新春展望
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 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

特許発明からノーベル賞

 昨年、旭化成株式会社の吉野彰名誉フェローが、米国テキサス大学オースティン校のジョン・グッドイナフ教授、米国ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム特別教授と共に「リチウムイオン電池の開発」でノーベル化学賞を受賞されました。
 ノーベル賞受賞に先立ちリチウムイオン電池の開発で2019年欧州発明家賞を受賞した吉野氏は、「特許をベースに業績を評価されたことが印象的だった」と語っています。
 ノーベル賞委員会から「リチウムイオン電池の父」と評された吉野氏は、負極にカーボン、正極にLiCoO2(コバルト酸リチウム)を使用することで現在のリチウムイオン電池の原型を世界で初めて発明、製作され、更に、正極の集電体にアルミニウムを使用するリチウムイオン電池の基本技術の開発、実用化を進められ、これらの基本特許を取得されています。特許第2128922号=特公平4-52592号、特許第1989293号=特公平4-24831号、特許第2668678号。

IT革命を支えたリチウムイオン電池

 IT(情報技術)革命という言葉が使われ、世界のありようが大きく変わった20世紀末から21世紀にかけて、充電して繰り返し使用でき、しかも小型のリチウムイオン電池は、携帯電話、ノート型パソコンなどのIT機器の世界的な普及に大きく貢献しました。
 今日では、電気自動車(EV)に搭載されるだけでなく、労働力人口の減少に対応すべくAI(人工知能)技術と組み合わされて多くの労働・作業現場に投入されようとしているロボットに使用される小型の蓄電池としても広く使用されています。
 IT革命の進展に貢献したリチウムイオン電池について、吉野氏は、「ET革命」(Eはエネルギーや環境、Tは技術のテクノロジー)として、今後、もう一度、世界を変えることに貢献するのではないかと期待されています。
 エネルギーや環境では喫緊の課題であるCO削減に関して、増え続ける太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーを効果的、効率よく活用する上での蓄電池として、また、EVに搭載される蓄電池が、必要なときに蓄電と、電気放出・供給を行う蓄電システムを担うものになり得ると期待されています。
 EVの普及に関しては、搭載している蓄電池のコストと走行距離の課題を解決できれば2030年くらいには自動運転技術と組み合わされたEVの社会になり、第5世代通信(5G)、AIなどの技術分野と融合しながら未来の車社会が作られると期待されます。
 また、機械と機械、モノとモノとの間で様々なデータが交信されるIoT(インターネット オブ シングス)の進展やAI技術との融合によって労働・作業現場や家事などでの自律型ロボットの普及が進み、小型・軽量であっても瞬発力を出せる蓄電池としてリチウムイン電池の用途が今後も広がることが期待されます。

デジタル・ニューディール

 政府は昨年末に発表した2019年度補正予算案に、AIや5Gの導入を進め、経済成長を目指す未来への投資の促進策「デジタル・ニューディール」の関連予算として1兆円近くを計上しました。
 デジタル技術の急速な進歩は、第4次産業革命とも呼ぶべき変化を世界にもたらし」、「この分野でのイノベーションの成否が国の競争力に直結するだけでなく、安全保障をはじめ社会のあらゆる分野に大きな影響力を与える」、「まさに国家百年の計」としています。
 教育現場でのICT(Information and Communication Technology(情報通信技術)化を進めるべく、2023年度までに小中学校のすべての児童・生徒が「1人1台」でパーソナルコンピュータやタブレット型端末を使える環境を整え、高速大容量の有線・無線の構内情報通信網(LAN)の整備も進めるとしています。
 生産性向上に向けた中小・零細企業の取り組み支援(3090億円)で、革新的な製品やサービス開発のための設備投資支援、ITツール導入支援を行い、ポスト5G対策(1100億円)として、半導体や通信システムの開発、自動車や産業機械の高度化の促進を図るとしています。

世界から人々が集うオリンピック・パラリンピック

 日本では、今年の夏、オリンピック・パラリンピックが開催され、世界から多くの皆さんが日本を訪問してくださることになると思われます。
 年末恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)の年間大賞に、昨年は、ラグビーW杯日本代表チームのスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」が選ばれました。初の8強入りを遂げた日本代表チームは、ニュージーランド、トンガ、オーストラリア、南アフリカ、サモア、韓国、日本の7カ国にルーツを持つ選手からなる多国籍チームでした。チームの仲間を信頼し、ルーツを越えて一つの目標に向かう日本代表を多くの人々が応援しました。
 日本代表チームのスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」は、外国からの働く人々の受け入れを昨年から本格化させ、社会の隅々で、国籍、人種、ルーツの異なる人たちが力を合わせることが要請される我が国で、今、誰の心にも響く言葉になっているのかもしれません。
 オリンピック・パラリンピックが開催されるこの年、共に力を合わせ、共に生き、より一層世界に開かれた活力ある社会を目指す年にしたいものです。

以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/01/13
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