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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━

2020年5月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(29)新規発明製品が外観にも特徴を有するときの保護


  ☆ニューストピックス☆

 ■新型コロナウイルスの影響を受けた手続等の取扱い(特許庁)
 ■国際特許出願件数、中国が米国抜き世界1位(WIPO)
 ■国際特許出願件数が過去最高(特許庁)
 ■和牛遺伝子は「知的財産」、海外流失を防止
 ■スタートアップがつまずく課題など事例で紹介(特許庁)


  ☆イベント・セミナー情報


 新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえ、特許庁は、特許、実用新案、意匠及び商標に関する出願の各種手続等の対応について発表しています。今号では、新型コロナウイルス感染症に関する情報リンク集を取り上げていますので、ご参照ください。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(29)新規発明製品が外観にも特徴を有するときの保護

【質問】
 当社が新規に開発した発明品は技術的に新規であるだけでなく、その外観・形態がこれまでになかった特有のものになります。この外観・形態を保護することはできますか?

【回答】
 物品の見た目、外観・形態、いわゆるデザインと呼ばれるものですが、これを保護するものとして意匠法による意匠登録があります。技術的な観点から創作の保護を図る特許と、物品の見た目、外観・形態の保護を図る意匠との関係を説明します。

創作の保護という観点で特許と共通する意匠
 人間が頭の中で考え出した知的な情報であって、それを活用することによって財産的な価値が生み出される知的財産の中に、特許庁に出願・申請を行い、権利の付与を受けて保護される形式の特許権、実用新案権、意匠権、商標権があります。
 これらは総称して産業財産権と呼ばれます。何らかの技術的な課題が存在しているときに、これを解決する技術的な工夫・創作として発明が完成して特許出願により特許権取得を目指し、その発明が具現化された製品を市場に売り出す際に、その製品の見た目、外観・形態に特徴があるということで新製品の見た目、外観・形態を保護すべく意匠登録出願により意匠権取得を目指し、その売り出す新製品につけるネーミングを商標として保護すべく商標登録出願により商標権取得を目指すというのが産業財産権の最も典型的な活用例とされています。
 特許権で保護される発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作」です。意匠権で保護される意匠は「物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合等であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法第2条)ですが、意匠は創作を保護するという点で特許と共通していると考えられています。
 意匠登録、意匠権付与が創作を保護するものである、というのは、工業上利用することができる意匠の創作をした者が意匠登録を受けることができるとされていて、意匠登録出願の時点での新規性や、従来公知の意匠等に基づいて簡単・容易に創作できたものではないという程度の創作性が意匠登録を受けるために要求されている点からうかがえます(意匠法第3条)。

特許と意匠とによる複合的な保護
 特定の技術的な課題を解決できる発明を完成させたときに、その発明を製品に具現化すると見た目、外観・形態も従来になかった新規な見た目、外観・形態になる場合、特許出願を行って発明についての保護を求めるだけでなく、意匠登録出願を行ってその新規な見た目、外観・形態についても保護を求めることがあります。
 特許庁は、物品の見た目、外観・形態であるデザインを保護する上で中心的な役割を果たす意匠制度の活用方法について具体的な事例に基づいて紹介する「事例から学ぶ意匠制度活用ガイド」を発行しています。
 このガイドの冒頭で、「ビジネスにおいて、一つの製品に関して、複数の知的財産権により複合的な保護を図ること(いわゆる『知的財産権ミックス』)で、技術、デザイン、ブランドの模倣に多面的に対抗することができるようになります。」として紹介されているものの一つに株式会社ワコールが所有している特許第4061336号(2007年12月28日登録 発明の名称:運動用衣類)と意匠登録第1324024号(2008年2月8日登録 意匠に係る物品:スポーツシャツ)があります。
 特許第4061336号は、2006年12月26日に日本国特許庁に日本語の国際出願で提出されました。翌年2月に日本国特許庁審査官が作成した「特許請求されている発明は新規性、進歩性を有している」という肯定的な国際調査報告を受け、2007年4月24日に日本国特許庁に審査請求しました。
 引き続いて、2007年7月27日に意匠登録第1324024号が出願され、同時に、第1324024号の「スポーツシャツ」に外観・形態が似ている「スポーツシャツ」の意匠登録出願が10件行われました。この10件の意匠出願はいずれも意匠登録第1324024号の関連意匠として意匠登録されています。
 上述の11件の意匠登録出願を行った後、前述したように審査請求していた特許第4061336号の出願について2007年11月21日に「早期審査事情説明書」を提出して早期審査を受け、1カ月後の12月18日に「特許査定」となり、特許料を納付して同年12月28日に特許権成立しています。
 特許は技術的思想の創作を保護するもので、その保護範囲は、特許請求の範囲に文章で表現されている発明によって確定されます。そこで、ある程度の広がりがある技術的範囲を1件の特許でおさえることが可能になります。
 一方、意匠は物品の見た目、外観・形態を保護するもので、見た目、外観・形態が多少でも異なると意匠権の効力が及ばなくなることがあります。
 前述の例で運動用衣類(スポーツシャツ)を特許権と意匠権とで複合的に保護するにあたり、特許権は1件で、意匠権は意匠登録第1324024号及びこれに外観・形態が似ている10件の関連意匠、合計11件の意匠登録が行われているのはこのためではないかと思われます。

