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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2022年4月1日号


  本号のコンテンツ


 ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(52)インターネット回線を利用したオンライン面接


 ☆ニューストピックス☆

 ■4月から「マルチマルチクレーム」を制限(特許庁)
 ■技術情報の漏えい巡り無罪判決(名古屋地裁)
 ■「鬼滅の刃」の模倣品が前年比10倍増(財務省)
 ■商標の早期権利化をサポートするツールを提供(特許庁)
 ■「ルブタン」の赤い靴底は一般的なデザイン(東京地裁)
 ■特許庁窓口でクレジットカード納付が可能



 本年4月1日以降の特許出願、実用新案登録出願において「マルチマルチクレーム」が認められなくなります。
 「マルチマルチクレーム」は、「他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項(マルチクレーム)を引用する、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項」のことで、4月1日以降、特許出願では拒絶理由の対象に、実用新案登録出願では基礎的要件違反となりますので、ご注意ください。
 今号では「マルチマルチクレーム」の制限について取り上げてみます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(52)インターネット回線を利用したオンライン面接

【質問】
 特許出願の審査で拒絶理由を受けた際、拒絶理由の解消を目指して審査官に再考を求めるにあたり、特許庁で審査官に面談して説明を行うことができると聞いたことがあります。新型コロナウィルス感染症拡大の中でテレワークが広がっていますが、従来のように特許庁へ出向いて行って対面で行う審査官との面接はどのようになっているのでしょうか?

【回答】
 特許庁では対面による面接審査は、原則として行わないようにし、インターネット回線を利用したテレビ面接を行うようにしています。従来から行われていたテレビ会議システムによる面接に加えて、令和2年(2020年)の秋以降は、Webアプリケーションを利用した面接も行われるようになっています。

<オンライン面接>
 従来から特許庁ではテレビ会議システムによる面接を行っていました。特許出願の審査で拒絶理由通知書を受けた特許出願人、代理人弁理士が、審査官との面談を希望する際に、直接、虎ノ門にある特許庁まで行くことなしに審査官との面接を行えるもので「テレビ面接」と呼ばれていました。
 令和2年(2020年)秋以降、Webアプリケーションを利用した面接も行われるようになり、従来から行われていたテレビ会議システムによる面接を含めてこれらの全体がオンライン面接と呼ばれるようになっています。
 詳しくは特許庁ウェブサイト「オンライン面接システムを用いた面接について」で説明されています。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/mensetu/telesys_mensetu.html
 特許出願人や、代理人弁理士などが使用しているパーソナルコンピュータ(PC)から面接に参加して審査官とコミュニケーションを図ることができるものです。

<特許庁ウェブサイトで紹介されているオンライン面接のイメージ図>

 上掲のイメージ図にあるように、特許出願人は自社の会議室などに設置しているPCから、代理人弁理士は自分の特許事務所に設置しているPCから面接審査に参加できます。特許庁まで行く必要がなく、また、特許出願人も代理人弁理士も会社、事務所から移動することなく審査官とコミュニケーションを図ることができるので非常に便利です。最大で10台の機器が1つのオンライン面接に同時に参加可能であるとされています。
 インターネットに接続可能なPC、ウェブカメラ、ヘッドセット(あるいはマイクとスピーカー)さえそろっていればオンライン面接に参加できます。オンライン面接用の特別なソフトウェアをインストールする必要はありません。
 また、オンライン面接で特許庁に対して支払う費用は発生しません。

