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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2022年7月1日号
本号のコンテンツ
☆知財講座☆
■弁理士が教える特許実務Q&A■
(55)再公表特許の廃止に伴う留意点(2)
☆ニューストピックス☆
■「知的財産推進計画2022」を決定(政府)
■欧州単一特許及び統一特許裁判所の概要
■クラウドファンディングを活用した意匠登録の事例集(特許庁)
■「科学技術・イノベーション白書」を公表(文部科学省)
◆国際出願関係手数料が改定(特許庁)
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政府は、「知的財産推進計画2022」を決定しました。推進計画では、スタートアップ(新興企業)の特許利用を促進する制度の創設など、重点8施策を掲げました。
今号では、「知的財産推進計画2022」の概要を取り上げます。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■
(55)再公表特許の廃止に伴う留意点(2)
【質問】
本年1月から再公表特許が廃止になったということでJ-Plat Patに留意点が紹介されています。どのようなことに注意すればよいのでしょうか?
【回答】
前回は、廃止された再公表特許とはどのようなものなのか、なぜ、廃止されることになったのかを説明しました。今回は、特許庁が以下のURL「再公表特許の廃止に伴う留意点について」で説明している事項について解説します。
https://www.jpo.go.jp/support/j_platpat/haishi_202201.html
<特許庁J-Plat Patで説明されている事項>
特許庁J-Plat Patの「再公表特許の廃止に伴う留意点について」では、「照会」に関して、「1.日本語PCT出願が国内移行されたか否かを知りたい場合」、「2.国内移行出願の経過情報を確認したい場合」、「3.国内移行出願に付与されたFI・Fタームを確認したい場合」、「4.国内移行出願の引用文献情報を確認したい場合」、「検索」に関して「5.国内移行出願に係る発明を検索したい場合」、「RSS機能」に関して「6.国内移行出願のRSS機能について」が説明されています。
この中で、「検索」に関しての「5.国内移行出願に係る発明を検索したい場合」が、同業他社の特許出願動向や、自社の技術分野での出願動向を確認する上で重要になると思われます。今回は、これについてのみ解説します。これ以外の項目に関しては、特許庁J-Plat Patの「再公表特許の廃止に伴う留意点について」でご確認ください。
<日本語で行われた国際出願の国際公開公報を検索・調査する>
上述の「5.国内移行出願に係る発明を検索したい場合」に関する特許庁J-Plat Patでの説明は「対応する日本語PCT出願の国際公開又は(特許権が設定登録された場合)特許公報で検索可能です。なお国際公開の文献種別は『外国文献』なので、検索範囲に『外国文献』(特に「WIPO(WO)」)を追加指定しないと、検索漏れが生じるおそれがあります。」というものです。
昨年末までは、前回説明した再公表特許(=日本語国際出願であることから既に国際公開公報が日本語で発行されている国際出願が、日本国特許庁に移行してきたことで日本国特許出願番号の付与を受け、国際公開公報と同一内容で日本国特許庁から発行される公報)が発行されていました。
J-Plat Patの「特許・実用新案検索」で、「テキスト検索対象」を「和文 国内文献(all)」として検索すると、特許出願に関しては、「特許(特開・特表(A))」と表示されている公開特許公報、公表特許公報、「特許(再公表(A1))」と表示されている再公表特許、「特許(特公・特許(B))」と表示されている特許公報という4種類の公報を検索できます。そこで、このようにすることで、昨年の12月末発行までの再公表特許についても検索できます。
再公表特許を検索できると、日本語で行われている国際出願が日本に移行してきて日本国特許出願番号の付与を受け、将来、どのような技術内容で日本国特許が成立する可能性があるのか、再公表特許発行時点で把握できました。
