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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━

2022年6月1日号


  本号のコンテンツ


 ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(54)再公表特許の廃止に伴う留意点(1)


 ☆ニューストピックス☆

 ■企業価値向上に資する知的財産活用の事例集(特許庁)
 ■口頭審理のオンライン率65.2%(特許庁)
 ■「ファスト映画」めぐり5億円賠償請求(映画会社など13社)
 ■絶版本をPCやスマホで閲覧可能に(国立国会図書館)
 ■水素燃料電池の特許、中国が世界の7割(WIPO)
 ■知財侵害で中国など7か国を優先監視(米通商代表部)
 
 ◆助成金情報 海外知財訴訟費用保険に対する補助
 ◆イベント・セミナー情報 職務発明規定改訂セミナー



 特許庁は、「企業価値向上に資する知的財産活用事例集−無形資産を活用した経営戦略の実践に向けて」を公開しました。
 事例集は「経営層と知財部門のコミュニケーション」に着目して実際の事例を取りまとめた内容です。
 知財・無形資産戦略は、大企業のみならず、中小企業にとっても重要です。自社の知財・無形資産戦略を検討する際の参考資料としてご活用下さい。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(54)再公表特許の廃止に伴う留意点(1)

【質問】
 本年1月から再公表特許が廃止になったということでJ-Plat Patに留意点が紹介されています。どのようなことに注意すればよいのでしょうか?

【回答】
 J-Plat Patで以下のURLで説明されているものです。今回はこの内容に関して、そもそも、廃止された再公表特許とはどのようなものであるかを解説します。
https://www.jpo.go.jp/support/j_platpat/haishi_202201.html

 <J-Plat Patで検索できる特許出願に関する国内文献>
 J-Plat Patの「特許・実用新案検索」では和文(日本文)の「テキスト検索対象」は次のように表示されています。

 ここで右上の「詳細設定+」をクリックすると、「国内文献 all」で検索可能な国内文献が次のように表示されます。

 特許出願に関しては、上記で「特許(特開・特表(A))」と表示されている公開特許公報、公表特許公報、上記で「特許(再公表(A1))」と表示されている再公表特許、上記で「特許(特公・特許(B))」と表示されている特許公報という4種類の公報が特許庁から発行されています。これらはそれぞれ次のようなものです。

 公開特許公報
 日本国特許庁における特許出願日から18カ月(一年半)経過した時点で日本国特許庁から発行される公報です。
 特許出願がそれまでに取り下げ等されていない限り、18カ月(一年半)前にこのような内容の特許出願を受け付けました、として特許出願の際に提出されていた明細書、特許請求の範囲、要約書、図面の内容が掲載されます。出願日、出願番号、発明の名称、発明者の氏名、特許出願人の氏名・名称などの書誌事項も掲載されます。
 公開特許公報ごとに特許出願公開番号が付与され、特許出願公開番号、公開日も上述の書誌事項の一部として掲載されます。
 特許出願公開番号は、カレンダーイヤーごとに1番から付与され、例えば、2022年(令和4年)の最初に発行される公開特許公報に付与される特許出願公開番号は「特開2022−1」になります。
 なお、先行している特許出願から1年以内に、先の出願に基づく優先権を主張して行われている特許出願の場合には、最先の先行している特許出願の日(=優先日)から18カ月(一年半)経過した時点で公開特許公報が発行されます。

