謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
新型コロナの大流行中にも増加した世界の特許出願
昨年11月、世界知的所有権機関(WIPO)は世界知的財産指標(WIPI)を公表しました。公表されたデータによれば、2021年に世界で特許、意匠、商標として出願された知的財産権の数は2019年末からの新型コロナウイルス感染症の大流行の中でも過去最多を記録し2020年比3.6%増の340万件に達しました。WIPOのダレン・タン事務局長は「WIPIのデータは、知的財産権の出願件数が増加し続けていることを示している。主にアジアの増加が後押しており、他の地域でも多くが増加傾向にある。(新型コロナの)大流行中の出願増加は、大流行が経済や社会の混乱を招いても世界の人々がイノベーションと創造を続けていることを示している。」と報告しました。
アジア各国の特許庁が受け付けた特許出願の数は世界全体の67.6%を占め、中国、韓国、インドの特許出願件数はそれぞれ前年比で5.5%増、2.5%増、5.5%増でした。
デジタル技術を活用した活性化は喫緊の課題
アジア各国の特許庁が受け付ける特許出願件数が高い伸び率を示している中で、我が国の特許出願件数は、過去数年にわたる毎年の減少傾向がようやく止まり2021年は2020年比で若干の増加でした。
コロナ禍において、感染者数の把握、等を手書き入力し、FAX送信している等々に見られた我が国におけるデジタル化の遅れは、アジア各国における知的財産活動が世界を後押ししていると評される中にあって、我が国だけが立ち遅れている現状の一因になっていると思われます。
岸田政権は「デジタル田園都市構想」によってデジタル技術の活用を図るとしています。既に人口減少社会に突入している我が国において、これは喫緊の課題と言えます。
生まれたときには社会の中にインターネットがあり、超小型のコンピュータともいえるスマートフォンに子供の頃から慣れ親しんできた世代が社会に登場する時代になりました。今後、日本社会のデジタル化は大きく前進するのではないかと期待されます。
新聞報道によれば、(株)デンソーは国内全工場の生産部門で働く社員一人に一台ずつデジタル端末を支給してベテラン社員による手作業を動画撮影し、これを共有することで現場に蓄積されたノウハウや情報を職場で共有する取り組みを進めています。これにより仕事の効率や質を高め、紙への入力を端末入力にする等によって勤務時間を短縮することができたとされています。
スマートフォンに代表されるデジタル端末を活用することで、紙への入力であったものを端末入力や、音声入力にする等により、業務効率を改善し、業務の質を高める等の取り組みが多くの職場、領域で進むようになるのではないでしょうか。
新しい年の“新しい景色”
昨年末に開催されたサッカーワールドカップカタール大会、ドイツ、スペインというワールドカップ優勝国に勝利した日本代表チームの活躍は、ベスト8入りというこれまで見たことのなかった新しい景色にはたどり着けなかったものの多くの日本国民に勇気を与えました。
日本国内では、新しい年を迎えて、これまで見たことのなかった新しい景色が広がりそうです。
市街地や住宅地などの「有人地帯」の上空で、ドローンを目視せずに自動で飛ばせるようにする改正航空法が本年の春から運用されます。日本郵便は、ドローンによる個人宅への配送を実用化すべく昨年末に物流専用のドローン新機体を公表しました。街の中を飛び回り、「ゆうパック」の配送や、郵便局間の荷物輸送を行う日本郵便のドローンを目撃する日が目の前に来ています。この日本郵便は、2019年度から郵便物や荷物の配送に電気自動車(EV)を採用し、既に東京都内で配送に使用する軽四輪車の3割を電動化していることが知られています。
EVでは、自動車評論家らが車のコンセプト、デザイン、性能などを総合的に評価して最も優れた車として選ぶ昨年の第43回「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したのが、日産自動車(株)の軽EV「サクラ」と、三菱自動車工業(株)の「eKクロスEV」でした。この2車種は両社が共同開発した軽のEVです。日本でのEV普及の可能性を高めたと評価され、一時は、国の補助金が不足すると心配するほどの受注がありました。
外国からのEV進出も急速に拡大しています。米国テスラに次いで世界で第2位のEV販売台数を誇る中国メーカーBYDは、これまでの日本国内でのEVバス事業を足掛かりにして本格的な日本進出とEV乗用車発売を開始します。韓国の現代自動車は、2009の日本国内での乗用車販売撤退から12年ぶりに日本国内に進出しました。エンジン車を販売せず、EVのみに絞った展開です。世界でいち早く全車EV化を掲げたドイツのメルセデス・ベンツは同社にとって世界初となるEVの専売拠点「メルセデスEQ横浜」を昨年オープンしました。フォルクスワーゲン傘下のアウディは充電インフラの不足がEV普及の障壁になっていると考え、自前の急速充電設備を日本全国の拠点で稼働させる計画です。
街の中でEVを目にする機会が増え、今年は、街の中で今まで目にしなかった新しい景色を目にすることになるかもしれません。
街の中だけでなく、生産、流通、販売、等、社会のあらゆる場面で、創意と工夫を活かし、日本国内だけでなく、世界に通用する自社独自の技術、製品、商品、サービスの創造、開発を進めることで、社会のあらゆる場面で新しい景色を目にすることができる一年にしたいものです。