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2023年4月1日号
本号のコンテンツ
☆知財講座☆
■弁理士が教える特許実務Q&A■
(64)発明の単一性(1)
☆ニューストピックス☆
■営業秘密侵害事件が過去最多に(警察庁)
◆営業秘密の保護と企業の対策◆
■知的財産侵害品、個人向けの輸入差止が増加(財務省)
■知財関連法の改正案を一括提出(政府)
■権利者不明の著作物の二次利用を促進(著作権法改正案)
■国際特許出願件数、中国が4年連続1位(WIPO)
■商標のファストトラック審査は3月末で休止(特許庁)
■先行技術文献調査結果を用いた出願人への要請の運用が終了
■国際出願手数料及び取扱手数料に係る新たな支援措置(特許庁)
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昨年1年間に全国の警察が不正競争防止法違反で検挙した営業秘密侵害事件が過去最多となったことが、警察庁のまとめで分かりました。人材の流動化に伴い、勤務していた会社から転職する際に、営業などに関する秘密情報を不正に持ち出すケースが増加しているようです。
今号では、「秘密情報の保護」と企業側の対策について取り上げます。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■
(64)発明の単一性(1)
【質問】
一件の特許出願では一つの発明しか特許請求できないのでしょうか?
【回答】
一件の特許出願で複数の発明を特許請求することが可能です。しかし、どのような関係にある発明でも一件の特許出願の中に含めることができるというものではありません。複数の発明がどのような関係にあれば一件の特許出願の中に含めることができるのかは特許法第37条に「発明の単一性」として規定されています。今号では「発明の単一性」の内容を説明し、次号で、「発明の単一性」といわゆる「シフト補正禁止」の規定との間で注意が必要な事項、特許審査基準で例示されている複数発明の間に「発明の単一性」が認められる場合を紹介します。
一出願に複数発明を含めることができる趣旨
技術的に所定の関係を有する複数の発明について、一発明ごとに一件ずつ特許出願して審査を受け、一件ずつ特許成立させることが可能です。
しかし、特許出願人にしてみれば、別々に複数の特許出願を行い、複数の特許権を成立させて管理するよりも、技術的に所定の関係を有する複数の発明について一件の特許出願で審査を受け、一件の特許権で管理する方が簡便です。
また、特許出願人以外の第三者にとっては、技術的に所定の関係を有する複数の発明が一件の特許出願にまとめられている方が発明情報の入手を効率的に行う上で有利で、特許情報の利用や権利の取引が容易になることが考えられます。
更に、特許庁にとっては、技術的に所定の関係を有する複数の発明が一件の特許出願の中で特許請求されていれば、一件の特許出願の審査で複数の発明についての審査を行うことができ、効率的に審査を行うことができると考えられます。
このような考え方の下、特許法では、一つの特許出願に複数の発明を包含して特許請求することを許容し、その一方で、一つの特許出願に包含されることが許容される範囲を「発明の単一性」として特許法第37条に規定しています。
一つの特許出願に複数の発明を包含することを許容し、その一方で、一つの特許出願に包含されることが許容される範囲を法律や規則などで規定する取り扱いは、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty、PCT))や主要国の特許制度でも採用されています。
特許法第37条「発明の単一性」
日本の特許法では第37条に「発明の単一性」として次のように規定されています。
(特許法第37条)
二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。
「経済産業省令で定める技術的関係」は、特許法施行規則第25条の8に次のように規定されています。
(特許法施行規則第25条の8)
第1項
特許法第37条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。
第2項
前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。
第3項
第1項に規定する技術的関係については、二以上の発明が別個の請求項に記載されているか単一の請求項に択一的な形式によって記載されているかどうかにかかわらず、その有無を判断するものとする。
特許法第37条違反は拒絶理由であるが異議申立・無効理由ではない
「発明の単一性」の要件を満たさない二以上の発明を含む特許出願であっても、各発明が新規性、進歩性、等の特許要件を備えていて、分割出願を行ってそれぞれ審査を受ければ特許成立するものであるならば、「発明の単一性の要件を満たさない二以上の発明について異なる特許出願とすべきであった」という手続上の不備が存在するだけです。
そこで、特許法第 37 条に規定されている「発明の単一性」要件を満たさない特許出願がそのまま特許査定され、特許権成立することは、直接的に第三者の利益を著しく害することになりません。
