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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2022年2月1日号


  本号のコンテンツ


 ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(50)実用新案登録に基づく特許出願(2)


 ☆ニューストピックス☆

 ■4月1日より特許料等の料金が改定(特許庁)
 ■セルフレジ特許訴訟、和解が成立
 ■新たな保護対象の意匠登録事例を公開(特許庁)
 ■海賊版対策で国際組織を創設(主要国の著作権保護団体)
 ■特許非公開制度、審査は2段階(政府)
 ■米国での特許取得件数、中国が増加(米専門会社調査)



 改正特許法等の施行に伴い、本年4月1日から特許庁に納める特許関係料金、商標関係料金、国際出願に係る国際出願関係手数料等が改定されます。
 4月1日以降に特許料(特許登録料、特許年金)等を納付する場合には、改定後の料金に注意が必要です。
 今号では特許料などの改定についてお知らせします。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(50)実用新案登録に基づく特許出願(2)

【質問】
 特許ではなく実用新案登録で十分と考えて実用新案登録を受けたのですが、「実用新案権では権利行使が難しい」といわれました。この実用新案登録を特許に変更できないでしょうか?

【回答】
 実用新案登録出願の状態から特許出願へ変更することは従来から認められています。現状では、実用新案登録に基づいて特許出願を行うことが可能になっています。前回は、実用新案登録に基づく特許出願を検討するようになる事情がなぜ発生するのか説明しました。今回は、実用新案登録に基づいて特許出願を行う際の注意点を説明します。

<実用新案登録に基づく特許出願の出願時は遡及する>
 登録になる前の実用新案登録出願の状態から特許出願へ変更しますと、変更後の特許出願は実用新案登録出願の出願時にいたものとみなされる遡及効が発揮されます。
 これと同様に、実用新案登録に基づく特許出願も、その実用新案登録に係る実用新案登録出願時に行われていたものとみなされることになります。
 この出願時遡及の効果は、実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲、図面に記載した事項に対して与えられます。
 なお、実用新案登録になった後に実用新案登録の訂正があった後は、訂正後の明細書、実用新案登録請求の範囲、図面が実用新案登録の願書に最初に添付した明細書等になります。そこで、実用新案登録になった後に実用新案登録の訂正を行い、その後に、実用新案登録に基づく特許出願を行う場合には、訂正後の明細書、実用新案登録請求の範囲、図面に記載した事項に対して出願時遡及の効果が与えられます。
 実用新案登録出願における明細書等の補正及び、実用新案登録における訂正では新規事項の追加が禁止されています。そこで、不適法な補正又は訂正がされない限り、実用新案登録の願書に添付した明細書等に記載した事項は、実用新案登録に係る実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内となり、出願時遡及の効果が認められます。
 なお、もしも、不適法な補正又は訂正が行われたことで実用新案登録の願書に添付した明細書等に記載した事項が実用新案登録に係る実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲外である場合は、出願時が遡及しません。そこで、このような場合、実用新案登録に基づく特許出願について審査請求して特許庁の審査を受けると、基礎とした実用新案登録の実用新案掲載公報の記載内容に基づいて、新規性・進歩性が欠如しているという理由で拒絶されることになると思われます。実用新案登録出願は出願から2カ月程度で登録になり、その後2週間程度で実用新案掲載公報が発行されることから、実用新案登録に基づく特許出願が行われるときには、既に、実用新案掲載公報が発行されているのが一般的だからです。

<特許出願の基となる実用新案権は放棄しなければならない>
 自己の実用新案登録に基づいて特許出願を行う場合、実用新案登録に基づく特許出願と、基礎とした実用新案権の放棄(登録の抹消)とを一体的に行う必要があります。
 実用新案登録に基づく特許出願と、基礎とした実用新案権とが併存することを許す場合の第三者の監視負担及び二重の審査(同一の技術について特許審査及び実用新案技術評価書の作成)による特許審査の遅延に配慮したものです。
 なお、この場合の実用新案権の放棄(登録の抹消)は、実用新案登録請求の範囲に記載されている請求項ごとに行うことはできず、実用新案権の全体を放棄することになります。
 一つの実用新案登録からは一つの実用新案登録に基づく特許出願のみを行うことができ、一つの実用新案登録から実用新案登録に基づく複数の特許出願を行うことはできません。一つの実用新案登録に単一性の要件を満たさない複数の発明が記載されている等の理由により、一つの実用新案登録から実用新案登録に基づく複数の特許出願を実質的に行いたい場合は、一つの実用新案登録に基づく特許出願を行った後に、特許法第44条の規定に基づいてその特許出願を分割する必要があります。

