(1)本願発明における「施設内での設置箇所に係るID番号」の技術的意義
本願発明の内容に照らすと、本願発明においては、照明装置に備えられた発信装置が、「設置された施設及び前記施設内での設置箇所に係るID番号(が重畳された電波)」を発信し、ネットワーク経由で当該「ID番号」を受信したクラウドサーバが、当該「ID番号」に基づき、予め登録された安否通知ルールに応じて安否確認を行う。そして、本願明細書等の段落【0020】及び【図1】の記載も参照すると、「施設」とは「見守り対象者」の居宅を指し、「設置箇所」は当該居宅の中での個々の部屋(居間、トイレ、寝室等)を指すことを理解できる。
そうすると、本願発明において「安否確認」という所期の作用効果を奏するためには、照明装置から発信される「ID番号」と、クラウドサーバに登録された「ID番号」とが、いずれも、照明装置の「設置箇所」を特定し得るID番号でなければならないし、また、照明装置から発信される「ID番号」と、クラウドサーバに登録される「ID番号」とは、これらを相互に対照することによって、どの「設置箇所」において異常が生じているかを検知可能にするものでなければならないと解される。
以上によれば、本願発明は、照明装置が発信装置を備え、この発信装置から発信された「設置された施設及び前記施設内での設置箇所に係るID番号」(居間、トイレ、寝室等の各部屋を識別できる情報)に基づいて、照明装置の設置箇所(部屋)を識別し、この識別した設置箇所に応じた安否通知ルールに従って安否判定を行うものであり、安否判定に、照明装置の設置箇所(具体的には居間、トイレ、寝室等の各部屋)という位置情報を利用するものと認められる。
(2)引用発明における「検出部ID」の技術的意義
上記認定に係る引用発明の「検出部ID」が、「電源タップ4」の住居内での設置箇所を識別するものであるか否かについて検討する。
引用発明の「検出部ID」は、住居内で「電源タップ4」を一意に識別する符号であるものの、引用文献1には、前記「検出部ID」が「電源タップ4」の設置箇所を表す情報と関連するものであることは一切記載されていない。また、電源タップの一般的な使用形態を参酌すると、電源タップを住居内のどこに設置してどのような電気機器に接続するかは、当該電源タップを利用する者が任意に決められるものと解される。
引用文献1では、「電源タップ4」に照明器具が接続される態様も開示されているものの(【図6】)、照明器具は、居間、トイレ、寝室等、住居内のあらゆる箇所で用いられるものであり、よって、当該照明器具に接続される電源タップの設置箇所も住居内のあらゆる場所が想定されるものであるから、「検出部ID」により「電源タップ4」を一意に識別しても、それは「電源タップ4」の識別にとどまるものであって、当該「電源タップ4」の設置箇所も識別できるとする根拠は見出せない。
すなわち、「電源タップ4」の「検出部ID」から住居内の設置箇所を識別するためには、「検出部ID」と当該「電源タップ4」の住居内での設置箇所とを対応付けた何らかの付加的情報が必要である。「電源タップ4」の「検出部ID」という、電源タップを一意に識別する符号から、当該「電源タップ4」の設置箇所を識別することができる、と認めることはできない。
(3)以上によれば、引用発明の「検出部ID」は、「電源タップ4」の住居内での設置箇所を識別するものではないから、本願発明の位置情報のうち、住居内における設置箇所を特定する「内部管理ID番号」(具体的には居間、トイレ、寝室等の各部屋)とは技術的意義を異にする。
それにもかかわらず、本件審決は、引用発明の「検出部ID」は本願発明の「内部管理ID番号」に相当するとして、「施設内での設置箇所に係るID番号」が安否確認に用いられることを一致点の認定に含めており、この認定には誤りがあるといわざるを得ない。その結果、本件審決は、原告の主張に係る相違点5を看過しており、上記一致点の認定誤りは本件審決の結論に影響を及ぼす誤りである。