審決取消請求事件(アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的眼科用処方物) |
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解説 |
審決取消請求事件の進歩性の判断において、顕著な効果の有無が判断された事例。
(知的財産高等裁判所 令和元年(行ケ)第10118号 審決取消請求事件
令和2年6月17日判決言渡) |
第1 事案の概要 |
本件は、特許無効審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。争点は、発明の進歩性(顕著な効果)の有無である。
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第2 判決 |
1 (「特許庁が無効2011−800018号事件について平成28年12月1日にした審決を取り消す」という)原告の請求を棄却する。
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第3 理由 |
前訴判決は、本件優先日当時の技術常識に基づいて、甲1及び甲4に接した当業者は、甲1記載のアレルギー性結膜炎を抑制するためのKW−4679(本件化合物のシス異性体の塩酸塩)を含有する点眼剤をヒトにおけるアレルギー性眼疾患の点眼剤として適用することを試みる動機付けがあり、その適用を試みる際に、KW−4679が、ヒト結膜肥満細胞から産生・遊離されるヒスタミンなどに対する拮抗作用を有することを確認するとともに、ヒト結膜の肥満細胞からのヒスタミンの遊離抑制作用を有することを確認する動機付けがあるというべきであるから、KW−4679についてヒト結膜の肥満細胞からのヒスタミンの遊離抑制作用(「ヒト結膜肥満細胞安定化」作用)を有することを確認し、「ヒト結膜肥満安定化剤」の用途に適用することを容易に想到することができたものと認められると判断した。
本件発明1によって奏される効果
以上によると、本件発明1の効果は、当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであると認められるから、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。 |
第4 考察 |
審査を受けている発明によって奏される効果が進歩性判断にどのように用いられるかについて次のような記載が特許審査基準に存在している。
審査基準には有利な効果として次の2つが例示されている。
拒絶理由に引用されている先行技術文献の記載に基づいて、審査を受けている発明の構成に至る動機付けがある場合であっても、進歩性判断の基準時である特許出願日当時、当該発明の効果が、当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである場合には、当該発明は、当業者が容易に発明をすることができたとは認められず、進歩性の存在が認められ特許成立するという判断である。
以上
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