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 商標「フェジョアーダ」は、第29類の肉製品について「フェジョアーダ用の内臓や耳等の肉製品」という品質及び用途を表示するにすぎず、しかも、上記商品以外の肉製品について品質誤認のおそれがあると判断された事例
(平成9年異議第90247号、平成11年5月12日決定、審決公報第4936号)
 
1.本件商標
 本件登録第4020288号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年1月13日に商標登録出願され、「フェジョアーダ」の片仮名文字を書してなり、第29類に属する(商標登録原簿記載の)商品を指定商品として平成9年7月4日に設定登録されたものである。

2.登録異議申立ての理由
 本件商標は、日本のブラジル料理や食材を扱う業界において、国民的な料理としてブラジル全国に定着している豚の足、尻尾、耳、臓モツ等をフェイジョンという黒豆といっしょに煮た料理を表すポルトガル語の「FEIJOADA」に通じる「フェイジョアーダ」の片仮名文字を書してなるから、これをその指定商品中「肉製品」について使用するときは単に商品の品質を表示したものと認められ、上記以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。
 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当するから、同第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。


3.当審の取消理由
 当審では登録異議申立人(以下「申立人」という。)の異議理由に基づき、商標権者に対して、「本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当する。」旨の取消理由通知書を提示した。

4.取消理由通知に対する対応
 商標権者は、上記当審の取消理由通知書に対して指定期間内に何ら意見を述べていない。

5.当審の判断
 よって判断するに、本件商標は「フェジョアーダ」の文字を横書してなるところ、「フェジョアーダ」とは、「フェイジョンというブラジル特産の豆と、牛や豚の塩漬けの内臓や耳、鼻、足等本来、料理に使われず捨てられる部分を煮込んだ料理」を意味する語として需要者間に知られているものである(「朝日新聞」1995年11月16日、「北海道新聞」1995年12月25日、「ぴあmap GOURMET 1993」1992年10月10日、ぴあ株式会社発行)。
 そうとすれば、「フェジョアーダ」の文字よりなる本件商標をその指定商品中、例えば、「フェジョアーダ用の塩漬けした牛や豚の内臓や足」等に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が「フェジョアーダ用の内臓や耳等の肉製品」であることを理解するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果すものとは認識し得ないものと判断するのが相当である。
 してみれば、本件商標は、その指定商品中、上記商品について使用するときは、単に商品の品質及び用途を表示するにすぎず、上記商品以外の肉製品について使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものと認められる。
 したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当するものであるから、同第43条の3第2項により、その指定商品中「肉製品」については、登録を取り消すべきものであって、本件登録異議の申立てに係るその余の商品については取り消すべき理由がないものであるから、同第4項により登録を維持する。
 よって結論のとおり決定する。


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鈴木正次特許事務所