再公表特許が廃止されたことに伴い、特許庁J-Plat Patでは、「対応する日本語PCT出願の国際公開で検索可能です」又は「(特許権が設定登録された場合)特許公報で検索可能です」としています。
この意味は、日本語で行われた国際出願によって、将来、日本でどのような特許が成立する可能性があるかについては、日本語の国際公開公報を検索、調査して確認してください、これを行っておきませんと、特許権が設定登録された後に、特許庁から発行された特許公報で、初めて、その特許の存在を知ることになります、ということです。
特許権が設定登録された後に、特許庁から発行された特許公報で、初めて、同業他社の特許の存在を知ることになる場合、会社の事業を継続すると特許権侵害という問題が発生してしまうことが起こり得ます。
このような事態が発生することを未然に防止するために、日本語で行われた国際出願によって、将来、日本でどのような特許が成立する可能性があるかについて、日本語の国際公開公報を検索、調査する必要があります。
特許庁ステータスレポート2022に掲載されている「我が国の知財動向」によりますと、我が国特許庁が受け付けている特許出願の数は漸減傾向ですが、国際出願から日本国特許庁に移行してくる日本国特許出願の数は毎年のように増加し、近年では日本国特許庁が受け付ける特許出願の中の1/4程度が国際出願から移行してきた日本国特許出願になっています。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2022/document/index/0101.pdf
このような事情も顧慮しますと、これまでJ-Plat Patの「特許・実用新案検索」を利用して、国内文献を検索・調査されていた方は、本年1月以降は、日本語で行われている国際出願についての国際公開公報も同時に検索・調査されることが必要になるものと思われます。
<通常の国内文献の検索と同じようにして検索できる>
日本語の国際公開公報についての検索・調査は、J-Plat Patの「特許・実用新案検索」を利用して、これまで行っていた「国内文献」の検索・調査と同じようにして行えます。
J-Plat Patの「特許・実用新案検索」のトップページで「テキスト検索対象」欄は次のようになっています。
ここで、「外国文献」にもチェックを入れます。
「外国文献(all)」になっていますので「詳細設定」のボタンを押すと次のように表示されます。
外国文献に関しては、日本語で行われている国際出願の国際公開公報のみを検索したいので、以下のように「WIPO(WO)」のみを選択します。
WIPOは世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization)の略称で、国際出願を管轄する特許協力条約((Patent Cooperation Treaty:PCT)の国際事務局はスイス ジュネーブのWIPO内に設置されています。
こうして、テキスト検索「和文 国内文献(all) 外国文献(1)」とした後は、J-Plat Patの「特許・実用新案検索」で、従来、行っていたのと同様にして検索を行うことができます。
例えば、J-Plat Patの「特許・実用新案検索」トップページで「検索キーワード」の「検索項目」欄でプルダウンメニューの中から「出願人/権利者/著者所属」を選択し、検索したい同業他社の企業名(日本語の企業名)を「キーワード」欄に記載して検索できます。
また、「検索キーワード」の「検索項目」欄でプルダウンメニューの中かから「発明・考案の名称/タイトル」、「要約/抄録」、「請求の範囲」あるいは、「明細書」などを選択し、日本語のキーワードを記入して検索するのは、従来からJ-Plat Patの「特許・実用新案検索」で行っていたのと同様に行うことができます。
ヒットする件数が多いので、公報が発行された日などを用いて絞り込む場合、J-Plat Patの「特許・実用新案検索」のトップページで「検索キーワード」の下側に次のように表示されている「検索オプション」の「開く」ボタンを押します。
そうすると、「公知日/発行日」を記入できるようになりますので、例えば、公知日が2022年5月1日〜2022年5月31日の公報を検索する場合には以下のように記入して検索するようになります。
なお、テキスト検索「和文 国内文献(all)」だけで検索するときは、以下のように、公開日2022年5月1日〜2022年5月31日で検索できます。
