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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2020年4月1日号
本号のコンテンツ
☆知財講座☆
■弁理士が教える特許実務Q&A■
(28)「物」の発明と「方法」の発明
☆ニューストピックス☆
■新型コロナ感染症に関する中小企業支援策
■特許(登録)料の支払期限通知サービスを開始(特許庁)
■逸失利益による特許権侵害損害額算定で大合議判決(知財高裁)
■知財侵害品の輸入差し止め、五輪グッズの模倣品が増加
■J-PlatPatが意匠法改正で機能改善(特許庁)
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新型コロナウイルスの感染拡大による影響が深刻化していることから、政府は中小企業向けの資金繰り対策など、緊急支援策を実施しています。
今号では新型コロナウイルス感染症によって事業活動に影響を受けた中小企業等に対する緊急支援策について紹介します。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■
(28)「物」の発明と「方法」の発明
【質問】
方法で特許をとるよりも物で特許をとる方がよいと言われたことがあります。どのような違いがあるのでしょうか?
【回答】
「方法よりも物で特許をとる方がよい」というのはよく言われることです。なぜこのように言われるのか説明します。
発明のカテゴリー
「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」(特許法第68条)というのが特許権の独占排他的な効力になります。
ここで「特許発明」とは特許を受けている発明のことで、「業として」とは個人的家庭的な実施行為は含まれない(第三者の特許権が現存している場合であっても、その特許権に係る特許発明を個人的に、あるいは家庭内で使っているだけであるなら特許権侵害にならない)ことを意味しています。
「実施」については、発明のカテゴリーごとにいかなる行為が実施になるのか定義されています(特許法第2条第3項)。
発明のカテゴリーとして、大きくは、「物」の発明と、「方法」の発明に分類されます。
「・・し、次に・・する」、「・・という工程と、・・という工程とを備えている」のように、「時」の要素を必須にしているのが「方法」の発明とされ、一方、「時」の要素を必要にしていないのが「物」の発明になります。
機械、器具、装置などの製品的な物や、化学物質、組成物、薬剤などの材料的な物などが「物」の発明の代表例になります。コンピュータプログラムは「物」の発明に分類されています。〇〇システムと表現される発明も「物」の発明に分類されます。
「方法」の発明には「物を生産する方法」の発明と、それ以外の「方法」の発明があります。
「物を生産する方法」以外の「方法」発明を「単純方法」の発明ということがあります。「単純方法」には、物を使用する方法、物を取り扱う方法、制御方法、測定方法、通信方法、修理方法、等があります。
これらの発明のそれぞれについて「実施」が以下の図のように定義されています。
2019年 知的財産権制度説明会(初心者向け)テキスト
第2章 産業財産権の概要 第1節 特許制度の概要 [4]発明の種類と捉え方
https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/2019_syosinsya/1_2_1.pdf
<「物」の発明>
物の発明については、その物を生産(製造)する行為、使用する行為、譲渡等する行為(例えば、販売)、貸し渡す行為、輸出する行為、輸入する行為、その物についての譲渡等の申し出(譲渡等のための展示を含む)が実施行為になります。
特許権者が特許発明を実施する権利を専有しているのですから、第三者が特許発明品を製造、販売、等している場合には特許権侵害であるとして警告書を送り、製造、販売などの行為の差し止めを求める差止請求訴訟や、損害賠償請求訴訟を裁判所に提起することができます。
物の発明の場合には、同業他社が製造、販売している製品を購入し、分解等により分析することで特許発明が使用されているものであるかどうか、すなわち特許権侵害品であるとして追求できるものであるかどうかを確認することができます。
<「単純方法」の発明>
「単純方法」の発明の場合にはその方法を使用する行為が実施行為になります。この場合、制御方法、測定方法、通信方法、修理方法、等の単純方法が同業他社の工場内などにおいて使用されているかどうかを確認することは簡単ではありません。
<「物を生産する方法」の発明>
「物を生産する方法」の発明の場合にはその方法を使用する行為が実施行為になり、また、その方法により生産した「物」を使用する行為、譲渡等する行為(例えば、販売)、貸し渡す行為、輸出する行為、輸入する行為、その物についての譲渡等の申し出(譲渡等のための展示を含む)も実施行為になります。
