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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2020年12月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(36)発明の発掘


  ☆ニューストピックス☆

 ■画像の意匠が初登録、車両情報の表示用画像(小糸製作所)
 ■改正意匠法、新たな保護対象の出願状況(特許庁)
 ■東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の知財分野の主な概要
 ■模倣品、個人使用目的も規制対象(特許庁・財務省)
 ■地理的表示(GI)登録、100産品超える(農水省)



 特許庁は、改正意匠法(令和2年4月1日施行)に基づき、画像の意匠が初めて意匠登録されたと発表しました。
 クラウド上のアプリ等の画像や物品以外の場所に投影される画像のデザインは、製品の利便性を左右する重要な役割を担うことから、自社の創作した画像デザインについては積極的に意匠登録を受けることをお勧めします。
 そこで今号では、画像の意匠登録について取り上げます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(36)発明の発掘

【質問】
 毎日のように製造を行い、毎日のように工夫を重ねています。このような毎日の仕事、作業の中から発明を発掘することはできるのでしょうか?

【回答】
 なんらかの技術的な課題・問題点の存在を認識していて、それを解決する工夫を行った場合、何を発明したのかを認識、意識することは簡単です。しかし、毎日の工夫の積み重ねの中で、気づかないうちに発明を完成させていることがあります。そのようなものを埋もれたままにしておくのと、発明として発掘し、会社の知的財産として有効に活用していけるようになるのとでは、将来、大きな違いになります。発明発掘の一般的な手法を説明します。

<課題が明らかである場合>
解決手段の提案
 毎日の製造工程・開発工程において、何らかの技術的な問題点・課題を認識できている場合には、それを解決するための手段、工夫をたくさん提案してもらいます。
 提案してもらう際には、実現可能性(実現できそうか否か)、経済性(開発にどのくらいの費用がかかりそうか)、開発するのにどのくらいの期間を要しそうであるか、同業他社がすでに採用していそうな工夫であるかどうか、特許になりそうかどうか、等々の問題は一切気にせず、とにかくたくさん提案してもらいます。

解決手段の評価
 提案を受けた多くの解決手段の一つひとつについて、その有効性などを評価します。
 この際、評価が低くて次の工程に進まなかった提案についても、取り上げていた問題点・課題に対する解決策の一つとして提案され、評価を受けたことを記録に残しておくことが望ましいです。将来、何らかの技術的な問題点・課題が発生したときに解決策を検討する材料になることがあります。

次の段階の問題点・課題の把握
 より高い評価を受けた解決手段を採用する場合、次にどのような問題点・課題が生じることになるかを検討します。
 技術開発は、いわば、無限ループです。技術は、螺旋状に積み重ねられて次第に発展していくものです。何らかの技術的な問題点・課題を解決・克服するために何らかの解決手段を採用すると、その解決手段を採用したことに起因して新たに解決すべき問題点・課題が浮上してくるのが一般的です。

新たな解決手段の提案
 上述した新たに浮上してきた問題点・課題を解決する解決手段を、上述したように、実現可能性、経済性、等々を問題にせずにたくさん提案してもらいます。

新たに提案された解決手段の評価
 新たに提案を受けた多くの解決手段の一つひとつについて、その有効性などを評価します。
 このように、解決する必要がある何らかの技術的な問題点・課題が最初から認識できている場合には、多数の解決手段の提案⇒提案された解決手段の評価⇒高い評価を受けた解決手段を採用した場合に生じる新たな問題点・課題の把握⇒把握された新たな問題点・課題に対する多数の解決手段の提案・・・という工程を繰り返すことで発明を発掘することができます。
 このようにして発掘された発明は、当初に認識されていた何らかの技術的な問題点・課題を解決できるという効果を発揮できるものです。
 このような発明発掘作業を行う際に、専門家である弁理士に参加してもらうことができますし、発掘した発明を採用して実施したときに他社が所有する特許権を侵害するおそれはないか、発掘した発明を特許出願する意義があるか、等々については、専門家である弁理士に相談できます。