このため、特許法第37条の「発明の単一性」要件は、拒絶理由にはなりますが、特許異議申立理由、特許無効理由にはなっていません。
特許審査基準では、この点を考慮して「審査官は、特許法第 37 条の『発明の単一性』要件の判断を必要以上に厳格にすることがないように留意する」とされています。
複数の発明がどのような関係にあれば「発明の単一性」を満たすのか
審査を受けている特許出願が「発明の単一性」の要件を満たしているかどうかについては、特許請求の範囲に記載された二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有しているか否かによって判断されることになっています(特許法施行規則第25条の8第1項、特許審査基準)。
例えば、特許請求の範囲に請求項1と、請求項2という2個の発明が記載されている場合、請求項1記載の発明の「技術的特徴」と、請求項2記載の発明の「技術的特徴」とが、「同一の又は対応する特別な技術的特徴」という関係にあるかどうかが特許庁の審査で検討されます。
「特別な技術的特徴」
「特別な技術的特徴」とは、
先行技術に対する、審査を受けている発明の貢献を、明示する技術的特徴のことである、とされています(特許法施行規則第25条の8第2項)。
ここで「先行技術」は、審査を受けている特許出願の出願時に既に公開されていた発明(特許出願の際に既に公に知られていた発明、公に用いられていた発明、特許出願公開公報・特許公報・論文・業界紙誌などの刊行物に掲載されていた発明、インターネットなどで公知になっていた発明、等、特許法第29条第1項各号に該当する発明)のことです。
また、「(審査を受けている)発明の貢献」とは、「先行技術との対比において発明が有する技術上の意義」であるとされています。
請求項2発明は請求項1発明と「技術的特徴」を共通にしている場合が多い
請求項1、請求項2のように、特許請求の範囲に複数の発明を記載して審査を受ける場合、請求項2は請求項1を引用する従属請求項にするのが一般的です。「2022年度知的財産権制度入門テキスト 特許制度の概要 特許権の効力」の項で紹介されている事例を参照すると、例えば、次のような記載ぶりです。
請求項1:断面が六角形の木製の軸を有し、当該軸の表面に塗料が塗られている鉛筆。
請求項2:前記軸の一方の端に消しゴムが付いている請求項1記載の鉛筆。
この場合、請求項1記載の発明と請求項2記載の発明との間における「同一の又は対応する」技術的特徴は「断面が六角形の木製の軸で、軸の表面に塗料が塗られている、鉛筆」ということになります。
2つの発明に共通している「技術的特徴」が「特別な技術的特徴」になる場合
上述した「断面が六角形の木製の軸で、軸の表面に塗料が塗られている、鉛筆」という技術的特徴が、特許法第29条第1項各号に該当する発明(先行技術)と対比した時に、技術上の意義を有する、と判断できる場合、請求項1記載の発明と請求項2記載の発明との間における「同一の又は対応する」技術的特徴は、「同一の又は対応する特別な技術的特徴」ということになり、特許請求の範囲に上述した請求項1、2が記載されている特許出願は「発明の単一性」(特許法第37条)を満たしている、ということになります。
先行技術との対比において発明が有する「技術上の意義」
特許審査基準では、「発明の単一性」を検討・判断する2つの発明の間において「特別な技術的特徴」であると考えるべきものが、以下の(i)〜(iii)のいずれかに該当する場合、これは「発明の先行技術に対する貢献をもたらすものでない」と判断されることになる、
としています。
(i)「特別な技術的特徴」とされたものが先行技術の中に発見された場合
(ii)「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する周知技術、 慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではない場合
(iii)「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する単なる設計変更であった場合
上述の(i)は審査を受けている発明が新規性を有していない場合、(ii)、(iii)は審査を受けている発明が進歩性を有していない場合と考えることができます。
そこで、従来技術と比較した時に新規性が欠如している発明、進歩性が欠如している発明は、先行技術との対比において「技術上の意義」を有していない発明であると判断されるのではないかと思われます。
審査を受けている複数の発明が新規性・進歩性欠如である場合
審査を受けている複数の発明が、いずれも、新規性欠如や、進歩性欠如と判断されるようなものである場合には、それらは、上述したように、先行技術との対比において「技術上の意義」を有していない発明であると判断されることがあります。
このような場合には、「発明の単一性」を検討・判断している2つの発明の間に「特別な技術的特徴」と考えるべきものが存在していない、と判断され、両発明の間では「発明の単一性」要件が満たされていない、とされてしまいます。
