新春展望
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 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

   緩やかに拡大を続ける日本経済
 内閣府が昨年末に発表した昨年7〜9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算で2.5%増でした。GDPのプラス成長は7四半期連続で、1987年4〜6月からの8四半期連続に続く約29年ぶりの長期にわたるプラス成長となり、内閣府は「緩やかな上昇が続いている」と説明しています。
 このような経済状態は、企業の設備投資意欲の面からうかがえます。財務省と内閣府が昨年末に発表した昨年10〜12月期の法人企業景気予測調査によりますと、本年度の設備投資見通しについて「増加する」と答えた企業の割合は、2012年10〜12月期に調査を開始して以来、過去最高の21.4%でした。中国をはじめとする海外での景気回復を背景にした輸出拡大や、増加する訪日客の旺盛な商品購入などの需要増を受けた生産能力の増強、あらゆるモノがネットワークでつながるIoT(インターネット オブ スィングス)時代に対応する技術開発、設備投資が計画されているものと思われます。
 政府は昨年末、本年度の経済見通しで、GDPの成長率を、物価の変動の影響を除いた実質で1・8%とすることを閣議了解しました。昨年夏に示された年央の参考試算と比べてGDP成長率が0.4ポイント上方修正されました。
 好調な海外経済が続く中で、本年は、内需の拡大による自律的な経済拡大が期待される年になると思われます。

   新しい社会を新しい技術で
 我が国政府は一昨年から昨年まで10回にわたり「未来投資会議」を開催し、昨年6月その内容を「未来投資戦略2017」として閣議決定しました。これには「Society 5.0の実現に向けた改革」という副題が付けられています。
 「Society 5.0」は、平成7年に制定された「科学技術基本法」により、科学技術政策を推進するにあたり、政府が、平成8年度から5年ごとに閣議決定している第五期(平成28年〜)の科学技術基本計画において、「自ら大きな変化を起こし、大変革時代を先導していくため、非連続なイノベーションを生み出す研究開発を強化し、新しい価値やサービスが次々と創出される『超スマート社会』を世界に先駆けて実現するための一連の取組」としているものです。
 この「超スマート社会」(Society 5.0)は、“人”を中心とした新しい社会の構築に取り組み、都市部への人口集中とその一方での過疎化、出産率の低下、高齢化、環境問題などの様々な社会課題の解決を目指しているものと思われます。
 「未来投資戦略2017」では、「ドイツの『Industry 4.0』や米国の『Industrial Internet』が、主として製造業の生産管理や在庫管理をIoT によって個別工場や企業の枠組みを超えて最適化しようとする試みであるのに対し、我が国は、製造業を超えて、モノとモノ、人と機械・システム、人と技術、異なる産業に属する企業と企業、世代を超えた人と人、製造者と消費者など、様々なものをつなげるConnected Industriesを実現していかなければならない。我が国が目指す『Society 5.0』は、先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、『必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供する』ことにより、様々な社会課題を解決する試みである。」との説明がされています。
 この取り組みの中でカギになるのは、IoT時代を牽引しているデジタル革命です。近頃、隣国の中国では、スマートフォンが社会インフラとして定着し、スマートフォンを使った決済(スマホ決済)が直近の2年で6倍にも増えて年間660兆円になり(日本の2016年度の名目GDPは539.3兆円)、北京では、スマートフォンにタクシー配車アプリケーションをダウンロードしていなければタクシーを捕まえることが難しい状態になっているとのことです。
 中国で急速にスマートフォンが普及し、キャッシュレス化が進んでスマホ決済が爆発的に拡大するようになった背景には、インフラ整備の遅れが一足飛びの新技術普及につながったという面もあるのかもしれませんが、自動車の自動運転、AIスピーカー、IoT住宅などが登場してきた我が国でも、IoT時代の中で社会に大きな変化が生じるものと思われます。
 少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少する中で、これまでになかった新しい技術の開発により、人工知能(AI)や、IoTを活用した新しい生産活動、新しい消費生活、新しい社会生活が生み出されていくものと期待されます。

   新しい技術の開発と特許制度
 今までになかった新しい社会を切り拓く新しい技術が開発されるときに特許出願・特許権取得などの知的財産活動は新しい技術の保護と活用に重要な役割を果たします。
 特許庁は中小企業の知的財産活動を促進する起爆剤として、中小企業の特許出願人が特許庁へ納付しなければならない審査請求料、特許料(1年分〜10年分)、国際出願手数料を軽減し、しかも、簡素な手続で軽減適用を受けることができるように特許法を改正することを計画しています(本年4月施行予定)。
 新しい年を、今までになかった新しい技術を開発し、活用し、新しい社会を切り拓く年にしたいものです。
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/03/12
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