しかし、テキスト検索「和文 国内文献(all) 外国文献(1)」で日本語の国際公開公報も含めて検索する場合には、上述した「公知日」での日付指定しかできません。
「『公知日』とは、その出願案件が最初に公になった日のこと」で、「1つの出願案件で公開公報と登録公報の発行がある場合に、公知日は最初に発行された日付となる」とJ-Plat Patで説明されています。
<直近の国内文献はFIで、直近の国際公開公報はIPCで検索する>
上述したように、テキスト検索「和文 国内文献(all) 外国文献(1)」とした後はJ-Plat Patの「特許・実用新案検索」で、従来、行っていたのと同様にして検索を行うことができるので、以下のように、「検索キーワード」の「検索項目」欄でプルダウンメニューの中かから「IPC」あるいは、「FI」を選択し、「キーワード」欄に、目的としているIPCや、FIを入力して検索することが可能です。
ご存じのように、IPCは、特許請求されている発明の技術分野ごとに、国際的に使用される共通の特許分類で、FIはIPCを細分化した、日本だけで用いられている分類です。
ここで、注意する必要があるのは、直近に発行されている日本の特許出願公開公報については、IPCを用いて検索できず、特許分類を利用して検索する場合には、FIを用いなければならない、という事情です。
J-Plat Patの「FAQ(よくある質問と回答)」で「『特許・実用新案検索』で『IPC』から検索した場合に、直近の案件がヒットしません。どうしてですか?」という質問に対して、「検索用の『IPC』は公報の発行後に入力されており、現在は同入力に半年以上を要しています。直近の案件を特許分類で検索する場合には、IPCが細展開された『FI』をご利用ください。」と回答されていますので、この事情をご存じの方もいらっしゃると思います。
直近半年程度の間に発行されている特許出願公開公報であってもJ-Plat Patの表示画面上ではIPCが表示されているのですが、検索の際に使われるデータが連携されるまでに出願公開公報発行から半年以上のタイムラグが存在し、この期間に発行されている特許出願公開公報についてはIPCを用いて検索できず、FIを用いなければ検索できないのです。
逆の事情が、WIPO(WO)が発行している日本語の国際公開公報にも存在しています。すなわち、少なくとも、直近半年程度の間に発行されている、日本語の国際公開公報に関しては、IPCを用いて検索すればヒットするが、FIを用いた検索ではヒットしないものが存在する、という事情です。
そこで、上述したように、テキスト検索「和文 国内文献(all) 外国文献(1)」とし、「検索キーワード」欄の検索項目をIPCあるいはFIとして検索する場合、検索項目をIPCとして検索すると、少なくとも、直近半年程度の間に発行されている日本国の出願公開公報は検索できず、一方、検索項目をFIとして検索すると、少なくとも、直近半年程度の間に発行されている日本語の国際公開公報の中にはヒットできないものが存在する、という点に注意する必要があります。
その他、J-Plat Patでの特許情報の検索でお困りのことがありましたらJ-Plat Patの「ヘルプ」ボタンや、「FAQ(よくある質問と回答)」に掲載されている情報をご利用ください。なお、J-PlatPatヘルプデスク(helpdesk@j-platpat.inpit.go.jp)へ、直接、メール送信で質問することもできます。
<次号>
「特許請求している発明がどのようなメカニズム・機序によって発明の目的を達成できているのかを解明できるまで特許出願を行うことができないのでしょうか?」というご質問に対して次回はお答えします。
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■ニューストピックス■
●「知的財産推進計画2022」を決定(政府)
政府の知的財産戦略本部(本部長・岸田文雄首相)は、「知的財産推進計画2022」を決定しました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/220603/gijisidai.html
