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◇◆◇ 鈴木正次特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2024年9月1日号


  本号のコンテンツ


 ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(81)新規事項を追加する補正の禁止(3)
    〜特許審査基準の紹介〜


 ☆ニューストピックス☆

 ■中小企業の特許出願件数が増加(特許行政年次報告書2024年版)
 ■長さ3倍のトイレ紙、特許侵害を認めず(東京地裁)
 ■知財取引ガイドラインを改正へ(中小企業庁)
 ■後発品の販売妨害で排除措置命令(公取委)
 ■9月1日からPCT国際出願関係手数料が改定
 ◆PCT国際出願料金の支援制度
 ■東宝とバンダイナムコが新キャラクターなど共同開発
 ■知財活動に取り組む中小企業の事例集を公開(特許庁)


 「特許行政年次報告書2024年版」を公表しました。
 報告書によると、中小企業の特許出願が、2009年の統計以降、初の年間4万件を超えました。これは中小経営においても知的財産戦略が重視されている状況を示すものといえます。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(81)新規事項を追加する補正の禁止(3)
    〜特許審査基準の紹介〜

 前回に引き続いて、特許審査基準の記載を参照して、新規事項を追加する補正の禁止について説明します。

 明細書、特許請求の範囲、図面に対して特許出願後に行う補正が、新規事項追加にあたらず許容される場合として@当初明細書等に明示的に記載された事項にする補正及び、A当初明細書等の記載から自明な事項にする補正があること、これらのいずれにも該当しない場合であっても、B「当初明細書等に記載した事項」との関係において新たな技術的事項を導入するものでないならば、その補正は許される、と審査基準に記載されていることを1回目の最後に説明しました。
 このBの場合については、「特許請求の範囲」、「明細書」、「図面」の記載について行う補正のそれぞれについて、補正が許される場合及び許されない場合が審査基準に例示されており、審査官はこれを考慮して「補正が新規事項を追加するものであるか否かを判断する」ことになっています。
 今回は、「明細書」、「図面」の記載について行う補正について示されている基準の中の一部を紹介します。

<明細書の補正>
(1)「文献公知発明に係る情報の記載」についての補正

<文献公知発明に係る情報の記載>
 特許出願の際、「(特許請求の範囲に記載している請求項に係る発明に)関連する文献公知発明が記載されていた刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在」を「先行技術文献情報」として明細書の中に記載することが要請されています(特許法第36条第4項第2号)。これを「文献公知発明に係る情報の記載」といいます。

<「文献公知発明に係る情報の記載」不備で拒絶理由を受けることがある>
 特許出願について「出願審査請求」(特許法第48条の3)を行って特許庁審査官による審査を受けますと、審査官は明細書の記載を検討し、「特許出願が特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対し、その旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。」ことになっています(特許法第48条の7)。
 この特許法第48条の7の規定による通知を受けた場合であって、「その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によってもなお特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たすこととならないとき」には拒絶理由が通知されることになっています(特許法第49条第1項第5号)。
 特許出願の明細書では、一般的に、冒頭に「技術分野」、「背景技術」の欄をそれぞれ設けて記載します。
 上述した特許法の要請があることから、「背景技術」の欄では、特許出願前にJ-Plat Patを利用するなどして行った特許調査で発見できた、特許請求の範囲に記載している請求項に係る発明に関連する、特許出願公開公報や特許公報の記載内容に言及し、事前の特許調査で発見できた特許出願公開公報の番号などを「先行技術文献」欄に記載することが一般的になっています。
 特許審査基準には、「文献公知発明に係る情報の記載」についての補正が新規事項追加になる場合、新規事項追加にならない場合のそれぞれについて説明が行われています。

<「文献公知発明に係る情報の記載」についての補正が新規事項0追加にならない場合>
 明細書に記載していた「先行技術文献情報」について補正する場合、以下の(i)及び(ii)のいずれかに該当する補正は、新たな技術的事項を導入するものではないので許されることになっています。

(i)先行技術文献情報を発明の詳細な説明に追加する補正
(ii)当初明細書において記載されていた「先行技術文献情報」に係る特許出願公開公報などの文献に記載されている内容を、発明の詳細な説明の【背景技術】の欄に追加する補正

