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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2019年11月1日号
本号のコンテンツ
☆知財講座☆
■弁理士が教える特許実務Q&A■
(23)特許侵害警告への対応
☆ニューストピックス☆
■ノーベル化学賞、リチウムイオン電池開発の吉野氏が受賞
■ユニクロに新型セルフレジの使用差止を申し立て(東京地裁)
■中国が世界の特許出願件数の約半数を占める(WIPO)
■老舗の和菓子店が森永製菓の休眠特許を活用
■弁理士のミュージックビデオを公開(日本弁理士会)
☆イベント・セミナー情報
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この度の令和元年台風19号の被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧をお祈りいたします。
令和元年台風第19号は、「特定非常災害」として指定されました。
台風の影響により、特許、実用新案、意匠及び商標に関する出願等の手続きなどが出来なかった場合、又は手続きが遅れた場合には、延長措置が受けられます。
詳細は、特許庁のホームページに掲載されています。期間や内容に一定の条件がありますので、ご注意下さい。
https://www.jpo.go.jp/news/koho/saigai/taifu-201910-eicho.html
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■
(23)特許侵害警告への対応
【質問】
当社が製造・販売している製品について「特許権侵害になるので製造・販売を中止してください」との警告書が届きました。どのようにすればよいのでしょうか?
【回答】
特許権者は特許権に基づいて特許発明を独占排他的に実施(例えば、製造、販売)することができ、特許権侵害行為に対して差止請求(特許法第100条)、損害賠償請求(民法第709条)することが可能です。警告書での告知はこれらの措置の前段と考えられますから、早急に、また、慎重に対応する必要があります。
<警告書に記載されている事情の確認>
一般的に特許権侵害の警告書は配達証明郵便・内容証明郵便で到着します。これらには特許公報を同封できません。特許公報は別途に書留郵便で送付されてくることがあります。
警告書に記載されている特許番号や、送付されてくる特許公報などから、特許庁のJ-Plat Patを利用して特許権が現存しているものであるかどうか、警告書を送付してきた者が特許権に基づく権利行使できる者であるかどうか確認します。現存している特許権の特許権者あるいは専用実施権者でなければ特許権に基づく権利行使はできません(特許法第68条、同第77条)。
特許権が設定登録されて特許公報が発行された後に訂正審判請求の審決確定によって特許請求の範囲の記載が訂正されていたり、特許権の移転登録によって特許公報に記載されている特許権者とは異なる特許権者に変更されていることもあります。そこで、必要であれば、訂正審判請求の確定審決公報や、特許原簿の謄本を特許庁から取り寄せて確認することがあります。
<特許権侵害事実の確認>
警告書で指摘を受けた当社製品(以下「侵害被疑品」といいます)
が特許権の効力が及ぶ範囲、すなわち、特許発明の技術的範囲に属
するか否かを検討します。
警告書を送付してきた特許権者が侵害被疑品を特許権侵害品であると考える理由は、一般的に、特許発明と侵害被疑品とを対比して警告書で説明されています。しかし、特許権者は自己の特許権の効力が及ぶ範囲を広めに解釈することがありますし、特許権者が誤解していることもあります。
特許権侵害は侵害被疑品が特許発明の構成要素を全部実施しているときに成立するのが原則です。なお、特許発明の構成要素を全部実施していない場合であっても、均等の範囲になる場合には特許権侵害が成立することがあります。
侵害被疑品を特許公報に記載されている特許発明の内容と照らし合わせて慎重に検討する必要があります。侵害被疑品が特許権侵害品に該当するのか否かは専門的な事項になります。この分野の専門家である弁理士に相談することをお勧めします。