 公表特許公報
 明細書、特許請求の範囲、等が外国語で作成され、外国語で行われていた特許協力条約(Patent Cooperation Treaty : PCT)に基づく国際出願である外国語国際出願が、日本国特許庁に移行してきて日本国の特許出願番号が付与された際に発行される公報です。
 日本国特許庁への移行の際に日本国特許庁へ提出された、明細書の日本語翻訳文、請求の範囲の日本語翻訳文、等の内容が掲載されます。出願日、出願番号、日本語翻訳文が提出された日、国際出願番号、国際公開番号、国際公開日、発明の名称、発明者の氏名、特許出願人の氏名・名称などの書誌事項も掲載されます。
 公表特許公報ごとに特許出願公表番号が付与され、特許出願公表番号、公表日も上述の書誌事項の一部として公表されます。特許出願公表番号は、カレンダーイヤーごとに50万代の番号が付与され、例えば、2022年(令和4年)の最初に発行される公表特許公報に付与される特許出願公表番号は「特表2022−500001」になります。
 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願については、日本国特許庁が発行する上述の公開特許公報と同じく、特許出願日である国際出願日(あるいは、先の特許出願に基づく優先権を主張している場合には、最先の先の特許出願日である優先日)から18カ月(一年半)経過した時点で、WIPO(世界知的所有権機関)から、国際公開公報が発行されます。
 国際出願の際に提出されていた明細書、請求の範囲、要約書、図面の内容が国際公開公報に掲載されます。また、国際出願日、国際出願番号、国際公開番号、国際公開日、発明の名称、発明者の氏名、特許出願人の氏名・名称などの書誌事項も国際公開公報に掲載されます。
 明細書、特許請求の範囲、等が日本語で作成され、日本語で行われた特許協力条約(PCT)に基づく国際出願である日本語国際出願についても、また、上述した外国語国際出願についても、この国際公開公報の発行が行われます。
 国際出願から日本国特許庁に移行してくる特許出願については、一般的に国際公開公報の発行が済んでいます。そこで、上述したように、国際公開番号、国際公開日も、公表特許公報に掲載される書誌事項の中に含まれています。
 なお、国際出願から日本国特許庁へ移行した特許出願については、日本国特許庁への特許出願日=国際出願日という取り扱いになります。そこで、国際出願が行われた日である国際出願日の日付が、公表特許公報に掲載される書誌事項の中に含まれている出願日の欄に記載されます。

 再公表特許
 日本語国際出願が、日本国特許庁に移行してきて日本国の特許出願番号が付与された際に発行される公報です。
 国際出願の際に提出されていた日本語の明細書、日本語の請求の範囲、等の内容が掲載されます。また、出願番号、国際出願番号、国際出願日、発明の名称、発明者の氏名、特許出願人の氏名・名称などの書誌事項も掲載されます。
 再公表特許に掲載されるこれらの内容、事項は、日本国特許庁が付与した出願番号を除いて、上述した国際公開公報に掲載されていたものと同一です。
 再公表特許には「特許出願再公表番号」は付与されず、国際公開番号を用いて再公表特許の発行が行われます。また、公表特許公報では公表日が書誌事項の一部として掲載されますが、再公表特許では、国際公開日と、再公表特許の発行日が、上述の国際公開番号と共に、書誌事項の一部として掲載されます。

 特許公報
 特許庁での審査を受けて「拒絶理由を発見できないので特許を認める」という特許査定が下され、その後30日以内に1〜3年分の特許料が納付されることで特許権が成立したときに、独占排他権たる特許権の効力範囲、等を公示する目的で特許庁から発行される公報です。
 特許請求の範囲、明細書、図面の内容が掲載されます。また、出願日、出願番号、公開番号、公開日、特許番号、登録日(特許年月日)、(特許公報)発行日、発明の名称、発明者の氏名、特許権者の氏名・名称などの書誌事項が掲載されます。
 明細書、図面の内容は、特許出願の審査過程、等で補正が行われていなければ、公開特許公報に掲載されていた内容と同一です。一方、特許請求の範囲の記載は、審査過程で特許請求の範囲に記載されていて特許権取得を目指していた発明の効力範囲を狭める補正が行われることが多いので、公開特許公報に掲載されていた内容とは異なっていることが多くなります。