<実用新案登録出願から3年以内のみ行うことができる>
 特許出願では出願日から3年以内に限って出願審査請求を行うことができるとされていて、この期間内に出願審査請求されなかった特許出願は出願日から3年経過した時点で取り下げたものと見なされることになっています。
 そこで、時期的制限なしに何時でも実用新案登録に基づく特許出願を行うことができるとすると、実用新案登録に基づく特許出願には、上述したように、出願時遡及の効果が認められていることから、審査請求期間の実質的な延長を認めてしまうことになります。
 このため、実用新案登録に基づく特許出願は、実用新案登録出願の日から3年以内に限って行えることになっています。
 なお、特許出願では出願審査請求を行わなければ、出願日から3年経過した時点で特許出願は取り下げたものとみなされ、消滅します。実用新案登録に基づく特許出願を行った場合も、実用新案登録に係る実用新案登録出願の日(=実用新案登録に基づく特許出願の日)から3年以内に出願審査請求を行う必要があります。

<実用新案技術評価の請求が行われた場合の時期的制限>
 実用新案は、新規性、進歩性等の実体的要件についての特許庁審査官による審査を受けることなしに登録になります。このため、登録になっている実用新案が実体的要件を満たしているか否かは、原則として、当事者間の判断に委ねられます。
 しかし、権利の有効性を巡る判断には、技術性、専門性が要求され、当事者間の判断が困難な場合も想定されます。そこで、当事者間に権利の有効性に関する客観的な判断材料を提示するという観点から、実用新案登録出願が行われた後は、実用新案登録出願人、実用新案権者だけでなく、第三者も、特許庁に対して、いつでも、実用新案技術評価の請求を行うことができます。
 実用新案技術評価は、文献等公知(実用新案法第3条1項3号)、公知文献から見た進歩性(同法第3条2項)、拡大先願(同法第3条の2)、先願(同法第7条)の要件、すなわち先行技術文献及びその先行技術文献からみた考案の有効性などに関する評価を特許庁審査官が行うものです。
 この意味で、実用新案技術評価の請求に基づく実用新案技術評価書の作成は、特許出願において審査請求があった後に行われる審査と同等です。そこで、実用新案技術評価書が作成された後に実用新案登録に基づく特許出願を行うことができるとすると、同一の技術について、実用新案技術評価書の作成と、特許審査という二重の審査が行われることになってしまいます。
 このため、実用新案技術評価の請求が行われた場合の時期的制限が設けられています。なお、実用新案技術評価の請求は何人も行うことができるため、出願人又は実用新案権者が評価請求を行った場合と、他人(第三者)が評価請求を行った場合とに分けて時期的制限が設けられています。

<出願人、権利者による評価請求後:実用新案登録に基づく特許出願は不可>
 出願人又は実用新案権者による実用新案技術評価請求の後は、その評価請求された実用新案登録に基づく特許出願をすることができません。同一の技術について、実用新案技術評価書の作成と、特許審査という二重の審査が行われることを防止するためです。
 なお、実用新案技術評価の請求は、実用新案登録請求の範囲に記載されている請求項ごとに行うことができます。そこで、一部の請求項についてのみ評価請求されることや、すべての請求項について評価請求されることが考えられますが、どちらの場合であっても、出願人又は実用新案権者による評価請求の後は、その評価請求された実用新案登録に基づく特許出願をすることができません。

<他人からの評価請求後:特許庁から最初の通知を受領した日から30日以内>
 他人による実用新案技術評価請求があった場合には、実用新案登録出願人(実用新案登録後は実用新案権者)に対して、その旨が特許庁から通知されます。他人による評価請求があった旨の最初の通知を受け取った日から30日を経過するまでは、その評価請求された実用新案登録に基づく特許出願を行うことができます。
 他人による評価請求は、出願人又は権利者自身で評価請求したものではないため、評価請求後直ちに実用新案登録に基づく特許出願をすることができなくなることは、出願人又は権利者にとって酷であることからこのようにされています。
 なお、他人からの実用新案技術評価の請求が一部の請求項についてのみ行われている場合、すべての請求項について行われている場合のいずれであってもこの取り扱いは同じです。