<オンライン面接の申し込み>
 面接審査は、特許出願の審査で拒絶理由通知書を受けた場合に拒絶理由の解消を目指して行われるのが一般的です。審査官は拒絶理由通知書という書面に文章で拒絶理由を記載し、拒絶理由の解消を目指す特許出願人、代理人弁理士も、拒絶理由に対する反論や、再考を求める趣旨を文章で、意見書、手続補正書に記載します。
 文章だけでは、互いが考えていることが正確に伝わらないことが起こり得ます。意見書や手続補正書を準備・提出する前に審査官と面談し、言葉で、互いの考えを説明することで、拒絶理由で審査官が伝えたかったこと、意見書・手続補正書で特許出願人が伝えたいと考えていることをより深く、正確に互いが理解することが可能になります。
 拒絶理由通知書には担当審査官の氏名と所属先の電話番号が記載されています。そこで、代理人弁理士が審査官に電話を入れて面接審査を申し入れ、日程調整するのが一般的です。
 オンライン面接では特許庁審査官から招待メールが送られてくるので、オンライン面接を申し込む際、面接に参加する人それぞれのメールアドレスを確認しておく必要があります。
 特許庁で対面で行われる従来の面接と同じく、代理人弁理士、特許出願人の会社代表者、会社の知財部・特許部・技術部などにおける担当者、発明者などがオンライン面接に出席できます。
 なお、特許庁が公表している「面接ガイドライン(特許審査編)(令和2年12月)」では、「代理人等から面接の依頼があった場合に、審査官は、原則、一回は面接の依頼を受諾します。」とされています。
 上述したように、代理人弁理士が特許庁審査官に電話を入れて申し込みを行う方法以外に、特許庁が公表している「面接申し込みフォーム」
https://mm-enquete-cnt.jpo.go.jp/form/pub/jpo/mensetsu_sinsa
を使用して面接申し込みを行うことも可能です。

<オンライン面接の進行>
 オンライン面接の申し込みで審査官へ伝えておいた面接審査参加予定者のメールアドレスに対して特許庁から招待メールが届きます。この招待メールにオンライン面接の開催日時と招待URLが含まれています。
 開催日時に各参加者が使用しているPCから招待メールに示されている招待URLにアクセスして審査官とオンライン面接することになります。
 オンライン面接では口頭で説明するだけでなく、文書作成ソフト、表計算ソフト、PDFソフト、等の電子データを、ウェブサイトの「ホワイトボード」に貼り付け、参加者の間で共有することや、ホワイトボードに貼り付けた電子データに参加者がマーカーやメモを付すことも可能です。
 オンライン面接は一般的に30分〜1時間程度の長さで行われます。終了する際には、開催日、出席者、「説明の内容の理解について」、「手続補正書・補正案等について」、「今後の対応について」等の事項に審査官が簡単に記載を行った「面接記録」が作成されPCの画面で確認を行います。作成された「面接記録」は電子メールで受け取ったり、拒絶理由通知書の電子データをオンラインで受領している代理人弁理士が電子データで受領することができます。

<オンライン面接に備えた準備>
 「面接の依頼があった場合、審査官は、原則、一回は面接の依頼を受諾します」とされていても、拒絶理由通知書で指定した意見書提出期限の直前になってから面接申し込みを行ったときには、「もう時間がないので、意見書・手続補正書を提出していただいてから検討します」として面接申し込みが受け入れられないことがあります。そこで、面接を行ってもらおうとするときには日程的な余裕を考えておく必要があります。
 また、オンライン面接でも従来の対面での面接と同じく面接に向けた準備が大切です。
 まず、どのような目的で面接を行うのかを面接に出席する者の間の共通認識にしておくことが大切です。例えば、審査官が拒絶理由を発した意味・審査官の考えを審査官から丁寧に説明受ける、拒絶理由に引用された文献記載の発明と本願発明との相違点についての技術的な説明を行って審査官に理解を求める、拒絶理由解消に向けて用意している補正案を何故このような補正案で拒絶理由解消できると考えているのかも含めて審査官に説明して意見を求める、等々です。
 また、面接に出席する者の中の誰が、どのような説明を行うのか、どのような順番で説明を行うのか、等々について、30分〜1時間の面接で十分な成果を上げることができるように役割分担、説明資料準備、等を行っておくことが望ましいです。
 オンライン面接の場合、説明を行う発明者、等と、代理人弁理士とが同じテーブルに座っているのではなく、会社と特許事務所という離れた場所にいてオンラインでつながっているだけということになります。そこで、上述したような準備が従来の対面での面接の場合以上に大切になります。事前に専門家である弁理士によく相談されることをお勧めします。