<再公表特許が廃止された事情>
 上述した公表特許公報でも、再公表特許でも、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願が日本国特許庁に移行してきて、日本国の特許出願番号が付与された際に、日本国特許庁から発行される公報であるという点では共通しています。
 しかし、公表特許公報は、外国語国際出願について発行される公報であることから、日本国特許庁に移行してきたときに日本国特許庁へ提出された明細書の日本語翻訳文、請求の範囲の日本語翻訳文、等が掲載されるのに対して、再公表特許には、国際出願の際に提出していて、発行済の国際公開公報に掲載されていた日本語の明細書、日本語の請求の範囲、等が掲載される点で相違しています。
 外国語で国際出願が行われた場合、特許出願日(優先日)から18カ月(一年半)経過後に発行される国際公開公報に掲載されている明細書、請求の範囲、等は外国語です。そこで、外国語国際出願から日本国特許庁へ移行する際に日本国特許庁に提出された明細書の日本語翻訳文、請求の範囲の日本語翻訳文、等を、公表特許公報として発行することは、これを、日本国内での技術情報、特許出願情報として取り扱う上で意義があります。
 一方、日本語国際出願の場合、日本語の明細書、日本語の請求の範囲、等で、国際公開公報が発行され、これによって、日本語国際出願の内容は、日本語で、既に、世界中に公表されています。
 そこで、上述した内容の再公表特許を公報として日本国特許庁が発行する意義は、外国語国際出願について発行される公表特許公報に比較すると大きくありません。
 また、次回、説明しますが、日本語の国際出願についての国際公開公報は、上述したJ-Plat Patで検索できる特許出願に関する国内文献と同じようにしてJ-Plat Patで検索できます。そこで、2022年(令和4年)1月から、再公表特許は廃止されて発行されなくなったものと思われます。

<次号>
 再公表特許が廃止されたことに伴ってJ-Plat Patで説明されている留意事項の内容を解説します。

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■ニューストピックス■

●企業価値向上に資する知的財産活用の事例集(特許庁)

 特許庁は、「企業価値向上に資する知的財産活用事例集−無形資産を活用した経営戦略の実践に向けて」を公開しました。
 事例集は、企業価値向上に取り組む国内企業20社に対して行った実践事例のヒアリング調査から、「経営層と知財部門のコミュニケーション」などに着目して実際の事例を取りまとめた内容です。
 主な項目としては、「経営上の課題/中長期的な事業の方向性」「成長戦略の事例」「成長戦略の事例における知財戦略」「経営層と知財部門とのコミュニケーション」「知財戦略のステークホルダーへの開示について」の5項目について整理しています。
 特許庁では、知財・無形資産活用を通した企業価値向上を目指す経営層や、知財部門・経営企画部門などに従事する人の円滑なコミュニケーションを図るため、同事例集の活用を呼びかけています。
 事例集は特許庁のウェブサイトからダウンロードができます。
https://www.jpo.go.jp/support/example/chizai_senryaku_2022.html?_fsi=YhrAYTmd


●口頭審理のオンライン率65.2%(特許庁)

 特許庁は、オンライン口頭審理に関する関係資料を一覧化した「まとめページ」を公開しました。
https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/general-koto/online-kankeishiryo.html
 オンライン口頭審理の実施状況をみると、2021年10月1日から2022年3月31日までにオンラインでの口頭審理は30件(口頭審理全体の65.2%)が行われました。
 新型コロナウイルス感染症の拡大やデジタル化に対応するため、2021年10月1日より、特許無効審判及び商標登録取消審判等の審理について、審判長の判断で、審判廷に出頭することなく、当事者等がウェブ会議システムを通じて口頭審理に関与できるようになりました。
 この度公開された「まとめページ」では、実務ガイドやQ&Aをはじめとして、実施要領やオンライン出頭希望書の様式、各種トラブルと対応例等が公開されています。

特許実用新案意匠商標合計
口頭審理全体 41 0 4 1 46
オンライン口頭審理 26 0 3 1 30
オンライン率 63.4% 75.0% 100% 65.2%

(出典:特許庁HP)


●「ファスト映画」めぐり5億円賠償請求(映画会社など13社)

 映画を10分程度に短く編集した違法動画、「ファスト映画」を動画投稿サイトで公開したとして全国で初めて摘発され、有罪が確定した投稿者に対し、映画会社など13社が「著作権を侵害された」として総額5億円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。
 「ファスト映画」は、映画を無断で使用し、字幕やナレーションをつけて10分程度にまとめてストーリーを明かす違法な動画。投稿者は、インターネットに無断公開して広告収入を得ていました。
 原告側は、動画再生1回当たりの被害額を200円と判断し、投稿者が運営していたチャンネルの再生回数から被害額を約20億円と算定。うち5億円を請求したとしています。


●絶版本をPCやスマホで閲覧可能に(国立国会図書館)