<実用新案登録無効審判請求を受けた場合の時期的制限>
 実用新案登録に対して無効審判の請求があり、請求を受けた実用新案権の有効性の判断が可能なところまで審理が進んだ段階で、同一の技術について新たな特許出願が行われると、審理を進めてきた請求人の負担が無に帰す可能性があります。
 また、審理が進んだ段階で実用新案登録に基づく特許出願が行われ、その特許権が設定された場合に、当該特許権について無効審判請求がなされると、同一の技術について、審理が二重に行われることになります。
 そこで、実用新案登録に対する無効審判請求があった場合、最初に指定された答弁書提出可能期間経過後は、その実用新案登録に基づく特許出願を行うことができないことになっています。「最初に指定された」とは、複数の無効審判請求それぞれの最初の指定という意味ではなく、複数の無効審判のすべてを通じて最初の指定であることを意味しています。
 なお、実用新案登録無効審判の請求は、実用新案登録請求の範囲に記載されている請求項ごとに行うことができます。そこで、一部の請求項についてのみ無効審判請求されることや、すべての請求項について無効審判されることが考えられますが、どちらの場合であっても、最初に指定された答弁書提出可能期間経過後は、その実用新案登録に基づく特許出願を行うことはできません。

<出願形式については弁理士によく相談してください>
 2回に分けて説明してきたように、実用新案登録になってからでも実用新案登録に基づく特許出願を行うことが可能ですが、新しく開発した技術について、特許出願あるいは実用新案登録出願を行う前に、どちらの形式で保護を受けようとすることが望ましいのか専門家である弁理士によくご相談されることをお勧めします。

<次号>
 次号では、特許庁の審査で特許を認めるという結論「特許査定」を受けた後に、同業他社の競合品に対して効果的に権利行使するべく「特許査定」を受けた発明とは異なる表現の発明で特許を受けたいと考えるときなどに行うことができる「特許査定」後の特許出願の分割について説明します。

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■ニューストピックス■

●4月1日より特許料等の料金が改定

 特許法等の一部を改正する法律の施行に伴い、2022年(令和4年)4月1日より、特許料(特許登録料、特許年金)、商標登録料、商標更新登録料、国際出願(特許、実用新案)関係手数料、国際登録出願(商標)関係手数料等が改定されます。
 特許については、改定されるのは特許料のみであり、出願料、審査請求料、審判請求料等は改定されません。
 また、意匠については改定される料金はなく、商標についても出願料は改定されません。
 改定後の料金の適用は、出願日ベースではなく、支払日ベースになります。4月1日より前に納付される特許料等は改正前の料金が適用されます。現行料金は3月31日までに納付手続したものでなければ適用されませんので、ご注意ください。

【特許料】

 詳細については、特許庁ホームページでご確認ください。

https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/kaisei/2022_ryokinkaitei.html


●セルフレジ特許訴訟、和解が成立

 ファーストリテイリングとIT企業のアスタリスクは、ファーストリテイリングが運営する「ユニクロ」「ジーユー(GU)」で採用されているセルフレジを巡る特許侵害訴訟について、和解が成立したと発表しました。
 問題となったセルフレジは、上向きのくぼみに商品や買い物かごを置くと、無線自動識別タグで商品情報を読み取って合計金額が表示される機能を備えています。ファーストリテイリングによりますと、この技術を使ったレジは、ユニクロでは国内の8割、GUでは9割の店舗に導入されています。
 アスタリスクは同社の特許権を侵害したとして、ファーストリテイリングに対し、特許権侵害訴訟を提起した一方、ファーストリテイリングは「容易に発明できる技術だ」として、特許無効を求める審判を申し立てていました。
 今回の和解により、アスタリスクとNIP(アスタリスクから特許の譲渡を受けた会社)は、ファーストリテイリングに対する特許侵害訴訟を、ファーストリテイリングは、アスタリスクとNIPに対する特許無効審判請求をそれぞれ取り下げます。
 和解により、両陣営は今後、それぞれの権利や事業を尊重し、互いに良好な関係を築くとしています。和解金の支払いなど、和解条件については「一切公表しない」として、詳細は明らかにしていません。


