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 商標「草笛サロン」は、未登録周知商標「草笛」と「クサブエ」の称呼を共通にし、役務も類似するから、商標法4条1項10号に違反して登録されたものであると判断された事例
(平成10年審判第35299号、平成12年1月4日審決、審決公報第10号)
 
1.本件商標
 本件登録第3176557号商標(以下「本件商標」という。)は、「草笛サロン」の文字を書してなり、第42類「日本料理を主とする飲食物の提供,西洋料理を主とする飲食物の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」を指定商品として平成4年9月28日に登録出願、同8年7月3日に設定登録されたものである。

2.請求人の主張
 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第61号証を提出した。
 本件商標を構成する「サロン」の文字部分は喫茶店、洋風の酒場、バー、キャバレー等の飲食物を提供する場所の名として用いられる普通名称であるから、本件商標は「草笛」の文字部分が自他役務の識別力を有する要部である。
 請求人は、「草笛」を商標として「そば等の日本料理を主とする飲食物の提供」に使用し、本件商標の出願時に請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者・取引者の間に広く認識されていたものである。
 本件商標は、請求人の使用する商標「草笛」と類似しており、その指定役務も類似する。


3.被請求人の答弁
 被請求人は、何ら答弁していない。

4.当審の判断
 請求人の提出した甲各号証に徴すれば次の事実が認められる。
 請求人は、昭和63年までには長野県上田市、小諸市で3件のそば店を経営し、営業実績については、昭和58年2月より平成10年1月までに12億円を越える売上げを記録している(甲第11号証乃至甲第21号証及び甲第43号証乃至甲第45号証)。
 請求人は、昭和59年7月31日、株式会社婦人生活社発行の「信州いい味いい店」、昭和63年6月30日と、平成元年7月31日、旅行読売発行の「THE 信州」、平成元年、軽井沢印刷株式会社発行の「ざ・ころも」に「そばの提供」について「草笛」の商標を使用した広告がみられる(甲第18号証乃至甲第21号証)。
 請求人は、長野県内6カ所の道路脇等に古いものでは昭和46年以来、新しいものでは昭和62年以来設置していると認められる看板に「そばの提供」について「草笛」の商標を使用した広告がみられる(甲第22号証乃至甲第27号証)。
 請求人は昭和58年以来、長野県内6経路を巡る千曲バスの車体に「そばの提供」について「草笛」の商標を使用した広告がみられる(甲第28号証乃至甲第35号証)。上記の事実からすると、請求人の使用する「草笛」の商標は「そばの提供」に使用され、本件商標の登録出願前には広く認識されていたものと言うのが相当である。
 そして、本件商標は「草笛サロン」の文字を書してなるところ、構成中の「サロン」の文字は飲食物の提供場所の名称に採択されることが多く、前半部の「草笛」の文字に着目し、これより生ずる「クサブエ」の称呼をもって商取引に資される場合も少なくないというのが相当である。
 これに対し、請求人の使用する商標は「草笛」の文字を書してなるから、「クサブエ」の称呼を生ずるものである。
 してみると、本件商標と請求人の使用する商標とは「クサブエ」の称呼を共通とする類似の商標であり、かつ、本件商標の指定役務と請求人の行う役務は類似するものである。
 そうとすれば、本件商標は商標法4条1項10号に違反して登録されたものである。
 したがって、本件商標の登録は、商標法46条1項1号の規定に基づき、その登録を無効とする。


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鈴木正次特許事務所