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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2023年1月1日号


  本号のコンテンツ


 ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(61)最後の拒絶理由通知(1)


 ☆ニューストピックス☆

 ■「ビジネス関連発明」の最近の動向を公表(特許庁)

 ■世界の特許出願件数が過去最高に(WIPO)

 ■著作権侵害の賠償額を上乗せへ(文部科学省)

 ■営業秘密持ち出した元社員に有罪判決(東京地裁)

 ■PCT国際出願関係手数料改定について

 ◆イベント・セミナー情報


 新年明けましておめでとうございます。
 昨年は格別のご高配を賜り心より御礼申し上げます。
 本年も所員一同、誠意をもって知的財産サービスの提供をして参りますので、本年も変わらぬお引き立ての程、よろしくお願い致します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(61)最後の拒絶理由通知(1)

【質問】
 特許庁での特許出願についての審査の結果で受領した「拒絶理由通知書」に「最後」という表示がされていました。「最初」と表示された「拒絶理由通知書」は受け取ったことがありません。この「最後」というのは何か意味があるのでしょうか?

【回答】
 特許出願で審査を受けて特許庁審査官から受け取る拒絶理由通知には「最初の拒絶理由通知(特許法第17条の2第1項第1号)」と「最後の拒絶理由通知(同法同条同項第3号)」があります。どうしてこのようになっているのかを今号で説明します。
 「最後の拒絶理由通知」を受けて特許請求の範囲を補正する場合には、「最初の拒絶理由通知」に対応するときと同じく、新規事項を追加する補正を行ってはならない(同法同条第3項)、発明の内容を大きく変更するシフト補正を行ってはならない(同法同条第4項)ことに加えて、既になされた審査結果を有効に活用することができる範囲内の補正に限らなければならない(同法同条第5項)という制限が追加されます。これについては次号で説明します。

<拒絶理由通知が発せられることなく最終処分の拒絶査定を受けることはない>
 特許出願に対して審査請求が行われたことで特許庁審査官が審査を開始し、新規性欠如、進歩性欠如、等の拒絶理由を審査で発見しない場合には「特許を認める」という特許査定(特許法第51条)が下され、特許査定謄本送達後30日以内に1〜3年分の特許料を納付することで特許権が成立します。
 一方、新規性欠如、進歩性欠如、等の「特許を認めることができない」とする理由(拒絶理由)を発見した場合には、審査官は、必ず、特許出願人に対し拒絶理由通知をし、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならないことになっています(特許法第50条)。
 「審査官が、拒絶理由があるとの心証を得た場合においても、何らの弁明の機会を与えずに直ちに拒絶査定をすることは出願人にとって酷である。また、審査官が過誤を犯すおそれがないわけではない。このような理由から、出願人に、意見を述べる機会や、明細書等について補正をして拒絶理由を解消する機会を与え、同時に、意見書等を資料として審査官に再考するきっかけを与えることで、特許出願手続の適正かつ妥当な運用を図るために、この規定は設けられている。」と特許審査基準に説明されています。

<最初の拒絶理由通知>
 「最初の拒絶理由通知」とは、一回目の審査において通知すべき拒絶理由を通知する拒絶理由通知のことです。
 「最後の拒絶理由通知」の場合は、拒絶理由通知書の中に「最後」である旨とその理由が記載されるのが原則になっています。これに対して、一回目の拒絶理由通知は、必ず「最初の拒絶理由通知」になりますから、「最初の拒絶理由通知」の場合、「最初」である旨とその理由が拒絶理由通知書の中に記載されることはありません。
 一回目の拒絶理由通知である「最初の拒絶理由通知」では、審査官は、新規事項追加の補正禁止(特許法第17条の2第3項)、先後願(特許法第39条、同法29条の2)、新規性・進歩性(特許法第29条第1項、第2項)、明細書・特許請求の範囲の記載要件(特許法第36条)等の総ての特許要件について審査し、原則として、発見された拒絶理由の総てを通知することになっています(特許審査基準)。

<最後の拒絶理由通知>
 「最後の拒絶理由通知」とは、原則として、「最初の拒絶理由通知」に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する拒絶理由通知のことをいいます。したがって、一回目の「拒絶理由通知」が「最後の拒絶理由通知」になることはありません。
 なお、「最初の拒絶理由通知」に対して特許出願人が意見書、手続補正書を提出し、拒絶理由通知の内容に反論して審査官に再考を求めても、通知されていた拒絶理由が解消されていないと審査官が判断した場合には、審査官の最終判断としての拒絶査定(特許法第49条)が下されます。これに対して不服であって、特許成立に向けて更なる審査・審理を求めたい特許出願人は、その後3カ月以内に拒絶査定不服審判を請求することができます。
 2回目の拒絶理由通知である「最後の拒絶理由通知」に対して特許出願人が意見書、手続補正書を提出し、拒絶理由通知の内容に反論して審査官に再考を求めても、通知されていた拒絶理由が解消されていないと審査官が判断した場合には、審査官の最終判断としての拒絶査定(特許法第49条)が下されます。
 なお、特定の場合には「補正却下の決定」(特許法第53条)が下されます。この場合は、補正がなかったことになるので、「最後の拒絶理由通知」で指摘された拒絶理由は解消されていないことになり、同時に「拒絶査定」が下されるのが一般的です。この事情については次号で説明します。
 このように、特許庁は、拒絶理由通知を、原則二回を限度(「最初の拒絶理由通知」及び「最後の拒絶理由通知」各一回)として通知し、手続全体の効率性に配慮しながら審査を進めることになっています(特許審査基準)。