<次号>

 4月1日以降に行う特許出願から、特許請求の範囲に記載する発明(各請求項に記載される発明)の表現形式で、「マルチマルチクレーム」というものが認められなくなります。次号ではこれについて説明します。

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■ニューストピックス■

●4月1日以降、「マルチマルチクレーム」を制限(特許庁)

 特許法施行規則及び実用新案法施行規則の一部を改正する省令(令和4年2月25日経済産業省令10号)が公布され、令和4年4月1日に施行されることとなりました。  これにより、本年4月1日以降に特許庁へ提出される特許出願、実用新案登録出願において、マルチマルチクレームが認められなくなりますので、注意が必要です。

<マルチマルチクレームとは?>
 日本の特許出願で準備する書類で特許請求する発明を記載する欄である「特許請求の範囲」を米国ではclaim(クレーム)といいます。そして、日本の特許出願での請求項1、請求項2、・・は、米国では、それぞれ、claim 1(クレーム1)、claim 2(クレーム2)、・・・、と記載されます。
 そして、先行している複数の請求項に従属する形式の請求項(claim(クレーム))を、米国では、multiple dependent claim(多数項従属クレーム)と呼んでいます。
 本年4月1日以降の日本国特許出願において記載が認められなくなる「マルチマルチクレーム」という呼び方は、米国におけるこのような呼び方を参考にしているのではないかと思われます。
 特許庁のウェブサイトには次のような特許請求の範囲の記載がマルチクレーム、マルチマルチクレームの例として紹介されています。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/letter/multimultichecker.html
(マルチマルチクレームの制限について 令和4年3月 特許庁調整課審査基準室)
 請求項1 Aを備える装置。
 請求項2 更にBを備える請求項1記載の装置。
 請求項3 更にCを備える請求項1又は2記載の装置。(←マルチクレーム)
 請求項4 更にDを備える請求項1〜請求項3のいずれかに記載の装置(←マルチマルチクレーム)
 上記で請求項3は、請求項1、請求項2を択一的に引用しています。このように「他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項」がマルチクレームと呼ばれます。
 マルチクレームである請求項3は、「請求項1又は請求項2」と表現してこれらを択一的に引用していますので、一個の請求項であるにもかかわらず、
 @AとCを備える装置(=請求項1を引用する請求項3)と、
 AAとBとCを備える装置(=請求項2を引用する請求項3)
  という2個の発明を特許請求していることになります。
 次に、請求項4ですが、これは、「請求項1〜請求項3のいずれか」を引用する請求項ですので、上述したマルチクレームである請求項3と、それ以外の請求項1、2の中から択一的な選択を行う形式になり、「マルチクレームを引用する、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項」ということでマルチマルチクレームと呼ばれます。
 マルチマルチクレームである請求項4は、マルチクレームである請求項3を含めた3個のクレーム(請求項)を択一的に引用していますので、一個の請求項であるにもかかわらず、
 BAとDを備える装置(=請求項1を引用する請求項4)、
 CAとBとDを備える装置(=請求項2を引用する請求項4)、
 DAとCとDを備える装置(=請求項1を引用している請求項3を引用する請求項4)、
 EAとBとCとDを備える装置(=請求項2を引用している請求項3を引用する請求項4)
  という4個の発明を特許請求していることになります。

<4月1日以降の特許出願に課されるマルチマルチクレームの制限>
 上述したように、マルチマルチクレームである請求項4は、マルチクレームである請求項3を含めた3個のクレーム(請求項)を択一的に引用していることから一個の請求項であるにもかかわらず4個の発明を特許請求して審査を受け、4個の発明について特許権成立させることが可能になります。特許出願人にとっては便利な記載形式といえます。
 しかし、特許庁審査官は、マルチマルチクレームが1個記載されているだけで、上述したように、多数の発明について特許性(新規性、進歩性など)を検討・判断しなければなりません。マルチマルチクレームは審査の負担になっているといえます。
 また、日本国特許庁が2020年に受け付けた特許出願は約29万件であるところ、中国、米国、韓国特許庁が受け付けた特許出願は、それぞれ、約150万件、約60万件、約23万件で、日本を除くこれらの特許出願大国では、上述したマルチマルチクレーム形式に制限が課されています。例えば、拒絶理由になったり、特許庁へ超過料金の支払いが求められる、等です。このような諸外国の事情も考慮されたものと思われます。

