審決取消請求事件(盗難防止タグ、指示信号発信装置、親指示信号発信装置及び盗難防止装置) |
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解説 |
無効審決取消請求事件において、特許請求されている発明の進歩性判断(主引用発明に副引用発明を適用する容易想到性判断)に関して判示された事例
(知的財産高等裁判所 平成28年(行ケ)第10265号 平成29年10月3日判決言渡)
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第1 事案の概要 |
原告は、発明の名称を「盗難防止タグ、指示信号発信装置、親指示信号発信装置及び盗難防止装置」とする特許第3099107号(請求項の数9)(本件特許)を譲り受けて所有している。
被告が、本件特許のうち請求項1〜4、6及び7に係る部分について特許無効審判請求し、無効2015−800016号事件として特許庁に係属したところ、原告は、訂正請求を行った(本件訂正)。 特許庁は、本件訂正を認めず、「特許第3099107号の請求項1〜4、6、7に係る発明についての特許を無効とする」との審決(本件審決)をし、原告が本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 ここでは、原告が主張した取消事由1「訂正の可否の判断の誤り(本件訂正発明8に係る進歩性(相違点2)の判断の誤り)」に関する判決の部分のみ紹介する。 |
第2 判決 |
1 特許庁が無効2015−800016号事件について平成28年11月14日にした審決を取り消す。
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第3 理由 |
1.本件訂正発明8と引用例1(特開平6−318291号)に記載された発明A(引用発明A)とが以下の相違点2において相違することは、当事者間に争いがない。
相違点2
2.引用例3に記載された事項
3.引用例3事項を適用した引用発明Aの構成
4.本件審決の判断について
5.引用例3事項の変更について
6.引用発明A及び引用例3事項の目的効果
7.よって、仮に審決認定周知技術が認められたとしても、引用発明Aに引用例3事項を適用するに当たって、引用例3事項の「終了メッセージを含む信号」を、設定機能によって所望に設定できるコードを一部に含み、引用発明Aの一致判定手段において信号に含まれるコードが一致するか否かを判定するように構成することを、当業者は容易に想到することができるものとはいえない。
8.以上のとおり、引用発明Aに引用例3事項を適用しても、相違点2に係る本件訂正発明8の構成に至らないというべきである。また、仮に審決認定周知技術が認められたとしても、引用発明Aに引用例3事項を適用するに当たり、引用例3事項の構成を変更することは容易でないから、これによって、相違点2に係る本件訂正発明8の構成に至るということもできない。
以上によれば、本件訂正発明8は、本件特許出願の際、独立して特許を受けることができたものであるから、これが独立特許要件を欠くことを理由に本件訂正を認めなかった本件審決の判断には誤りがある。 |
第4 考察 |
特許請求されている発明の進歩性判断(主引用発明に副引用発明を適用する容易想到性判断)に関して判示されている。
実務の参考になる部分があると思われるので紹介した。 以上
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