<「文献公知発明に係る情報の記載」についての補正が新規事項追加になる場合>
 以下の(iii)及び(iv)のいずれかに該当する補正は、新たな技術的事項を導入するものであるので許容されないことになっています。

(iii)出願に係る発明との対比等、発明の評価に関する情報や発明の実施に関する情報を追加する補正
(iv) 「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていなければならない」という明細書の記載に要求される実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)の不備を解消するために先行技術文献に記載された内容を追加する補正。

(2)発明の効果に関する記載を明細書に追加する補正
 一般に、発明の効果を追加する補正は 、新たな技術的事項を導入するものとされて、許容されません。
 しかし、当初明細書等に発明の構造、作用又は機能が明示的に記載されており、この記載から発明の効果が自明な事項である場合は、その発明の効果を追加する補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、許容されることになっています。

(3)不整合記載を解消する補正
 当初明細書等の中に矛盾する二以上の記載がある場合であって、そのうちのいずれが正しいかが、当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかなときに、その正しい記載に整合させる補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、許容されます。
 一方、明細書等の中に矛盾する二以上の記載が存在する場合であって、そのうちのいずれが正しいかが、当初明細書等の記載から、当業者にとって自明でないときに、どちらか一方の記載に「整合」させようとすると、「当初明細書等の記載から自明な事項にする補正」ではなく、「新規事項を追加する補正である」として拒絶理由を受ける可能性があります。
 このような場合に「明細書の中に存在している、矛盾する二以上の記載」の総てを削除する補正を行うことが考えられますが、この場合も、このようにしても「新規事項追加の補正にあたる」とされる可能性が無いことを確認した上で行う必要があります。
 この意味で、明細書等の記載内容を十分に検討・確認してから特許出願を行うことが大切になります。

(4)明瞭でない記載を明瞭化する補正
 明細書の中に不明瞭な記載が存在している場合です。
 明細書の中に存在している記載が、それ自体では明瞭でないものであっても、その本来の意味が、当初明細書等の記載から当業者にとって明らかな場合、それを明瞭化する補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、許容されます。
 一方、明細書の中に存在している不明瞭な記載に関して、その本来の意味が、当初明細書等の記載から当業者にとって自明でない場合、そのような記載を明瞭化する補正を行うと、「当初明細書等の記載から自明な事項にする補正」ではなく、「新規事項を追加する補正である」として拒絶理由を受ける可能性があります。
 この意味でも、明細書の記載内容を十分に検討・確認してから特許出願を行うことが大切になります。

(5)具体例を追加する補正
 発明の具体例を追加する補正は、一般に、新たな技術的事項を導入するものになりますから、許容されません。
 特許審査基準には、「複数の成分から成るゴム組成物に係る特許出願において、『特定の成分を追加することもできる』という情報を追加する補正は、一般に、許されない。」とされています。
 また、特許審査基準では、「当初明細書等において、特定の弾性支持体を開示することなく、弾性支持体を備えた装置が記載されていた場合において、『弾性支持体としてつるまきバネを使用することができる』という情報を追加する補正は 、一般に、許されない。」とされています。
 この点、当初明細書等には、弾性支持体を備えた装置が記載されているのみで、特定の弾性支持体について開示されていないが、当業者であれば、出願当初の図面の記載及び出願時の技術常識からみて、当初明細書等に記載されている「弾性支持体」は「つるまきバネ」を意味していることが自明であると理解するという場合のように、「当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等の複数の記載から自明な事項と理解できる場合」は、「弾性支持体」を「つるまきバネ」にする補正が、新規事項の追加にあたらないとして許容されることと対比しておさえておくことが望ましいと思われます。

(6) 無関係又は矛盾する事項を追加する補正の場合
 当初明細書等に記載した事項と関係のない事項又は矛盾する事項を追加する補正は、新たな技術的事項を導入するもので、許容されない、とされています。

