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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2019年12月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(24)特許権侵害を発見したときの対応


  ☆ニューストピックス☆

 ■改正意匠法が2020年4月1日施行
 ■AI・IoT時代の特許制度を検討(特許庁)
 ■海賊版誘導サイト運営で賠償命令(大阪地裁)
 ■異業種のコラボ商品、メリットと商標の注意


  ☆イベント・セミナー情報


 特許法、意匠法等の一部改正に関する法律が閣議決定され、2020年(令和2年)4月1日より施行されることになりました。
 今回の改正は、特に意匠法が大幅な改正となり、より広い範囲の意匠権の取得が可能となりました。特許庁では、改正意匠法に関するパンフレット(イノベーション・ブランド構築に資する意匠法改正―令和元年改正―)を公表しています。施行後の意匠戦略を検討する際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/document/panhu/isho_kaisei_jp.pdf

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(24)特許権侵害を発見したときの対応

【質問】
 当社の特許権を侵害しているのではないかと思われる他社の製品を発見しました。当社の特許品の競合品になっていますので販売をやめさせたいのですが、どのようにすればよいでしょうか?

【回答】
 特許権侵害品が特許発明品と競合することで特許発明品の売り上げが落ちる等の事態になることがありますので早急な対応が必要です。ただし、最終的には他社を被告として訴訟に臨むこともあり得ますから慎重な対応が必要になります。

<自社の特許権を確認する>
 そもそも特許権が存在していなければ特許権に基づく権利を行使することはできません。特許権の効力(特許発明を独占排他的に実施(例えば、製造、販売)することができ、特許権侵害行為に対して差止請求(特許法第100条)、損害賠償請求(民法第709条)することができる)は、特許権が成立してから発生します。
 特許権侵害していると思われる他社の製品(以下「侵害被疑品」といいます)に関しては、特許権が成立して以降の第三者による製造・販売行為だけが特許権侵害ということになります。
 ところで、「当社のこの製品に採用されている発明に特許を取得していたはずだが・・・」と認識されていても、特許権を維持するために特許庁へ毎年納付しておく必要がある特許料(特許維持年金ということがあります)の納付を中止していたことで、特許出願の日から原則として20年を越えない期間存続し続けるはずの特許権が既に消滅していたということがあり得ます。
 そこで、そもそも、自社の特許権は存続しているのかという点を確認する必要があります。

<侵害被疑品に関する詳細な情報収集>
 侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に属する場合に初めて特許権に基づく権利行使が可能になります。侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に属するか否かは非常に微妙な問題で、専門家である弁理士等に相談し、慎重な判断を受ける必要があります。
 侵害被疑品を購入してきて分解することで特許発明が採用されていることを簡単に把握できるものであるならば、市場で販売されている侵害被疑品を購入して弁理士のもとに持参し、そこで分解して説明し、判断を受けることが可能でしょうが、そうでない場合には、非常に難しくなります。
 侵害被疑品を販売している会社が侵害被疑品を宣伝・広告するために発行している広告物・パンフレット、WEBサイトでの製品紹介、侵害被疑品の取扱説明書、侵害被疑品を販売している会社が展示会などにおいて行った製品説明、等々、侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に属するか否かを判断する上で必要と思われる情報を可能な限りたくさんの集めることが望ましいです。
 また、侵害被疑品が特許権侵害品に相当すると判断して販売行為の停止を求める警告書を配達証明郵便などで相手方に届けることに する場合には、将来、特許権侵害行為差止請求訴訟、特許権侵害行為損害賠償請求訴訟に臨むことが考えられます。そこで、侵害被疑品が販売開始された時期、侵害被疑品が販売されている場所、侵害被疑品の販売態様、侵害被疑品の販売価格、侵害被疑品のおおよその販売数予測、等々の情報も可能であれば収集することが望ましいです。