推進計画では重点施策として、「スタートアップ・大学の知財エコシステムの強化」「知財・無形資産の投資・活用促進メカニズム強化」「標準の戦略的活用の推進」「デジタル社会の実現に向けたデータ流通・利活用環境の整備」「デジタル時代のコンテンツ戦略」「中小企業/地方(地域)/農林水産業分野の知財活用強化」「知財活用を支える制度・運用・人材基盤の強化」「アフターコロナを見据えたクールジャパンの再起動」の8項目を掲げました。
<スタートアップ・大学の知財エコシステムの強化>
大学などで生み出された知財をスタートアップ(新興企業)がフルに活用し、事業化につなげていくため、大学と企業が共同で保有する特許について、企業側が一定期間、正当な理由なく特許発明を実施しない場合は、大学の判断で第三者にライセンスすることができるルールを新たに作る方針です。
特許法では原則、複数の者の共同研究によって発明がなされた場合は、その全員が特許の申請者となり共有特許となります。この場合、他の共有者全員の同意がなければ第三者へのライセンスができないとされます。推進計画では、「一定の条件のもと、大学側の判断だけで第三者にライセンスできるルールを整備する」と明記。こうしたルールを盛り込んだ指針「大学知財ガバナンスガイドライン」(仮称)を年内にまとめる方針です。
また、スタートアップ企業が、大学が保有する特許を利用する際、現金の代わりに株式や新株予約権などでもライセンス料の支払いができるように制度を改正するとしています。
●欧州単一特許及び統一特許裁判所の概要●
欧州において統一特許裁判所協定(UPCA:Unified Patent Court Agreement)が年内にも発効される見込みです。これによって、欧州における特許権の管理を統一的に行うことを可能にする「欧州単一特許制度」及び、特許権についての法的判断を統一的に行う「統一特許裁判所制度」の運用が開始されます。両制度の概要を取り上げます。
■欧州単一特許制度・統一特許裁判所制度の概要■
・欧州特許出願に基づいて発行される特許権として、1つの特許権で欧州全体に効力を有する単一特許(UP:Unitary Patent)が認められます。なお、欧州全体といっても、後述する一部の国は除かれます(以下の文章で同様です。)ので注意が必要です。
・欧州特許庁(EPO)へ欧州特許出願し、審査を受けて特許査定を受けるまで進んで欧州特許成立させるときに、従来通りに、欧州特許条約(EPC :European Patent Convention)加盟国の中で国内特許成立させる国を選択し、選択した国(展開国)ごとに特許成立させるか、新しく創設される単一特許(UP)を成立させるか、どちらか一方を選ぶことができます。
・単一特許(UP)は、統一特許裁判所(UPC: Unified Patent Court)の管轄になります。統一特許裁判所(UPC)は、単一特許(UP)の侵害訴訟や特許取消訴訟等について、欧州全体に効力を及ぼす判決を下します。
・単一特許(UP)ではない、従来型の通常の欧州特許(登録済みの既存の欧州特許を含む)は、制度移行のための暫定期間(=移行期間:7年間)、各国裁判所と統一特許裁判所(UPC)との両方の管轄になり、暫定期間(移行期間)終了後は統一特許裁判所(UPC)のみの管轄になります。
・単一特許(UP)ではない、従来型の通常の欧州特許の侵害訴訟や特許取消訴訟等に関して統一特許裁判所(UPC)が下した判決は、通常の欧州特許を成立させる際に選択して国ごとの特許権を成立させていた当該特許のすべての展開国に対して一括的な効力を有します。
・制度移行のための暫定期間(移行期間)が終了する前であれば、通常の欧州特許について、統一特許裁判所(UPC)の管轄から離れることができます(オプトアウト(Opt-out))。
・オプトアウトした通常の欧州特許については、従前と同様に、展開国ごとに、その国の裁判所のみで裁判手続を行うことになり、当該裁判所が、当該国においてのみ有効な判決を下します。統一特許裁判所(UPC)が下した判決は、すべての展開国に対して一括的な効力を有しますから、オプトアウトにより、複数の展開国において一括的に権利取消されるリスクを回避することができると考えられます。
・オプトアウトした案件は、暫定期間(移行期間)内、暫定期間(移行期間)終了後を問わず、いつでも統一特許裁判所(UPC)の管轄に戻ることができます(オプトイン(Opt-in))。