そこで、「物を生産する方法」を実施して生産した「物」に、当該「物を生産する方法」を使用した痕跡が残るものであるならば、市場で販売されている「物」を購入してきて、分解等により分析することで特許発明が使用されているものであるかどうか、すなわち特許権侵害品であるとして追求できるものであるかどうかを確認することができます。
「物を生産する方法」を実施して生産した「物」に当該「物を生産する方法」を使用した痕跡が残らないものであっても、従来は、大量に市場に出回ることがなかった「物」が、当該特許取得した「物を生産する方法」が特許出願公開された後に同業他社から市場に大量に提供されるようになった場合には、当該特許取得した「物を生産する方法」が勝手に使用されている可能性があると考えられます。
<「物」、「方法」での特許取得>
以上で説明したように、発明のカテゴリーに応じてどのような行為が特許権侵害になるのか相違があり、単純方法の発明や、物を生産する方法の発明の場合には、第三者の特許権侵害行為を発見して、特許権侵害であるとして排除することが、物の発明に比較して容易ではないと考えられています。
同業他社の工場内でしか使用されない「単純方法」であって、特許権侵害で追及することが容易でない場合には、特許出願を行わずに会社の営業秘密、ノウハウとして保護を図ることが検討されるのはこのためです。
しかし、「物」の発明の場合にも、特許出願を行うかどうかを検討する際、遅かれ早かれ同業他社もこの技術段階に到達し、開発・発明すると思われるようなものである場合には一日でも先に特許出願した者でなければ特許取得が認められないことを考慮して特許出願することがあります。
このようなことは「単純方法」の発明、「物を生産する方法」の発明の場合にも当てはまります。「方法発明だから」ということで特許出願を行わないでいたところその方法発明について他社が特許出願して特許権取得し「当社では特許取得した当社独自の〇〇方法を使用しています。」と他社が積極的に宣伝、営業活動を行うようになってしまった、となることもあります。
特許出願を行わずに営業秘密、ノウハウで保護を図るのか、それよりも他社に先がけて特許出願して独占排他権たる特許権の取得を目指す方がよいのか、その際、「物」、「単純方法」、「物を生産する方法」どのような表現で特許取得を目指すか、専門家である弁理士に相談されることをお勧めします。
<次号の予定>
特許発明品である物(機械、器具、装置など)の外観、形態は意匠権(意匠登録)で保護される対象になります。次回は、意匠登録で保護されるものと特許権で保護されるものとの間にどのような相違や関係性があるのか紹介します。
以上
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■ニューストピックス■
●新型コロナ感染症に関する中小企業支援策
<緊急対応策のポイント>(事業者向け抜粋)
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1.日本政策金融公庫などを通じて売り上げが5%以上減少している中小・小規模事業者に対する新たな「特別貸付制度」を創設(遡及して金利引き下げ)。
2.特別貸付制度を活用し、売り上げが急減している中小・小規模事業者には、「特別利子補給制度」として、実質的に無利子・無担保の融資を行う。
3.小規模事業者が経営改善に必要な資金を借り入れる制度に別枠を設け金利を0.9%引き下げるほか、各地の信用保証協会が中小企業などの借入金を100%保証する「危機関連保証」を初めて発動。
この他、サプライチェーンの毀損等に対応するための設備投資・販路開拓支援、雇用調整助成金やテレワーク導入支援、税の申告・納付など、様々な緊急支援策を実施しています。
最新情報は以下のページをご確認ください。
○新型コロナウイルス感染症関連ページ
https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html
○パンフレット(2020年3月13日更新)
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
●特許(登録)料の支払期限の通知サービスを開始(特許庁)
特許庁では、令和2年4月1日から特許料等の納付時期の徒過による権利失効の防止を目的に「特許(登録)料支払期限通知サービス」を開始しました。
特許庁にアカウント登録し、登録番号(特許番号)を登録しておけば、下記に関する期限について、期限が近づくと、メールでお知らせを受け取ることができます。
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設定登録後の特許料(第4年分以降)
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設定登録後の実用新案登録料(第4年分以降)
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設定登録後の意匠登録料(第2年分以降)
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設定登録後の商標登録料(後期分)