例えば、上述した請求項1、2の鉛筆の発明で、特許庁での審査において、「請求項1記載の発明は新規性欠如、請求項2記載の発明は進歩性欠如」と審査官が判断したとします。
この場合、請求項1記載の発明と、請求項2記載の発明との間には、同一又は対応する「特別な技術的特徴」は存在していない、したがって、特許法第37条の「発明の単一性」要件が満たされていない、と判断することができます。
ただし、上述したように、特許法第37条の「発明の単一性」要件の判断は必要以上に厳格にしない、とされていますので、このような場合に、審査官は、「特許法第37条の『発明の単一性』要件が満たされていない」という拒絶理由ではなく、「請求項1記載の発明は新規性欠如、請求項2記載の発明は進歩性欠如」という拒絶理由だけを通知することになると思われます。
<次号のご案内>
次号では「発明の単一性」の2回目として、「発明の単一性」といわゆる「シフト補正禁止」の規定との間で注意が必要な事項、特許審査基準で例示されている複数発明の間に「発明の単一性」が認められる場合を紹介します。
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■ニューストピックス■
●営業秘密侵害事件、過去最多の29件を摘発(警察庁)
勤務していた企業から営業秘密を不正に取得したとして、昨年1年間に全国の警察が不正競争防止法違反で検挙した営業秘密侵害事件は29件で過去最多となったことが、警察庁のまとめで分かりました。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/seikeikan/R04_nenpou.pd
警察庁が発表した「令和4年における生活経済事犯の検挙状況」によりますと、勤務していた会社から転職したり、独立した際に、営業などに関する秘密情報を不正に持ち出したとして全国の警察が摘発した件数は、前年より6件増加し、統計を取り始めた2013年以降で最多となりました。
逮捕・書類送検されたのは45人で、うち逮捕者は17人。書類送検された法人は1社。被害企業などからの相談件数は59件。
警察庁は、営業秘密侵害事件の増加の背景に、転職が一般的になり、人材の流動化が進んだことや、営業秘密に関する企業の管理意識が高まり、不正が発覚しやすくなったことがあるとみています。
<営業秘密の保護と企業の対策>
経済産業省の知的財産政策室が2022年8月に発行した「不正競争防止法の概要(テキスト2022)」の記載内容から営業秘密に関する部分を紹介します。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/unfaircompetition_textbook.pdf
「営業秘密」とは、@秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の、A事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、B公然と知られていないもの、とされています(不正競争防止法第2条第6項)。
「営業秘密」として法的な保護を受けるためには、以下に概要を紹介する、@秘密管理性、A有用性、B非公知性が必要になります。
@秘密管理性(秘密として管理されていること)
その情報に合法的かつ現実に接触することができる従業員等からみて、その情報が会社にとって秘密としたい情報であることが分かる程度に、アクセス制限やマル秘表示といった秘密管理措置がなされていることとされています。
秘密管理性の法的保護レベルとしては、特定の情報を秘密として管理しようとする営業秘密保有企業の秘密管理意思が、秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性、すなわち、当該情報にアクセスした者が秘密であると認識できることが確保される必要があるとされています。
営業秘密保有企業が秘密として管理しようと考えている「情報」に接する従業員等にとって、当該「情報」が秘密だとわかる程度の措置(すなわち、秘密管理措置)が採られている必要があります。例えば、紙・電子記録媒体への「マル秘 ?」表示、営業秘密が化体している物(例えば、金型など)のリスト化、アクセス制限、秘密保持契約等による対象者の特定などが秘密管理措置になります。
A有用性(有用な技術上又は営業上の情報であること)
脱税情報や有害物質の垂れ流し情報などの公序良俗に反する内容の情報を、法律上の保護の範囲から除外することに主眼を置いた要件で、これら以外の情報であれば有用性が認められることが多いとされています。
現実に利用されていなくても良く、失敗した実験データというようなネガティブ・インフォメーションにも有用性が認められることがあります。
B非公知性(公然と知られていないこと)
合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物には記載されていないなど、保有者の管理下以外では一般に入手できないこととされています。
公知情報の組合せであっても、その組合せの容易性やコストに鑑みて非公知性が認められることがあるとされています。