<マルチマルチクレーム制限の概要>
 本年4月1日以降の特許出願の特許請求の範囲にマルチマルチクレームが含まれている場合には特許請求の範囲の記載要件違反(特許法第36条第6項第4号(委任省令要件違反))の拒絶理由を受け、マルチマルチクレームの請求項及びこれを引用する請求項については、マルチマルチクレームに係る委任省令要件(特許法第36条第6項第4号)以外の特許要件(新規性や進歩性など)の審査が行われない、という対応がされます(マルチマルチクレーム制限に伴う特許・実用新案審査基準の改訂)。
 更に、上述した請求項4の記載でマルチマルチクレームに係る委任省令要件(特許法第36条第6項第4号)違反の拒絶理由を受けた場合で、上述したB、C、D、E記載のように補正して拒絶理由を解消したときに、審査官が新規性、進歩性、等の特許要件について検討して、この補正が行われたことのみを原因として通知する拒絶理由は、新規性、進歩性、等の特許要件について一回目の検討で通知される拒絶理由であるにもかかわらず「最後」の拒絶理由とされることになります(マルチマルチクレーム制限に伴う特許・実用新案審査基準の改訂)。このため、この拒絶理由に対応するべく特許請求の範囲の補正を行う際には、請求項の削除や、請求項記載の発明の限定的減縮しかできない、等の、最後の拒絶理由通知を受けた場合の特許請求の範囲の補正に課される制限を受けることになります。
 また、本年4月1日以降の実用新案登録出願の実用新案登録請求の範囲にマルチマルチクレームが含まれている場合には基礎的要件(実用新案法第6条の2に規定する要件)を満たしていないとして補正命令を受けることになります(マルチマルチクレーム制限に伴う特許・実用新案審査基準の改訂)。
 本年4月1日以降に特許出願、実用新案登録出願を行われる場合には、特許請求の範囲、実用新案登録請求の範囲の記載にマルチマルチクレームが含まれることが無いようにご注意ください。

 <マルチマルチクレーム検出ツール>
 特許庁は、より適切にマルチマルチクレーム制限に対応できるよう、出願人及び代理人の便宜を考慮してマルチマルチクレーム検出ツール(外部と通信することなく動作するため、オフライン環境で利用可能)を提供しています。ご活用ください。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/letter/document/multimultichecker/multimultichecker_ver_1_1.zip


●技術情報の漏えい巡り無罪判決(名古屋地裁)

 鉄鋼メーカー「愛知製鋼」の技術に関する営業秘密を漏らしたとして元幹部の2人が不正競争防止法違反(営業秘密開示)の罪に問われた裁判で、名古屋地方裁判所は、元幹部らに対し無罪を言い渡しました。
 元幹部の2人は、高感度磁気センサーの製造に必要な装置に関する技術情報をホワイトボードに示すなどして、取引先の電子部品メーカー側に漏らしたとして、不正競争防止法違反の罪に問われました。
 判決では「情報は抽象化、一般化されすぎていて、ありふれた方法を選択して単に組み合わせたものにとどまる。容易に思いつくもので営業秘密を開示したとはいえない」と判断しました。
 弁護側は「機械メーカーなら当然持っている技術。競争上優位な地位を占めるような価値もなかった」として営業秘密に当たらないと訴えていました。


●「鬼滅の刃」の模倣品が前年比10倍増(財務省)