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次期商標更新申請登録料
本サービスは、中小企業・個人事業主・個人の権利者に向けたサービスであるため、案件の登録は最大50件までとなっています。納付期限の3ヶ月前(商標の場合は6ヶ月前)などに、通知メールを受け取ることができます。
●逸失利益による特許権侵害損害額算定で大合議判決(知財高裁)
美容・健康機器を展開するMTGは、同社の美容ローラーの特許 権を侵害したとして、ファイブスターに損害賠償金の支払いなどを請求していた控訴審について、知的財産高等裁判所の大合議により、損害賠償額4億4,000万円の支払いを認める判決が下されたと発表しました。
訴訟では、2万円超のローラーを販売するMTGが、3,000〜5,000円のローラーを販売していたファイブスターに特許を侵害されたと主張。一審判決が認めた損害額は約1億1千万円でした。
特許権侵害の損害賠償請求は、民法第709条の規定に基づき損害額の立証責任を原告(特許権者)が負担しますが、損害立証の困難性に鑑みて特許法第102条に損害額算定に関する特則が定められています。侵害行為がなければ特許権者が販売することができた逸失利益を損害額と推定する(同条第1項)、侵害者の利益の額を損害額と推定する(同条第2項)、相当実施料額を損害額として請求できる(同条第3項)です。
特許法102条2項による損害額の算定においては従来から寄与率という考え方が採用されることがありましたが、特許法102条1項を用いて「侵害者の譲渡した物の数量」×「特許権者がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額」を損害額と推定するときに寄与率をどのように位置づけるかについては従来から種々の判決、学説が存在していました。
MTGが特許法102条1項に基づいて損害賠償請求したところ、一審判決では寄与率を考慮せずに「原告製品の単位数量当たりの利益額」を認定し、これに対して寄与率(10%)を考慮した減額を行って損害額が算定されました。
一方、知財高裁大合議判決では、特許発明が原告製品の販売による利益に貢献している程度を考慮して原告製品の限界利益の全額から60%の覆滅、控除を行って「原告製品の単位数量当たりの利益額」を算定した後、これに対する寄与率を考慮した更なる減額は「これを認める根拠はない」として損害額を算定しました。
●知財侵害品の輸入差し止め、五輪グッズの模倣品が増加(財務省)
財務省は、全国の税関が偽ブランド品などとして輸入を差し止めた物品の数は2019年は101万8880点だったと発表しました。前年比9.6%増で、7年ぶりに100万点を超えました。
財務省によりますと、昨年1年間の知的財産侵害物品の輸入差し止め件数は、2万3934件で、前年比で8%減少しましたが、13年連続で2万件を超える高い水準が続いています。
東京オリンピック・パラリンピックに関連して、メダルやロゴの入ったTシャツなどの模倣品が増加しているということで、財務省は「引き続き厳正に取り締りたい」としています。
輸入を差し止めた件数のうち8割以上が中国から持ち込まれたもので、種類別では、財布やバッグなどが最も多い9639件で全体の36%を占め、次いで衣類が5949件、靴が1999件などとなっています。
●J-PlatPatが意匠法の法令改正で機能改善
J-PlatPatは、意匠法改正に合わせ、関連意匠群を系図形式で表示する機能が追加されました。画像・建築物・内装の意匠に新規分類を付与。
主な機能改善の内容は、以下のとおりです。
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関連意匠群を系図形式で表示する機能を追加
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画像・建築物・内装の意匠に付与される新規分類等による検索に対応(新規分類等が付与された意匠公報が発行されてから検索可能)
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店舗等の外観・内装の立体的形状からなる商標に付与される新規図形分類による検索に対応
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特許権の存続期間の延長登録出願における「出願人」、「特許権者」
及び「政令で定める処分の内容」(医薬品名、承認番号等)のテキスト検索機能を追加
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検索結果一覧に表示される公報の選択ダウンロード機能を追加
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審決検索において審決日による絞り込み機能を追加
https://www.jpo.go.jp/support/j_platpat/kaizen20200323.html
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