・暫定期間(移行期間)開始と同時に統一特許裁判所(UPC)による一括的権利取消のリスクが発生します。このリスクを回避するため、暫定期間(移行期間)開始の前に準備期間(サンライズ期間:3カ月)が設けられています。サンライズ期間の間は、統一特許裁判所は稼働しておらず、その間に通常の欧州特許をオプトアウトすることが可能です。
■欧州単一特許制度■
<単一特許(UP)が適用される国>
・単一特許(UP:Unitary Patent)は、欧州特許出願に基づいて発行される特許権で、1つの特許権で欧州全体に効力を有します。
・欧州連合(EU)内で一括して効力を有する特許ですが、スペイン、クロアチア、ポーランドは除かれています。
・欧州特許庁(EPO)に特許出願してEPOで扱われている欧州特許出願はEPC加盟国に適用されるものですが、EPC加盟国=EU加盟国ではありません。例えば、英国、スイス、ノルウェーなどは、EPC加盟国ですが、EU加盟国ではありませんから、欧州単一特許制度での保護をこれらの国で受けることはできません。これらの国で欧州特許による保護を受けるためには、従来通り、欧州特許庁(EPO)での審査で欧州特許が成立したときに、従来行っていたように、国内特許成立させる国を選択し、選択した国(展開国)ごとに特許成立させる移行手続を行う必要があります。
<単一特許(UP)の申請>
・欧州特許庁(EPO)へ欧州特許出願し、審査を受けて特許査定を受け、欧州特許成立させるまでの手続は従来通りです。
・単一特許(UP)を希望する場合には、欧州特許成立後1月以内にEPOへ単一効申請(Request for Unitary Effect)を行います。なお、EPOへの出願日が2007年3月1日以降である欧州特許出願については、欧州特許成立後1月以内に単一効申請(Request for Unitary Effect)を行うことができます。
・EPOへ単一効申請(Request for Unitary Effect)を行う際に、EPOへ納付するオフィシャルフィーは発生しません。
・単一効申請(Request for Unitary Effect)時に特許全文の翻訳文を提出します。例えば、EPOへの出願、審査を英語で行っていた場合には、英語以外のEU公式言語(いずれか1つ)での特許全文の翻訳を提出します。
・従来、特許査定を受けて欧州特許成立させ、EPC加盟国の中で国内特許成立させる国を選択し、選択した国(展開国)ごとに特許成立させる移行手続において、ドイツ、フランスは翻訳文提出が不要でした。これに対して、日本からの欧州特許出願はほとんどが英語で行われているでしょうから、今後、単一特許(UP)成立させる場合には、これまでは不要であった、特許全文の翻訳費用が発生することになります。
<特許維持年金(特許権維持のために毎年納付する特許料)>
・従来は、国内特許を成立させた展開国ごとに特許権を維持するため、毎年、特許料(特許維持年金)当該展開国の特許庁に納付していました。単一効申請(Request for Unitary Effect)して単一特許(UP)を成立させた後は、欧州特許庁(EPO)に対して特許維持年金を納付するのみになります。
・EPOに納付する特許維持年金の金額は、現在、ドイツ、イギリス、フランス、オランダへ移行して、毎年、これらの国の特許庁に納付している特許維持年金(特許料)の金額の合計に相当するような金額になると説明されています。
・単一特許(UP)を維持するためにEPOに納付する特許維持年金の金額は、単一特許(UP)成立後、単一特許(UP)での保護を希望する国の数が減っても減額されません。また、上述の通り、特許維持年金(特許料)の金額は現状で4カ国の特許権を維持するための特許維持年金の金額に相当すると説明されています。そこで、単一特許(UP)での保護を希望する国が4カ国より少ない場合、特許維持年金の納付に関しては、コストメリットは大きくないと思われます。
■統一特許裁判所(UPC: Unified Patent Court)■
・単一特許(UP)及び、従来の欧州特許に関する侵害訴訟や特許取消訴訟等について、欧州全体に効力を及ぼす判決を下します。
・「EU非加盟国」及び、「統一特許裁判所協定(UPCA:Unified Patent Court Agreement)未批准国」以外の欧州特許が管轄範囲になります。