<侵害被疑品と特許発明との詳細な対比>
 侵害被疑品を販売している他社に対して「特許権侵害行為になりますので販売を中止してください。」というような内容の警告書などを配達証明郵便などで届ける場合、これを受け取った他社は大きな衝撃を受けるのが一般的です。
 特許権侵害は差止請求の対象になりますので、販売行為を中止する必要が生じ、場合によっては、製造済の製品の廃棄、製造に供した設備の除去まで請求されることがあり得ます(特許法第100条2項)。また、特許権侵害品に当たると認められた侵害被疑品の販売によって特許権者が損害を受けていた場合にはその損害を賠償する必要が生じます(民法第709条)。
 上述の警告書をいきなり受け取った他社は大きな衝撃を受けることになりますから、特許権者の誤解・誤認で、明らかに特許権侵害にならない場合、警告書の文面・内容によっては、警告書を受け取った他社との関係が悪化することすら起こり得ます。
 そこで、侵害被疑品が、特許発明の技術的範囲に入り、特許権侵害品に相当するものとなるのであるかどうかについては慎重な上にも、慎重を期して検討することが望ましいです。
 特許権侵害行為差止請求訴訟に臨む場合、裁判所で、侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に入り、特許権侵害品に相当するものであることを、侵害被疑品と特許発明の構成とを詳細に対比して立証しなければなりません。
 上述した警告書を送付する場合でも、侵害被疑品と特許発明の構成とを詳細に対比して特許権侵害品に相当するものであることを詳細に説明することが望ましいです。
 侵害被疑品と特許発明との対比が不十分な状態で「特許権侵害行為になりますので販売を中止してください。」等の強い主張で臨み、「当社製品は御社の特許発明の構成要件の全てを充足するものではないので特許権侵害に当たらず、お申し越しの要望にはお応えしかねます。」というような回答を受けた場合には、特許権侵害行為差止請求訴訟に出て裁判所で十分な主張・立証ができるのか?ということになり、前記のような回答を受け取っただけで終わりにしてしまうことすらあります。
 特許発明の構成と詳細な対比を行うことができる程度に侵害被疑品の構造・構成を把握することができない場合、例えば、「警告書」という表題ではなく「問い合わせ」というような形式にし、侵害被疑品の構成を問い合わせ、他社が「特許権侵害でない」と判断するときにその理由を説明していただくようにすることもあります。
 また、侵害被疑品を販売している会社と日ごろの付き合いがあり、話し合いができるならば、警告書のような書面で対応するのでなく、話し合うことで解決できることもあります。
 なお、侵害被疑品を製造している会社に警告書を送るのであればともかく、侵害被疑品の製造元ではなく、販売店に対して警告書を送り付ける場合、その警告書の内容次第では、「特許権侵害品に当たる」という主張が成り立たなかったときに、侵害被疑品の製造元から、営業誹謗行為(不正競争防止法第2条1項15号)であるとして訴えられてしまうことすらありますので注意が必要です。

<所有している特許の有効性の確認>
 侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に入り、特許侵害品に相当すると判断することができ、送付した警告書への回答次第では特許権侵害差止請求訴訟に臨むことを考えるときには、権利行使の根拠になる特許権の有効性を確認することが望ましいです。
 訴えを受けた会社(被告)が、訴訟において無効の抗弁(特許権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許庁での特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者は相手方に対しその権利を行使することができない(特許法第104条の3)を申し立て、これが裁判所で認められてしまうことがあるからです。
 特許権は特許庁の審査を経て成立していますから特許を無効にする理由(先行技術文献等)が存在することは多くありませんが、特許庁が把握できなかった業界内での情報(業界紙・誌など)を根拠にして特許が無効にされることがあります。
 このため、出訴まで考慮されるのであれば、所有されている特許権の有効性を念のためにご確認されることをお勧めします。

<専門家への相談>
 「他社の製品が当社の特許権を侵害している」と思われる場合、この事態への対応は慎重に、なおかつ、スピーディに行うことが望ましいです。侵害被疑品に関する十分な情報を収集して弁理士などの専門家に相談することをお勧めします。

<次号の予定>
 自社の特許出願の直前に行われていた他社の特許出願が拒絶理由に引用されることがあります。それぞれの特許出願で特許請求されている発明は異なっているので「同一の発明については一日でも先に特許出願を行っていた者に特許が与えられる」という先願の規定(特許法第39条)が適用される場合ではないように思われるのに、なぜこのようになってしまうのか。次回は、このようなご質問にお答えします。

以上

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■ニューストピックス■

●改正意匠法等、2020年4月1日施行

 特許法、意匠法等の一部改正に関する法律が閣議決定され、2020年(令和2年)4月1日より施行されることになりました。今回の改正では、特に意匠法が大幅な改正となり、より広い範囲の意匠権の取得が可能となりました。

 主な改正内容は、
@保護対象の拡充(画像、建築物の内・外装のデザインも保護)、A関連意匠制度の拡充(・関連意匠の出願可能期間を本意匠の登録の公表日まで(8か月程度)から、本意匠の出願日から10年以内までに延長、・関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認める)、
B意匠権の存続期間の変更(「登録日から20年」から「出願日から25年」に変更)など、大幅な改正となっています。

 これまで意匠登録できなかったクラウド上の画像の意匠や住宅・建築物の内外装デザインが保護可能となり、2020年(令和2年)4月1日以降に意匠出願ができるようになります。
 この他、特許法の損害賠償額算定方法の見直し(実用新案・意匠・商標も準用)も2020年(令和2年)4月1日より施行されます。

●AI・IoT時代の特許制度を検討(特許庁)

