皆様あけましておめでとうございます。
景気回復が本格化する2006年
日本経済はようやく安定した景気回復をうかがう局面に入ったように思われます。政府は2006年度の経済見通しの実質成長率を1.9%とし(12月19日閣議報告)、昨年末の日銀短観でも3期連続して業況判断の改善が続いただけでなく、大企業、中小企業を問わず全産業規模で、また製造業、非製造業を問わず全産業分野で業況判断の改善が示されました。
強化される知的財産の保護
産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)及び、著作権、不止競争防止法による保護、等々からなる知的財産に関しては、2002年2月、第154回通常国会での小泉首相施政方針演説における知的財産立国の提言以降、一貫して、その保護、強化が図られています。経済のグローバリゼーションが進行する中で、その国の知的財産戟略、その国において知的財産がどのように保護されているかが、その国の国際競争力に大きな影響を与えるものになっており、この間、一貫して推し進められてきた知的財産の保護強化は今後も強力に推進されるものと思われます。
わが国における特許出願などの動向
特許庁から公表されている統計資料を用いてわが国における特許出願件数などを紹介しますと次のようになります。
| 出願件数 | 審査請求件数 | 登録件数 |
1997年 | 391,572 | 205,300 | 147,686 |
1998年 | 401,932 | 208,392 | 141,448 |
1999年 | 405,655 | 217,389 | 150,059 |
2000年 | 436,865 | 261,690 | 125,880 |
2001年 | 439,175 | 253,826 | 121,742 |
2002年 | 421,044 | 237,345 | 120,018 |
2003年 | 413,092 | 243,836 | 122,511 |
2004年 | 423,081 | 328,105 | 124,192 |
前記の表を簡単に説明しますと、2001年から2003年まで特許出願件数は減少しましたが、2004年に2002年当時の水準に回復しました。平成16年(2004年)4月1日以降、特許料の値下げに見合う審査請求料の値上げが行われ、審査請求にあたっては従来の2倍に相当する額の審査請求料が必要になりましたが、2004年の出願件数は前年より増加しており、2005年の特許出願件数も引き続き増加するものと予想されています。
平成13年(2001年)10月1日までに出願されたものについては、出願日から7年間が審査請求できる期限で、これ以降は出願日から3年間が審査請求期限であることなどから2004年は前年に比較して8万件近く審査請求件数が増加しました。審査請求件数はこの水準で今後しばらく推移するものと思われます。
なお、特許庁は、審査請求を行ってから最初の審査結果(ファーストアクション)を受けるまでの期間が2004年で26ヶ月だったものを、2008年に20ヶ月台、2013年に11ヶ月(現状で世界最高のスピード)にすることを目標にして任期付審査官の大幅増員、等、種々の施策を実施しています(2006年度予算概算要求)。
成立する特許権は、2000年以降、毎年12万件程度で推移し、今後、数年間は、審査請求件数が増加することから特許権成立件数も増加するものと予想されます。
増加する外国への特許出願
世界の特許出願件数は1993年にようやく200万件を超えた状態でしたが、経済のグローバル化に伴って1990年代中・後半に激増し、2002年には約1,407万件になりました。この世界の特許出願の中のコアの出願に相当する各国国内での出願は1980年代以降、年間60〜80万件台から少しずつ増加したにもかかわらず2002年でも約94万件程度にとどまっています(なお、この94万件の中の42万件が日本における特許出願です。)。すなわち、この間、海外への特許出願が急増したといえます。
外国で特許を取得する傾向は日本でも強まっており、日本国特許庁へ日本語で提出することにより、特許協力条約(PCT)に加盟している世界のほとんどの国(世界128ヶ国)で特許出願した状態を確保できる国際出願については、2003年の17,097件から2004年の19,850件と増加し、この傾向は2005年以降も継続すると思われます。特許庁発行の統計資料によれば、日本国において年間100件以上の特許出願を行っている出願人が外国において取得している特許件数は、2003年の1280件から2004年の1660件へと増加する傾向にあります。
実用新案・意匠・商標の出願件数
実用新案は平成6年(1994年)からの無審査登録制度導入により出願件数が激減し、2004年には7,983件となりましたが、所定の条件の下で登録後に特許出願へ変更することを可能とし、権利存続期間が出願日から6年であったものを10年に延長する等した改正法(平成17年4月1日施行)により、出願件数の増加が期待されています。
意匠登録出願件数は毎年漸増し2004年には40,756件と1996年以来8年ぶりに4万件台を回復、登録件数も32,681件と2001年以来3年ぶりに3万2千件台を回復しました。
商標登録出願件数は、2004年に128,843件と2002年以来漸増し、登録件数は95,866件となっています。なお、世界各国では、商標登録出願件数は横ばい又は減少を続けていますが、中国における商標登録出願件数は増加し続けており、特に、日本からの出願は、2001年の4,296件から2002年の8,314件と急増し、日本企業がアジア企業を商標権侵害で訴える事案が増加しています。
知的財産の保護・強化を強める2006年
冒頭述べましたように、2006年は、円安や、中国での旺盛な原材料需要の増大による原料コストの上昇、産業向け・企業向け分野での好調の一方で、不振の傾向もみられる一般消費者向け部門、等々の問題に適切に対処することにより、景気同復の裾野を大企業、中小企業を問わずあらゆる規模の産業に、また製造業、非製造業を問わずあらゆる分野の産業に押し広げてゆくことが期待されます。そして、これに伴い、特許権などの知的財産の保護に関しても、今後の事業展開を展望した適切な対応を進めることが一層必要になると思われます。
わが国は、大企業と、これを支える膨大な数の中小企業とが役割を分担し、共にその競争力を高め、協力し合うことにより、経済を発展させてきました。特許庁は2006年度予算概算要求においても、前年に引き続き、先行技術調査の支援制度、個人・中小企業向けの特許料等減免制度など、地域・中小企業の知的財産活用に対する支援をその施策の一つとして積極的に展開するとしていますが、一昨年4月からの審査請求料の大幅な値上げは、将来納付する特許料が値下げされたとはいえ、中小企業における特許出願戦略に少なくない影響を与えると思われ、更なる制度適用の容易性などが要請されるところです。
2006年は、これらの特許庁の施策なども適切に活用しながら、大企業、中小企業を問わずあらゆる規模の産業で、また製造業、非製造業を問わずあらゆる分野の産業で、わが国の経済力、競争力の強化に直結する特許権等、知的財産権のより適切な保護を図る動きが強まる年になるものと思います。
以上
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