許の出願件数が増加(特許庁)
■公共団体や大学などの商標、ライセンスが可能に
■「経営における知的財産戦略事例集」を刊行(特許庁)
☆イベント・セミナー情報
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特許庁は「特許行政年次報告書2019年版」を公表しました。
報告書によると、2018年の日本の特許の審査期間は平均14.1か月、一次審査通知までの期間(FA期間)は、平均9.3か月となりました。日本は主要国の中で審査期間、FA期間ともに最も迅速です。
今号では年次報告書の中から主要国の審査期間、FA期間、特許査定率について取り上げます。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■
(20)過去の自社の特許出願が拒絶理由に引用される?
【質問】
特許出願を行って特許庁の審査を受けたところ、その昔に自分が発明し、自分の会社で特許出願していたものが拒絶理由の先行技術に引用されました。自分が過去に行った発明、過去の自社の特許出願の存在を根拠にして「特許を与えることができない」とされるのは納得できません。
【回答】
自社がその昔に行っていた特許出願の特許出願公開公報が拒絶理由に引用されることはあり得ます。なぜそのようになるのか説明します。
特許出願・特許出願公開の効果
特許出願を行いますと、その日より後に同一の発明について特許出願が行われた場合、後からの出願には特許が与えられないという先願の地位(特許法第39条)を確保できます。そこで、自社で実施する技術内容について特許出願を行っておけば、その後に他社が同一発明について特許出願を行ったとしても、その後からの他社の特許出願に基づいて、他社が、「御社が実施されている技術は当社の特許権を侵害するものです」と指摘してくる危険を少なくすることができます。
更に、特許出願日から1年6カ月が経過して特許庁が出願内容を特許出願公開公報(以下「公開公報」といいます)によって社会に公表してからは、公開公報に記載されている事項に基づいて簡単・容易に発明できるものをだれかが特許出願してもそれは「進歩性欠如」として拒絶されるようになります。そこで、自社が実施している技術の周辺技術について、公開公報発行後に他社が特許出願を行って特許権取得する可能性を少なくさせることができます。
新規性・進歩性が欠如していて特許付与されない発明
どのような発明が新規性を喪失していて特許付与が認められないものであるか特許法第29条第1項第1号〜第3号で次のように規定されています。
特許法第29条第1項
1号 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
2号 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
3号 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
また、特許法第29条第1項第1号〜第3号の規定に該当せず、新規性を備えていると認められる発明であっても、次のような場合には進歩性欠如で特許を認めることができないと特許法第29条第2項に規定されています。
特許法第29条第2項
特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
特許法第29条第1項第3号の「頒布された刊行物」
特許法第29条第1項第3号の「頒布された刊行物」には、特許庁が特許出願を受け付けてその後1年6カ月にわたって秘密状態を守り、出願日から1年6カ月経過した後にすべての特許出願の内容を社会に公表するべく発行する公開公報が含まれます。
そして、特許法第29条第1項第3号には、「ただし、当該刊行物記載の発明者が審査を受けている特許出願の発明者と同一である場合を除く」というような文言は存在していません。
そこで、公開公報発行後の特許出願の発明者、出願人が、公開公報に係る特許出願の発明者、出願人と同一であっても、公開公報発行後の特許出願に対して、発行済の公開公報が、特許性(新規性、進歩性)を否定する先行技術文献になり得ます。
特許出願された発明は社会の共有財産
特許庁で審査を受けて新規性、進歩性などの特許要件を具備していると認められた発明には特許が成立し、特許権を維持するための毎年の特許料を特許庁に納付することで、原則として出願日から20年を越えない期間、特許出願人=特許権者に独占排他権たる特許権が付与されます。