<技術者の暗黙知として既に発明が完成している場合>
埋もれている発明の「見える化」
 生産現場・開発現場などにいる技術者などが日々の生産・開発活動などで行っている工夫の中にきらりと光る発明が存在しているが、技術者などは「あたりまえのこと」と考えていて、発明であると認識していないことがあります。
 このような場合、発明を「見える化」することが重要です。生産現場・開発現場などにいる技術者から聞き取りを行う、技術者の皆でディスカッションを行ってもらう等により、生産・開発工程にどのような工夫が加えられてきたのか、その経過を「見える化」します。どのような工夫を行うことによっていかなる問題点、課題が解決されたのか、どのような効果が上がるようになったのかが皆に明らかになるようにするものです。
 生産・開発工程に様々な工夫がつぎ込まれていることがありますので、皆の記憶を一つ一つ掘り起こし、どのような工夫が採用されたのかを拾い出して、一人ひとりが採用したと考えている工夫についての認識を皆で共有できるようにします。
 採用した工夫によって発揮されるようになった効果について、様々な工夫がつぎ込まれている場合、採用した工夫とそれによって発揮されるようになった効果についての認識が技術者同士の間で異なることがあります。採用した工夫とそれによって発揮されるようになった効果との対応関係が皆の共通認識になるように「見える化」します。
 この際、採用しようとしたがうまくいかなかった工夫(なぜうまくいかないと判断されたのか)、考えつくだけはしたのだが試してみなかった工夫(試してみなかった理由)なども、「見える化」して社内での共通認識にしておくと、将来、何らかの技術的な問題点・課題が発生したときに解決策を検討する材料になることがあります。

「見える化」した工夫の評価
 上述したようにして「見える化」した工夫の中で、発明として特許出願できるもの、会社内の技術的なノウハウとして蓄積する方がよいものを選別します。例えば、同業他社であってもいずれ考えつくことになるであろうと思われる工夫については、特許取得できるものならば、一日でも先に特許出願することが有利になります。
 発明として特許出願できる可能性のあるものについては、技術的・経済的価値を高める上で更に改良・改善の余地はないのかを社内で検討したり、弁理士などの専門家に相談して、この工夫は他社が所有している特許権を侵害しているものではないか、特許出願する意義があるか等々や、発明内容を、より普遍化し、効力範囲の広い発明概念にすることについて更なる検討を行うことができます。
 製造・開発現場で働いている人たちは毎日のことなので「当たり前のこと」と思っていることの中に発明や、発明の種が埋もれていることが多くあります。そこで、社内に埋もれている発明を「見える化」する際の上述した聞き取りや、ディスカッションなどに新鮮な視点から発明を認識できる弁理士などの専門家に参加してもらうのも有効です。


<次号の予定>
 特許出願が行われた事実及びその内容は、特許出願後18か月が経過して特許出願公開が行われるまで秘密にされます。特許出願が行われている事実や、特許出願の内容をいち早く特許庁から公表してもらいたい、となることが時にはあります。次回は、このような早期公開についての質問に回答します。

以上

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■ニューストピックス■

●画像の意匠が初登録、車両情報の表示用画像(小糸製作所)

 意匠法が抜本的に改正され、令和2年4月1日から、画像、建築物、内装の意匠が新たに保護対象となりましたが、特許庁はこのほど、株式会社小糸製作所の「車両情報表示用画像」を画像として国内で初めて意匠登録したと発表しました。

意匠登録第1672383号「車両情報表示用画像」(株式会社小糸製作所)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/DE/JP-2020-006660/5BC4B95C8867D3B39C13193084911582C544089ABFFF7A7AE4BCAF5304F00C44/30/ja

<意匠に係る物品の説明>
 登録された意匠は、画像投影装置付き車両より路面に照射される画像。画像図で表された画像は、使用状態を示す参考図1乃至3のとおり、走行時もしくは停車時に車両の周辺に照射され、外部から車両の存在を視認しやすくさせる。また、画像は、運転手に車両周辺の路面の状況を視認しやすくさせる。車両が進行方向を変更するとき、画像図、及び、変化した状態を示す画像図1及び2のとおり、変更向きに応じて変化して照射される。
 改正前の意匠法では、画像のみの意匠は、意匠登録の対象ではなかったのですが、今回の改正により、「表示画像」(機器の機能発揮の結果として表示される画像)及び「操作画像」(機器の操作に供される画像)については、物品との関連性が不要とされ、画像のみでも意匠登録の対象となりました。
 例えば、@ネットワークを通じて提供されるソフトウェアやウェブサイトの画面、Aアイコン、B壁や床、人体等に投影される画像なども意匠登録の対象となります。
 しかし、画像全てが登録対象となったわけではありません。クラウド上のアプリ等の画像や、壁や人体など物品以外の場所に投影される画像のデザインのうち、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものが登録の対象となります。
 これらに該当しないゲームの画像、映画やテレビの画像、壁紙画像、写真などのコンテンツは、意匠登録の対象外です。