 財務省は全国の税関が2021年に知的財産権の侵害を理由に輸入を差し止めた偽ブランド品などの数が前年比39.1%増の81万9411点だったと発表しました。
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2021/20220304a.htm
 差止件数は28,270件で、前年と比べて6.7%減少したものの、2年連続で28,000件を超え、高水準で推移しています。
 差し止められた品物の中では、人気アニメ「鬼滅の刃」の根強い人気を背景に、関連の玩具や文房具などの模倣品が約10倍に増加したほか、東京五輪・パラリンピック関連の模倣品も大幅に増加しました。
 発送元を地域別にみると、中国が全体の77.4%を占めて一番多く、2005年以降トップが続いています。次いでベトナムが10.7%、フィリピンが3.9%。
 品目別では、高級ブランドなどの衣類が同60.8%増の10万8684点で最も多く、次いでイヤホンなどの電気製品が同62.0%増の10万4848点でした。
 偽ブランド品などの取り締りについては、事業としての輸入だけでなく個人での輸入も規制対象とする商標法等の改正案が4月1日に施行されます。個人の使用目的で輸入する場合でも知的財産侵害品として、税関において差し止めることが可能となるなど、規制が強化されます。


●商標の早期権利化をサポートするツールを提供(特許庁)

 特許庁は、商標の早期権利化をサポートするツールとして、「ファストトラック審査サポートツール」の提供を開始しました。
 これまでは、指定商品・役務が、ファストトラックの対象となるかを慎重に確認する必要がありましたが、これらのツールを利用することによって、それらの検討・確認が容易になりました。
「ファストトラック審査サポートツール」
https://tmfast.jpo.go.jp/fasttrack/top.html

<ファストトラック審査とは>
(1)出願時に、「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」に掲載の商品・役務のみを指定している商標登録出願であって、
(2)審査着手時までに指定商品・指定役務の補正を行っていない商標登録出願については、出願から平均10か月ほど要している最初の審査結果通知が約6か月に短縮される審査運用です。
 ファストトラック審査の対象となる出願であれば、指定商品・指定役務が不明確とする拒絶理由を未然に防ぎ、スムーズな権利化を図ることができます。

<ファストトラック審査の注意点>
 ファストトラック審査が適用されるものは、「類似商品・役務審査基準」等に掲載されている商品・役務に限定されている点には注意が必要です。
 例えば、比較的新しい商品や役務の場合、基準等に自分が指定したい商品・役務が記載されているとは限りません。また、商品・役務について具体的な記載をしたいと思っても、基準等に対応する商品・役務がないというケースも考えられます。
 このような場合、ファストトラック審査の適用を受けようとするために、基準等表示に定めている商品名・役務名に合わせてしまうと、適切な商標登録ができなくなる可能性があるため注意が必要です。


●「ルブタン」の赤い靴底は一般的なデザイン(東京地裁)

 フランスの婦人靴ブランド「クリスチャン ルブタン」が日本の靴メーカー「エイゾー(EIZO)」などを運営するエイゾーコレクションを不正競争防止法違反で訴えた裁判で、東京地裁は、ルブタン側の請求を棄却しました。
 争点となったのは、赤い靴底(レッドソール)のパンプス。ルブタン側は、ルブタンの定番といえるレッドソールのパンプスに類似した商品を製造販売したと主張し、エイゾーコレクション側は、「ファッション関係においては国内外を問わず古くから採用されている色」などと反論していました。
 判決では、「ルブタンのレッドソールと、ゴム製のエイゾーの赤い靴底とでは、光沢や質感の点で与える印象が異なる」などと指摘。
 また、「ファッション関係においては国内外を問わず古くから採用されている色であり、一般的なデザインとなっている」などと、ルブタン側の主張を認めず、不正競争には該当しないと判断しました。

ルブタンの商品(出典:東京地裁判決別紙(令和4年3月11日))


●特許庁窓口でクレジットカード納付が可能●

 4月1日から特許庁窓口でのクレジットカード納付が可能になりました。クレジット納付を利用するにあたり、事前に「3Dセキュア」の登録をしておく必要があります。
 「3Dセキュア」とは、オンラインでクレジットカード決済をする際に、クレジットカード情報(カード番号・有効期限など)と、発行カード会社に事前登録した本人しか分からないパスワードの入力を合わせて行うことで、第三者によるなりすまし購入などの不正使用を防止する仕組みです。
 また、「識別番号」(特許庁へ手続する者に付与されるコード)も事前に入手しておくと、窓口での手続きが容易となります。
 詳しくは特許庁HP
https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/credit_madoguchi.html


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最終更新日 '23/02/04