新春展望
〔戻る〕

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

   期待が高まる新政権の経済政策
 昨年末の第46回衆議院議員総選挙の結果、自民・公明両党が3年3カ月ぶりで政権に復帰することになりました。
 総選挙で圧勝した自由民主党が掲げていた景気対策への期待から東京株式市場では総選挙後、日経平均株価が伸び続け、12月19日には取引期間中としては8カ月ぶりに1万円台を回復しました。
 自民・公明両党は震災復興や防災・減災対策の公共事業を軸とした大型の2012年度補正予算案編成を進めています。新政権には「日本経済再生本部」が新設され、景気対策、金融政策、社会保障改革などの幅広い政策課題が首相主導の下で一体的に実施される見込みです。また、「産業競争力会議」を新設し、製造業の育成、付加価値の高いサービス産業の創出などを目指す「日本産業再興プラン」が作成される見通しです。
 昨年、日本経済は世界経済の減速に伴う外需の減退により輸出が伸び悩み、特に、中国への輸出が減退せざるを得なかった事情などにより、大企業では増収増益の見込みながら売上高、経常利益、設備投資額を年度当初から下方修正する状態となり、中小製造業にいたっては、各指標がいずれも悪化し、減収減益が見込まれる状態になっていました。
 経済産業省・中小企業庁は、中小企業金融円滑化法が本年3月末に終了する予定であることを踏まえて、中小企業の抜本的な経営改善を支援する新たな制度を創設し、このための数百億円規模の予算を新政権が取りまとめる経済対策に盛り込むことにしています。
 適切、迅速な円高・デフレ対策、中小企業支援などの景気対策や、エネルギー、環境、高速鉄道、航空機などのインフラ産業での国際競争力強化策、等、新政権には日本経済の再生に向けた力強い経済政策の展開が希望されるところです。

   世界で増加する特許出願
 昨年末の世界知的所有権機関(WIPO)の発表によれば、2011年の世界各国における特許出願件数では、2006年に日本から首位の座を奪還してから首位の座を守っていた米国が中国に抜かれ、中国が初めて世界1位になりました。過去に米国以外で出願件数1位の座についたことがあるのは日本とドイツのみでしたが、初めて、中国が首位に立つことになりました。中国の2011年における特許出願件数は52万6412件で、中国における特許出願件数の増加は2012年も続いており、2012年も、引き続き中国が首位に立つ見込みです。
 2011年の日本における特許出願件数は34万2610件で、米国の50万3582件に続く世界3位、4位は韓国の17万8942件でした。
 日本の特許出願件数は過去数年減少傾向が続きましたが、昨年12月11日に特許庁が発表した統計速報によれば、昨年1月から10月の特許出願件数累計が28万5975件となり、これは前年同期比1.1%増加でした。昨年は、何年かぶりに特許出願件数が増加に転じることが期待されます。
 また、将来、海外の複数の国で審査を受け、特許取得することを目指して行われる特許協力条約(PCT)の国際出願を日本国特許庁が受理する件数は、前記の統計速報によれば、昨年1月から10月の累計で3万5309件でした。これは前年同期比13.0%増という大幅な増加であり、年々増加している日本国特許庁が受け付ける国際出願の件数は、昨年も引き続き大幅な増加になる模様です。
 国内特許出願の件数が増加に転じるだけでなく、海外への進出を展望している企業経営が増加しているものと思われます。
 世界100カ国以上でビジネスや専門家向けの情報提供を行っているトムソン・ロイター社が、自社が保有する特許データを基に、「特許数」、「成功率」、「特許ポートフォリオの世界的な広がり」、「引用における特許の影響力」などを評価軸として、知的財産・特許動向を分析し、「世界で最も革新的な企業/研究機関を選出する」と謳った「Top100グローバル・イノベーター2012」が、2011年の初公表に引き続き昨年末に公表されました。トムソン・ロイター社によれば、選出された企業はイノベーションに注力していて、財務指標からも市場における優位性が証明される企業であり、選出企業100社によって一年前と比較して12万4214人の新規雇用が創出されているということです。最も多く選出されたのは、米国の47社・機関で、2番目が日本企業の25社、以下、フランス:13社・機関、韓国:7社・機関となっています。日本企業の選出は2011年から3社増えており、特許出願・特許を企業経営に戦略的に活用する日本企業の姿勢がうかがえます。

   日本経済再生に向かう一年
 昨年は世界経済の減速などの影響を受けた年でしたが、本年は、新たな政権の下に、日本経済再生に向けた機動的で力強い政策が実行されるものと思われます。
 米国をはじめとした世界経済の動向や、為替水準などには不透明な部分があり、また、エネルギー問題など昨年から引き続いて対応が必要とされる問題が多く残っていますが、新政権が進める日本産業再興プランの下、旺盛な創意工夫とチャレンジ精神、革新的な技術の開発によって、日本経済再生に向かう一年にしたいものです。

以上

戻る
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '13/04/01
menu