その際、侵害被疑品そのものを持参する等、侵害被疑品に関するできるだけ多くの情報を持参することが望ましいです。例えば、侵害被疑品の開発の経緯、侵害被疑品をいつ頃から製造・販売しているのか等の情報や、侵害被疑品や警告書を送付してきた特許権者の製品が市場において同業他社や、消費者・需要者からどのように評価されているか等の情報は、警告書への対応を検討する上で有用です。
検討の結果、特許権者の誤解であって、明らかに特許権侵害にならないと判断できたときには、警告書に対して、その旨の回答を行うことになります。
<先使用権の検討>
侵害被疑品が特許権侵害品に相当すると判断できる場合でも、警告書で指摘されている特許権の特許出願が行われる前から侵害被疑品を製造・販売開始し、今日までその事業を継続しているならば、先使用権(特許法第79条)が成立し、侵害被疑品の製造・販売を継続できることがあります。そこで、先使用権が成立する事情がないか検討します。
<設計変更>
侵害被疑品が特許権侵害品に相当すると判断でき、なおかつ、先使用権も成立しない場合、侵害被疑品を特許権侵害にならないように設計変更することが検討事項の一つになります。設計変更することで特許権侵害を避けることができるならば、設計変更以降に関しては特許権者から追及を受けることがなくなります。
ただし、この場合、設計変更までの実施行為(侵害被疑品の製造・販売)が特許権侵害であるならば、これについてどのように解決を図るか特許権者と交渉する必要が生じます。例えば、設計変更によって特許権侵害が解消されることを特許権者に確認してもらった上で、設計変更前の実施行為に関して実施料相当額の解決金を支払って事態を解決することがあります。
<実施許諾を受ける>
侵害被疑品が特許権侵害品に相当すると判断でき、なおかつ、先使用権が成立せず、侵害被疑品を特許権侵害にならないように設計変更することが困難であるが、侵害被疑品の製造・販売行為を継続する必要があるときには、通常実施権などの許諾を受けて侵害被疑品の製造・販売行為を継続するべく、特許権者と交渉する道があります。
<無効の抗弁>
侵害被疑品は特許権侵害に該当しないと判断できるような場合でも、かなり微妙で、特許権者が差止請求訴訟に臨んでくる可能性が考えられるような場合には、特許を無効にする証拠や資料の収集を進めます。
特許が特許庁で行われる特許無効審判で無効にされるべきものと認められるときには特許権者・専用実施権者はその権利を行使できないことになっています(特許法第104条の3)。特許を無効にする証拠や資料の収集を進めて特許庁へ特許無効審判請求を提出したり、特許権者から特許権侵害差止請求訴訟の提起を受けた際に裁判所において無効の抗弁(特許法第104条の3)を行うことができます。
特許を無効にする証拠や資料の収集は、特許出願公開公報、特許公報などを調査するだけでなく、市販されている書物、業界紙・誌、発行日を確認できる製品カタログ、等々についての調査、収集も行うことが望ましいです。これらの資料は特許庁での審査で利用されていないことがあり得るからです。
<警告書で要請された期限までに誠実に回答する>
特許権者は特許権に基づいて特許権侵害差止請求訴訟や特許権侵害損害賠償請求訴訟を裁判所に提起することが可能です。警告書を受け取ったにもかかわらず対応を放置していれば、特許権者が訴訟に臨むことが考えられ、警告書送付後の経緯は裁判の中で明らかにされますから、裁判所の心証形成の上で有利では無くなります。
また、警告書を送付してきた特許権者が裁判所に証拠保全を申し立て、これが認められて、突然、裁判所執行官が会社や工場に証拠保全にやってくることもあり得ます。
そこで、警告書の送付を受けたならば、たとえ、「明らかに特許権侵害にならない」と考える場合でも、回答要請された期限までに誠実に回答を行うことが望ましいです。警告書到達後2週間以内に回答するよう要請されることが多いですが、特許権侵害に相当するのか否か検討に時間を要しているならば、ひとまずその旨を回答し、慎重な検討を行った後、速やかに回答することが望ましいです。
いずれにしても、特許権侵害の警告書を受けた後は裁判所での特許権侵害差止請求訴訟につながる可能性がありますから、弁理士などこの道の専門家に早急に相談して対応を検討することが必要です。
<次号の予定>
次号では自社保有の特許権を侵害していると思われる他社の製品を発見した際の対応についてのご質問に回答します。
以上
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■ニューストピックス■
●ノーベル化学賞にリチウムイオン電池開発の吉野氏