顧客名簿、仕入先リスト、対応マニュアル、事業計画、売上データなどの営業上の情報などや、製造方法、ノウハウ、設計図、物質情報、実験結果、研究データなどの技術情報などであって、上述した秘密管理性、有用性、非公知性を備えているものは営業秘密として保護されます。
経済産業省は、営業秘密について法的保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示すものとして「営業秘密管理指針(平成15年1月30日 最終改訂:平成31年1月23日)を公表しています。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31ts.pdf
また、法的保護レベルを超えて、情報漏えい対策として有効と考えられる対策や、漏えい時に推奨される包括的対策等を収集して包括的に紹介する「秘密情報の保護ハンドブック〜企業価値向上に向けて〜」(平成28年2月 最終改訂:令和4年5月)が経済産業省から発行されています。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf
自社が保有する情報の中から秘密として保持すべき情報を決定する際の考え方、秘密情報の漏えい対策の効果的な選び方、社内体制の在り方、他社の秘密情報にかかる紛争に巻きこまれないための対策、漏えいしてしまった場合の対応策、各種規程・契約等のひな型、窓口など、様々な対策が網羅的に紹介されています。
●知的財産侵害品、個人向けの輸入差止が増加(財務省関税局)
財務省関税局は、全国の税関が昨年、輸入を差し止めた偽ブランド品などの知的財産侵害物品は、前年比7.7%増の約88万点に上ったと発表しました。2年連続で前年を上回り、特に個人向けの小口輸入の差止件数が増加しています。
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2022/index.htm
財務省の発表によると、令和4年の税関における知的財産侵害物品の輸入差止件数は2万6942件で、前年比では4.7%減少したものの、3年連続で2万6千件を超え、高水準で推移しています。
これまでは、個人使用が目的であれば、海外の事業者から偽ブランド品を郵送で輸入しても、差止対象になりませんでしたが、昨年10月の改正商標法、改正意匠法、改正関税法の施行により、個人使用の目的でも、海外の事業者が郵送等により日本国内に持ち込む模倣品などは、税関での没収が可能となりました。改正法が施行された令和4年10月から12月の間において、個人使用を目的にした模倣品の輸入差止件数は、8,102件で前年比20.1%増加しています。
●知財関連法の改正案を一括提出(政府)
政府は、特許法、商標法、意匠法、不正競争防止法、実用新案法、工業所有権特例法の知財関連6法の改正案を国会に提出しました。
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230310002/20230310002.html
商標法については、登録可能な商標を拡充します。他人がすでに登録している商標と類似する商標についても、先行商標権者の同意があり、出所混同の恐れがない場合には登録できるように改正します。
氏名を含む商標は要件を緩和し、一定の条件下で登録可能とします。
意匠法については、創作者などが出願前にデザインを公開した場合の救済措置を受ける際の手続き要件を緩和します。
不正競争防止法については、仮想空間(メタバース)などのデジタル空間上でも、商品形態の模倣行為を不正競争行為の対象とし、差し止め請求権などを行使できるようにします。
また、国際的な営業秘密侵害事案に対応するため、国外で日本企業の営業秘密が侵害された場合にも、日本の裁判所で訴訟を起こし、日本の不正競争防止法を適用できるようにします。
●権利者不明の著作物の二次利用を促進(著作権法改正案)
政府は、権利者が不明の著作物や個人が創作してインターネット上で掲載したデジタルコンテンツの二次利用を促すための著作権法改正案を今国会に提出しました。
https://www.mext.go.jp/content/230308-mxt_hourei-000028109_1.pdf
一般的に他人の著作物を利用する場合、契約により許諾を得る必要がありますが、個人がインターネットに投稿したデジタルコンテンツや権利者が不明な著作物などは、実際に許諾を得ることは困難で、ネット配信や二次利用の妨げになっていると指摘されていました。
このため、改正案では、権利者が分からない場合や許諾の意思表示が確認できない著作物について、文化庁長官による登録を受けた「窓口組織」に、利用料相当額の補償金を支払えば、権利者の許諾を得なくても一時的な利用が可能となる新制度を盛り込みました。
例えば、個人が創作したデジタル作品で利用を申請する手段がなかったり、1つの作品に複数の著作権者がいるコンテンツなどが想定されます。
一方、著作権者が自身の著作物が利用されていると分かった場合は、申し出れば、補償金を受け取り、改めて利用について交渉できるようにしたり、利用を停止させることも可能とします。