●新たな保護対象の意匠登録事例を公開(特許庁)

 特許庁は、「改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例」を公開しました。
 2020年4月1日に新たに保護対象となった意匠の出願・登録状況については、多くの企業から高い関心が示されているとして、特許庁は、意匠登録されたもののうち参考となる事例を特許庁HPで公開し、今後の出願の参考にしてほしいとしています。登録内容はサムネイル画像の一覧からも簡単に確認できます。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/kaisei_hogo.html

 また、特許庁は新たな保護対象についての意匠登録出願件数と登録件数を公表しました。
 それによると、新たな保護対象についての意匠登録出願件数(2022年1月4日時点で取得可能なもののみ)は、画像2,050件、建築物632件、内装435件。
 また、登録件数(2022年1月4日時点で取得可能なもののみ)は、画像749件、建築物298件、内装152件。

https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/seidogaiyo/document/isyou_kaisei_2019/shutsugan-jokyo.pdf


●海賊版対策で国際組織を創設(日米中韓などの著作権保護団体)

 漫画や映画などの海賊版被害がグローバル規模で問題となっていますが、出版社や動画配信会社で構成する日米中韓などの主要国の著作権保護団体は2022年4月、共同で国際組織「国際海賊版対策機構/International Anti-Piracy Organization (IAPO)」を創設することを決めました。
 デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、国境を越えた海賊版の被害が拡大していますが、捜査当局の国際連携は進んでいないのが現状です。そこで各国の著作権保護団体が国際組織を立ちあげ、被害情報を共有するなどして、各国の当局に迅速な捜査を要請することにしました。
 日本においては、2021年に海賊版サイトで読まれた漫画の被害額は少なくとも1兆円を超えることが出版社などでつくる一般社団法人「ABJ」の調べで分かりました。  20年の4.8倍に急増しており、同年の正規の漫画販売額(6126億円、出版科学研究所調べ)の1.6倍に当たるなど、被害が広がっています。


●特許非公開制度、審査は2段階(政府)

 政府の経済安全保障推進法案に関する有識者会議は、法制化に向けた提言骨子をまとめました。
 骨子では、軍事転用できる先端技術の特許を非公開にする制度(秘密特許)の導入に併せ、安全保障上、公開を制限すべき技術かどうかの審査については、特許庁が1次審査を行い、防衛省と内閣府を中心とした新設組織が2次審査を行うとしています。審査期間は出願から合計10カ月以内を想定しています。
 また、機微情報の流出防止に向け、情報の保全義務に違反した特許出願者に科す罰則の導入のほか、非公開対象とした技術は、外国での特許出願も制限すべきとしています。


●米国での特許取得件数、中国が増加(米専門会社調査)

 米国の特許専門調査会社「IFI CLAIMSパテントサービス」は、2021年に米国特許商標庁(USPTO)に登録された特許数に関するランキングを発表しました。

https://www.ificlaims.com/rankings.htm

 それによると、米国特許商標庁が2021年に発効した特許の総数は前年比7%減の32万7329件。国別では、1位が米国(15万801件)、2位は日本(4万7105件)、続いて韓国(2万1264件)、中国(2万679件)、ドイツ(1万4663件)が上位5カ国となりました。
 上位5カ国について2020年と2021年の特許取得件数を比較すると、中国を除く4カ国は減少しましたが、中国だけは1万8792件から増加しました。
 企業別ランキングをみると、1位は前年に引き続き、IBM。2021年の取得件数は8,682と、2020年の9,130に対し、5%減。2位はサムスン電子(取得件数6,366)、3位はキヤノン(同3021)と、トップ3は前年と同じ結果となりました。
 中国の華為技術(ファーウェイ)は2,770件の特許を取得し、昨年の第9位から第5位と大幅にランクアップしました。
 日本企業としては、キヤノン(3位)、トヨタ(12位)、ソニー(16位)、セイコーエプソン(23位)、ホンダ(24位)、三菱電機(26位)、パナソニック(27位)、デンソー(32位)、シャープ(38位)、NEC(41位)、リコー(46位)、東芝(47位)、村田製作所(49位)、富士フイルム(50位)の14社がランクインしました。


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最終更新日 '22/07/18