新春展望
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 皆様あけましておめでとうございます。

   21世紀のキーワード「環境」
 21世紀も既に10年が経過しました。今世紀のキーワードが「環境」であること、特に、地球温暖化への対策にあることがこの10年でより強く認識されるようになりました。地球温暖化対策に関しては各国間での調整に乗り越えねばならない問題がまだ多く残っています。しかし、化石燃料に大きく依存した20世紀の産業・経済構造を、化石燃料に依存しない新しい産業・経済構造に転換し、環境と経済とを両立させた低炭素社会を創り出すことが21世紀の課題であることは世界共通の認識になっていると思われます。

   低炭素社会を目指す新たな成長戦略
 昨年、国民の投票による政権交代という戦後の我が国政治史上初めての出来事によって誕生した鳩山政権は、世界各国がCO削減に取り組むという前提の下で、我が国の温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減するという高い目標を打ち出しました。
 この極めて高い目標は、経済的にも技術的にも簡単に達成できるものではないと思われます。また、米国、中国のCO排出量がそれぞれ世界の20%を占める一方、高い省エネルギー技術を持つ我が国のCO排出量は世界の4%でしかなく(2006年 国際エネルギー機関)、我が国が高い削減目標を達成しても世界全体のCO排出量には大きな影響が生じないことも考えられます。
 しかし、1990年比25%削減という高い目標達成に向けて新しい技術を開発し、日本の産業・経済構造を、環境と経済とを両立させた低炭素社会に転換することは、長期的に我が国の産業界にとっても、また国民にとっても利益になると思われます。また、我が国がこのように高い削減目標に挑むことは、米国、中国などのCO大量排出国に対しても削減に向けた意欲を喚起させるものになると期待されます。
 鳩山総理は、早速、直島経済産業大臣に「成長戦略検討会議」を組織させ、経済成長の戦略について検討を開始させました。検討のポイントは、日本からの輸出先の49%を占め(2008年度財務省貿易統計)、21世紀における世界の経済成長センターといわれるアジア地域と一体になった成長、温暖化対策をチャンスとした成長、国民一人ひとりが参加し成果を実感できる成長を基本コンセプトとする内需と外需のバランスのとれた日本の新たな成長です。

   次世代エネルギー・社会システム
 経済産業省は、次世代エネルギー・社会システム協議会というプロジェクトチームを立ち上げました。これは、環境と経済の両立が可能な低炭素社会の構築に向け、新エネルギーの大幅導入と次世代自動車等の新たな需要に対応しつつ、電力の安定供給を実現する必要性を考慮したものです。太陽光・風力・地熱・水力・潮力などの自然エネルギー(再生可能エネルギー)の大幅拡大をみすえた強靭な電力インフラの整備、IT技術を活用した快適性と省エネルギーを実現する次世代の暮らし、システムとしての海外展開もみすえた成長戦略、グローバルに展開し世界をリードする次世代システムに適した標準の策定、などが検討されています。
 この下に、経済産業省では、民間からの参加を得て、従来から進めてきたものを含めて、次のような検討を行なっています。
 ・電気自動車等の次世代自動車
 ・蓄電池システム産業
 ・低炭素社会におけるガス事業
 ・次世代送配電ネットワーク(IT技術を活用して効率的に需給バランスをとり、電力の安定供給を実現する次世代型の電力送配電網=スマートグリッド)
 ・建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネルギー性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用などにより削減し、年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたは概ねゼロになる建築物(ZEB ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現と展開
 ・次世代エネルギーシステムに係る国際標準化

   新技術・新産業を創出するグリーンイノベーション
 我が国の温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減するという野心的な目標を環境と経済とを両立させて達成するには、これを可能とする革新的な技術、新しい産業の創出が必要です。
 我が国では、必要な技術的障壁を突破すべく、前記のように官民を挙げて検討を進めていますが、本年は、これが具体的な政策として打ち出されることが要請されます。
 米国政府はオバマ大統領の下、この10年間で再生可能エネルギーの開発、普及などのために約13兆円の投資を行うことにしております。我が国政府にも、環境と経済とを両立させた低炭素社会に転換を図るグリーンイノベーションに集中的に投資し、革新的な技術の開発、新しい産業の創出に乗り出すことが望まれます。

   グリーン技術を知的財産として保護し国際標準へ
 グリーンイノベーションによって生み出される新技術を特許などの知的財産として適切に保護し、更に、世界の技術標準(ディファクトスタンダード)にする戦略をもって進むことにより、地球温暖化対策を一つのチャンスとして我が国の産業・社会を発展させ、豊かにすることが期待されます。
 米国特許庁は、グリーン(環境関連)技術を早期に保護し、投資の獲得、早期のビジネス展開を可能にさせることを目的として、グリーン技術に関する特許出願の審査を加速する計画を昨年末に発表しました。
 我が国では米国に先駆けて、昨年11月より、省エネルギー、CO2削減などに効果を発揮できるグリーン技術を早期に保護すべく、これらに関する特許出願を早期審査の対象とする取り組みを開始しています。
 本年は、環境と経済とを両立させた低炭素社会を目指す我が国の産業・社会にとって大切な一年であり、新しい産業・経済構造を創り出す革新的な技術の開発に取り組む意義の大きい年になると思われます。
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/03/12
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