今年のノーベル化学賞にスマートフォンやパソコンなどに広く使われている「リチウムイオン電池」を開発した大手化学メーカー、旭化成の名誉フェロー吉野彰氏らが選ばれました。
日本のノーベル賞受賞は'18年の京都大学の本庶佑特別教授に続き27人目(米国籍を含む)。化学賞の受賞は'10年の根岸英一氏、鈴木章氏に続き計8人目。企業勤務の研究者では'02年の田中耕一氏以来です。ノーベル賞に先立ち、欧州で最も権威のある欧州発明者賞を、今年6月に欧州特許庁より授与されています。
吉野氏は、京都大学大学院を修了後、旭化成に入社し、イオン二次電池事業グループ長や電池材料事業開発室長など電池研究に従事し、'17年から現職。「充電できる電池」の小型化と軽量化を目指して開発に取り組み、当初はノーベル化学賞の受賞者、白川英樹氏が発見した電気を通すプラスチック「ポリアセチレン」を電極に利用する研究をしていました。
その後、コバルト酸リチウムという化合物をプラスの電極として使う当時の最新の研究成果に注目し、マイナスの電極に炭素繊維を使うなどした結果、現在の「リチウムイオン電池」の原型となる二次電池(充電して再利用できる電池)を世界で初めて製作しました。正極と負極を隔ててショートを防ぐ「セパレーター」などを含め、電池の基本構造を確立して'85年5月10日(優先日)に特許を出願しました(特許登録1989293)。
'91年にソニーが世界に先駆けて商品化し、ノート型パソコンや携帯電話などに採用されました。小型・軽量化で高出力の蓄電池が実現したことで、リチウムイオン電池は、スマホなどIT機器には欠かさない存在となりました。インターネットの発展に伴い、世界の通信環境を変革させただけでなく、自動車業界にも大きな影響を与えました。ハイブリッド車、EV(電気自動車)が国際的な環境対応の流れもあり、需要が伸びています。太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及を促す役割も期待され、電力供給を最適化するスマートグリッド(次世代送電網)への貢献も見込まれています。
旭化成は、リチウムイオン電池部材のセパレーターでシェア1位。市場調査会社の富士経済によれば、世界のリチウムイオン二次電池市場は自動車電動化の影響などから'22年に7.4兆円と'17年に比べ2.3倍となる見込みです。その基盤を日本の素材・材料の研究開発力、技術力が支えていることが、今回、改めて世界に示されたといえます。
◇特許で技術の内容を示す◇
企業研究においては、新規の技術を開発しても、特許出願との関係もあり、論文として学会等に発表することは難しい面があります。このため、成果が表に出ないことが多く評価されにくいのですが、今回は特許庁によって公開される特許出願書面で、技術の内容を示すことができ、その内容がノーベル賞の委員会によって高く評価されました。
吉野氏は、企業勤務の研究者について、「論文発表を目指す大学の研究者と比べると企業の研究者は特許取得が目標のため、研究成果を分かりやすい形で示すのが難しいというハンデを背負っている。企業内部にはノーベル賞クラスの研究が数多くあるので、今後も産業界からノーベル賞が出ないといけないと思う」と指摘しています。そして、ノーベル賞の賞金の一部を日本化学会の研究支援事業に活用する意向を表明しました。
●新型セルフレジでユニクロに使用差止を申し立て(東京地裁)
全国のユニクロで導入が進んでいる新型セルフレジが特許を侵害しているとして、大阪市のIT関連会社「アスタリスク」は、レジの使用差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てたと発表しました。
アスタリスクは会計時に買い物かごに入った商品だけを読み取ることができる技術を開発し、今年1月に特許を取得(第6469758号)。
同社の特許は、「RFIDタグ」と呼ばれるID情報を記録した小さな電子チップにさまざまな情報を記憶させ、無線通信によって識別情報を交換する自動認識システム。バーコードを読み取る方式とは異なり、電波でタグを一括スキャンできるので、レジ清算にかかる時間が大幅に短縮できる特徴があります。
同社によると、ライセンス交渉中にユニクロの親会社であるファーストリテイリングから無効審判を請求されたとしています。
●中国が世界の特許出願件数の約半数(世界知的財産指標2019)