 国立国会図書館は、絶版などで入手困難となった資料をパソコンやスマートフォンで閲覧できる「個人向けデジタル化資料送信サービス」を開始しました。
 対象となるのは、国立国会図書館が所蔵し、すでに電子データ化された書籍や雑誌、論文など150万点余り。商業雑誌や漫画は含まれません。
 コロナ禍で国会図書館や大学図書館等に行かずに利用できるデジタル化導入のニーズに応えるため、著作権法を改正し、個人のパソコンやスマートフォン、それにタブレット端末での閲覧を可能としました。当面は閲覧のみですが、2023年1月を目途に印刷機能を提供する予定としています。


●水素燃料電池の特許、中国が世界の7割(WIPO)

 世界知的所有権機関(WIPO)は、特許現況レポート「輸送関連の水素燃料電池」を発表しました。
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2022/article_0006.html?utm_source=WIPO+Newsletters&utm_campaign=8eb66401bb-PR_EN_890_170522&utm_medium=email&utm_term=0_bcb3de19b4-8eb66401bb-256874078
 2020年度の世界の水素燃料電池の特許出願件数を国籍別にみると、中国が7,261件で最も多く、全体の69%を占めました。次いで日本(1,186件、全体の11.3%)、ドイツ(646件、6.2%)、韓国(583件、5.6%)、米国(403件、3.8%)がそれに続いています。2014年までは日本がトップを維持していましたが、2015年以降は、中国の独走状態が続いています。
 輸送関連の水素燃料電池の出願件数をみると、世界全体で3,189件と、水素燃料電池全体の約3割を占めています。輸送手段別の割合では自動車が71%と最大で、船舶(10%)、航空(8%)が続いています。
 企業別の輸送関連の水素燃料電池の特許に関しては、権利存続中の特許件数も公表。それによると、2021年の有効特許件数では、トヨタ自動車(2,720件)が最大で、現代自動車(1,402件)、ホンダ(1,191件)、ゼネラルモーターズ(GM)(697件)、フォルクスワーゲン(VW)・グループ(671件)などが続いています。


●知財侵害で中国など7か国を優先監視(米通商代表部)

 米通商代表部(USTR)は、貿易相手国の知的財産権保護に関する状況を分析した「スペシャル301条報告書(2022年版)」を公表しました。 報告書では、知財保護に重大な懸念がある「優先監視国」に中国など7カ国を指定しました。特に中国に対しては、「偽造品や海賊版の原産国」と非難。「知的財産保護の状況を改善するため、抜本的な変化が必要」と保護強化を要求しました。
 中国以外の優先監視国は、ロシア、インド、インドネシア、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ。優先監視国に準じる「監視国」にはカナダやブラジル、ベトナムなど計20カ国を指定。日本はいずれにも指定されませんでした。
 中国は米国との「第1段階」貿易合意で約束した強制的な技術移転の禁止などの履行状況について、「措置の妥当性と効果的な実施に対して懸念する向きが続いている」として、注意深く監視すると表明しました。


◆海外知財訴訟費用保険に対する補助(海外知財訴訟保険事業)

 特許庁は、我が国の中小企業が海外において知財係争に巻き込まれた場合に対応するため、海外知財訴訟費用保険の掛け金の一部を補助しています。

【運営団体】:日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会
【引受保険会社】:損害保険ジャパン株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、三井住友海上火災保険株式会社
【応募資格】:各地の商工会議所及び商工会の会員並びに中小企業団体中央会の組合等に加入している者
【補助率】:保険加入時の掛金の1/2(2年目以降の更新の場合は、掛金の1/3)
【募集期間】:2022年7月1日始期分(7月1日付け加入分)より開始予定
【保険期間】:2022年7月1日午前0時〜2023年6月30日午後12時

詳細は特許庁HP
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_sosyou_hoken.html


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 ■イベント・セミナー情報■

7月21日(木) 東京都新宿区 リンクスクエア新宿16階
 職務発明規定改訂セミナー
 講師 みやび坂総合法律事務所 弁護士・弁理士 高橋淳
https://blog.goo.ne.jp/jun14dai/e/16a9f1cdf90dbee356ac82b2b24622f1

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
新宿山崎ビル202
TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
E-mail:
URL: http://www.suzuki-po.net/

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最終更新日 '23/02/04