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 商標「MISSONICLUB」は、「CLUB」が親しまれた意味の成語であるが、構成全体では特定の意味の成語ではないため、著名商標「MISSONI」の文字を有し、指定商品も当該デザイナーのデザインに係る商品と同一・類似の商品を含むから、これをその指定商品に使用する場合には、商品の出所について混同を生ずるおそれがあると判断された事例
(平成10年審判第6285号、平成11年6月4日審決、審決公報第4935号)
 
1.本願商標
 本願商標は「MISSONICLUB」の欧文字を横書してなり、第25類「洋服、コート等」を指定商品とし、平成8年6月24日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、その構成中にミッソーニエス ピー エー『イタリア国 スミラゴ(バレーゼ)52-54ヴィア ルイージ ロッシ在』が商品被服等に使用している著名な商標である『MISSONI』の文字を有してなるから、これを出願人が指定商品に使用するときは、恰もミッソーニ社若しくは同人と関係をする者の取り扱いに係る商品であるかの如く、その出所について混同(誤認)を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断して本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 「MISSONI」の著名性について検討するに、例えば、「舶来ブランド事典'84ザ・ブランド」「家庭画報編世界の特選品'86」「'86〜'87 ザ・ブランド(海外ブランド・ライブラリー)」「The 一流品決定版 PART2」「英和商品名辞典」「世界の一流品大図鑑」「世界のブランド大全集'95」「男の有名一流ブランド・カタログ'98」等のファッション雑誌、カタログなどに掲載されている「MISSONI」「ミッソーニ」の項に徴すれば、「MISSONI」「ミッソーニ」は、イタリアのファッションデザイナー「オッタビオ・ミッソーニ」のデザイナー・ブランドであり、商品「スーツ、ドレス、バッグ、ベルト」等のファッション製品に主として使用されている事実が認められる。
 以上の事実からすると、我国において、本願商標の願時には既に「オッタビオ・ミッソーニ」のデザインに係る商品を表示するものとして「MISSONI」「ミッソーニ」が取引者、需要者の間に広く認識されていたものというのが相当であり、その使用は現在においても継続していることが認められる。
 そこで、本願商標をみると、本願商標は「MISSONICLUB」の文字よりなるところ、該構成全体をもって特定の意味を有する成語として存在しないばかりでなく、「MISSONI」の文字が前記認定の如く著名であること及び「CLUB」の文字が「クラブ、同好会、サークル」を意味する親しまれた成語であることを考慮すると、その構成中に「MISSONI」の文字を有するものと取引者、需要者は容易に認識、理解するというのが相当である。
 さらに、本願の指定商品は「オッタビオ・ミッソーニ」のデザインに係る商品と同一又は類似の商品を含むことから、本願商標をその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者をして、「オッタザインに係る商品、又は、人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すべき限りでない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所