●改正意匠法、新たな保護対象の出願状況

 特許庁は、改正意匠法に基づく新たな保護対象の出願状況を公表しました。 それによると、新たな保護対象となった「画像」「建築物」「内装」の意匠の出願件数は
 次のとおり。(10月1日時点で取得可能なものに限る)
 「画像」:450件 「建築物」:204件 「内装」:132件
 これを7月1日時点の出願件数と比較すると、3ヶ月間の増加件数は以下のとおり。
 「画像」:211件増、「建築物」:133件増、「内装」:98件増


●東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の知財分野の主な概要

 日本、中国、韓国と豪州、ニュージーランド、ASEAN加盟10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の計15カ国は、自由貿易圏構想「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」に合意、署名しました。インドは加わっていませんが、世界のGDP(国内総生産)や貿易総額の約3割、日本の貿易総額の約5割を占める広域経済圏が発足しました。
 RCEP協定における産業財産権分野の主な規定の概要は次のとおり。

@手続の簡素化・透明化
 各締約国は、「特許協力条約」、「標章の国際登録に関するマドリッド協定」を批准し、又は加入する。
 各締約国は、商標の処理、登録、及び維持のための電子的な出願システム、商標の出願及び登録に関する公にアクセス可能なオンラインの電子データベースを提供する。
 また、商標の一出願多区分制度を導入する。
 特許出願について、その出願日又は優先権が主張される場合には最先の優先日から18か月を経過した後、速やかに公開する。

A知的財産の保護強化
 悪意で行われた商標出願を拒絶・取消する権限について規定(例えば、他の締約国において、日本企業が保有する周知商標と同一又は類似の商標についての出願が悪意で行われた場合には、当局が当該出願を拒絶する又は登録を取り消す権限を有することとなる)。 周知商標であると決定するための条件として、自国又は他国で商標として登録されていること等を要求してはならないことを規定。
 商標について、音商標が保護の対象となることを規定。
 各締約国は、インターネットにおいて公衆に利用可能とされた情報が特許における先行技術、及び意匠における先行意匠の一部を構成し得ることを認識することを規定。
 ただし、RCEP協定が施行されても、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムには、これらの事項のうちのいくつかについて猶予期間が認められています。


●模倣品輸入、個人使用も規制対象(特許庁・財務省)

 特許庁と財務省は、海外から流入する偽ブランド品など模倣品の取り締まりを強化するため、個人の使用目的で輸入した物品であっても商標権を侵害している場合は、税関で差し止め対象とする方向で検討を進めています。
 現行の商標法では、国内事業者が模倣品の輸入や売買を行うと、商標権を侵害したとして刑事罰が科されます。一方、個人が海外事業者から自分で使うと称して輸入した模倣品は商標権侵害を問えず、流入を阻止できませんでした。
 インターネット通販の普及で、海外の事業者が個人に直接販売する事例が急増しています。輸入目的に関係なく、海外事業者が模倣品を国内に流入させることを阻止するため、特許庁は商標法、財務省は関税法の改正に向け、それぞれ検討を始めています。


●地理的表示(GI)登録、100産品超える(農水省)

 地理的表示(GI)登録が、制度が発足した2015年以降、初めて100産品を超えました。
 「地理的表示」とは、農林水産物・食品の名称であって、例えば「"○○(地名)"みかん」のように、その名称から産地が分かり、品質や社会的評価などがその産地と結び付いていることが特定できるものです。
 地理的表示保護制度は、この「地理的表示」を知的財産として保護することによって、産品の適切な評価・価値の維持向上、産品に対する信用を守り、生産者の利益を保護するとともに、表示を信頼して産品を購入することができるという点で消費者の利益を保護することを目的としています。登録された産品のみGIマークを付けることができます。

◇効果◇
・原則として、登録された基準を満たす産品のみに地理的表示が使用される
・品質を守るもののみが市場に流通
・GIマークにより他産品との差別化が可能
・訴訟等の負担なく自らの産品のブランド価値を守ることができる
・地域共通の財産として産品の名称が保護される制度がスタートした2015年には「神戸ビーフ」「夕張メロン」
など全国的に名が知られている農作物が登録されています。


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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
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TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
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最終更新日 '21/07/14