審決取消請求事件(リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池) |
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解説 |
審決取消請求事件の相違点の判断において、主引用発明に副引用発明を適用して本願発明に想到することが容易であるとした審決の進歩性の判断には誤りがあるとして審決が取り消された事例。
(知的財産高等裁判所 平成31年(行ケ)第10040号 審決取消請求事件
令和2年7月2日判決言渡) |
第1 事案の概要 |
原告は発明の名称を「リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池」とする特許出願(特願2013−81957号)を行ったところ拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判請求した(不服2018−000798号)。審判段階で拒絶理由を受け、手続補正書を提出して特許請求の範囲を補正したが、請求不成立の審決(本件審決)を受け、その取り消しを求めて出訴した。
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第2 判決 |
1 特許庁が不服2018−000798号事件について平成31年2月12日にした審決を取り消す。
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第3 理由 |
審決は、
@ 甲2の実施例1に開示されたカーボンナノチューブ(甲2実施例1CNT)の製造方法と、本願明細書の実施例1のカーボンナノチューブ(SGCNT−1)の製造条件とは、記載されている限度において全く同じであるから、甲2実施例1CNTは、本願発明の「平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.60>(3σ/Av)>0.50であり、比表面積が600m2/g以上であり、高純度であり、平均直径(Av)が3〜30nmであるカーボンナノチューブ」に相当するものであること、及び
甲2実施例1CNTの物性についての検討
引用発明の導電助剤のカーボンナノチューブとして甲2実施例1CNTを適用することの容易想到性について
甲1又は甲2の内容中の示唆について
事項(a)について
事項(b)について
以上によれば、事項(a)又は事項(b)が、引用発明の導電助剤の単層カーボンナノチューブとして甲2実施例1CNTを適用することの示唆となるとはいえない。そして、他に、甲1又は甲2に、引用発明の導電助剤の単層カーボンナノチューブとして甲2実施例1CNTを使用することの示唆となる記載も見当たらない。
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第4 考察 |
本判決は、上述したように認定した上で、甲1発明と甲2発明との間の技術分野の関連性、課題の共通性、作用・機能の共通性について検討し、いずれも共通性がないことを指摘した上で「甲1及び甲2には、引用発明において、導電助剤として用いるカーボンナノチューブとして甲2実施例1CNTを適用することを動機付ける記載又は示唆を見出すことができない。」、「主引用発明に副引用発明を適用して本願発明に想到することを動機付ける記載又は示唆を見出せない以上、上記に説示したところに照らして、かかる想到を阻害する事由の有無や、本願発明の効果の顕著性・格別性について検討するまでもなく、その想到が容易であるとした審決の判断には誤りがある。」とした。
以上
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