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 商標「西の/正倉院」は、公共物(博物館)の名称を一私人が商標として採択・使用することに関して、正当な権原に基づく旨の事情が明らかにされないため、公共の秩序を阻害し又は商慣行上穏当を欠くとして、商標法4条1項7号に該当すると判断された事例
(平成9年審判第4792号、平成11年12月17日審決、審決公報第9号)
 
1.本件商標
 本願商標は、別紙に表示した構成よりなり、第33類「日本酒」を指定商品として、平成7年2月20日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶理由
 原査定は、本願商標は、商標法4条1項7号に該当するとして本願を拒絶したものである。

3.請求人の主張及び請求人への審尋
 請求人は、「本願商標は、宮崎県南郷村にある博物館『西の正倉院』を指称するものであって、公の秩序、善良の風俗を害するおそれはない」旨主張したものの、請求人と当該施設の関係についての主張、立証はなされていないものである。
 そこで、審判長は請求人に対して要旨以下の内容の審尋書を発し意見を求めた。

(審尋書の要旨)
 請求人は、審判請求書の請求の理由において「本願商標は、宮崎県東臼杵郡南郷村の施設(博物館)『西の正倉院』を指称するものである」旨述べているところ、該施設は、前記南郷村が地域おこしの一環として建設した博物館であって、専ら当該村の管理・所有に係るものと認められる。しかして、かかる公的性格を有する公共物の名称を一私人である請求人(出願人)が商標として採択・使用することに関して、正当な権原に基づくものであるかどうかの点について釈明されたい。
 そして、この審尋に対し、所定期間内に正当な権原に基づく旨の事情が明らかにされないときは、原査定摘示の条項(商標法4条1項7号)に基づき、本願商標は、公共の秩序を阻害し又は商慣行上穏当を欠くものとして、本願を拒絶すべきものとする。

4.当審の判断
 上記審尋に対して、指定期間内に請求人からはなんらの応答もなかった。
 しかして、この審尋書の内容は妥当なものと判断され、本願商標は、公共の秩序を阻害し又は商慣行上穏当を欠くものといわなければならない。
 したがって、本願商標は、商標法4条1項7号に該当し登録することはできない。
 よって結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所