審決取消請求事件(足裏マット、中敷き、及び靴) |
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解説 |
解説 特許庁が本願発明は当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができないとした審決に対する審決取消請求事件の進歩性の判断(容易想到性の論理付け)において、知財高裁が引用文献の記載を詳細に検討した上で、原告主張の取消理由をすべて退けた事例。
(知的財産高等裁判所 令和4年(行ケ)第10094号 審決取消請求事件
判決言渡 令和5年5月16日) |
第1 事案の概要 |
原告は、発明の名称を「足裏マット、中敷き、及び靴」とする発明についての特許出願(特願2020‐90145号)(本件特許出願)の出願人である。
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第2 判決 |
1 原告の請求を棄却する。
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第3 理由 |
本願発明と引用発明を対比すると、本件審決が認定した一致点並びに相違点2が存在すると認められる。
(一致点)
(相違点2)
裁判所の判断:相違点2に係る本願発明の構成の容易想到性
判決では、次に、甲2の記載を詳細に検討して次のように認定を行った。
さらに、靴を履いて歩行する際に、靴や足の寸法や形状、進行方向や路面の状況等により、靴の内部で、足が前後方向のみならず、左右方向にも一定の範囲で移動し得ること、その際、移動方向は、前後方向又は左右方向に明確に区別されるものではなく、斜め方向を含めて足が移動することも考え得るところである。 以上によると、甲1に接した当業者において、引用発明について、上述した技術常識等を踏まえ、前坪の位置を個人の足に合わせてより適切に調節するため、突起具を適切な位置に調節するとの技術思想に係る甲2技術を適用して、第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪14Aの取付け位置において、中敷き本体4Aの前後方向のみならず、左右方向にも前坪取付孔を複数有する構成とすることは、容易に想到し得たものというべきである。 相違点2は、引用発明に甲2技術を適用することによって、当業者が容易に想到し得たものである。 |
第4 考察 |
原告は、相違点2の構成が甲2には開示されていない、引用発明に甲2の記載事項を適用する動機付けがない、阻害要因に関する本件審決の認定の不当性、予測できない顕著な効果に関する本件審決の認定の不当性を審決取消理由として主張したが、知財高裁は、引用文献(甲1、甲2)の記載を詳細に検討した上で、原告主張の取消理由をすべて退けた。 以上
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