審決取消請求事件(空調服の空気排出口調整機構、
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解説 |
解説 進歩性の判断(主引用発明への副引用発明の適用)
(令和4年(行ケ)第10037号審決取消請求事件 判決言渡 令和5年2月7日)
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第1 事案の概要 |
被告は、名称を「空調服の空気排出口調整機構、空調服の服本体及び空調服」とする発明についての特許第6158675号(本件特許)の特許権者である。原告が本件特許のうち請求項3〜10に係る部分について特許無効審判を請求した(無効2020‐800103号)。特許庁は「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(本件審決)をし、原告がその取消しを求めた。
(一致点1)
(相違点1)
本件発明3が、
本件公然実施発明は、「前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた紐1と、前記紐1が取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた紐2とを備え、2本の紐(1、2)を結ぶことによって、空気排出量を調節することができる、首周りの空気排出スペースを調整する手段」である点。
「第一取付部を有し、前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルトと、 前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有し、前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルトと、を備え、 前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより、前記襟後部と人体の首後部との間に、複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」 「開口度を調整するための空気排出口調整機構」であるのに対し、 |
第2 判決 |
1 特許庁が無効2020‐800103号事件について令和4年3月30日にした審決を取り消す。
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第3 理由 |
空気排出口の開口度を調整するための手段(空気排出口調整機構)に係る両発明の構成につき、更に検討すると、相違点1に係る本件発明3の構成の容易想到性の判断に当たっては、空気排出口の開口度を調整するための手段(空気排出口調整機構)に係る次の各点(本件相違点)を検討すれば足りるというべきである。
a 本件発明3の「第一調整ベルト」は、「第一取付部を有」するのに対し、本件公然実施発明の「紐1」は、そのような構成を備えない点
b 本件発明3の「第二調整ベルト」は、「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有」するのに対し、本件公然実施発明の「紐2」は、そのような構成を備えない点 c 空気排出口の形成に関し、本件発明3は、「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで」形成するのに対し、本件公然実施発明は、そのような構成を備えない点 d 空気排出口の開口度に関し、本件発明3は、「複数段階の予め定められた」ものであるのに対し、本件公然実施発明は、そのような構成を備えない点
甲30(登録実用新案第3172651号公報)に記載された発明甲30には、本件相違点に係る本件発明3の構成に相当する構成を全て含んだ介護用パンツの発明(甲30発明’)が記載されているものと認めるのが相当である。
甲30発明’の本件公然実施発明への適用技術分野の関連性本件公然実施発明は、空調服(送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させることにより人体から出た汗を蒸発させて身体を冷却することができる衣服)の技術分野に属すると認められるのに対し、甲30発明’は、介護用パンツの技術分野に属する発明であると認められる。 空調服と介護用パンツは、その形状や使用目的を異にするものではあるが、いずれも身体の一部を包んで身体に装着する「被服」であるという点(なお、この点は、被告も争うものではない。)では、関連性を有するものである。
課題の共通性
甲30発明’が解決する課題
本件公然実施発明に甲30発明’を適用することについての動機付けの有無
小括以上によると、本件出願日当時の当業者は、本件公然実施発明に甲30発明’を適用して、本件相違点に係る本件発明3の構成に容易に想到し得たものと認めるのが相当であるから、本件出願日当時の当業者は、相違点1に係る本件発明3の構成にも容易に想到し得たものと認められる。よって、これと異なる本件審決の判断は誤りであり、取消事由3は、理由がある。 |
第4 考察 |
進歩性の判断で主引用発明への副引用発明の適用を検討するにあたって、技術分野の関連性、課題の共通性、適用する動機付けが検討、判断されている。実務の参考になるところがあると思われるので紹介した。 以上
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