しかし、発明の保護と利用のバランスを図って産業の発達を目指すとする特許制度の下では、前記のように特許権を付与して保護を図る一方で、特許出願された発明、すなわち、出願日から1年6カ月経過して特許庁から公開公報が発行された発明は、社会共有の財産として取り扱うことにしています。
公開公報に記載されている内容は、文献的利用に供され、世の中の人々、企業は、だれでもが公開公報に記載されている内容を参考にして研究・技術開発を行うことが許されています。
また、ジェネリック医薬と呼ばれるように、特許権存続期間の満了、特許維持年金の納付中止などによって特許権が消滅した後は、だれでもが消滅した特許権に係る発明を実施することが許されています。
公開公報に記載されている内容はこのように社会の共有財産として利用されるものですから、自社がその昔に行っていた特許出願であって、発明者、特許出願人が、審査を受けている特許出願の発明者、特許出願人と同一という公開公報であっても、例外扱いされず、審査を受けている発明の新規性・進歩性を否定する先行技術文献として利用されることになります。
自社の特許出願・技術開発の歴史の把握・管理
自社がその昔に行っていた特許出願の公開公報が新規性・進歩性欠如の拒絶理由に引用されてしまった、という事態は、特許出願の経験が多くなく、自社の特許出願内容の管理が十分ではなかったというような企業だけでなく、特許部・知財部を備えて適切な管理を行うようにしている企業でも起こることがあります。例えば、自社が過去に行った特許出願の内容について複数の発明者の間で情報の共有が不足しているときなどに起こることがあります。
そこで、自社の特許出願・技術開発の歴史・沿革を把握・管理し、継承しておくことが大切になります。
<次号の予定>
特許出願では特許取得を希望している発明を誰でもが再現・実施できる程度に明確、十分に記載する必要があります。このため、「特許出願を行うと1年6カ月後にその内容が公開公報の発行によって同業他社に知られてしまうから」として特許出願を躊躇されることがあります。このようなご心配について次号で紹介させていただきます。
以上
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■ニューストピックス■
●主要国の特許査定率、審査期間、FA期間など
(特許行政年次報告書2019年版)
特許庁は、「特許行政年次報告書2019年版」を公表しました。報告書は、知的財産制度を取り巻く現状と方向性、国内外の動向と分析、直近の統計情報などを取りまとめています。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2019/index.html
ここでは、主要国(5大特許庁)の審査期間、FA期間、特許査定率について取り上げます。
◇主要国の審査期間
日本国特許庁は、一次審査通知までの期間に加え、権利化までの期間の短縮を求めるニーズの高まりを受け、2023年度までに特許の「権利化までの期間 」(標準審査期間)と「一次審査通知までの期間」(FA期間)をそれぞれ、「平均14か月以内、平均10か月以内」にするという目標を設定していますが、2018年度は、それぞれ、14.1か月、9.3か月となりました。
主要国の権利化までの平均期間は、日本(14.1か月)、韓国(15.9か月)、中国(22.0か月)、米国(24.2か月)、欧州(24.9か月)。一次審査通知までの期間(FA期間)は、日本(9.3か月)、韓国(10.4か月)、中国(14.4か月)、米国(15.7か月)、欧州(4.8か月)。
◇主要国の特許査定率
主要国の特許査定率をみると、2017年の日本の特許査定率は、前年比1.2ポイント減の74.6%とわずかに減少に転じましたが、2018年は75.3%とやや盛り返しました。
2017年の欧州は前年比2.3ポイント増の57.1%。また、2017年の米国の特許査定率は、前年比1.6ポイント増の71.9%、韓国は3.1ポイント増の63.1%。中国の特許査定率は2017年のみのデータが示されており、56.4%。
各庁の一次審査通知までの期間、最終処分期間、特許査定率は、それぞれの特許制度の違いによってその定義が異なっているため、単純に比較はできませんが、主要国の中で日本は審査期間、FA期間とも最も迅速で、特許を取得しやすい国であることがうかがえます。
●人工知能(AI)関連特許の出願件数が増加(特許庁)
特許庁は、人工知能(AI)関連発明の国内外の出願状況調査の結果を発表しました。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/ai/ai_shutsugan_chosa.html