 近年、AI・IoT技術の進展に伴い、様々なビジネスモデルが登場し、紛争形態も多様化、新たな紛争処理ニーズが生じていますが、現行の特許制度は、そうした時代の変化に、必ずしも十分に対応できておらず、権利の実効的な保護が図られていない面があると懸念されています。
 このため特許庁は、AI・IoT技術の時代において生じている(生じ得る)特許制度上の課題について、以下の7つの事例を提示し、検証を行うことにしました。

https://www.jpo.go.jp/news/public/iken/document/191115_tokkyo-kadai/35-shiryou-05.pdf

◇7つの検証事例◇
 【事例1】複数の実施主体の関与(1)〜ユーザー等のアクセスを伴うサービス提供〜
 【事例2】複数の実施主体の関与(2)〜複数の事業者等が連結した事業〜
 【事例3】特許発明に直接関係しない収益源によるビジネス
 【事例4】AI関連技術に係る権利行使
 【事例5】膨大な数の特許発明を含む製品に対する権利行使
 【事例6】標準必須特許(SEP)を巡る異業種間交渉
 【事例7】ビジネスの変化等に対応した知財紛争処理システム

 特許庁は、権利の実効的な保護を図るため、@どのように「権利化」すべきか?、A適切に「権利行使」することができるか?(「訴訟による救済」の観点を含む)、B「中小ベンチャー企業」等にとっても使い勝手がよい制度となっているか?―の観点に基づいて上記事例について検証するとしています。

●海賊版誘導サイト運営で賠償命令(大阪地裁)

 無断コピーされた漫画や書籍の海賊版サイトへインターネット利用者を誘導する「リーチサイト」を運営していたとして著作権法違反罪などで有罪判決を受けた被告3人に、講談社が損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は、訴えを全面的に認め、請求通り計約1億6千万円の支払いを命じました。
 判決などによると被告らは平成27〜29年発行の「週刊少年マガジン」や「ヤングマガジン」「モーニング」など計約350冊分を違法アップロードして不特定多数がダウンロードできる状態にし、著作権を侵害しました。
 判決では「被告らは違法アップロード行為が、講談社の雑誌の著作権を侵害することを認識していた」と指摘。違法行為によるダウンロード数は100万回を超えているとして、講談社が損害として請求した全額の支払いを認めました。

●異業種のコラボ商品、メリットと商標の注意

 コクヨの「Campus(キャンパス)」ノートとロッテのチューイングガム「Fit’s(フィッツ)」がコラボレーションを実施しました。
 コクヨは、主力ノート商品「キャンパスノート」の商標ライセンスをロッテに供与。これを受けてロッテは、コクヨの「キャンパスノート」を模したチューインガム「Fit's(フィッツ)」を発売しました。パッケージの箱は「キャンパスノート」のデザインになっています。
 コクヨとロッテのように近年、企業や業種の壁を超えた「コラボ商品」が数多く商品化されています。コラボ商品には下記のようなメリットがあります。

  • すでに浸透しているブランドを使うので、商品特徴をアピールしやすい。
  • ブランド同士の相乗効果により、強い印象を残しやすい。
  • これまで展開していなかった販路を使えるので、より幅広い消費者にブランドを認知してもらえる。
 一方、一般に認知されているブランドであっても、本来と違う商品分類で展開される場合は、あらためて登録が求められる場合があります。原則として商品分類(類似群コード)が異なる場合、他の企業が商標登録することができるためです。
 例えば、有名なイタリアンレストランやラーメン店とコラボした商品が企画された場合、コンビニでは「〜店で提供されるパスタ」の販売や「〜店の味を実現した」カップラーメンの販売が考えられます。
 飲食業の役務自体は第43類に分類されますが、「パスタ」「カップラーメン」は第30類に属する商品なので、イタリアンレストランやラーメン店の商標を、上記商品に付して販売するためには、第30類での商標登録が必要となるので、注意が必要です。

◇異業種のコラボ商品の例◇

  • お部屋の消臭元 ガリガリ君ソーダの香り
    (赤城乳業×小林製薬)
  • ネクターサワー
    (不二家×サッポロビール)
  • ビックロ
    (ビックカメラ×ユニクロ)
  • スタイルフィット マジョリカ マジョルカ
    (資生堂×三菱鉛筆)
  • クレパス風ハブラシ
    (サクラクレパス×デンタルプロ)


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  ■イベント・セミナー情報■

12月11日 イイノホール
東京都中小企業知的財産シンポジウム2019 「中小企業における知的財産と経営戦略」
http://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/mail/u/l?p=7dETfnfe38GQbBGoY
(東京都知的財産総合センター)

12月12日 TKP品川港南口会議室
令和元年度 営業秘密・知財戦略セミナー
「その情報、教えてしまって本当に大丈夫ですか?!」
http://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/mail/u/l?p=FSnrho8mJzlolOpQY
(工業所有権情報・研修館 INPIT)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
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最終更新日 '20/05/05