新春展望 (21世紀の初頭)

 皆様あけましておめでとうございます。昨年中は景気回復について一喜一憂し、政府発表と、実感との落差に悩まされ乍らも必死に自力浮揚に努力して、20世紀最後の年を過したと思います。

 一方技術革新につきましては、景気の動向に無関心と思われる程急速に進展し、特にバイオテクノロジー関連技術、ビジネスモデル関連技術、エレクトロニクス・コンピュータなどIT関連技術その他の高度の技術が洪水の如く押し寄せ、流れに沿ってゆくことさえ大変な努力が必要ですが、その先頭集団に入ることなど、覚束無い分野もあると言われております。前記技術革新にともない、特許出願件数も急激に増加し、毎月前年度を20%以上も上回っておりますので、年間出願件数は空前の50万件以上に達すると思われます。

 20世紀後半から、経済動向その他は、常時地球規模で行われ、先進国と発展途上国との間で意見の相違が大きくなり、地球上における生活の安全性を保持し、かつ人類の前途を明るくする為の施策が必ずしもスムースに進展しませんでした。21世紀に入り、前記せめぎ合いは益々激しくなりますが、20世紀に秩序維持の指導国であったアメリカ、ソ連、イギリス、ドイツ、フランス等の国力が低下し、一人勝ちしていたアメリカの国力も逐次低下して、今や地球規模の経済等を一国の指導により秩序付けることは難しくなりました。例えば経済的安定性に致しましても、アメリカの動向に左右され、アメリカの経済的変動を緩和して、世界的平穏を保つ役割を果たすべき我が国経済の腰が、ここ数年ふらつき、昨年漸く立ち直りの見通しがつきかけて参りました。2001年もアメリカの景気を持続し、2?3年の間にソフトランディングすれば、我が国も確実に回復し、アメリカと共に、世界経済の柱となり得ると思われます。そこで、21世紀初頭のアメリカの動向が、以後の10年間位の世界経済の進展に重大な影響を与えることは明らかだと思います。

 21世紀は、知的財産の時代といわれておりまして、その曙光は20世紀後半、特に1980年代から、散見され、1990年代に入り、特にアメリカの動向が明確になりました。斯る方向性の端緒をつかみ、これを世界の流れに変える点においては、アメリカの物凄さだけが目立ち、我が国を始める各国共に置き去りにされております。例えばIT革命然り、ビジネスモデル然りであって、ビジネスモデルに到っては、我が国の僅かな抵抗は1〜2年の間に見事に吹飛んで、今や追随一辺倒になっておりますが、幸いアメリカ、日本、ヨーロッパの三局が健全ですから、行過ぎを是正しなければいけない。更に21世紀の前半における最大と言われる程の技術事項の一つに「ヒトゲノム」の解読については、日本、アメリカ、イギリスなどの国際協力チームがアメリカの一企業に抜き去られたと発表され、解読は公共財産とする協力チームと、企業開発の知財とするアメリカの一企業とのせめぎ合いが続き、一応公共財産の方向性を得たとされて居ります。然し乍ら、解読の成果を利用する技術(遺伝子の組み換えと応用)に係る知財は当然のこと乍ら、各研究機関、当事者に与えられますので、21世紀初頭(2001〜2003年)の解読完了をまたずして、応用研究に花火を散らし、今後10年〜20年と続けられて、人の病気に対応したり、動植物の対病処理又は改良等に有効に利用されるものと思います。

 人の染色体23の中で2番目に短いとされる染色体ですら、前記のように莫大な塩基体があるのですから、全部の解読が如何に大事業であり、これを有効利用するのに更に見当もつかない位の時間と労力がかかると予測されております。そこで一国又は一企業で別々に研究するのでなく、協力又は分担して全様を明らかにすることが急務であり、地球規模の解決こそ最良の道であって、21世紀の大プロジェクトは総てそのようにあらねばならないと思います。

 その場合に、発明者に対しては国として適宜対応し(1例とすれば、国が権利を買い上げ、希望者には極少実施料で実施を認める)、国家財産として処理すれば、工業所有権法とも矛盾するところがなくなります。

 前記は知的財産分野の一例を述べたにすぎませんが、人類の文化的生存の為には、食料問題、エネルギー問題、環境問題などの正の遺産と、オゾンホールの拡大、緑地の砂漠化、未放射能物質の処理、戦争による遺棄物の処理(例えば地雷)、産業廃棄物の処理、CO2その他有害物質の抑制、民族間紛争その他有形、無形の負の遺産を速やかに処理しなければなりません。

 正の遺産について、例えば食料問題は増産、流通の合理化、協力によって対応が可能であり、エネルギーについても、石油、原子力に代る第3のエネルギー源として、核融合、太陽熱、地熱、水の分解、潮力及び風力その他無限の供給源を有する物で解決されます。

 環境問題は、人が生存することにより生じた環境悪化が主因でありますから、これを処理すれば十分対応できると思います。

 負の遺産についても、人類の生存をより良くする為に発生した物ですから、地球規模の協力と、全人類の努力により、何れも解決できることに間違いはないと思います。

 そこで21世紀の4分の1(25年)の期間は、正の遺産の助長と、負の遺産の抑制と解決に費され、ついで21世紀の1/2(50年)の期間経過までは、前記仕上げに費され、21世紀後半は理想社会が期待できるものと希求する所です。
以上

戻る
鈴木正次特許事務所
menu