<「最後の拒絶理由通知」とされる場合>
 上述したように、「最初の拒絶理由通知」に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する拒絶理由通知が「最後の拒絶理由通知」とされます。
 「明細書、等について、『最初の拒絶理由通知』に対する応答時に出願人が補正をしたことによって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する拒絶理由通知」の類型として特許審査基準に例示されているものをいくつか紹介すると次のようなものがあります。

  • 「最初の拒絶理由通知」に対して提出された手続補正書での補正により、明細書の記載が明瞭でなくなった場合、又は、明細書の記載に新規事項が追加された場合であって、その旨のみを通知する拒絶理由通知
  • 「最初の拒絶理由通知」に対して提出された手続補正書により、「最初の拒絶理由通知」の際に審査していた請求項に新しい技術的事項を付加する補正、又は、請求項の技術的事項を削除若しくは限定する補正が行われたことで、新たに新規性、進歩性等についての拒絶理由を通知しなければならない場合であって、その旨のみを通知する拒絶理由通知
  • 「最初の拒絶理由通知」に対して提出された手続補正書により請求項を追加する補正が行われ、これにより、新たに新規性、進歩性等についての拒絶理由を通知しなければならない場合であって、その旨のみを通知する拒絶理由通知
  • 「最初の拒絶理由通知」に対して提出された手続補正書により請求項に新規事項を追加する補正又は記載不備を生じるような補正がされた場合であって、その旨のみを通知する拒絶理由通知
 なお、「最初の拒絶理由通知」に対して提出された手続補正書により「最初の拒絶理由通知」で指摘していた拒絶理由は解消されたが、「最初の拒絶理由通知」では引用していなかった、新たな先行技術文献等に基づく拒絶理由を発見した場合に通知する拒絶理由通知は「最後の拒絶理由通知」とすることができるとされています(特許審査基準)。

<2回目以降であっても「最初の拒絶理由通知」となる場合>
 2回目以降の拒絶理由通知であっても、1回目の拒絶理由通知において審査官が指摘しなければならなかった拒絶理由が通知される場合、その拒絶理由は補正によって生じたものではありません。そこで、このような場合の「拒絶理由通知」は2回目ですが「最初の拒絶理由通知」になります。
 「1回目の拒絶理由通知で新規性及び進歩性欠如の拒絶理由を通知したときには、明細書等の記載不備、発明の単一性の欠如等の拒絶理由を見落としており、その後、その拒絶理由を発見した場合」、「1回目の拒絶理由通知では拒絶理由を発見しない旨を明記した請求項について、補正がされなかったにもかかわらず、後に拒絶理由を発見した場合」等、1回目の拒絶理由通知をするときに審査官が指摘しなければならないものであったが、その時点では発見しなかった拒絶理由を2回目以降に通知する場合などが、2回目以降であっても「最初の拒絶理由通知」となるとして、特許審査基準に例示されています。
 なお、1回目の拒絶理由通知をするときに審査官が指摘しなければならないものであったがその時点では発見しなかった拒絶理由と、1回目の拒絶理由通知に対して提出された補正書で行われた補正によって通知することが必要となった拒絶理由とを同時に通知する場合、審査官は、「最初の拒絶理由通知」を通知することになっています(特許審査基準)。
 そこで、上述したように、特許庁は、拒絶理由通知を、原則二回を限度(「最初の拒絶理由通知」及び「最後の拒絶理由通知」各一回)とすることになっていますが、3回目、4回目の拒絶理由が通知されて、いずれも「最後」とはされずに「最初の拒絶理由通知」とされることが、稀にですが、あります。

<次号のご案内>
 「最後の拒絶理由通知」を受けて特許請求の範囲を補正する場合に追加される、既になされた審査結果を有効に活用することができる範囲内の補正に限らなければならない(特許法第17条の2第5項)という制限について説明します。

以上

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■ニューストピックス■

●「ビジネス関連発明」の最近の動向を公表(特許庁)

 特許庁は、「ビジネス関連発明の最近の動向について」の調査結果を公表しました。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html