特許出願から意匠出願への出願変更
 人間の頭の中で考え出された創作を保護するという点で共通していることから特許出願から意匠登録出願への出願変更が認められています(意匠法第13条)。特許出願を行う際に、特許請求している発明を具現化して市場に提供する新製品の外観・形態が既に決定されている場合、それを正面、背面、左・右側面、平面・底面から見た図や斜視図などを特許出願の図面に含めておくことができます。
 この特許出願の審査で最終的に「進歩性欠如、等」の理由で拒絶査定になったときに、特許権取得を断念して特許出願から意匠登録出願へ出願変更し、意匠登録を受けて意匠権で新製品の保護を図るものです。
 特許では技術的な面からの新規性、進歩性が要求されますが、意匠で要求されるのは見た目、外観・形態における新規性・創作の非容易性であることからこのようなことが可能になります。

新規な創作をどのように保護するか
 新規な創作を完成させた場合、それを特許で保護するか、意匠で保護するか、特許と意匠の双方で保護を図るか、いろいろな方法が可能です。専門家である弁理士にご相談ください。

<次号の予定>
 外国へ特許出願を行う際の国際出願に要する費用ですが、中小企業は特許庁から国際出願料金について1/2の軽減を受け、更に、国際出願促進交付金の交付を受けることが可能です。これにより国際出願時の費用についての負担感が従来に比べれば小さくなりました。次号では、国際出願の利用、国際出願を行う際の費用負担について紹介します。

以上

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■ニューストピックス■

●新型コロナウイルス感染症により影響を受けた手続の取り扱いについて(特許庁)

 特許庁は、新型コロナウイルス感染症の影響により、特許、実用新案、意匠及び商標に関する出願等の手続が指定された期間内にできなくなった場合の手続や審判事件における手続の指定期間の延長等について公表しました。

◇指定期間(特許庁長官、審査官や審判官によって指定される期間)
 特許庁に係属中の出願又は審判事件について、新型コロナウイルス感染症の影響により、指定された期間内に手続ができなくなった場合は、手続ができなかった事情を説明する文書を添付することで、必要と認められる場合には、指定期間を徒過していても有効な手続として取り扱われます。

◇法的期間(特許法等の法律によって定められている期間)
 手続すべき期間が法律又は政省令で定められている手続について、新型コロナウイルス感染症の影響により、所定期間内にできなくなった場合は、救済手続期間内に限り手続をすることができます。
 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて手続ができなかった事情を説明する文書を添付することで、必要と認められる場合は、有効な手続として取り扱われます。
https://www.jpo.go.jp/news/koho/info/covid19_tetsuzuki_eikyo.html

◇新規性喪失の例外規定の証明書の押印・署名等が間に合わない場合
 新型コロナウイルス感染症による影響を受け、証明書の押印・署名等が間に合わない場合は、所定の記載をした記名押印又は署名のない証明書を期間内に提出した後、記名押印又は署名をした証明書の準備ができ次第、上申書により後から提出する対応が可能となります。

◇審判事件及び異議事件における指定期間の延長・救済措置
 審判事件及び異議事件における手続について、最大1ヶ月間の指定期間の延長の申出をすることができます。さらに指定期間の延長が必要な場合には、同一の手続について、再度の延長の申出をすることができます。
 また、指定期間を徒過した場合の救済の申出があった場合は合議体の判断により、審理状況や申出された理由を踏まえた対応がとられます。
https://www.jpo.go.jp/news/koho/saigai/covid19_sinpan.html

◇特許庁の窓口業務
 窓口での出願等の受付については、原則行わず、電子出願又は郵送(書留、配達記録を推奨)による出願等のみ可能です。
 対面による面接審査・面接審理は、原則行わず、インターネット回線を利用したテレビ面接や、電話による相談は可能です。
https://www.jpo.go.jp/news/koho/info/covid19_shutsugan.html

●資金繰りなど緊急支援策を動画で紹介(経済産業省)

 経済産業省は、新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者に向け、各種支援策を動画で紹介しています。
 事業継続のための運転資金が必要な方への資金繰り支援策、従業員の雇用を守る雇用調整助成金、税や社会保険料の支払い猶予など、各種の緊急支援策やお問い合わせ先情報も紹介しています。

◇資金繰りはじめ各種支援策
https://youtu.be/ReT-oTnpl20

◇融資や借り換えに関する支援策
https://youtu.be/-8CIX3avEz4

◇経済産業省 新型コロナウイルス感染症関連ページ
https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html

◇経済産業省 支援策パンフレット(随時更新)
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

◇首相官邸 新型コロナウイルスお役立ち情報ページ
https://www.kantei.go.jp/jp/pages/coronavirus_info.html

●国際特許(PCT)出願件数、中国が米国抜き世界1位(WIPO)