・UPCA発行から7年(最大14年まで延長可)の移行期間が終了するまでは、各国の裁判所とUPCの管轄が両立する場合があるとされています。
・UPCでは訴訟提起から約12〜15月で一審判決が出るように各手続が設計されています。
・UPCは、単一特許(UP)及び、従来の欧州特許に関する侵害訴訟や特許取消訴訟等について、欧州全体に効力を及ぼす判決を下すことから、各国の裁判所で訴訟提起する場合に比して裁判費用の低減を期待できます。
・その一方、いわゆる、セントラルアタック(Central Revocation)によって、UPCで特許取消の判断がされれば、一括的に権利が取消されることになります。
●クラウドファンディングを活用した意匠登録の事例集(特許庁)
特許庁は、「クラウドファンディング活用企業による意匠登録事例集」を発表しました。
https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/info/document/crowdfunding-jirei-20220422.pdf
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人に資金提供を呼びかけ、趣旨に賛同した人から資金を集める方法です。近年、中小企業の新たな資金調達として注目されています。
事例集では、クラウドファンディングを行う際に意匠権を活用した企業の具体例と、クラウドファンディングを行う際に意匠権に関する注意事項などを紹介しています。
活用事例の概要は以下の通り。
@スマートウォレット
コンパクト化した革製の財布:目標金額100,000円に対し支援額3,530,500円、支援者229人、達成率3,531%
A卓上火鉢
炭火文化を室内で:目標金額1,790,000円に対し支援額1,925,100円、支援人数40人、達成率107%
Bマスクハンガー
銅製で抗菌性等に優れる:目標金額300,000円に対し支援額2,567,920円、支援者数646人、達成率855%
C電動スクーター
片手で運べる充電40km走行:目標4,000,000円に対し支援額154,983,400円、支援者数1829人、達成率3,874%
D双眼鏡×単眼鏡
分離して単眼鏡、直列で望遠鏡に活用可:目標金額1,000,000円、支援額4,824,000円、支援者数200人、達成率482%
Eハンガーブレスレット
バックハンガーをアクセサリーにも、耐荷重6kg:目標金額200,000円、支援額1,712,021円、支援者数324人、達成率865%
●科学技術・イノベーション白書・2022年版(文部科学省)
文部科学省は、2022年(令和4年)版「科学技術・イノベーション白書」を公表しました。
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/kagaku.htm
白書は成長戦略の柱として掲げる「科学技術立国の実現」に向けた現状と課題について分析しています。この中で、影響力が大きな学術論文(被引用数上位10%)の数の国別ランキングをみると、日本は20年前は世界4位でしたが、2018年にインドに抜かれ、現在は過去最低の10位にまで後退しています。
過去20年の各国の大学などの研究開発費の伸びを比較すると、中国が23.4倍、韓国が4.7倍、アメリカが2.6倍などと主要国が大きく増加しているのに対し、日本は0.9倍と停滞しているのが現状です。
こうした課題の解決に向けて、大学の研究力強化のため、10兆円規模の大学ファンドを創設するなどして大学の研究基盤の強化や若手研究者への支援などに充てていく方針が示されています。
また、人工知能や量子などの先端技術については、国が強力に研究開発を進めていくことが必要だと指摘しています。
●PCT国際出願関係手数料が改定(特許庁)
2022年7月1日より、国際出願関係手数料が改定されます。
2022年7月以降に国際出願手数料、取扱手数料、日本国特許庁以外の国際調査機関が国際調査を行う場合の調査手数料の納付をする場合は、手数料の額及び適用関係にご注意してください。
詳細は特許庁HP
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_tesuukaitei.html
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