 「ビジネス関連発明」の用語については、公式な定義があるわけではありませんが、ビジネス方法がICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を利用して実現された発明のことを指す場合が多いようです。
 特許は技術を保護する制度であるため、販売管理や生産管理など、ビジネスの方法や仕組みに関する画期的なアイデアを思いついたとしても、アイデアそのものは特許の保護対象になりません。
 ただ、このようなアイデアがICTを利用して実現された場合には、「ビジネス関連発明」として特許の保護対象となり得ます。特許審査においてはコンピュータソフトウェア関連発明に含まれるものとして取り扱われています。
 調査結果によると、国内のビジネス関連発明の特許出願件数は2012年頃から増加に転じており、2020年は11,747件の出願がありました。
 出願件数が増加している背景としては、スマートフォンやSNSの普及、AIやIoT技術の進展により、ICTを活用した新たなサービスが創出される分野が拡大していることなどが考えられます。特に「金融」(フィンテックを含む)分野では、出願件数が増加しています。スマホ決済や家計簿アプリといったユーザがスマホを介して気軽に受けられる金融サービスが増えているためです。

●世界の特許出願件数が過去最高に(WIPO)

 世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「世界知的財産指標(WIPI)」によると、2021年の世界の特許出願件数は約340万件となり、前年比3.6%の増加となりました。2年連続の増加で、2018以来3年ぶりに過去最高を更新しました。
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2022/article_0013.html

 国別では中国が158万件で1位となり、世界全体の5割近くを中国の出願が占めています。2位は米国(59万1473件)、3位は日本(28万9200件)、4位は韓国(23万7998件)、5位は欧州特許庁(18万8778件)。地域別シェアではアジアが67.6%と圧倒的多数を占めています。
 中国は前年比5.5%増、韓国は2.5%増。一方、日本の出願件数は1.7%減少。米国(1.2%減)やドイツ(3.9%減)も前年を下回りました。
 なお、特許庁が昨年7月に発行した「特許行政年次報告書2022年版」の「第1部 グラフでみる主要な統計情報 第1章 国内外の出願・登録状況と審査・審判の現状」によれば、2021年に日本国特許庁が受け付けた特許出願の数は289,200件で、前年を728件上回り、数年来続いていた減少傾向が止まっています。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2022/document/index/0101.pdf

●著作権侵害の賠償額を上乗せへ(文化庁)

 文部科学省の文化審議会著作権分科会は、著作権侵害に対して損害賠償を請求する際の算定方法を見直し、賠償額を増額すべきとする報告書素案を取りまとめました。これを受け、文科省では、近く著作権法を改正する方針です。
 漫画を無断で掲載する「海賊版サイト」などの被害を巡っては、賠償額が低く、著作権侵害による利益の大部分を侵害者側が得たままになる、との指摘がありました。
 現行法では、損害賠償請求訴訟で売り上げの数量から損害額を算出する場合、著作権者の販売能力を超える部分については損害額から控除されています。
 このため、文科省は、この控除部分のうち、本来なら著作権者に支払われるべきライセンス料に相当する金額を損害額に上乗せできるよう、算定方法を見直す方針です。さらに、ライセンス料相当額の算出に当たっては、海賊版被害であることも考慮し、正規に利用した場合の金額より多く賠償請求することも可能とする方向で検討しています。

●営業秘密持ち出した元社員に有罪判決(東京地裁)

 勤務先だったソフトバンクから高速・大容量の通信規格「5G」に関する営業秘密を持ち出したとして、不正競争防止法違反の罪に問われた楽天モバイル元社員に対し、東京地裁は執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。
 判決によると、元社員は、自宅のパソコンから会社のサーバーにアクセスし、営業秘密に当たる5Gなどの技術情報に関するファイルを自分のアドレスにメール送信して不正に持ち出したとして、不正競争防止法違反(営業秘密領得)の罪に問われました。
 元社員側は「持ち出した情報は営業秘密には当たらない」と無罪を主張していました。

 不正競争防止法における営業秘密とは「秘密として管理されている技術上または営業上の情報で、公然と知られていないもの」を指します。
 営業秘密として保護されるには「秘密管理性」「非公知性」「有用性」の3つの要素を満たす必要がありますが、弁護側は「アクセス制限が十分になされていなかった」「公開された情報である」「他社には利用価値がない情報」など、3要素のいずれにも該当しないと主張していました。
 これに対し、東京地裁は「ファイルにはソフトバンクが長年にわたって構築したネットワークに関するものや、5Gへの切り替えを計画していた基地局の情報など、将来的な構想をうかがい知れる重要な情報が含まれていた」などと、いずれの要素も充足すると指摘し、持ち出された情報は、営業秘密に当たると判断しました。

●PCT国際出願関係手数料改定について(特許庁)

 2023年1月1日より、国際出願関係手数料が改定されます。
 2023年1月以降に本手数料の納付をする場合は、手数料の額及び適用関係には注意が必要です。
 詳細は特許庁HPをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_tesuukaitei.html


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 ■イベント・セミナー情報■

 1月18日(水)18時00分から20時00分まで 配信媒体:Zoom
 職務発明規程改訂 オンラインセミナー
 講師 みやび坂総合法律事務所 弁護士・弁理士 高橋淳
https://blog.goo.ne.jp/jun14dai/e/f454bf625b63385e2956b8096a4fe8db

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
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最終更新日 '23/11/06