世界知的所有権機関(WIPO)は、年次報告書「世界知的財産指標2019」を発表しました。それによると、2018年の世界の特許の出願件数は、前年比5.2%増の3,326,300件となり、過去最高に達しました。
各国・地域における出願数(各国・地域知財庁の特許受理ベース)をみると、中国が約154万件(11/6%増)と最も多く、世界の特許出願の46.4%と世界全体の約半数を占め、8年連続で首位となりました。
2位は米国(597,141件)、3位に日本(313,567件)、4位に韓国(209,992件)と続いています。上位の順位は前年と変わっていませんが、日米は前年比で減少しました。中国での特許出願件数は、2位以下の10カ国・地域の合計出願件数に匹敵します。
世界の商標の出願数は、前年比15.5%増の1,432万件(推定値)となりました。国別にみると、中国の商標出願数が737万件で最多となり、世界の商標出願数の51.4%を占めました。意匠の出願数は前年比5.7%増の131万件(推定値)で、国別にみると中国の出願受理数が71万件で最多となりました。
AIや自動運転などの開発競争が激しくなっており、当面は知的財産権保護のため特許の出願件数の増加は続くとみられます。WIPOのガリ事務局長は「中国のみで世界の特許出願のほぼ半分を占めたほか、インドも目覚ましい増加を示しており、アジアがイノベーションのグローバルハブになった」と指摘しています。
●老舗の和菓子店が森永製菓の休眠特許を活用
老舗の和菓子店「菓子匠末広庵」を展開するスエヒロ(川崎市)は、同社の特殊製法と森永製菓の休眠特許を活用した新商品を発売しました。
川崎市や川崎信用金庫などが推進する「知的財産交流事業」を通じて森永製菓の特許をスエヒロに紹介。スエヒロは、森永製菓が保有する体脂肪低減に係る開放特許技術(特許番号5783552)を使用し、宇治抹茶クリームとチョコレートあんを用いて体脂肪低減効果が期待できる宇治抹茶チョコ大福「エンゼルのほっぺ」を開発しました。
森永製菓は、同社が保有する「天使」や「エンゼル」の商標を他社に無料でライセンスする代わりに、知財の利用企業は子どもたちの教育環境の改善などに取り組む団体等に寄付する「エンゼル・スマイル・プロジェクト」を実施しています。特許権のライセンスにも応用した事例は今回が初めて。同プロジェクトに基づき、スエヒロはライセンス料の代わりに「エンゼルのほっぺ」の販売1個につき1円を「音楽のまち・かわさき推進協議会」に寄付します。
川崎市は、川崎市産業振興財団や川崎信用金庫などと連携し、大企業の開放特許を活用して中小企業の商品開発などを促進する制度「知的財産交流事業」を重点的に実施、「川崎モデル」として他の自治体や支援機関の参考とされています。
●弁理士のミュージックビデオ「BENRI-C」を公開(日本弁理士会)
日本弁理士会は、弁理士の認知向上を目的としたミュージックビデオ「「BENRI―C」を公開しました。
https://www.jpaa.or.jp/benri-c_special/
PPAPで大ヒットを飛ばしたピコ太郎の生みの親として知られる音楽プロデューサーの古坂大魔王さん、グラビアアイドルの大原優乃さんが共演。2人は弁理士ユニットを結成し、同ビデオで弁理士と新人スタッフに扮し、古坂さんが作詞作曲した楽曲をオフィス内でテンポよく歌唱する様子が描かれています。
また、日本弁理士会は、弁理士が主役の漫画「閃きの番人」も公開しています。弁理士が知的財産に関する様々な問題に遭遇し、それを解決するというストーリーになっています。
https://www.jpaa.or.jp/comic/
知的財産について馴染みのない方でも楽しみながら弁理士及び弁理士の業務内容を知ることができます。
興味のある方はぜひご覧になってください。
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11月8日 東京都知的財産総合センター
特許中間手続き実務セミナー【機械分野編】
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2019/191108kikai.html
(東京都知的財産総合センター)
11月13日 虎の門三丁目ビルディング
出願から登録に至る知財「手続き」実務ノウハウ講座(特許・実用新案)
http://www.jiii.or.jp/kenshu/2019/1113.pdf
(発明推進協会)
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