新春展望
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 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

   恒例のようになった日本人のノーベル賞受賞
 日本人にノーベル賞が授与されるニュースが毎年12月の恒例になったかのようです。昨年は、大村智・北里大特別栄誉教授にノーベル医学生理学賞が、梶田隆章・東京大宇宙線研究所長にノーベル物理学賞が授与されました。ノーベル医学生理学賞は2012年の山中伸弥iPS細胞研究所長(京都大学教授)以来3年ぶり、ノーベル物理学賞は前年の赤崎勇名城大教授、天野浩名古屋大教授、中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授に引き続くものでした。
 2001年以降の自然科学系のノーベル賞受賞は15人となり、外国国籍の受賞者2人を含めて日本人のノーベル賞受賞は合計24人となりました。
 毎年恒例のようになったかに思われる光景は、科学技術立国・日本の底力を示すものと思われます。
 受賞決定の会見で独創性の大切さについて「まねをしては人を超えられない」とおっしゃっていた大村教授の姿勢や、「人類の知の地平線を拡大するようなもの」とご自分の研究分野を説明されていた梶田教授の真摯に研究に取り組む姿勢を私たちの日々の研究・開発活動の中で見習いたいものです。

   新しい年を自らの知恵と力で切り拓く
 2012年末から開始された「アベノミクス」と称される現政権の経済政策は4年目に入ります。昨年6月30日には、設備や技術、人材等に対する「未来投資による生産性革命の実現」と、活力ある日本経済を取り戻す「ローカル・アベノミクスの推進」の二つを車の両輪として推し進めることによって、日本を成長軌道に乗せ、世界をリードしていく国にすることを目指して「『日本再興戦略』改訂2015」が閣議決定されました。東京でオリンピック・パラリンピックが開催される2020年を一つのめどにして本年も種々の政策が展開されることが期待されます。
 中国経済の動向や、米国の金利引き上げ、等の影響が予想されますが、政府が進める様々な経済政策によるだけでなく、私たちにも、自らの知恵と、力で、状況を切り開く経済活動を展開することが要請される年になると思われます。
 昨年の夏、日本経済新聞社が行った2015年度の「研究開発活動に関する調査」によれば、回答企業の約3分の1の111社が過去最高の研究開発費を投じることになっていました。前年(2014年度)の研究開発費についても回答があった主要268社の2015年度研究開発投資額は11兆7980億円で、増加率は前回調査の4%を上回ったということでした。
 これは、日本の製造業各社が、数年先を見据えて競争力の源泉となる新技術の開発に従来以上に積極的に取り組んでいることを示すものといえます。
 我が国における全企業数の99%以上を占める中小企業に対しても、成長の後押しをすべく様々な政策が展開されるものと思われますが、ここでも、積極的な研究開発費投資に乗り出している大企業と同様に、数年先を見据えた、企業活動の展開が要請されると思われます。
 経済産業省は昨年夏以来、中小・中堅企業の更なる成長を後押しする、成長戦略の見える化の一環としてWebサイト「ミエル☆ヒント」を開設し、企業が飛躍するカギとなった具体的な事例(約200社、随時アップデート)の紹介を始めました。多数紹介されている成功事例、成功に至らなかった事例は、多くの中小・中堅企業が自らの知恵と、力で、状況を切り開く経済活動を展開する上での貴重な参考になるのではないかと思われます。

   事業の発展に結び付く知的財産活動の展開
 我が国に特許制度が創設されてから昨年で130年になりました。天然資源の豊富でない我が国にとって、人間の頭の中で作り出される、新規で、知的な情報であって、財産的な価値に結びつく発明などの知的財産は、明治以来、今日までの我が国の発展に重要な役割を果たしてまいりました。
 今日では我が国企業の国際的な展開が進んでいることから、我が国の企業全体の知的財産関係の実施料等の対外収支が2014年で1兆6950億円と過去最高の黒字を記録するに至っています。
 政府は昨年6月19日に「知的財産推進計画2015」を閣議決定し、昨年11月には総理出席の下で知的財産戦略本部会合を開催してそのフォローアップと、「知的財産推進計画2016」に向けた検討体制を構築しました。同時に、知的財産分野におけるTPP(環太平洋パートナーシップ)への政策対応も決定されました。日本国内だけでなく、太平洋地域内における知的財産を活用した我が国企業等による事業活動の促進を目指すとされています。
 昨年、ノーベル医学生理学賞を受賞された大村教授は、1970年代から製薬会社との間で産学連携の契約を取り交わし、特許などによって大きなロイヤリティ収入を得る一方で、世界保健機関(WHO)による年間3億人へのイベルメクチン無償提供を実現しています。これにより、熱帯地方で流行し患者の2割が失明するおそれがあるとされるオンコセルカ症、等の治療に大きな貢献が果たされました。
 新規で、有用な発明を生み出し、育て、活用する知的財産活動が、一企業の発展・事業拡大だけでなく、広い世界における生活の安定、向上、そして社会の発展、発達に結びつくことを示した実例といえます。
 このような実例に学びつつ、大きな希望を持って、新しい一年を始めたいものです。
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '16/12/26
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