<図面の補正>
 出願時に提出していた図面の補正は、たとえ、出願時に提出していた図面を浄書した図面に補正する場合であっても、「新たな技術的事項が導入された」とみなされることが多いので、注意を要しますが、補正により提出する図面によって「新たな技術的事項が導入される」ものでなければ、原則として、新規事項追加に当たらず、図面の補正は許容されます。

<次号のご案内>
 本年5月1日から経済安全保障推進法に基づいて「特許出願非公開制度」、外国出願禁止の事前確認(経済安全保障推進法第79条)が開始されています。次号ではこれらの内容について紹介します。

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■ニューストピックス■

●中小企業の特許出願件数が増加(特許行政年次報告書2024年版)

 特許庁は、知的財産をめぐる国内外の動向などを取りまとめた「特許行政年次報告書2024年版」を公表しました。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/index.html

 報告書によると、日本国特許庁への特許出願件数は、2020年以降、横ばい傾向でしたが、2023年は前年比3.6%増の300,133件となりました。意匠登録出願件数は31,747件、商標登録出願件数は164,061件でした。
 日本国特許庁を受理官庁とした特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数は、2023年は47,372件となり、依然として高い水準を維持しています。

 また、国内中小企業の特許出願件数をみると、2023年は前年比約1.4%増の40,221件となり、09年の統計以降、初めて年間4万件を超えました。これは、特許などの知的財産を経営戦略上の重要な経営資源として位置づけ、積極的に活用している中小企業が増えている状況を示すものといえます。

 一方、全体の特許出願件数のうち、大企業と中小企業の割合は、大企業が82.4%、中小企業が17.6%となっています。
 中小企業庁発行の「中小企業白書2024」によると、2021年の日本の全企業数約338万社における大企業と中小企業の割合は、99.7%は中小企業で、大企業はわずかに0.3%です。企業数0.3%の大企業が、8割以上の特許を出願しているのが現状です。

●長さ3倍のトイレ紙、特許侵害を認めず(東京地裁)

 従来品より3倍長いトイレットペーパーの特許権を侵害されたとして、日本製紙クレシアが大王製紙に製品の製造差し止めや損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は、特許侵害を否定し、請求を棄却する判決を言い渡しました。
 大手製紙メーカーの子会社、日本製紙クレシアは、1ロールが従来よりも3倍長いトイレットペーパー「スコッティ」を販売していますが、大王製紙が発売している「エリエール イーナ トイレットティシュー 3・2倍巻 ダブル」が自社の特許3件を侵害したとして、商品の製造・販売の差し止めと廃棄、3300万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。
 クレシアは、トイレットペーパーのふんわり感を損なわないために紙表面に施す凹凸(おうとつ)の性状や包装などに関する特許が侵害されたと主張。大王製紙は特許を侵害していないと反論していました。
 判決は、大王製紙の製品の凹凸の深さが、特許が定める数値の範囲にあるとは認められないことなどから、特許技術の範囲には含まれないと判断。特許侵害にはあたらないとして、請求を棄却しました。
 日本製紙クレシアは控訴する意向を示しています。

●「知財取引ガイドライン」を改正へ(中小企業庁)

 中小企業庁は、大企業が知的財産権上の責任を、中小企業に一方的に転嫁する行為(責任転嫁行為)を防止するため、「知的財産取引に関するガイドライン」を改正する方針です。
https://www.meti.go.jp/press/2024/07/20240731001/20240731001.html

 中小企業庁では、「知的財産取引に関するガイドライン」を策定するとともに、知財Gメンによるヒアリング調査を実施していますが、このほど、知財Gメンによる調査の中で、発注者への納品物について、第三者との間に知財権上の紛争が発生した場合に、発注者が例外なく受注側の中小企業にその責任を転嫁できる可能性のある契約が締結されている事案を確認しました。  
 中小企業庁は、対象となる発注者に対し、契約条項の見直し等を要請したうえで、他の事業者間においても類似の契約が発生し得ることを踏まえ、現行のガイドライン及び契約書ひな形を改正する方針です。
 中小企業庁は、第三者の知財を侵害した場合、発注者から中小企業への「指示」は、口頭での指示や情報提供のような正式な書面によらない形式でも、発注側の責任を問えるよう、ガイドラインを改正する方針です。

