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 商標「The Bay Hill Club & Lodge」は、他人の所有する施設の名称と同一であり、その承諾を得ているものと認められないから、商標法第4条第1項第8号に該当すると判断された事例
(平成6年審判第13737号、平成11年5月17日審決、審決公報第4933号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「The Bay Hill Club & Lodge」の欧文字よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成3年10月7日に登録出願されたものである。

2.査定における拒絶の理由
 登録異議申立があった結果、原査定は要旨次の理由により本願を拒絶したものである。
 本願商標を構成する「THE BAY HILL CLUB & LODGE」は、アメリカ合衆国フロリダ州にあるゴルフコース、テニスコート等を含む総合リゾート施設であり、特にゴルフクラブとしては、本願商標出願前よりすでに米国を代表するゴルフクラブとして知られていることが推認できるものである。
 しかし、本願商標は前記名称と同一の文字からなり、かつ、出願人は本願商標を出願するに当たり申請人の同意書を得ているとも認められない。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。


3.当審の判断(要約)
 本願商標は、上記記載のとおりの構成よりなるものであるところ、原審において登録異議申立人が提出した甲第1号証乃至第3号証によれば「THE BAY HILL CLUB & LODGE」は、アメリカ合衆国フロリダ州オーランドに存在するゴルフ場、ゴルフショップ、テニスコート等を有する総合リゾート施設の中の、ゴルフクラブの名称を表示するものと認められる。
 ところで、同クラブにおいて1987年、1988年に開催された米国PGAツアー「ベイクラシック」では、青木功、中島常幸等の日本人プロゴルファーの活躍が新聞、その他で報道されており、同クラブは、我国においても知られるところである。
 さらにフロリダ州のオーランドは、「Walt Disney World」がある地としても知られ、日本人観光客も数多く訪れる観光地であり、該ゴルフクラブの存在も知られ得るところである。
 してみれば、本願商標は、他人の有する施設の名称と同一のものであり、かつ、本願商標を出願することについて、承諾を得ているものとも認められない。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第8号に該当するとして、拒絶した原査定は妥当であって、取り消すべき限りではない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所