新春展望
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 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

   東京オリンピック2020年開催
 昨年9月7日、南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれたIOC総会において、2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市が東京に決定されました。前回1964年の東京オリンピックでは、戦争からの復興と国際社会への参加という大きな希望の下、首都高速道路や新幹線など、都市のインフラ整備が進みました。半世紀を経て、二度目となる2020年は、東日本大震災からの復興、福島第一原子力発電所事故からの復旧が進み、東京だけでなく、日本全体で、パラリンピック開催を契機としたバリアフリー化など、成熟した社会に向けた整備が一層進むようにしたいものです。

   明るさの見える日本経済
 昨年12月16日に日銀が発表した全国企業短期経済観測調査(短観)によれば、大企業の製造業、非製造業における業況判断指数(DI)がいずれも4四半期連続で上昇し、中小企業の製造業と非製造業でも、最近の景気が「良い」と考える企業の割合が「悪い」とする企業を上回りました。業況が「良い」とする判断が「悪い」とする判断を上回るのが中小企業の製造業と非製造業とでそろうのは約22年ぶりとのことでした。4四半期連続して改善している大企業の景況感に表されている景気回復の波が中小企業にも広がり始めたように思われます。
 本年4月からの消費税の税率引き上げがどのような影響を及ぼすか不透明なところがありますが、政府は、消費税増税時に実施する経済対策を盛り込んだ2013年度補正予算案を昨年末に閣議決定しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けたインフラ整備に1011億円を計上する、等、鮮明になりつつある景気回復を一層確実なものにする施策が進められようとしています。

   年々増加する世界の特許出願
 世界知的所有権機関(WIPO)は、世界の特許の出願受付件数などをまとめた「2013年世界知的所有権指標」を昨年12月9日に発表しました。これによりますと、2012年における世界での特許出願件数は約235万件と過去最高でした。リーマンショックの影響で出願件数が減少した2009年の後、対前年比7.6%増(2010年)、同8.1%増(2010年)と出願件数が増加していましたが、2012年の対前年度比は9.2%増で、この増加率は、2012年までの18年間で最も大きなものでした。
 自国語で、自国の特許庁(受理官庁)に提出することにより、特許協力条約(PCT)に加盟している世界140を越える国に特許出願した効果を得ることができ、その後、所定の期間(優先日=基礎になっている最先の特許出願日から、原則、30カ月以内)に、審査を受けることを希望する国の特許庁へ、その国の公用語に翻訳した翻訳文を提出し、出願料を納付する、等の所定の手続を行う国際出願の出願件数も年々増加し、世界で19万件を越えました。
 最も多く特許出願を受け付けた国は中国で2年連続の1位(65万2777件、対前年比24.0%増)。中国の受付件数比率は、全体の1/4を超える27.8%になりました。2位以降は前年と同じく、2位 米国(54万2685件、対前年比7.8%増)、3位 日本(34万2796件、対前年比0.1%増)で、4位 韓国、5位 欧州特許庁でした。
 日本の特許出願件数は前年比0.1%増でしかありませんでしたが、リーマンショックの影響を受けた2009年に大幅に減少し、その後、漸減傾向にあったものが、ようやく、対前年度比で増加に転じました。また、日本国特許庁が受け付ける国際出願の件数は年々増加し、対前年比12.7%増で4万件を越え、世界中で行われている国際出願の5件に1件は日本国特許庁が受け付けているものでした。

   新たな、大きな希望をもった一年に
 「経済のグローバル化が進展し、知的財産戦略が企業競争力の源泉になっている」と考えている経済産業省・特許庁は、本年3月をめどに、日本再興戦略(成長戦略)(平成25年6月14日閣議決定)の実現に向けた知的財産政策の中長期計画を示すとしています。
 昨年末の臨時国会では、「アベノミクス」の第三の矢とされている日本再興戦略に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生し、産業競争力を強化することを目的とした産業競争力強化法が成立しました。成立した産業競争力強化法の関連施策として「中小企業等に対する、国内出願、国際出願の際の料金の減免の特許法の特例」が導入されることになりました。
 昨年11月28日に開催された産業構造審議会第3回知的財産分科会にはこの特例措置の内容が資料として特許庁から配布されました。詳しくは、今後、政令で示されることになりますが、「産業競争力の強化に資する措置として、中小・ベンチャー企業等を対象とした特許料等の減免措置を講じる。この措置を同一内容の案件に適用する場合、日本の料金水準は米国の最大限の減免措置の約半分の水準になる。」という意欲的な施策が計画されているようです。
 国が、知的財産の保護強化、これによる企業競争力の強化と、日本の産業、社会の活性化を目指して種々の政策・施策を実行することは重要ですが、産業活動の担い手自身が、果敢なチャレンジ精神と、旺盛な創作意欲を発揮して、革新的な技術の開発に取り組むことが何よりも大切です。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催という大きな目標が設定された本年を、新たな、大きな希望をもって始めたいものです。
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '14/05/16
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