●後発品の販売妨害で排除措置命令(公取委)

 消化器内視鏡検査に使用される内視鏡の洗浄消毒剤について、不当な「抱き合わせ販売」により、後発品の販売を妨害したとして、公正取引委員会は、独占禁止法違反(不公正な取引方法)で医療機器販売会社「ASP Japan」に対し、排除措置命令を行いました。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/jul/240726ichijo.html

 公取委によりますと、「ASP Japan」は、内視鏡洗浄消毒器にバーコードリーダーを取り付け、消毒剤の容器に貼り付けたバーコードを読み取らないと消毒機器が作動しないよう仕様に設定。こうした仕更は、医療機関に自社の消毒剤の購入を余儀なくさせ、他社の消毒剤の販売を妨げた疑いがあるとしています。
 仕様の変更は、は2013年に消毒剤の特許が切れ、後発のジェネリック医薬品メーカーが市場に参入するようになった後だったことから、公取委では、特許権が消滅した後も売り上げを確保するため、後発メーカーの商品を市場から排除する目的で消毒機器の仕様を変更したとみています。

●9月1日からPCT国際出願関係手数料が改定

 2024年9月1日から、国際出願関係手数料が改定されます。
 2024年9月以降に本手数料の納付をする場合は、手数料の額及び適用関係に注意する必要があります。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_tesuukaitei.html

<PCT国際出願料金の支援制度>
 2024年1月1日以降にされたPCT国際出願・国際予備審査請求から、中小企業については、手数料が一括して軽減されるようになっています。
 2023年12月31日まで実施されていた料金支援制度の手続が簡素化されました。支援措置を受けるための要件及び料金負担割合には変更ありません。
 2023年12月31日以前の日本語の国際出願に係る国際出願手数料、国際予備審査請求に係る取扱手数料については、中小企業は、国際出願促進交付金制度が利用できました。2024年1月1日以降は、同制度が廃止され、同日以降に行う国際出願、国際予備審査請求については、従来の国際出願促進交付金申請手続を行うことなしに、手続時に国際出願手数料又は取扱手数料の金額の1/2,1/3又は1/4に相当する金額を納付することでよくなっています。

 制度の詳細は特許庁HPをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_keigen_shinsei_202401.html

●東宝とバンダイナムコが新キャラクターなど共同開発

 東宝は、バンダイナムコホールディングス(HD)と資本業務提携したと発表しました。両社で新たなキャラクターやコンテンツといった知的財産(IP)を共同開発し、国内外で展開する方針です。
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05040/04264691/376e/45e0/87e5/c26ea4a48fc2/140120240717550613.pdf

 東宝は映画「ゴジラ」をはじめとした世界的なIPを保有し、映像作品の制作に強みがあります。一方、バンダイナムコHDは玩具やゲームなどを通じ、フィギュアやゲームなど、IPを活用した商品やサービスの展開を得意とし、国内外に販売拠点を持っています。
 両社は互いの強みを生かし、既存のキャラクターから派生した商品展開ではなく、オリジナルのIPを共同開発する方針です。
 東宝はバンダイナムコHDの発行済み株式総数の0.13%にあたる83万株、バンダイナムコHDも東宝の同0.25%にあたる46万株をそれぞれ取得しました。

●知的財産活動に取り組む中小企業の事例集を公開(特許庁)

 特許庁は、知財活動に取り組む中小企業を紹介する「知財活動事例集〜中小企業の舞台裏〜」を公開しました。
https://www.jpo.go.jp/support/example/kigyou_jireii2024.html

 事例集では、知財活動を「知財創出の仕組み」「見える化」「権利化」「侵害対策」「海外展開」など14種類に分類し、それぞれの事例を紹介しています。
 業種や活動内容など多様な全国14社の中小企業について、その背景や考え方を紹介。また、特許や商標の権利化だけでなく、見逃しがちな自社の強みを発見・整理し、それを最適な手段で守り、事業活動に活用していく視点でも、まとめられています。


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最終更新日 '24/03/02