AI関連発明の国内特許出願件数は2014年以降急増しており、17年は3,065件で前年と比べ約65%の増加。このうちAIのコア技術に関する出願は924件で前年と比べて約55%と急増しています。
調査は、国際特許分類G06Nに対応するAIのコア技術に関する発明に加えAIを各技術分野に適用した発明も含まれています。
AI関連発明に用いられている主要な技術は機械学習で、その中でも深層学習(ディープラーニング)に関する出願が14年以降に急増しています。17年における国内のAI関連発明の特許出願3,065件の内1,419件と46%を占め、約半数が深層学習に関連するものです。
適用分野としては画像処理や情報検索、ビジネス関連、医学診断分野が目立ち、近年は特に制御・ロボティクス分野への適用が増加しています。
AIのコア技術に関する出願状況は、日本、米国、欧州特許庁、中国、韓国の五庁と、PCT国際出願の全てにおいて増加傾向が見られますが、2016年の五庁の出願件数を比較すると、日本447件、米国が4,170件、欧州特許庁367件、中国2,844件、韓国567件と、米中両国が突出しています。
AI関連発明の国内特許出願件数は2014年以降急増しており、17年は3,065件で前年と比べ約65%の増加。このうちAIのコア技術に関する出願は924件で前年と比べて約55%と急増しています。
調査は、国際特許分類G06Nに対応するAIのコア技術に関する発明に加えAIを各技術分野に適用した発明も含まれています。
AI関連発明に用いられている主要な技術は機械学習で、その中でも深層学習(ディープラーニング)に関する出願が14年以降に急増しています。17年における国内のAI関連発明の特許出願3065件の内1419件と46%を占め、約半数が深層学習に関連するものです。
適用分野としては画像処理や情報検索、ビジネス関連、医学診断分野が目立ち、近年は特に制御・ロボティクス分野への適用が増加しています。
AIのコア技術に関する出願状況は、日本、米国、欧州特許庁、中国、韓国の五庁と、PCT国際出願の全てにおいて増加傾向が見られますが、2016年の五庁の出願件数を比較すると、日本447件、米国が4,170件、欧州特許庁367件、中国2,844件、韓国567件と、米中両国が突出しています。
改正商標法が令和元年5月27日に施行され、国、地方公共団体、大学といった公益団体等を表示する著名な商標(公益著名商標)は、第三者にその商標をライセンスすることが可能となりました。
近年、地域のブランディングや自身の広報活動の一環として、地方公共団体や大学等が関連グッズを販売することや、研究機関が開発に携わった商品を企業が販売するケースが増え、特に大学において、自主財源の確保、産学連携から生じた研究成果の周知及び大学のブランド・知名度の向上等を目的に、公益著名商標に係る商標権の通常使用権を事業者に許諾し、ブランド展開を積極的に行いたいとのニーズが高まっていました。
公益著名商標に係る商標権について、通常実施権の許諾を制限していた商標法第31条第1項ただし書を削除する本改正は、こうした要望にこたえるものです。公益団体等による登録商標の活用の幅が広がることが期待でき、地方公共団体や大学等は商標の使用料収益を得ることができます。
●「経営における知的財産戦略事例集」を刊行(特許庁)
特許庁は、「経営における知的財産戦略事例集」を刊行しました。
https://www.jpo.go.jp/support/example/keiei_senryaku_2019.html
同事例集は、経営層や知財担当者が、経営戦略や知財戦略の立案に活用することを目的に作成。グローバル企業の先端的な取り組みなどについて、海外企業28事例を含む全56事例を紹介しています。
「新事業創造に資する知財戦略」「経営戦略の構築・実行に資する知財戦略」などのテーマでまとめられており、従来とはまた異なる切り口でオープンイノベーションなど、多数の事例が掲載されています。
他社の事例をチェックすることで、経営的な視点から知的財産戦略を考えるヒントが生まれるかもしれません。
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8月19日 渋谷区立商工会館
中小企業に役立つブランド戦略〜中小企業の知財活用術〜
https://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-94732.html
(東京商工会議所)
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