●国際特許出願件数、中国が4年連続1位(WIPO)
世界知的所有権機関(WIPO)は、2022年度の国際出願統計を公表しました。
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2023/article_0002.html
◆PCT国際特許出願◆
世界のPCT国際特許出願件数は、前年比0.3%増の約278,100件。出願国ごとにみると、中国 (70,015件、前年比0.6%増)、米国(59,056件、0.6%減)、日本(50,345件、0.14%増)、韓国(22,012件、6.2%増)、 ドイツ(17,530件、1.5%増)と上位5か国は変わりませんでした。
中国からの出願が初めて7万件を突破し、2019年から4年連続で国別首位。インドは、25.4%増の2,618件と大幅に伸びています。
◆企業別◆
企業別をみると、1位は中国の通信機器大手:華為技術(7,689件)。2位は韓国のサムスン電子(4,387件)、3位は米クアルコム(3,855件)、4位は三菱電機(2,320件)。三菱電機は、2014年以降9年連続で、世界の上位5位以内をキープしています。
◆マドプロ国際商標出願◆
マドプロ国際商標出願件数は、前年比6.1%減の約69,000件。
出願国ごとにみると、米国 (12,495件、前年比5.9%減)、ドイツ(7,695件、12.5%減)、中国(4,991件、5.3%減)、フランス(4,403件、9.9%減)。日本は2.6%減の3,145件で7位となりました。
◆企業別◆
企業別にみると、1位はフランスの化粧品大手:ロレアル(160件)、2位はスイスの製薬大手:ノバルティス(131件)、3位は英国の製薬大手:グラクソ(128件)。
日本企業では、資生堂(92件)が6位、任天堂(70件)が10位にランクインしました。
●商標のファストトラック審査は3月末で休止(特許庁)
特許庁は、商標の「ファストトラック審査」について、令和4年度末(令和5年3月31日)をもって休止すると発表しました。
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/fast/shohyo_fast.html
ファストトラック審査は、早期審査の一種で、所定の要件を満たす商標登録出願について、早期(出願から約6か月)に最初の審査結果通知を得られる制度です。
近年、特許庁の商標登録出願の審査スピードが上がっており、通常審査であっても「出願から6か月以内」に審査結果が出されるケースが多くなっています。このため、ファストトラック審査のメリットが少なくなり、制度を休止することになったようです。再開時期は未定です。
令和5年4月1日以降に出願される商標登録出願については、ファストトラック審査の対象となりません。
なお、「ファストトラック審査サポートツール」については、「商品・役務サポートツール」としてリニューアルされ、商標法第6条(指定商品が不明確等)の拒絶理由を回避するための商品等の調査・確認を支援するツールとして引き続き利用できます。
https://tmfast.jpo.go.jp/tmsupport/top.html
●先行技術文献調査結果を用いた出願人への要請の運用が終了
特許庁は「先行技術文献調査結果を用いた出願人への要請」の運用を終了すると発表しました。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/letter/shutugannin_yousei_syuryo.html
先行技術文献調査結果を用いた出願人への要請は、出願人による先行技術文献情報の開示と発明の評価を充実させる目的で、2005年度から先行技術文献を明示し、その先行技術文献に記載されている発明と出願発明との違いを明細書に記載していない場合には、拒絶理由を通知するという審査運用を行ってきました。
特許庁では、一定の理解が得られたと判断し、2023年3月31日をもって終了することになりました。
ただし、先行技術文献開示が求められる点については、特許法第36条第4項第2号の規定により変更はないとしています。
特許庁では、早期の権利化や権利の安定化のために、引き続き出願人が先行技術文献を開示し、発明の特許性について適切な評価を行うことを求めています。
●国際出願手数料及び取扱手数料に係る新たな支援措置(特許庁)
特許庁は、国際出願手数料及び取扱手数料に係る新たな支援措置について発表しました。
2024年1月1日以降に行われる日本語の国際出願または国際予備審査請求に関する国際出願手数料と取扱手数料は、国際出願促進交付金の申請手続きを不要とし、現行手数料の1/2、1/3、1/4に相当する金額で納付することとなります。
それに伴い現在の国際出願促進交付金制度は2023年12月31日をもって廃止されます。
詳細は特許庁HP
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_shiensochi.html
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