新春展望
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 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

   日本発の技術で21世紀の世界に貢献
 昨年、ノーベル物理学賞が、赤崎勇名城大教授、天野浩名古屋大教授、中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授に授与されました。  蛍光灯や白熱球ランプのようにガラス管と気体とを必要としていた20世紀の光源とは基本原理が全く異なる新しい光源の実用化を可能にした技術は「彼らの発明は光の技術を根本的に変え、世界を一変させた。20世紀は白熱電球で照らされた時代だったが、21世紀はLEDのランプで照らされる時代になるだろう」と称賛されたのでした。  このような技術が、試行錯誤と失敗を重ねながらも、粘り強い研究・開発の継続により、日本から誕生したことに誇りと勇気を感じた日本の技術者、研究者、企業人は多かったのではないかと思われます。  新しい年を、心新たに、21世紀の世界で必要とされる技術を、日本から、世界へ発信していく出発の年にしたいものです。

   年々増加する世界の特許出願
 世界知的所有権機関(WIPO)が昨年12月16日に発表した「世界知的所有権統計」(World Intellectual Property Indicators 2013 )によれば、2013年の世界全体の特許出願件数は、2012年に比較して9%増加し、257万件でした。
 2012年は対前年度比9.2%増で、それまでの18年間で最も大きな対前年度増加率でした。2013年の対前年度比増加率9%もこれに次いで大きなもので、世界的な経済活動の展開に連れて、特許出願件数も引き続き増加するものと思われます。
 国別では、中国特許庁が受け付けた出願が82万5136件(前年比26.4%増)、米国:57万1612件、日本:32万4749件でした。中国特許庁の出願受理件数は2011年以来3年連続して世界1位でした。
 一方、2013年に現存している世界の有効特許は945万件で、その中に占める各国の特許権の割合は、米国が26%と最も多く、次いで、日本国特許の19%でした。現存している特許権の数の多さは、これまでの技術開発・研究の集積・結果であり、これが世界各国の競争力の源泉になっているものと思われます。

   増加傾向にある中小企業の特許出願
 日本国内の特許出願件数は、全体としては2006年以降、漸減傾向にあります。しかし、中小企業による出願に限ると、2011年以降は上昇傾向となっていることが特許庁から発行された「中小企業・地域知財支援研究会報告書」(平成26年7月7日)で紹介されています。
 特許などの知的財産の価値に気付いている中小企業の特許出願が増えているようです。
 我が国における全企業数の99.7%以上を占める中小企業は、日本の産業競争力やイノベーションの源泉として大きな役割を果たすとともに、地域の雇用を支える日本経済にとって欠かすことのできない重要な存在です。
 日本全国各地における中小企業の企業活動が、特許などの知的財産を経営に活かして活発に展開されることは、日本全体の活性化につながるものと思われます。
 特許庁は、知的財産活動に取り組む中小企業を積極的に支援する観点から料金面で、既に、次のような支援策を採用しています。
 「特許料等の減免」
 個人・法人、研究開発型中小企業及び大学等を対象に、審査請求料と特許料(第1年分から第10年分)及び国際出願に係る調査手数料等の納付について、一定の要件を満たした場合の減免。
 「産業競争力強化法に基づく、中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした審査請求料・特許料の軽減」
 国内出願:「審査請求料」と「特許料」の軽減
 国際出願(日本語):「調査手数料・送付手数料・予備審査手数料」の軽減

   世界の市場を獲得する新たな技術の創作・開発の年に
 ノーベル賞受賞という栄誉に輝いた青色LEDとこれを使用した高輝度白色光源は、今日、交通信号、LED照明、大型ディスプレー、携帯電話・携帯端末など世界中の日常生活の場で広く使用されています。
 新しい年を、このように世界の市場を獲得する新たな技術を創作・開発する年にする意気込みで開始したいものです。
 特許庁は昨年11月19日に開催した「産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会」において、特許部門、商標部門の双方における料金の引き下げ計画を提案しました。
 「我が国企業が海外企業との激しいグローバル競争に勝ち抜き、世界の市場を獲得していくためには、その優れた技術力を知的財産として有効に活用していくことが重要である。国内地域経済を支える企業等についても、製造業のみならずサービス業を含めた幅広い業種において知的財産権の積極的な活用が図られることが、地域経済活性化等の観点から重要である。」としています。
 「特許権の利用拡大を促すため、特許権の取得及び維持に係る企業等の負担軽減を図る」、「製造業に属する企業や大企業・グローバルに活動する企業のみならず、サービス業に属する企業や地域で活動する中小企業・地域ブランドの確立を図る団体等にも幅広く活用される知的財産権である商標権の取得及び維持に係る負担軽減を図る」とされています。
 新年早々にも具体的な計画が示されるものと期待されますが、特許などの知的財産を企業活動の発展に結びつけようとする国や地方の支援策、施策を効果的に活用しながら、新しい年を、青色発光ダイオードのように、世界の市場を獲得する新たな技術を創作し、開発する年にしたいものです
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '15/07/14
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