 WIPO(世界知的所有権機関)は、特許協力条約(PCT)に基づく2019年の国際特許出願件数を発表しました。
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2020/article_0005.html

 それによると、中国が5万8,990件となり、米国(5万7,840件)を抜き、初めて世界1位となりました。3位は日本(5万2,660件)。国際特許出願件数で中国が米国を逆転したことで、知財分野における米中の覇権争いは一段と激しくなりそうです。

 世界全体の出願件数は前年比5%増の26万5,800件と、過去最多を更新しました。中国の出願は11%増の5万8,990件。1999年には276件しかありませんでしたが、この20年間で200倍以上も増加しました。米国は特許協力条約(PCT)の運用が始まった1978年以来40年間首位を維持してきましたが、今回5万7,840件(3%増)と2位に転落しました。日本は5万2660件(5.9%増)と前年と同じ3位。4位はドイツで1万9,353件(2.0%減)、5位は韓国で1万9,085件(12.8%増)となっています。

 企業別では、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が4,411件となり、3年連続で首位を維持。2位は三菱電機(2,661件)で、日本企業として唯一トップ10入りしました。3位は韓国サムスン電子(2,334件)、4位は米国のクワルコム(2,127件)、5位は中国スマートフォン大手のオッポ(1,927件)。
 出願分野では、デジタル通信やコンピューター技術での申請が増加。次世代通信規格「5G」や人工知能(AI)など先端技術の開発競争が激化しているようです。

【国別】
 2018年2019年
1.中国53,34958,990
2.米国56,25257,840
3.日本49,70652,660
4.ドイツ19,74219,353
5.韓国16,91719,085

【企業別】
1.華為技術(ファーウェイ)中国4,411
2.三菱電機日本2,661
3.サムスン電子韓国2,334
4.クワルコム米国2,127
5.OPPO(オッポ)中国1,927

●国際特許出願件数が過去最高(特許庁ステータスレポート2020)

 特許庁は「特許庁ステータスレポート2020」を取りまとめ、知的財産制度を取り巻く現状や最新の統計情報などを公開しました。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2020/index.html

【特許】
 2019年において特許庁への特許出願件数のうち国際特許出願件数、商標出願件数、意匠出願件数は、前年より増加しました。
 特許出願件数では、2019年の特許庁への特許出願件数は、307,969件で年の313,567件から5,598件減りました。このうち、国際特許出願件数は66,968件で、過去最高であったの64,013件を更に上回りました。2018年国際特許出願を除く特許出願の件数は減少傾向にあります。日本の特許庁、2018を受理官庁としたPCT国際出願の件数は、堅実に増加しており、2019年の件数は、過去最高の51,652件となりました。
 一次審査通知(First Action)までの期間(FA期間)と権利化までの期間をみると、2018年度のFA期間は平均9.3か月でした。また、権利化までの期間は平均14.1か月でした。

【商標】
 商標登録出願件数は、190,773件と前年比で6,290件増加しました。国際商標出願が1,648件増加、国内出願も4,642件増加しており、2018年の減少からプラスに転じました。

●和牛遺伝子は「知的財産」、海外流失を防止

 国内外で人気が高い和牛の受精卵などの遺伝資源の保護を強化する関連法が成立しました。
 和牛の遺伝資源を「知的財産」とみなしたうえで、不正な手段で得た受精卵などを使用したり、海外に持ち出そうとした場合などは、刑事罰が科されます。
 また、国内での利用に限定する契約に反して輸出しようとした場合や、窃盗や詐欺などの不正な手段で得た受精卵などを使用して生産された子牛がいた場合には、使用や販売などの差し止めが請求できるようになりました。
 さらに遺伝資源の流通を管理する法律もあわせて改正され、受精卵などを扱う事業者に対し、生産状況の定期的な報告や売買の記録の厳格化を求めています。
 和牛をめぐっては海外での人気が高まり、輸出が増加傾向にある一方で、受精卵が不正に中国へ持ち出されそうになるなど、海外で生産が広まれば輸出にも大きな影響が出ることから、不正流出を防ぐことが課題となっています。

●スタートアップがつまずく課題と対応策を事例で紹介(特許庁)

 特許庁は「知財戦略支援から見えた スタートアップがつまずく14の課題とその対応策」を公開しました。スタートアップ(ベンチャー企業)がつまずきやすい課題を、「ビジネスモデル・シーズ戦略」、「知財戦略」、「出願戦略」に分けて整理し、それぞれの対応方法について紹介しています。
 スタートアップの知財戦略の構築を支援する特許庁の「知財アクセラレーションプログラム」(IPAS)の成果をまとめた事例集で、スタートアップに限らず、多くの企業が抱える課題とその対応策が具体的に解説されています。
 例えば、「知財戦略」の課題として、「他企業と共同研究開発を開始したが、自社の知財が相手のものになるリスクを抱えている」といった事例と対応策が掲載されています。
 詳細は特許庁の知財ポータルサイト「IP BASE」
https://ipbase.go.jp/public/startupxip.php
https://ipbase.go.jp/assets/pdf/ipbase_case_study.pdf


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E-mail:
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最終更新日 '20/07/17